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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
4章:街立魔法学院
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4-32.魔法街戦争〜ルーチェの話〜

 時は2021年12月24日。今から5年前ですの。

 行政区で爆弾テロが起きました。勿論ただの爆弾テロではありませんの。

 当時の魔法街は2つの派閥による争いが起きていました。

 1つは至上派。ロジャー=ベックという人物が先導する、魔法使い至上主義を掲げる派閥ですの。魔法街を導くのは力の強い魔法使いであるべき。という考えを理念とした派閥です。

 もう1つが平等派。アレスター=クロウが先導する派閥で、万人平等を理念に掲げていましたわ。魔法力で人を評価するのではなく、魔法が使える者も、使えない者も平等に個人の適性を見て適材適所で人材を割り当てる事で、全員が平等な扱いを受けるべき。という考えですの。

 元々、そこまで過激に対立はしていなかったと聞いていますわ。

 でも、行政区で行われた魔法使い育成会議でロジャーとアレスターの口論が白熱したらしいのです。それだけなら良かったのですわ。でも、世論がこれを放っておきませんでした。

 その結果が爆弾テロですの。

 …えぇ。爆弾テロだけで戦争に発展するというのは些か短絡的ですの。

 問題は爆弾テロが起きた後でしたの。至上派と平等派の両派から犯行声明が出ましたの。

 この結果は想像つくと思います。互いが互いを疑い、対立が深まっていき…後戻り出来ない程に明確な対立構造が形成されてしまったのですわ。

 ここからは…当時魔法街に住んでいた人なら誰しもが覚えていると思いますが…地獄でしたの。行政区が主戦場となり、約半年間の戦争が続きましたの。

 最後にはロジャーとアレスターの2人が行政区で激突し、激しい戦闘の果てに両者死亡という結果になりましたの。

 この両者の死亡によって世論の熱が急激に冷め、最終的に至上派と平等派は対立の再燃による戦争を懸念されて解体されましたの。今は魔法街の進む先は平等派をベースとした体制の構築を目指していますの。


 …はい。龍人君。……そうですわね、何故両派のリーダーが直接戦闘を行うに至ったのか。コレが、今回の霧崎家の話と関係があると言われていますの。

 これはごく一部の人だけが知っている内容らしいのですが…私のお父様が当時魔法学院教師をしていた関係で聞いたんですの。

 実は…火乃花さんのお父様、火日人さんは霧崎家を人質に取られていたらしいですの。当時、街立魔法学院の教師だった火日人さんは、その圧倒的な力から至上派から恐れられていたらしいですの。その火日人さんを封じ込めるために、戦いに参加したら家族を殺す。家族を引っ越しさせようとしても殺す。…との脅迫が届いたらしいのです。


 警察がどうしていたのか?ですか。それは…警察も動きたかったんだと思います。

 火乃花さん、落ち着いて聞いてくださいね。

 家族を人質に取った脅迫文は火日人さんの家族だけではありませんでしたの。

 平等派に所属する、強者全員へ同時に送られた脅迫だったのです。そして、その目的は火日人さんを封じ込める事だった。…そうですの。火日人さんが戦闘に参加したら、その他全ての人質扱いの家族を殺す…と言われたのです。その他の家族を人質に取られている者が戦いに参加する事は認める…と。

 非道ですわよね。私も当時…この話を聞いて憤ったのを覚えていますの。

 そして、火日人さんは警察に動くように抗議し、拘束されましたの。それは、人質に取られた各家族を守るためでした。けれど…その間に中央区で大きな戦闘が勃発し…多くの住民が巻き添えを受けて亡くなりました。その中に…火乃花さんのご家族も。

 ご家族を亡くされた火日人さんは警察の拘束を抜け出し、至上派の各拠点を潰して回ったらしいですの。その強さは圧倒的だったらしいですわ。お一人で壊滅させたらしいですから。

 ただ…この火日人さんの行動によって戦争がより激化したらしいですの。その結果として、両陣営のトップであるロジャーとアレスターが主戦場の指揮に出陣し、そこで両者の戦闘へ発展したらしいですわ。何故トップ同士が直接戦ったのか。その経緯については分かりませんの。

 この戦争が本当に必要だったのか。それは今でも分かりませんわ。

 でも、私は皆が喧嘩をしない世の中を作れば良いと考えていました。もしくは、平和な世界に皆で引っ越すなんてのも良い。…なんて。

 …話が逸れました。

 火乃花さん。これが私の知っている話ですの。私は真実だと考えていますが…、判断はお任せします。

 けれど、これだけは信じて欲しいですの。火日人さんは、決してご家族を犠牲に…生贄にして出世なんてものをした人ではありませんの。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 私は…大馬鹿者だ。

 お父様がお母様を犠牲にして出世をしたものだと思っていた。

 いや、そう思い込もうとしていたのかも知れない。

 お父様に「何故助けに来てくれなかったのか」「中央区は危険だから引っ越そうって言っているのになんで聞いてくれないのか」なんて言っていた当時の私は、目の前のお父様しか見ていなかった。もう少し周りに意識を広げていれば…。

 でも、それならそうと、お父様は何で言ってくれ無かったのかしら。


 ……違うわ。


 お父様は私達の…いえ、私の為に何も言わなかったんだと思う。

 もし、当時の私がルーチェの話した内容を聞いていたら、私のせいでお母様が死んだと思い込み、自分を責め続けたと思う。

 そうなっていたら、私は自責の念に耐えきれなくて自ら命を絶っていたかもしれないわ。

 でも、でも…やっぱり言って欲しかったって思うのはワガママなのかな。そうすれば、少なくともお父様を憎むことは無かったと思う。


 ……ううん。過去の出来事を「ああだったら。」

「もしこうだったら。」なんて考えていても、何も変わらないのは分かってる。

 それに、私1人では今の話を聞く事ができなかったんぁろうなって思う。

 ルーチェが教えてくれたからだし、龍人君もお父様と戦ってくれた。それが無かったら今いる地下施設に私はいなかったかも。お父様もきっと助けには来ていない。


 お父様からもっと詳しい話を、直接聞きたい。

 ちゃんと…謝らなきゃ。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ルーチェの話は…俺の想像を超えていた。

 魔法街戦争。

 この世界に転生した記憶が戻ってから1年ちょっとだけど、やっぱりこの世界は「創られた世界」にしては変だ。

 俺はこの世界で長年暮らしていた記憶もあるし、実際に魔法街戦争っていう悲劇も起きている。

 でも、火乃花と遼は地球で、Colony Worldで遊んでいた友達だ。

 その記憶以外は同一人物の奴らが、別の人生を歩んでいるのは何故か。…そこに何か理由があるんじゃ無いかって気もする。


 ……今は目の前の事に集中しなきゃだな。

 先ずはロジェスをどうにかしないといけない。つっても、俺の怪我は……。


「あれ?治ってる?」

「あ、うん。ルーチェさんが話し始める頃には治ってたよ。」

「クレアの治癒魔法…凄いな。」

「ありがと。」


 ニコッと微笑むクレア。可愛い。

 …ゴホン。

 火日人さんとロジェスの戦いは相変わらず一進一退を繰り返している。

 いや、若干ロジェスに余裕感が生まれてきたような。


「し、ねぇ!!」


 焔の連撃を危なげなく魔力球で防いだロジェスは叫ぶと、無数の小型魔力球を全身から放出する。

 あの攻撃、やばい気がすんぞ。


「私、行くわね。」


 火乃花が前を見据えながら言う。

 その声には、戸惑いも、迷いも、絶望も…負の感情が一切のっていなかった。

 前へ進む意思が満ち溢れた、いつもの自信がある火乃花だった。

 ルーチェの話を聞いて何かが吹っ切れたのか。


 トンっという軽いステップを踏んだ火乃花は、これまでとは比べ物にならない速度で小型魔力球を散開させるロジェスへ向かう。


「はぁあ!」


 気合と共に焔鞭剣が踊る。不規則であって、規則性を感じさせるような洗練された剣の舞は小型魔力球を次々と破壊していく。

 強い。

 元々強かったのもあるけど…人ってこんなに変わるもんなのか?

 小型魔力球群をほとんど撃破した火乃花は火日人さんの近くに移動して、何かを話しかける。すると、火日人さんは少し驚いた顔をして、微笑みながら火乃花の頭をポンポンと叩く。


「いくか。」

「うん。」


 俺に聞こえたのはこの短いやり取りだけだった。でも、それだけで2人の中にあったわだかまりみたいな物が氷解した事が分かる。

 元々は火乃花の怒りと火日人さんの諦念がすれ違っていたのけど、今はなんつーか…普通の親子って感じだ。

 そこからは親子の連携が炸裂する。

 火日人さんがロジェスの攻撃を防ぎ、その隙をついて火乃花が強撃を叩き込む。

 はたまた火乃花が魔力球をはじき飛ばせば、そこに生じた僅かな隙間を縫って火日人さんの研ぎ澄まされた一撃が放たれる。

 唯一の懸念はロジェスの体力が底なしって事だな。

 あんだけ攻撃を受けても、全然堪えた様子か見えない。

 でも、これなら…俺達が加勢すれば。


「ルーチェ、クレア、俺達もいこう。ロジェスを倒したくは無いけど…やるしかない。」

「倒したく無い…。あの化け物をですか?」


 あぁ…話してなかったっけ。

 俺がロジェスとの出会いを話すと、2人とも驚いた顔をしていた。


「それじゃぁ…あの化け物はロジェスって人がアウェイクの影響で変化した姿なの?」

「信じられません事実ですの。でも…となると、アウェイクの流通にはロジェスが一枚噛んでいる可能性がありますの。」

「どういう事だ?」

「流石。良い洞察力をしているな。」


 パチパチ。と拍手が聞こえてくる。

 火乃花達が戦っている音が鳴りまくっているのに、静かに耳へ届く不思議な拍手音だった。

 発生主は…白衣を着たボサボサの長い髪が特徴的な…男。だよな?


「あ……サタナス。」


 すぐ隣にいるクレアが男の名前を呟く。

 つまり、あいつがクレアの魔力を狙ったサタナスって科学者か。

 サタナスは拍手を止めると、両手をゆっくりと広げる。


「僕の研究結果はどうかな?中々の成果が出せたと自負しているよ。そして…嬉しい事に、今回は2つの成果にたどり着く事が出来た。そこのクレアという女がもたらした大量の魔力は、幸運な拾い物だった。」


 人の魔力を幸運な拾い物とか…コイツ、頭狂ってるだろ。


「さて、君達は2つめの成果がどれ程の未来を生み出すのか。その実験に付き合ってもらうよ。」


 サタナスはニンマリと笑うと指を鳴らす。

 すると、壁の一部が瞬時に消失し、そこから1人の女が歩いてきた。


「……は?………嘘だろ。」


 そこに現れたのは…あの人だった。

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