4-24.雑貨店調査
本日2話目です。
火日人さんとの戦いを終えた翌日。
午前中の授業を受けて学食で昼食を食べた後、俺達は再びアウェイクの調査をする為に中央区へ来ていた。
昨日は火日人さんと戦った後に火乃花が「少し考えたい事があるから、今日は解散にしましょう。」なんて言うから解散になったんだよね。昨日はすこぶる機嫌が悪かっけど、今日はいつも通りだから落ち着いたのかな。
昨日のルーチェが火日人さんにした質問も気になるしなー。
とは言っても、アレコレ手を出しすぎてもややこしくなりそうだから、今はアウェイク問題の調査に集中した方が得策かね。
「ここか。…久々だな。」
「この雑貨店に来た事あるの?」
何故か驚いた顔の火乃花。
「そりゃな。入学準備で色々買いに来たんだよ。」
「えっ…ここで買ったの?」
「うん。……え?もしかして、普通はここで買わないのか?」
「えっと、ここで買う人も居るけど…大体の人はリユースショップとか古本屋で買うと思うよ?」
なっ!?
衝撃に頭が真っ白になる。……入学準備で19万円位使ったんですが。
「龍人君…ドンマイね。ルーチェは新品で買ってそうだけど、クレアはどうしたの?」
「私は全部中古品だよ。それでも5万円位は掛かったけどね。」
「5万円……。」
余りの衝撃に立つ事すらままならなくなった俺は、両手を地面に付けて絶望のポーズを取った。
人って、絶望した時…このポーズを本当に取るんだね…。
4分の1の値段で全部揃えられるとか…!
俺の貧乏生活は…何だったんだ!?
あのひもじい日々…。
「龍人君。元気を出して下さいな。新品を使えるのは良い事ですわ。誰も使ってないのは良い事ですの。」
「そ、そうだよな。」
「でも…良く良く考えてみると、入学前に買った道具って余り授業で使ってませんの。実は買う必要無かったり?」
グサァ!!!
おふ……もう、立ち直れません。
あまりの衝撃に立ち直れなくなりそうな俺に、天使が助けの手を差し伸べてくれた。
「大丈夫だよ。龍人君。」
クレア…その優しさ、救われるよ!
天使のような微笑み、それを見るだけで俺の心は洗われる。救われる!あぁ天使よ!女神よ!俺の傷ついた心を癒してくれ!!!!!!!!
「私も入学前に買った教科書とか道具が、全部使わないかもって最近知ったんだ。」
グサァ!!!
アーメン……。
天使だと思ったクレアは、悪魔という自覚のない天使でした。いや、何言ってんだ俺。もはやショックがデカすぎて考える気にもなりません。
俺、死亡。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
その後、散財という衝撃からどうにか立ち直った俺は、魔力補充石の鑑定を試していた。
雑貨店の店員さんに事情を説明したら、「店長に確認するので少しお待ち下さい」と言って少し待たされたけど、すぐに快く了承の意を伝えてくれて、魔力補充石の調査をさせてくれる事になった。
魔法学院の名前を聞いた店長は、悩む事なく首を縦に振ってくれたらしい。魔法学院って凄いんだな。一定以上の地位を魔法街で確立しているみたいだ。普段魔法学院で学んでいると、中々実感する機会はないけど。
やっぱり魔法を中心に栄える星なだけあって、一流の魔法使いを育てる魔法学院って大きな存在なんだろうね。改めて恵まれた環境で魔法を学んでいる事を知らされました。
さて、問題の魔力補充石の調査に関してだけど、やり方は簡単だ。
魔力補充石を持って、違和感を感じるかどうかを確かめるだけ。そもそもこのやり方で本当に判別出来るのかって疑問はあるんだけどね。
火乃花が言うには「魔力補充石を持った時に感じる魔力量を多く感じるとか、不穏な魔力を感じるとかの違和感があるんじゃないかしら」という感じらしい。
ただ、今まで魔力補充石とアウェイクの判別を行った事がある人が誰も居ないので、もしかしたら大外れになっちゃうかも知れないけど。
黙々と魔力補充石を持って、置いて、持って、置いてを繰り返していると、段々思考が別の方に逸れていくんだよね。単純作業の繰り返しだから…致し方のない事だろ。
「あ、そう言えば…。」
という訳で…ふと、ある事を思い出した俺は近くの店員さんに声を掛けた。
一応言っておくけど「魔力補充石を調べるのが苦痛すぎてサボりたいって思った」なんて事は無いんだからな!
断じてそんな事はあり得ないと声を大にして言っておくぜ。…ホントだよ?
「すいません。」
「はいっ。なんでしょうか?」
ニコッと笑顔で答えてくれる店員さん。なんて素敵な笑顔なんだ。声も明るいし、所作も丁寧だし…接客業ってこーゆー基本が大事だと思います。えぇ。心の底からそう思います。
「以前、こちらの店を使わせて頂いた際に、ロジェスさん?だったかな。その人に大分お世話になったので、挨拶したいんですけど…今日っていらっしゃいますか?」
「ロジェスさんは…体調不良でお休みしてますね。すいません。折角名前まで覚えてくださってましたのに。」
「休みなんですね。分かりました。じゃあよろしく伝えておいて下さい。」
「はいっ勿論です!とは言っても、ここ1週間くらい休んでいて、次の出勤も不明確なんですけどね。」
「え、そんなに体調悪いんですか?」
「はい。前日迄は凄い元気だったのに、いきなり体調不良で動けなくなっちゃったみたいで。」
ちょと心配だな。
元気だったのに翌日にいきなり体調不良で1週間休みとか、よっぽどな病気なんじゃないか?
…とは言っても、引きこもりメタボみたいな体型してたから…健康状態はそんなに良くなかっただろうって気もする。
まぁ深く考えてもしょうがないか。別に友達って訳でもないしな。
また今度立ち寄った時に挨拶すれば良いか。
ただし!俺は中古品を買うっていう裏技(俺の中で)を知ったから、この雑貨店で買い物をするかは分からないけどな!!
店員さんにお礼を伝えると、俺は再び地獄の魔力補充石の確認作業に戻った。延々と魔力補充石を持って置いてを繰り返していると、段々可愛く見えてくるのは気の所為でしょうか。
因みに…魔力補充石の違和感は全く感じる事が出来ない。いっその事、使ってみて魔力の回復量がどの程度なのかを確認するのはって思って提案したんだけど…
「龍人君、それは難しいですの。使用回数のペナルティがあるから、試せる回数が2回しかありません。それに、もしつかった魔力補充石がアウェイクだったとして、2個目が見つかる保証もありませんし、1回の使用で中毒にならないとも言えませんの。」
…と、ルーチェに即刻NGを出されてしまった。まぁそうだよね。思い付きで言った俺がお馬鹿チンでございました。
思い付いた後に少し考えてから発言するようにしないとな〜。地球に住んでいた時も、思い付きで言った事が原因で揉めた事もあるし。先輩からは「龍人が思い付きでアレコレ言うのは短所だけど、長所でもあるからなぁ。ま、直そうとしないでそのままでいいんじゃないか?」って言われた事もあったっけ。何度か直そうとした事もあるけど、結果的に直ってないんだよね。こりゃぁきっと死ぬまで直らないんだろうな。
な〜んて事を考えながら延々と魔力補充石を調べ続け、大量に陳列された魔力補充石の殆どを調べたけど、結果的に違和感のある魔力補充石を見つける事は出来なかった。
火日人さんのアドバイス…完全に空振りに終わったような。
明日は午前の授業終わりに任務状況の共有をする時間を取るってラルフ先生が言ってたから、そこに期待するしかないか。
「お父様の情報なんだったのよ。…何か別の目的があったのかしら。」
と、火乃花は最後まで頭を捻っていたけど、結果的に収穫はゼロ。
俺達は魔力補充石調べで疲れた体を引きずって魔法学院の学院生寮に戻ったのだった。
本当に見つかるのかね?アウェイクの元凶。
マジで心配になってきた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ふむ。思ったよりもこの店に到着するのが早かったな。アイツを使って魔力補充石とすり替えを行っていた事に気づいたか。」
白衣を揺らしながら、ウェーブの掛かった長い髪を揺らすその人物は、顎に手を当てて思考する。
「さて、どこまで確信に近付いているのか。そこが重要ではあるな。僕の実験が邪魔されるような事は許されない。だとしたら、結果を手に入れつつ邪魔をさせないプランに切り替えるか。予定より大分早いが、彼らを上手く扱えば問題はないだろう。」
その人物は考える。龍人達が雑貨店で魔力補充石を調べ、諦めて店を立ち去った後ろ姿を眺めながら。
ボーッとした瞳からは何を考えているのかを読み取ることはできない。
しかし、全身から発する非人道的な異様な雰囲気は、見る人が見れば看過する事が出来ない物だった。それなのにも関わらず、足を止める者も、振り向く者もいない。まるで、そこに居る事に気付いていないかのように。
無表情…に近い顔にすっと感情が差し込まれる。
口が薄らと横に引き伸ばされ、冷酷な笑みを形作った。
「さて、それならば、事前の検証がやや不十分だけど、早速彼らには僕の為に命を散らしてもらわなければ。…面白くなってきたね。」
その人物はフワッと白衣を靡かせ、人混みの中へ消えていく。
街行く人々は、これから魔法街に起きる事件が、今この場所で始まった事を知らなかった。
もし気付いていれば違った結末になったかもしれない事件を。
或いは…例え気付いていたとしても、何も出来なかったかも知れないが。




