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5-12.お仕置き

 荒い息遣いが暗闇に広がっていく。

 とある洞窟の中。

 そこには仰向けに縛られて身動きが取れない男と、その上に跨る女がいた。滴り落ちる汗。


「くぅぅっ……!」


 男が苦悶とも快感とも取れる声を食いしばった歯の隙間から漏らすと、女はペロリと自身の唇を舐めた。


「ふふ…イイ顔よぉ…もっともっと、突いて、突いて、突いて…突きまくるわよぉ?」


 女の指が優しく伸びていき、男の顎を撫で上げる。

 そして……空いたもう片手方の手が男の胸を撫で、腰を撫で………脇腹を突っつき始めた。


「ちょっ…!?も……もう……無理……!!」


 男を襲うのは快楽…なんかではない。

 くすぐりによる笑いと呼吸困難のダブルパンチだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 無理!マジで無理だから!!

 キャサリン先生の攻めは的確だった。俺の弱いポイントを的確に突いてくる。

 もうこれが的確過ぎて……最早くすぐったいって感覚よりも、全身がビクンビクンと反応しているような、そんな異次元の感覚。

 …はっ。もしかして俺は新しい領域に足を踏み入れているんじゃなかろうか。


「き、キャサリン先生…限界です。」

「あらぁ?まだまだよ?このまま私無しでは生きられない体にし、て、あ、げ、る。」


 …鬼だ。このままじゃマジでヤバい。

 これ最早お仕置きというより…調教?

 どうにかして逃げないと。……って思うんだけど、両手両足が縛られたタイミングから魔法の発動が出来ないんだよね。もしかしたら、このロープが魔法の発動を阻害してんのかな。

 そうなると、逃げ出すには自分の力しかない。例えば関節を外すとか、縄抜けの術を使うとか。

 …そんなん出来るか!

 つー訳で、残された選択肢は1つか。

 それは「耐える」。キャサリン先生が攻め疲れるか、俺が屈服するか。こうなったら意地でも耐え切ってやる!!


「ふふっ。その反抗的な目…益々ゾクゾクしちゃうっ。」


 おっと…あの目付き………俺、負けるかも。


 それ以降繰り広げられた内容については割愛する。

 とてもじゃ無いが……話せません。




 翌日の朝。

 全身を骨抜きにされた俺はフラフラとした足取りでコテージに到着した。

 いや、もう、俺…頑張ったよ。キャサリン先生のお仕置きは今後一切受けたくない。似たようなシチュエーションがあったら全力で回避しにいく。

 コテージのドアを開けて中に入ると、他の4人が談笑しながら朝食タイムを過ごしていた。

 俺が入ってきた事に気付いたクレアがギョッとする。


「あ…龍人君。どうしたの?すごいクマだよ。」

「うわっ…。凄いわね。もしかしてキャサリン先生のお仕置き?」

「はは…何も聞かないでくれ。」


 フラフラと風呂場へ向かう。

 とにかく体の疲れを取りたい。それに、壮絶な擽り地獄で汗もヤバかったからな。絶対臭いぞ今。


「龍人さん大丈夫っすか!?流石に体力消耗し過ぎに見えるっす。」

「そうだよっ。俺っちも気になるなぁ。あの龍人がキャサリン先生にここまで消耗させられ2人とか…どれだけ強かったのっ?今後の戦いに活用できるエッセンスあった!?」

「いや…流石に無い。」


 もう答えるのも限界なんですけど!?早く温かい風呂に入りたい。


「いやいや!思い出してみっ?」


 思い出す……ぶるるっ!!??

 体が震えた。無理無理!思い出すとか。


「とにかく…俺は風呂に行く。そして寝る。」


 駄目だ頭が回らない。愛想が悪いのは分かってるけど、今日ばかりは勘弁してくれ…!

 俺はフラフラーと手を振りながら風呂場に向かったのだった。

 因みに…風呂はメチャクチャ気持ち良かった。全身の疲れがお湯に溶け出すような感覚。アレは病み付きになりそう。

 風呂から上がると、俺の朝食がテーブルに置かれていた。皆は居なかったけど…こういった心遣いをしてくれるクラスメイトって素敵だと思う。メニューはBLTサンド。どうやって食材を集めたかなんて、もう気にならなかった。だって美味しかったし、食べながら壮絶な眠気に襲われたんだもの。

 という訳で、朝食を食べ終えた俺は自分のベッドに倒れ込んで泥のような眠りについた。多分秒で眠ったと思う。


 起きるともう夕方で、今日はクレアが夜ご飯担当なのか台所で料理を作っていた。これは…カレーか!キャンプと言ったらカレー。定番メニューきたね!!

 夜ご飯は盛り上がった。

 カレーというテンションアゲアゲメニューだった事もあるし、会話の内容が「魔法の使い方」だったのもあると思う。バトルジャンキーで感覚派の天才肌系ルフトがマシンガントークを繰り出し、その内容を皆が吟味するという不思議な構図だったけど。

 例えば火乃花が「サーフボードを動かすのに、焔の固定化と移動を試したら上手くできたのよ。」と言うと…。


「それね!俺っちも最近練習してるんだよねっ。こう魔力をギュッと固めて動かすやつでしょ?それに加えてギュッの過程にグインと捻る動きを加えて、パンパンって平たくして、ちょい捻りを付けつつ羽みたいにして、軸に5つくらい付けて回転させるとめっちゃ早く動けるんだよねっ!」


 と、ルフトなりのノウハウを話す。

 これに対して、俺達が解読を始める。


「つまりさ、魔力の固定化で何をやったんだ?」

「何かを作ったんじゃないっすか?」

「捻って平たくして捻るのがポイント…だよね?」

「でも、捻って平たくして羽みたいになるかしら。」


 俺達が首を捻る横でルフトはマシンガントークを更に続ける。


「そんでそんで、俺っちは新しいスキル習得の道筋が見えたんだよねっ。こう…広がったものをギュッとしてビュンッとしたら、シャシャシャシャ!的な感じ?まだ試作中だけど、完成度を高めていければスキル習得に繋がる気がするんだ!」


 擬音語が多すぎて皆の首が更に傾いでいく。


「てゆーかさ、クレアの魔法の使い方ってもったいなく無いっ?俺っちなら攻撃する時にギュッて凝縮して爆発させるよ?あとは……攻撃動作の起点に置く事で初動の速度を予備動作ゼロにするけどなっ!」

「えっ?今のどういう事?予備動作を無くすって…。」

「つまりねっ………、」


 とまぁこんな感じだ。

 クレアはルフトから魔力の使い方についてレクチャーを受け始めるし、タムは火乃花と属性相性について語り始めるし…気付いたら俺だけ会話に乗り遅れていた。

 まぁいっか。美味しいご飯をたべながら皆と同じ食卓に座ってるだけで俺は満足だよ。……別に拗ねてなんかないんだからな!


「…懐かしいな。」


 ふと、思い出す。

 遼と茜と一緒に囲んだ食卓。地球で仕事仲間と騒いだ飲み会。年末年始に家族と過ごす時間。

 魔法街にきてから半年くらいしない経ってないけど、随分長い時間過ごしてるような気がする。それだけ充実した生活を送ってるって事なのかな。

 部活もこんな感じだったなー。打ち上げでお好み焼き屋の食べ放題をたらふく食べたり。部活帰りハンバーガー食べながら恋愛トークしたり。


「おーおー。快適なコテージ生活してんな。」


 …この声。まさか。

 嫌な予感に見舞われながら振り向くと、コテージの入口にラルフ先生が立っていた。相変わらずニヤニヤしてる。


「さーて、やるか。ついてこい。」


 やるかって…何をやるんだし。


「ほら?どうした?これから特訓だよ。キャンプ、夜…と言ったらやる事は決まってんだろ?」


 ニカっと親指を立てたラルフ先生は振り返る事なく歩き始めてしまう。

 どーゆー事だ?キャンプ、夜……キャンプファイヤーか!!これから皆で飲んで食べての大騒ぎか?ちょっと楽しそうかも。


「…嫌な予感がするわね。」


 火乃花は俺と反対の印象を持ったらしく、眉間に皺を寄せてラルフ先生の背中を睨み付けていた。


「流石に変な事は無いだろ。」


 と、俺は気楽にラルフ先生の後を追いかける。毎回ラルフ先生の事を疑ってたらキリがないもんな。ある程度の事はあるだろうって覚悟しとくのが良いと思うんだよね。

 俺が悩む事なく歩き始めたのを見て、火乃花達も訝しげな顔をしつつも動き始めたのだった。


 コテージを出たところで待っていたラルフ先生の転移魔法で移動し、到着したのは再びの南にある砂浜。サバイバルレースもサーフボードもこの砂浜だったな。砂浜スタートルールでもあるんだろうか?

 連れてこられた皆もこれから何が始まるのかを知らされていないらしく、数人のグループで集まってガヤガヤと雑談をしている。周りが薄暗いからか、不安そうに周りを見回している奴も居るな。

 光源は魔法で各々が出しているものしかないから、遠くから見たら人魂がフワフワと集まっているように見えるんじゃないかね。

 にしても、夜の海って結構気味が悪いな。静かで波の音だけが響いていて、水が黒く見える。どこまでも吸い込まれていきそうな不気味さがある。

 パンパン!と手を叩く音が聞こえると、脇に小箱を抱えたラルフ先生が皆に集まるようにジェスチャーをしていた。

 全員が周りに集まると、ラルフ先生は皆の顔を見回し、小声で話し始めた。


「いいか。この島には1つの言い伝えがある。昔、1人の娘が住んでいた。その娘に父親はいなく、母親と2人暮らしだったそうだ。その親子は仲が良く、どこに行くのにも一緒だった。ある日、外の島から1人の青年がこの島に訪れた。その目的は知る由もないが、青年は海辺で貝殻を拾い集める娘の姿に一目惚れをした。青年は娘にアプローチをし、2人はいつの間にか人目を忍んで会うようになった。なぜ人目を忍ぶのか。それは…娘の母親が2人の関係に異を唱えたからだ。嘗て娘の父親は別の女に心を奪われ、母娘を捨てて島を離れるという過去があったからか、母親は娘が自分の手元から離れる事に対して極端に拒否反応を示したんだ。だから故の密会。その関係は1年ほど続いたらしい。青年はいつまでもこのままではいけないと思い、意を決して母親に結婚の申し出をする。それを聞いた母親は……涙を流して喜んだと言う。2人がそんなに真剣だったとは思わなかった。私の考えが甘かったと言って結婚を許し、その晩は3人で細やかなお祝いの席を設けた。青年は結婚の喜びに酒を飲みすぎて酔い潰れてしまう。寝室で幸せそうに寝息を立てる青年。それを見つめる娘。そんな2人を母親は微笑ましい顔で眺めていた。後片付けを終えた娘と母親は抱きしめ合い、娘は幸せを誓い、母親は喜びの涙を流す。母親と娘は青年を真ん中にして其々の布団に入り眠りについた。深夜。布団からムクリと起き上がる者がいた。その者は物音を立てないように最新の注意を払いながら目的の場所へ移動する。その場所は台所。そっと伸ばされた手が掴んだのは…包丁。鈍い光を反射する包丁はユラユラと揺れながら布団へ近付いていく。そして、布団の上にのり、包丁を持つ者は…静かに息を整えて振り下ろした!!」


 うわっ。急に大きな声出しやがって!


「うぎゃぁぁぁぁ!?という叫び声が響き渡り、グサっ!グサっという肉を断つ音が叫び声と共鳴する。最後に包丁は大きく振りかぶられ…声すら出せなくなった者の首、その中心に突き立てられた。この光景を横で見ていた娘は動く事が出来なかった。叫び声が響いた瞬間に目が開いたものの、想像を絶する光景に身動きができなかったのだ。まさか愛する者が……。その衝撃は娘の心を締め上げ、思考回路を停止させる。包丁がヌチャッという音を立てて抜き取られ、次は娘に向けられた。娘はイヤイヤと徐に顔を横に振る。しかし、狂刃が止まる事はなく、娘の眉間に突き立てられた。目を見開き口をパクパクとさせる娘の瞳から赤い血が流れ落ちる。無念、怨念、怒り、絶望、あらゆる負の感情が流れ落ちるかのように。そして……包丁を握る者の体がビクンと跳ね上がる。震える顔で下を見ると……死んだ筈の母親が男の股間を噛み千切っていた。吹き出す鮮血が母親の顔を濡らし、2人の女性を殺そうとした男は強烈な痛みにビクビクと痙攣し、横倒しに倒れていく。こうして2人の恋は……男の裏切りによって幕を閉じた。なぜ青年が2人を殺したのかは分かっていない。それは母親が持っていると噂された莫大な金貨とも言われるし、実は青年と母親が愛し合っていて、しかし母親が娘の旦那にしようと持ちかけた事による絶望から…とも言われている。しかしだ、この島で惨劇が起きた事は事実であり、夜になると3人の怨霊が島を徘徊していると言う。」


 壮絶な内容に顔を青ざめさせている人もいるんだが…。本当にそんな場所だとしたらヤバいだろ。


「お前達にはこれから、その惨劇が起きた家の神棚に置いてあるお守りを取ってきてもらう。つまり肝試しだな。んで、そのペアをこの箱に入ってるクジで決めるぞ。」


 おいおい。そんな話を聞いた後に、その家に肝試しで行くとかヤバイだろ。発狂するやつ出るぞ。

 てゆーか、ここ数日の間に幽霊を見たって話は聞いた事がないんだけど…。そんな小屋があるってのも聞いた事ないし。さっきの話、本当かな?


「場所はここと島中央にある山の丁度中間地点くらいだ。前回のサバイバルレースみたいに空間は歪ませてないから安心しろ。歩いて15分くらいだ。お守りを取ってきたら、ここの砂浜に俺が待機してるから見せる事。明日はバーベキューで遊ぶから、お守りをちゃんと持ってきたペアには美味しい肉を支給してやる。頑張れよ!」


 うわー。怖い話して脅して、美味しいご褒美で釣るとか最低だ。でも、美味しい肉は捨て難いな。

 楽しげな人も、嫌々な人も居たけど、全員がくじを引き終わるとペアが決定していく。

 えーっと、俺のペアは……。


「あ、もしかして龍人君がペアの相手かな?」


 振り向くと、俺と同じ9番が書かれた紙を持つクレアが立っていた。なんかめっちゃ不安そうな顔をしていて、目が既にウルウルしている。


「よろしくな。肝試し得意?」

「ゔー、全然駄目だよぉ…。」


 あらあら。完全にビビりーモードみたいだ。


「龍人君…何かあったら守ってね?」

「お、おう。」


 上目遣いで見上げてくるクレアに思わずドキリとしてしまう。

 よし、頑張ろう。男らしいところを見せちゃうんだからね!


 巨乳美女と肝試しとか……ドキドキ展開だからな!!

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