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5-3.転入生…その名は!

 待ちに待った転入生がやってくる日。

 教室内はどんな人が来るのかという話で持ちきりだった。

 男なのか、女なのか、カッコいいのか、可愛いのか、もしかしたら偏屈キャラなのか、ムキムキ男かも、ムキムキ女かも!?などなど。クラスの皆は想像力豊かに楽しそうに話している。

 俺?俺は地球でも転入生っていたからな。まぁ来るのか。って程度の認識だ。


「おっし。お前ら揃ってるな!」


 いつも以上にニヤニヤ笑いながら教室に入ってきたラルフ先生は、何故か俺をチラッと見てから教壇に立った。

 俺に何を求めてるんだし。転入生に一発芸披露なんていう無茶振りはやめてくれよ?


「昨日も話した通り、今日から新しい仲間が増える。あと、転入生って言ったけど正確には…編入生。……ん?いや、新入生か?……まぁどっちでも良いか。とにかく仲良くしてやってくれ。おーい、入ってこい。」

「はい。」


 あ、女の声だ。バルクとムキムキ男のラブラブストーリー説は消えたか。

 教室に入ってきたのは、ひと言で言うなら可憐な女の子。ぱっと見はお姫様っぽい。白と薄紫のドレスを着こなし、薄紫のベレー帽から流れるように靡く亜麻色のロングヘアーがとても綺麗だ。

 その姿を見た俺は…思わず立ち上がった。ガタン!と椅子が倒れる音に皆の視線が集中する。

 けど、そんな事気にできないくらいに俺はテンパっていた。


「おい龍人。なーに立ち上がってんだ。惚れたか?」

「え、いや、えっと…」

「とにかく座れ。」

「あ、はい。」


 言われた通りに座ると、ラルフ先生は隣に立つ美少女を親指で指差す。 


「こいつが新しいメンバーだ。ほれ、自己紹介してくれ。」

「はい。」


 美少女は一歩前に出ると軽くお辞儀をする。


「私はプラム=ピリトです。縁あって魔法学院でお世話になる事になりました。よろしくお願いします。」


 美少女…いや、ロリ美少女のプラム……プラム団長の可愛らしい自己紹介にクラスが沸き上がる。

 プラム団長は、そんな皆を微笑みながら観察し、爆弾発言を…しやがった。


「あ、因みにですが、私は龍人君と遼君との同郷です。2人は私の事をプラムって呼んでね?変な敬称とか要らないので。あと龍人君、私の事を助けてくれたみたいでありがおう。後で…お礼するね?」


 何故か最後のセリフだけ恥じらい気味の上目線というオマケ付き。一部の男子は余りの可愛らしさに昇天し、一部の男子は俺の事を睨み付け、女子達は驚愕の表情で俺を凝視する。

 え、これって、皆さん嫌らしい想像してません??


「よし。じゃあプラムは龍人の隣に座れ。龍人は同郷なんだから色々と教えてやれよ。」

「あ、はい。」


 トコトコ歩いて俺の隣に座ったプラム団長……違う違う……プラムは俺に可憐な笑顔を向けた。


「龍人君、これからよろしくね?」


 わーぉ。突然の展開に俺は頷くことしかできない。

 アウェイク事件で助けて以来、街立魔法学院でリリス先生が看病していたんだよな。んで、何度かお見舞いに行ったんだけど面会謝絶って言われてたのに……まさか学院生になるなんて。

 でも…無事に元気になったみたいで良かった。


「よろしく!」


 周りの視線が…気にしない!気にしないぞ!

 と、思ったらプラムが俺の耳元に口を寄せて囁いてきた。


「後で時間頂戴。」

「お、おう。」


 なんだか真剣な口調だったな。もしかしたら…。


「さてと、授業やるか。今日は眠くて仕方がない数学だ!」


 げっ。数学かよ。俺…苦手なんだよな。


 余談だが…授業後にプラムが俺に囁いたのを、ほっぺにキスしたと勘違いした人達が俺に詰め寄ってきたのは言うまでもない。

 んで、この誤解を解く為に…俺は多大なる労力を強いられてのだが…それはまた別の話。


 そして、午前の授業が終わって昼休憩。

 バルクがプラムをお昼ごはんに誘ったんだけど、プラムが可愛らしくお断りするというプチ事件を挟んで…俺と遼、プラムの3人は校舎の屋上でお昼ご飯を食べていた。

 ちょこんと座ってパンを齧りながら、プラムが真剣な顔で口を開いた。


「2人は、森林街がどうなったか知ってるの?」

「うん。特に龍人は最後まで戦ってたからね。」

「まぁ…思い出したくない光景だけどな。」

「そっか……。」


 悲しそうな顔をしたプラムは空を見上げる。

 きっとヘヴィー学院長とかラルフ先生辺りから、森林街で何が起きたのかを聞いたんだろうな。


「私ね、あなた達2人は森林街の警護団を引っ張ってくれる存在になるって思ってたのよ。」

「そうなんですね。」

「うん。そんな2人が魔法街の魔法学院で成長してるのは…嬉しいな。警護団の皆にも見せたかった。」


 プラムの頬を…涙が伝う。

 そりゃ悔しいよな。守るべき街を、星を滅ぼされて、その滅ぼした相手に囚われて。

 ………ん?あれ?

 森林街を滅ぼしたのが天地のセフと部下の女で、プラムを操っていたのはサタナス。もしかして、サタナスも天地の一員なのか?


「なぁ、プラム。サタナスって天地のメンバーなのかな?捕まっている時に何か聞かなかった?」


 プラムは首を横に振る。


「残念だけど聞いてないわ。でも、ヘヴィー学院長はその可能性が高いって言っていたわ。天地に属する者か、少なくとも協力関係にある者じゃないかって。」

「マジか……。天地って思ってたよりも大きい組織なのかも。」

「龍人君。遼君。」


 考え込んでいると、不意に力強い声でプラムに名前を呼ばれた。改まってなんだろう?


「2人に聞きたいのだけど、これから…どうするつもりなの?」

「俺は天地と戦うつもりだよ。その為に強くなってるんだ。もう森林街みたいな悲劇は起こさせたくない。」


 迷う事なく答えると、プラムは少し驚いた顔をした。


「プラム。俺も龍人と同じだよ。俺みたいに大切な人を失わせたくない。止めないでね?」


 遼と視線を交わし頷き合う。

 そんな俺達の様子を静かに見ていたプラムは、小さく笑うと肩を竦める。


「2人とも変わらないわね。ギルドクエストでゴブリンロードが出た時も、逃げないで無謀に戦いを挑んだわよね。」

「うっ…それは。」


 プラムにコテンパンに怒られた記憶が蘇る。

 いや、アレはマジで怖かった。本気で謝ったもんね。

 俺と遼が「はは…。」と視線を彷徨わせていると、プラムは腕を組んだ。


「きっとあなた達は相手が強大で、勝ち目がなくても…向かっていくんでしょうね。そこに無慈悲に殺されそうな人が居れば、他の何を…例え自分の命を投げ出しても。」

「いや、自殺願望はないからな?」

「うんうん。」

「冗談で誤魔化されないわよ?私は、そんな…無謀な行動に出るかもしれないあなた達を放っては置けないのよ。」

「いや、だから止めても…」


 え、もしかしてヘヴィー学院長に言うつもりなのか?流石に学院長に止められたらやばいぞ。例えば「天地と戦う事をやめないのなら退学してもらう事になるのである。」なんて言われたら、ちょっと迷う。

 魔法学院に居れば強くなるヒントを沢山貰う事が出来る。でも、強くなる目的は…。


「だから、私はあなた達を止める。」


 うわっ。きたよコレ。


「……なんて事はしないのよ。」

「えっ?」


 プラムは俺と遼の手を取ると、ギュッと握り締めた。そして、真っ直ぐな瞳で俺達を見つめる。


「私も戦う。だから、一緒に強くなりましょう。」


 予想外の言葉に俺はすぐに返事をする事が出来なかった。


「サタナスに操られていた私は…正直、力不足かもしれないわ。でもね、レフナンティ警護団団長として果たすべきだった責務を…私は何も果たしていないの。私は、レフナンティに住む人達の命を守る為に…。その為に、ギルドクエストの受注も高難易度の物を一般人が受けないように調整もしていたわ。皆が、命を落とす事なく……森林街で幸せに生活が出来るように……。」


 ポロリ。と、ブラムの瞳から雫が零れ落ちた。


「だからね、私は責務を全うしたいの。もう、レフナンティに住む人達はいないわ。でもね、これから同じ境遇に陥る人達がいるかも知れない。きっとそれを引き起こすのは天地よ。それを……止めたい。止めなきゃいけないの。」


 あぁ…。俺には分かってしまった。

 プラム団長は……プラムは俺と遼と同じ気持ちなんだって事が。

 森林街の生き残り3人がこの場所で集まったのには、何かきっと意味がある気がする。

 その想いを無下にするなんて出来ないよな。


「プラム、話してくれてありがとう。一緒に、戦おう。」

「うん。俺もプラムに負けないように強くならなきゃ。」

「ふふっ。ありがとう2人とも。先ずは2人に追い付かないとね。」

「え?プラムの方が俺達より強いと思うけど…。」

「そうかしら?…そう言えば私達、戦った事無いわよね。後で戦ってみる?そこから何かを得られるかもしれないし。あ、私なら何連戦でも大丈夫なのよ。」


 …はっ。思い出した。思い出したぞ。

 確かプラム団長って、警護団の人達の訓練をめっちゃ厳しくしてたんじゃなったけ?何連戦もやりまくって、皆が倒れるまで続くとかで。

 うわー。ルフトとプラムが組み合わさったら地獄絵図になりそうな予感。


「えっと…授業で機会があったら……でお願いしようかな。」

「お、俺もそれで。」


 遼も同じ事を考えてたんだろう。顔が引き攣ってる。遼に関しては最近までバトルジャンキーのルフトに振り回されまくってるからね。不穏な気配しか感じないんだろうな。

 周りにバトルジャンキーが2人もいるとか…。


「えぇ?2人とも遠慮しなくて良いのよ?」

「いや、遠慮はしていない。」

「じゃあ何なのかしら?強くなるのに実戦に勝るものはないのよ?」


 最早さっきまでの「決意」みたいな雰囲気は一切ない。

 やばいぞ。どうにかしないと地獄の特訓が幕を開けてしまう。


「あ、そろそろ午後の授業が始まるな…遅刻しないようにそろそろ行こう!」

「オッケー!」

「あっ!?ちょっと2人とも待ちなさい!」


 脱兎の如く走り出す俺と遼をプラムが追いかけて来る。頬っぺたを膨らませてちょっと怒り気味だけど、どことなく楽しそうでもある。

 ふと、思う。こんな感じの日々がずっと続けば良いのになって。


 余談だが、午後の授業は対人戦だった。

 プラムが戦いまくりで無双したのは勿論のこと、もう1人のバトルジャンキールフトと気が合ってしまった。

 最後には2人で5連戦してたね。

 あの2人、魔力量が人並み外れて多いんじゃないかな。体力もそうなんだけど、あんだけ魔法を使いまくってて倒れないってのは…化け物レベルな気がするよ。

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