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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
4章:街立魔法学院
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4-26.魔力補充石生産者

 俺達が雑貨店で魔力補充石の調査をしてから1週間が経過した。

 2日に1回は授業後に1年生全員が集まって情報共有を行ってるんだけど、今のところ目立った進展は無い。

 とは言っても、分かった事も幾つかある。


 1つはアウェイクは通常の販売ルートで魔力補充石に紛れて販売されているという事だ。

 ラルフ先生が裏の販売ルート関連を片っ端から襲撃したけど、全く手がかりがなかったらしいので、まぁ情報の確度は高いんじゃないかな。


 そしてもう1つが、魔法を使う動物について。

 どうやら、アウェイクを使って魔力を暴走させた人達と同じ種類の魔力残滓が確認されたらしい。

 中央区で暴れた魔法を使う動物を10数匹捕まえていたらしいんだけど、時間経過で突然死してしまったらしく、生きている動物の検査が出来なくて正確な事は言えないらしい。

 もし、動物が魔法を使う事と、人の魔力暴走の原因がアウェイクだとしたら…魔力補充石にアウェイクを紛れ込ませただけの単純な事件じゃなくなる気がする。

 火乃花が各区間の関係悪化を狙ってる可能性があるとも言ってたけど、もっと深い所に何かがあるんじゃなかろうか…ってね。


「ともかくだ、これまで得られた情報から判断すると、アウェイクを流通させている奴を探すのは間違ってるかもしれん。」


 ラルフ先生、今日はキレキレだな。

 最初は面倒くさそうだったけど、任務の進展が中々見られなくなったタイミング位からダルそうな雰囲気が消えたんだよね。

 本気モード。って感じなのかな?


「最初は流通の大元を突き止めるつもりだったが、方針が間違ってたわ。悪い。狡猾に流通ルートを隠してやがるし、そもそも通常販売ルートで普通の魔力補充石として売られていて見分けも付かない以上、突き止めるのは無理だろ。」


 だよな。姿の見えない何かを追いかけてるみたいで、気持ち悪かったし。


「つー訳で、これから俺達はアウェイクの製造者を探す。いいか、流通させている奴じゃなくて、製造者だ。この視点を変えるだけで調査方法が変わるだろ。根本を叩くぞ。」

「ラルフ先生、質問良いですか?」

「おい。今の場面はおー!って盛り上がるとこだろ。なにを冷静に質問してんだよ!」


 片手を目に当てて悲しみを堪えるようなポーズを取ったぞ…。漫画とかに出てくるナルシストキャラみたいだな。つっても、金髪筋肉モリモリ男のラルフ先生がやると、それはそれで違う趣に見えなくも無いけど。


「いや、やるべき事は分かったんですけど、実際にはどうやって製造者を見つけるんですか?」

「それはだな…。」


 ラルフ先生はニヤリと悪どい笑みを浮かべると、驚愕のプランを発表したのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ここか。」

「そうね。」

「ですわ。」

「うん。」


 俺達は中央区に建つ、とある一軒家の前に来ていた。

 目的は簡単。魔力補充石製作者の1人が住んでいるこの家に押し入り、アウェイクを作っていないか。…を確認する為だ。

 因みにこの押し入り作戦の発案者はラルフ先生だ。

 ラルフ先生曰く「全ての生産者を同時に調べれば、見つかるだろ。」らしい。チマチマ調べるよりは効果はあると思うけど。


「普通に考えてさ、魔力補充石生産者が堂々とアウェイクを作ると思うか?」

「それは…ないですの。可能性としては隠し部屋で作ったのを混ぜてる。とかでしょうか。」


 ルーチェの言葉に頷きながら、思考を巡らす。

 この押し入り作戦は当然、無告知だ。

 けど、もし…俺たちの動きが監視されているとしたら、動きがバレている可能性も否めない。

 そうだとしたら…。

 うん。何とかなるか。要は今回の目的はアウェイク製作現場を押さえる事だろうけど、生産者の反応を観察する事も大事だろうからな。

 …お、時間だ。


「じゃあ行くか。」

「行きましょう。龍人君気を付けてね。」

「おう。……って、何で俺だけ?」

「1番無茶をしそうなのが龍人君ですの。」

「俺…そんなに無謀な奴に見える?」

「お父様に食い下がりまくったじゃない。」


 ぐはっ!?横から突き刺された…やるな火乃花!

 …けど、確かに無謀な戦い方してたか。反省だな俺。


「分かった。今回は慎重に行くよ。」

「それで良いですの。」

「本当に慎重に行けるのかしらね?」

「龍人君頑張ろ!」


 くそー。俺に対する反応が冷たい!優しいクレアが天使に見えてきたぜ。

 …って違う違う!時刻を合わせて各生産者を同時に調査するんだから、行かないと。

 俺達は頷き合うと、一軒家のドアを叩く。

 確かこの家に住んでる人の名前は…。


「こんにちはー。ゲンダムさん、街立魔法学院の者です!」


 ………………。返事が無いな。


「どうする?」

「もう少しドアを強く叩いてみるんですの。」


 ドガァン!ガダンゴドン、ドンドンドン!ガラガラガラカッシャーン!!


 うぉっ。

 一応言っとくけど、今の音はルーチェがドアを叩いた音じゃない。家の中からだ。ドアを叩いただけであれだけの音が聞こえたら、ヤバいだろ。超怪力美少女の称号を送らなきゃいけなくなっちまう。


「ぬぁぁぁ!!??ザムが!グムが!粒子砲の準備はまだかぁぁぁ!!」


 謎の言葉を叫びながら、1人の老人が家の中から飛び出してくる。

 そして、俺達を見るとピタリ。と足を止め、クルッと華麗なターンを決めて家の中に戻って行った。


「………。」


 全員がポカンと沈黙を保つ。

 なんだ今の。

 取り敢えずドアを開けてみるか。

 取手に手を当ててグイッと開けると…。


「ヒィィィィ…。」


 さっきの男が両手を首の後ろに回し、体を捻りつつケツを突き出すという謎ポーズを取っていた。


「あの…。」

「でぇすが断る!!」


 はいっ!?

 男はチッチッチッも指を横に振ると、ズキンゥゥゥンという謎の言葉と共に家の奥へ姿を消した。


「龍人君…ちょっと怖いかも。」


 クレアがキュッと俺の服を掴んでくる。

 得体の知れない生物が相手じゃ不安だよね…。

 つーか、火乃花がなんか俺の方を睨んでくるんだけど。さっさと家の中に踏み込んで調査しろって事か?

 まぁ…やるか。


「すいませーん!入りますよ!」


 男が消えた方に廊下を歩いていくと、突き当たりにドアがあり…半開きになっていた。

 うわー。ホラーゲームあるあるの展開じゃん。

 …俺は躊躇わずに半開きのドアを開ける。え?怖くないのかって?そりゃー怖いけど、怖いからってまごまごしてると余計に怖くなるからな。こーゆーのは勢いが大事なんだ。ホラーゲームは「ビビって不用意に動きを止めない」が鉄則だ。

 ドアの向こう側にはと、両手をダランと下げて中に入る俺達を空虚の瞳で観察する男が部屋の中央に立っていた。


「……あんたがゲンダムさんか?」

「あぁ。なんの用だ?」

「ゲンダムさんが作っている魔力補充石について知りたくて来たんだけど…。」

「お前さん達強そうだな!ワッシ、ワクワクしてきたぞ!!」

「…はいっ?」

「クララァァぁぁぁん!!」


 なんなんだ。なんなんだよ!この微妙に懐かしいニュアンスの台詞は!


「良い加減にしなさい!」


 ゴン!!


 火乃花の踵落としが炸裂し、ゲンダムさんは白目を剥き、頭の周りに星をクルクル回しながら撃沈したのだった。


 ゲンダムさんの意識が回復してから、俺達はゲンダムさんを尋問していた。

 え?どんな酷い事をしてるのかって?…残念ながら肉体的ダメージは一切与えていない。縄で椅子に縛りつけてはいるけど。


「や、やめてくれぇぇぇ!!それだけは…それだけは勘弁してくれ!!」


 椅子に縛られたゲンダムさんは、椅子をガタガタと揺らしながら許しを乞う。


「それならさっさと白状しなさい。さもないと…。」

「だ、だからアウェイクなんて俺は知らない!!さっきのだって初めて会う人が来て緊張しちゃったから、俺の好きなキャラクターの言動をすれば何とかなるって思っただけなんだ!!頼む!頼むからそれだけは……!」

「だから、なにも話さないなら容赦しないって言ったわよね?」


 火乃花の右手から炎が噴出する。

 そして、それはゲンダムさんの………フィギュアの1体を飲み込み、燃やし尽くした。


「ああぁぁぁあああ!俺の、俺のデステレが!!!」


 ガックリ頭を垂れ、ゲンダムさんは項垂れる。


「俺が小さい頃からずっと好きで僅かなお小遣いを毎月毎月コツコツと貯めて本当に欲しい物が出た時に買えるようにしてきた俺の大切なフィギュアが燃えてしまった俺の愛情が足りなかったなのかもしれないけれどもとはいっても燃やすだなんて酷すぎないだろうかって思う俺の考え方は間違っていないはずだよねだって俺のオタク愛は永遠で無限で誰にも邪魔する事が出来ないはずなのに………」


 おいおい、大丈夫か?元々おかしかったのにフィギュアが燃えた瞬間に壊れたぞ。


「火乃花……。」

「う、うるさいわね。こんなになるなんて思わなかったのよ。」


 お、流石の火乃花も反省してるみたいだ。そりゃぁそうだよな。人1人を廃人にして、罪悪感が無かったら完全に人としての理性が壊れてるもん。

 ともかく、ゲンダムさんはブツブツ言うばかりで、俺たちの問いかけに何の反応もしなくなってしまったので、俺達は勝手に家の中を捜索することにした。


「凄いな…。」


 家の奥にある部屋には様々な装置?みたいなのが設置されていた。これが魔力補充石を作る装置なのかな?

 けど…アウェイクっぽいのは見つからなかった。黒い魔力が暴走したって考えると、その黒い魔力に関連付けられそうな何かがあるって踏んでたんだけど、そういう怪しいものは一才なし。

 あ…。まぁオタク系の怪しいものは腐る程あったけど、それについてはまぁ割愛するって事で。

 一通りの捜索を終えた俺達はリビングに集合する。


「どうだった?」

「私の方は何もありませんでしたわ。」

「龍人君は?」

「俺の方はオタク関連グッズ以外は無かったな。」

「私もよ。ゲンダムさん…あの人のオタクっぷりやばいわよ。」

「私も何も見つけられなかったよ。なんか、ゲンダムさんの事可哀想になっちゃった。」


 うんうん。クレアの言う通り。人生を掛けて集めていたものを、容赦なく燃やされたんだもんな。その精神的ダメージは想像しても恐ろしい。


「う…。と、ともかくもう1度ゲンダムさんに聞いてみましょ。もしかしたら、他の魔力補充石生産者の変な噂とか知ってるかも知れないわ。」

「それもそうだな。じゃぁ、戻るか。」


 と言う訳で、俺達はゲンダムさんを拘束している寝室に戻る事にしたのだった。


 寝室のドアを軽くコンコンしてドアを開ける。この家の主人を寝室で縛り付けてるとか、普通に考えたら強盗と変わらなくないか俺達…。

 …余計な事を考えるのはやめよう。


「ゲンダムさん。そろそろ立ち直りまし…。」


 ドアの向こう側には、赤黒い世界が広がっていた。

 鼻腔を鉄の香りがくすぐる。

 部屋の中央には、ヒョロヒョロのバーコードハゲがゆらゆらと体を揺らしながら立っていた。

 そのバーコードハゲの足元にはゲンダムさんが転がっている。…ゲンダムさん、だよな?多分。

 というのも…体の形が原型を留めていないんだよね。顔なんか誰なのか分からないくらいに潰されてるし。


「ひっ…!??」


 俺の後ろから部屋の光景を覗いたクレアが息を呑む。

 火乃花とルーチェは直ぐに臨戦態勢を取り、俺はクレアを後ろに庇いつつ龍刀を構えた。


「…倒すぞ。」

「えぇ。」

「勿論ですの。」


 一瞬頭を「捕獲」の2文字が過ぎったけど…捕まえるなんて悠長な考えで挑んだら、下手したら俺達に大きな被害が出る可能性も否めない。

 ここは、全力で脅威の排除に動くべきだ。

 バーコードハゲはカクカクと顔を動かし、俺たちの方へ向ける。

 …なんなんだ。あの、空虚な瞳は。人間の感情ってものが全く感じられない。つーか人間か?人間の形をした別の生き物みたいだ。


「ぐ…るあぁぁぁ。」


 ボワッとバーコードハゲの全身から黒い魔力が噴き出す。おいおい、黒い魔力って…もしかしてアウェイクの暴走者か?

 でも、前に中央区で見た暴走とも様子が違う。あの時はもがき苦しんで、噴き出した魔力が相手を襲っていた。

 目の前にいるコイツは、苦しんではいるけど、自我…というか意志がありそうだし、魔力が暴走してない。黒い魔力がコイツに力を与えている感じも…。


「グワァ!!」


 バーコードハゲは体を内側に縮めたかと思うと、両腕を振り上げるようにして広げる。

 同時に…強力な魔力圧が部屋を、俺達を吹き飛ばした。


「きゃっ!?」

「なに!?」

「凄いですの!」

「うわっ!」


 異口同音に驚きの声を出しつつ、俺達は部屋の壁が、天井が壊されるのに合わせて吹き飛ばされる。

 …マジか。今の気合いだけで一軒家が半壊したんですが。ゲンダムさんのコレクション…安らかに眠ってくれ。

 どうにか空中で体勢を整えた俺は、着地と同時にバーコードハゲ…呼び方が長いな。ハゲでいっか。ハゲへ斬りかかった。


「グブビヒヒヒヒっ!」


 笑い方キモ!?

 けど、ハゲは魔力を纏わせた腕で俺の斬撃を簡単に受け止めやがった。

 横に大きく裂けた口から長い舌を出し、下品に笑うハゲは、周りに黒い魔力球を浮かべて俺へ放ってきた。


「…シッ!!!」


 俺は鋭い息を吐きつつ、左手に展開した魔法陣から夢幻を取りだすと、ハゲの顔を斜めに切り裂きつつ、魔法壁を展開して魔力球を受け止め、後方回し蹴りをハゲの鳩尾に叩き込んで吹き飛ばした。

 ちょっと一瞬ヤバいかなって思ったけど、なんとかなるもんだな。火日人さんとの戦いで少しは成長出来たみたいだ。


「ぐふぅぅ。キシシシ…。」


 あら。ハゲの奴、全然ダメージ入ってないんだけど…。普通に起き上がりやがった。

 皆は…くそっ。どこにいるか分からない。となると、救助とか考えずに戦うしかないか。

 あの黒い靄を使えれば…。


「ふしゃぁ!!!」


 ハゲの両腕がしなった。…黒い魔力矢の連射か!

 攻撃を避けつつ隙を探る。とは言っても、ハゲは攻撃の手を緩める事がない。

 俺は防御と回避を絶え間なく続けなきゃいけなくて、…負の感情を高める余裕がないな。

 こうなったらわ、ここは防御……ではなく、攻める!

 魔力矢群の攻撃範囲を魔法壁と刀で弾きながら迂回し、こっちも叩き込む!

 俺が本来使える魔法は第1段階の形状が線か点の魔法のみ。でも、直列励起で威力を強化、並列励起で範囲を強化すれば…無理矢理だけど第2段階までいけるはず。

 普通なら魔法陣を正しく構築する事で出来るんだろうけど、俺の知識と実力じゃ今は無理だ。

 けど、それを理由に戦いで負ける事を良しとする訳にはいかない。どんな手段を使っても、勝つしかない。

 例え俺の体に反動が来たとしても。


「魔法陣直列励起、魔法陣並列励起同時展開。」


 俺の前に3つの魔法陣が展開され、其々が2つの魔法陣で直列展開…合計6つの魔法陣を展開する。


「属性【雷】。落ちろ!」


 6つの魔法陣が光り輝き、雷を発現。ハゲを貫いた。


「ウギグギぎゃゴゴゴがごギグゴゲグ…!?」


 意味不明な声を漏らして雷の直撃を受けたハゲは、プスプスと体から煙を上げて倒れる。


「う……。」


 これで倒せたけど…ヤバいな。流石に直列励起と並列励起を同時使用した負荷が大きい。全身が痛いんですが。


「龍人君!危ないですの!」


 瓦礫の向こうから現れたルーチェが叫ぶ。

 危ない?もしかして…。


「マジかよ!?」


 振り向いた俺の目の前にはハゲのピカピカ輝く頭が迫っていた。

 あぁ。バーコードの部分が雷の直撃で燃えて、遂にバーコードハゲからタダのハゲに昇格なすったんですね。つーかさ、感電効果も狙って雷にしたのに…そこは無効なのね。

 ハゲの両腕に黒い魔力が渦を巻き、俺に向かって突き出された。

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