5-11.サーフボード対決終了
うわー。オルムの存在忘れてたよ。コイツって普段は淡々としてるんだけど、意外と熱い男なんだよな。
刀と属性【氷】の組み合わせ…確かに被ってるな。てゆーか、普通に考えてオルムの方が属性【氷】を使うのは得意なはずだから、不利じゃん。属性【氷】の専門職に総合職か扱う属性【氷】が勝てるとは思えない。マルチに色々な属性を使える状況なら良いけど、使用方法に制限された今の状況だと…厳しい。逃げようかな。
「いや、勝負は遠慮しとく。」
「…!?何故でござる!?」
いや、何故って…ポイント奪われそうだからに決まってるじゃない。
「んじゃ!」
善は急げって言うからな!
速攻で逃亡を図る。けど…やっぱりか!オルムの方が移動速度が速い。しかも、氷の道を使ってその上を滑るっていう俺と全く同じ移動方法。違うのはサーフボードの強化に氷を使ってるって事くらいかな。いや…氷っていうより冷気を纏っているような。
…もしかして。
宙を飛んだオルムを撃退する為に風を纏ったサーフボードの旋回で突風を起こそうとした俺は、急遽回避行動に移る。
そのすぐ横をオルムのサーフボードが海面に着水し…周囲の海面が一気に凍りついた。俺のサーフボードも先端が巻き込まれて凍りついた海面に固定されてしまう。
サーフボードを冷気で強化して、触れた海面を凍らせる作戦か。確かに強化の副次効果だからルール違反にはならないか。
「もらったでござる!」
オルムのサーフボードが回転ぎりの如くオルムの足を中心にして振り回される。器用だな、その技!
「ぐっ!」
けど、簡単にやられるわけにはいかない。
サーフボードを中心とした魔法陣直列励起。使用するのは属性【炎】。熱で一気に溶かす!
「むむっ!やるでござるな!」
ジュワッと氷を溶かした俺は、オルムに反撃をすべくサーフボードを蹴り上げ…蹴り上げ…スカッ。スカッ。スカッ。
「あれ?」
慌てて下を見ると…サーフボードの大半が燃え滓になっていた。
うえっ。氷を溶かす魔法で燃え尽きたのですかね?そんな事ありますかい?
確かに魔法耐性があるとは聞いてなかったけど…。
「龍人!これでは拙者との勝負…」
オルムの叫び声は転移光とともにフェードアウトして聞こえなくなっていった。自滅とかカッコ悪すぎる。
次に俺が転移で飛ばされたのは、クラスメイトが1番密集している地点のど真ん中だった。
ボフっ
「はい!?」
視界がクリアになった瞬間に柔らかい感触が顔全体を包み込む。
なにこれ!?
「きゃぁ!?」
この声は…クレアか?顔を包み込む何かに手をついて顔を引っこ抜く。
「え…あ、いや…恥ずかしいよぉ。」
………これは、不可抗力だよな?断じて指をムニムニだなんて動かしていない。動かしてないんだから!
「わ、わりい…!ごめん!」
「りゅ、龍人君。えっと…い、いいよ。気にしないで…!」
俺はクレアに謝りながら、クレアは俺に気遣いをしながら周囲の攻撃を回避していく。
やばい。恥ずかしい。ってか、ある意味役得?いや、でもこういうのはちゃんと同意のもと…って違う!そういう問題じゃない!
「もらった!」
クラスメイトの電気を纏ったサーフボードが迫り来る。
…恥ずかしいけど、やられないんだからな!
「おらよっと!」
水流を上に向けて発生させ、そこを滑るようにしながら凍らせていく。移動行為によって発生した氷の壁の完成だ。
バァン!と電気を帯びたサーフボードは氷の壁に突き刺さる。
「うわっ!抜けない!?」
クラスメイトが慌てている後ろにクレアが出現する。
「せぇい!」
可愛らしい掛け声と共に正拳突きが放たれ、サーフボードは真っ二つに折られたのだった。
てか、今のクレアの移動方法…凄いな。
バキッ!
「あ…。」
やべっ。クレアを見てたら誰かにサーフボードを壊されたんですが!?
こうして俺は再び転移光に包まれたのだった。
次に転移させられたのは砂浜の近く。幸い近くに誰もいない。
「クレアの魔法の使い方…あれもアリか。」
クレアは魔力を小さく爆発させてサーフボードを制動していた。
つーか、魔力を爆発させるって結構な技術がいると思うんだけど…。要は凝縮した魔力を一気に解放するって事だろ。それを連続で発生させるとか凄い。
なんか、今回の合宿で皆の魔法の使い方が巧みになってるな。これは気を抜けないぞ…。
確実に点数を積み重ねていかないと…。
「あらぁん。龍人君…見つけたわっ。」
この声は…。
恐る恐る振り向くと、そこには局部だけを隠した紐水着姿のキャサリン先生が妖艶な笑みで立っていた。
というか…前屈みで胸を寄せ上げている。ふかーい谷間がコンニチハしてますねぇ。あそこに手を突っ込んだらどれだけ柔らかいんだろうか。なんて考えてしまうのは男の性だからしょうがないと思う。
「ふふっ。龍人君がビリになるっていうのもアリね。大人の快楽の世界を楽しみたいかしらん?」
台詞はふざけているように聞こえるんだけど、目がマジなんですが。つーか舌舐めずりすんなし!
「はは…お断りします。」
「そんな事言わないのっ。強気な男の子を服従させた時って楽しいのよねぇ。
「抵抗…させてもらいます。」
「教師の実力をたっぷりと…骨の髄まで思い知らせてあげるわねぇ?:
キャサリン先生のサーフボードが海の上を走る。
雷を使った移動…じゃない!?
「マジ…かよ!」
雷で強化されたサーフボードが脇を掠めた。
「あら、避けられちゃったわね。」
「はは…さっき同じ移動方法を見たからな。」
「そう言えばクレアちゃんも魔力の小爆発使ってたかしら。可愛い子の事をよく見てるんだからぁ。」
「へっ?いや、そういう訳じゃ…。」
「でも、私も可愛いわよねぇ?胸の大きさは同じくらいかもしれないけれど、経験値は違うと思うわ。大人のエロスを極めた私も…ちゃんと見てね?」
ゾワっと嫌な予感が全身を駆け巡る。
キャサリン先生が右手を上げ…電流が天に立ち昇った。
「すげっ…。」
「良い事を教えてあげるわぁ。雷で全身を強化して、電磁力を操った移動を行う。その状態で突進すれば…それだけで凶悪な兵器になるのよ。イクわよ?」
「ちょっ…!」
ズパァァァン!!!
雷の砲弾と化したキャサリン先生がすぐ脇を通り過ぎていく。痺れたよ?今、猛烈にビリッと痺れましたが!?
「こなくそ…!」
海面を凍らせる移動で進路を塞げば!
パリィン!
はい。一瞬で破壊されました。
そう認識した時には、キャサリン先生の胸が俺の顔を包み込み…吹き飛ばされていた。
宙を舞いながら確認する。サーフボードは…まだ壊されていない!そんなら、猿真似だけど真っ向勝負だ!
「龍人化【破龍】!」
体の奥底から魔力が湧き上がり、黒い煌めきが周囲に浮遊する。龍人化使用中の魔法陣同時発動数無制限状態なら出来るはず!
連鎖的に魔法陣を発動し、属性【雷】による強化と移動を体現する。…出来たな。勢いでやってみたけど、ギリギリでなんとかなった。
「あらぁ…!凄いじゃないの。龍人君…そのポテンシャルそそるわぁ。」
ペロッと唇を舐めるキャサリン先生の目付きが妖艶さを増す。
「決〜めたっ。私、龍人君を食べちゃうっ。」
…はいっ?何今の宣言。
「イクわ…よん!」
キャサリン先生の体がブレる。
この人マジだ。本気で俺の事を倒しにきてるじゃん!
サーフボードを操り、キャサリン先生の突進を避け、海面の先をサーフボードの先端で切るように滑らせる。
「きゃっ!濡れちゃったじゃないのぉっ。もう…トロトロなんだからぁっ!」
あら?電気を纏った海水の膜を当てたのに効果無しか。ま、雷を纏っている人に効く訳ないよって話か。
つーか、キャサリン先生の動きがヤバい。海面に手をついてサーフボードを足で巧みに振り回すとか…物理法則完全無視だなっ!
こうなったら俺も…徹底的に真似してやる!
ここから、俺とキャサリン先生の大立ち回りが始まった。
キャサリン先生は基本的に小細工無しで突撃とサーフボードへの攻撃を繰り返すスタイル。対する俺は回避とカウンターを狙うスタイル。
多分…だけど、キャサリン先生は攻撃に敢えてフェイクを入れてない気がする。普通に攻撃の速度が速すぎて、そこにフェイクが入ってたら正直対応しきれない。先生なりの優しさって事なんだろう。きっとね。
1番の問題は……俺のサーフボードを壊しても、転移先にキャサリン先生がすぐに現れるって事だ。マジで容赦無い。お陰で他の生徒に狙われることは無くなったけど、特訓が終わるまで俺はずっとキャサリン先生とやり合うことになったのだった。
つーか…1回しかキャリン先生のサーフボードを壊せなかったよ。俺のサーフボードは何回壊されたんだ?
確実にビリッケツな点数だと思う。
サーフィンバトルが終わり、ビリの覚悟を決めた俺は砂浜で黄昏ていた。
キャサリン先生のお仕置き…何されるんだろう。あの妖艶な目付きと舌舐めずりを思い出すと、貞操の危機を感じるのですが。
そんな俺の憂鬱な気持ちに勘づいているのか、特に誰も近寄ってこなかった。下手な慰めは逆に毒だもんな。
他の皆の戦い方とかもっと見たかったなー。俺の主属性いまいち不明瞭問題解決の糸口が見つかったかも知れないのに。
でも…魔力を爆発させる感覚は、魔法陣を使ういつもの感覚とは大分違ったんだよな。キャサリン先生に襲われている間は属性【雷】の強化をメインに使ってたから、緊急回避の数回しか使ってないけど…。それでもあの感覚を応用出来たらなんとかなるかも知れない。それに、ルフトが暴走させた竜巻と対峙した時も黒い魔力を使ったみたいだし。俺自身に自覚が無いのは問題だけど、結論的には前進してる気がする。もう少しで何か感覚が掴める気がするんだけどなー。
「皆いるかー?」
ラルフ先生が何処となく満足そうな顔で俺たちを見回す。
そりゃぁね、アレだけセクハラしまくってれば満足もするよね。憎いのは全てのセクハラ行為がサーフボードを破壊するついでのさり気なくさり気なくない行為って事だな。ぱっと見では不可抗力の事故に見えなくも無いし、かと言って女性のサーフボードが壊される際には必ずセクハラ行為が発生してるし。全て偶然の産物と言われればそれまでだけど、そんな訳がない。あのラルフ先生に限ってはね。
とまぁ、こんな感じで女体を満喫したラルフ先生はすこぶる上機嫌だ。
「よしっ。結果発表といくか。1位はルーチェ。光魔法に自分を乗せる攻防一体の使い方は流石だ。強化と移動以外に魔法は使ってないしな。2位がプラム。こちらもルーチェと同じ魔法の使い方がダントツだったな。ただ、外見に惑わされた男達が周りに群れた所為で、その処理に手間取ったのが点数差に繋がったな。3位が……。」
順夫の発表が続いていくけど、俺の名前が呼ばれない。うわー。絶望的。
「……とまぁこれで39位迄の発表は終わりだ。残すは40位と41位な訳だが、想定外の奴等が残ったもんだ。」
全員の視線が集中する。
キャサリン先生との大立ち回りを否応無く続けさせられた俺と、股間についたアヒルの不気味さから女性陣にフルボッコされたバルクに。
そして…運命の時間が訪れた。
「40位は……………………。」
溜めるねぇ…。
「龍人。」
おっしゃぁ!お仕置き回避!
「あ、間違ったわ。ビリが龍人だ。」
「えっ!?」
渾身のガッツポーズ途中で俺はフリーズした。このタイミングで間違うとか無しだろ。
「う、ぉぉおおおお!助かったーー!!」
安堵の咆哮をあげるバルクを見ながら、抜け殻となった俺はペタン….と女の子座りで砂浜にお尻を付けるのだった。




