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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
4章:街立魔法学院
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4-29.地下施設探索

 火乃花、ルーチェ、クレア達と分断されてから、誘い込むように現れたドアを抜けた先には細長い通路だった。

 俺はその通路を静かに歩いていた。

 皆と分断された時は怒りが込み上げてきてヤバかったんだけど…、ふとルーチェが俺の黒い靄が怒りをトリガーにしているのを実は違うのではって言ってくれたのを思い出したら、何故か冷静になれたんだよね。

 俺は、いつか自分の力と向き合わなければならない気がする。俺が地球の記憶を持ってこの世界に転移した事。それにも意味があるはずだ。

 ……なんて、最近こんな事ばっかり考えてる気がする。

 やっぱり周りの皆が強いから焦ってるのかなぁ。

 異世界転移あるあるの最強パターンで無双してる訳でも無いし。まぁ特別な力はありそうな感じだけど全く使いこなせてないし。

 早くもっと強くなって、皆を守れるようになりたいよ。


「あら?突き当たり?」


 1本道の通路を右に曲がると…壁があった。他に道はなかったよな。

 …もしかして、後ろを振り向くと大量の敵がひしめいてるとか、壁が俺を潰そうと迫ってくる的な展開ですかい?

 恐る恐る振り向くと、そこには……。


「何も無いんかい!」


 俺の虚しいツッコミが通路にこだまする。

 お約束展開あっても良いんじゃね?


「……だとすると、道を戻るか、突き当たりに何かあるか。だな。」


 俺は今一度突き当たりの壁を確認する事にした。

 どこかに隠しスイッチとかあるかもしんないしな。

 少し壁を調べると、気になる所を見つけた。

 壁の中央に縦線が入ってるんだよね。薄っすらと。もしかしたら、この壁…何かの合図で開くんじゃないか?自動ドア的な感じで。

 合言葉とか?……よし。


「開けゴマ!!」


 ……。


「山!」


 ……。


「川!!」


 …………。


「王の帰還である!」


 ……。


「オープンザドアー!」


 誰も見てないからハメを外してみたけどコレは恥ずかしすぎる。

 しかも、全く反応しないとか……。

 余りの羞恥心にフラッと横の壁に手をついてしまう。


 ガコン


 え?壁が凹んだ?


 ウィィィィン


 え?壁が開いてく。え?もしかするともしかして、隠しスイッチって事か。

 恥ずかしすぎるぜコンチクショー!

 俺が身悶えしている間にも壁は静かに開いていき…。


「真っ白だな…。」


 思わず呟いちまう位に真っ白な部屋だった。こんなに白いのに眩しく無いってのも不思議だな。

 そして、真っ白な空間の中心で誰かが俺の方に背を向けて立っていた。

 丸っこい体型っつーか、なんつーか。

 あんなとこでボケーっと立って…何やってんだ?敵かな。それにしては腑抜け感を感じるような。

 もしかしたら捕まった人かもしれないし、武器はすぐに取り出せるように魔法陣を常駐させて…近づいてみるか。


 警戒しながら近づいた俺の足音に反応して振り向いた顔を見た俺は、目を見開く。


「お前は…!」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 龍人、クレアと分断された火乃花とルーチェは、広い洞窟のような場所で魔法を使う動物の群をただひたすらに倒し続けていた。


「ルーチェ後ろ!」


 火乃花がルーチェの背後に忍び寄っていた猿を鞭状にした焔鞭剣で斬り裂く。


「ありがとうですの!」


 火乃花のフォローによって生み出された僅かな時間を使い、ルーチェは魔力を練り上げて周囲360度に極細の光レーザーを乱射する。

 其処彼処から動物達の呻き声が響き、これまで延々と襲いかかってきていた動物の波が静かになる。


「…少しは、落ち着いた……のかしら。」


 息をつく間も無く戦い続けていた為に、大分息が上がってしまっている。

 2人はこの僅かに生まれたアイドルタイムで、この後に再びやってくるであろう戦いに向けた準備を始めていた。具体的には、息を整えながら魔力補充石を使うという行動だ。

 魔力補充石はルーチェが知り合いの製造者に直接作ってもらったらしく、アウェイクの可能性は無い。との事だ。

 火乃花とルーチェの行動はまるで、戦に慣れた雇われ傭兵のようだった。

 息をつく間もない戦いの連続に慣れているかのような、戸惑いのない行動。特に火乃花は戦闘中の冷静な思考と、周囲の状況把握能力に優れている。

 一般人なら体得出来ないであろう能力を持つ火乃花。ルーチェはそこに疑問を持ったのだった。


「火乃花さんは中々どうして戦いに慣れてますね。」


 賞賛とも詮索とも取れるルーチェの言葉に、火乃花は汗を拭いながら頷く。


「そうね。不本意だけど…街立魔法学院に入る前はよくお父様に鍛えられてたから。」

「それは素敵……ですの?」


 素直に「素敵」と言おうとしたルーチェだったが、龍人と火日人の戦いを思い出して言葉は疑問系に変わってしまった。


「ふふ。素敵じゃないわね。倒れても倒れても戦いの連続。勝てない相手と戦い続けるのは…しんどかったわね。」


 どこか遠い目をする火乃花を見て、ルーチェは火乃花が火日人を「強すぎる」と称した理由が分かった気がした。


「そういうルーチェも慣れてるわよね?」

「私は…家柄的に色々な教育を受けさせてもらっていますの。その一環で、戦闘訓練みたいなのもあるのですわ。」

「家柄?」


 首を傾げる火乃花を見てルーチェも首を傾げる。


「あら?言ってませんでしたの。私の父は税務庁長官のラスター=ブラウニーですの。」

「えっ…!?あのラスター長官…?」


 体の緊張を解すために軽くストレッチをしていた火乃花の動きが固まる。余談ではあるが、ラルフがこの場にいたら…動く度に揺れる火乃花の双丘を鷲掴みにしたであろう事は容易に想像出来る。ラルフが動かざる獲物を逃すはずがない。


「そうですの。とは言っても、噂になっているような怖い事はありませんの。戦闘になると鬼のように冷酷ですけど…。」

「そこよね。街立魔法学院の教師をしていた時の半殺し伝説を初めて聞いた時は驚いたわ。」

「本人は反省していませんのがポイントですの。」

「ポイントなのかしら。それ。」


 ルーチェの微妙に的を外した発言に、火乃花は首を傾げてしまう。…が、スルーした。


「税務庁長官の家柄なら、そこまでの戦闘訓練は必要なさそうだけど…するのね。」

「元々はありませんでしたの。ただ、魔法街戦争の時に私の近所一帯が戦闘の余波でほぼ壊滅しまして。それをきっかけに自分の身は自分で守るという方針が加わったのですわ。」

「魔法街戦争…。」


 魔法街戦争。その単語を聞いた火乃花の顔が、一瞬だけ苦虫を噛み潰したかのような表情に変わる。


「ルーチェも大変だったのね。」

「んー…私は、正直怖くて震えていただけですの。でも………何でもないですわ。」


 何を思ったのか、ルーチェは「この話はお終い」とばかりに首を横に振る。


「話が逸れましたの。兎も角、先に進んで龍人君とクレアさんを探しましょう。」

「…そうね。」


 火乃花も気持ちを切り替えたのか、グンっと伸びをするとルーチェと共に先へ進む為に行動を開始した。


(火乃花さん……もしかしたら。)


 そこまで考えたところで、ルーチェは指を顎に当てて一瞬考え事をする。そして、何かを思い出したのか「あ。」とだけ小さく声を漏らした。

 ただ、その内容には言及せず、ルーチェは火乃花の顔を覗き込んでニッコリ微笑んだ。


「火乃花さん。絶対にここから脱出しましょうね。」

「…何を今更な事を言ってるのよ。当たり前でしょ。」


 やや頬を赤らめた火乃花は、ツンとした態度でツカツカと歩く速度を早めた。必然的にルーチェからは火乃花の表情が見えなくなる。

 …が、その口もとが嬉しそうに緩んでいる事に気付いたルーチェは追撃を仕掛けるのだった。


「私、火乃花さんと一緒なら絶対に大丈夫だと思いますの。あっ、火乃花さん顔が赤いですの。風邪でも引きましたか?熱でもあるのでしょうか?」

「ちょっ…!何よ、もう!」

「どれどれ?ん〜、お熱は無さそうですわ。」


 ピトッと火乃花とルーチェのオデコが触れる。

 ぱっと見、百合の2人が互いの愛を確かめるような光景だ。

 そこからは照れた火乃花が慌てふためき、ルーチェが弄り続けるという…見る人が見れば嬉しい光景が暫く繰り広げられたのだった。


 かくして、女同士の不本意?なイチャラブを満喫した2人は、次の部屋へ続くであろう通路を発見する。


「やっと見つけたわね。」

「この先にどちらかが居ると良いのですが。」

「心配ないわよ。あの2人なら強いんだから大丈夫でしょ。」

「あら。思ったよりも信頼していますの。」

「それは…そうでしょ。…………仲間なんだもん。」


 最後の台詞をボソッと言った火乃花の顔が再び朱に染まる。


(火乃花さんは無自覚なツンデレ気質がありますの。)


 薄々感づいてはいたが、ここにきて確信が持てたルーチェはニコッと微笑む。


「そんな火乃花さんも可愛いですの。」

「えっ?」


 戸惑う火乃花の顔が更に赤くなり…。

 ルーチェは微笑みのまま、鋭い一撃を放り込んだ。


「龍人君もそう思ってるに違いないですの。」

「……………!?」


 ボンっ

 茹で蛸状態になった火乃花はフニャニャニャニャンと頭から湯気を出してノックアウトとなったのだった。

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