4-23.火日人からの情報
本日は9時、17時の2回投稿します。
火日人さんと俺の戦いは熾烈を極めていた。…って、自分で言うのもおかしい話なんだけどね。
ただ、火日人さんが強いのは間違いない。黒い靄を出して攻撃力と速度が上がった俺の攻撃が全く当たらないんだから。
「くそっ…!」
攻撃のすれ違いざまに回し蹴りを叩き込まれた俺は、何とか踏ん張りながら後退する。
「龍人、その程度か?確かに攻撃も速度も強くなってる。けど、お前自身がその力を制御しきれてねぇ。」
「そんなの…分かってんだよ!」
魔法陣を連続展開し、火水電氷の4属性魔法を乱射する。これを目眩ましに追撃を……突破してくんの!?
俺の放った攻撃魔法の中心を突き抜けてきた火日人さんは、無造作に剣を薙ぐ。
「うわっ!!?」
無造作…それなのに込められた魔力と剣風の威力が段違いだ。
俺は成す術もなく吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「確かに強い。属性を多数扱えるのは強みだろうよ。けど、お前のは無闇矢鱈に属性魔法を使ってるだけじゃねぇの?所謂、器用貧乏ってんだよ。そーゆーのは。サポート役としては優秀になれるかもな。ただ、主戦力にはなり得ない。お前の主属性はなんなんだ?」
「く…。」
叩きつけられた衝撃で呼吸がままならなくて、返事を返せない。
てゆーか、火日人さんとの戦い…俺の特訓みたいになってないか?普通に鬼教官にビシバシ鍛えられているシチュエーションにしか思えないんだが。
「ほら。早く立て。これ以上は結果が見えてるから、最後にお前の最大の一撃を受けてやる。その一撃次第で、俺が情報を話すか否かを決めてやる。」
やっぱりそうだ。今、俺は完全に試されている。火日人さんが娘の火乃花と共に行動する俺が、信頼に足る実力を持っているか…様々な角度から検証してやがる。
くやしいけど、俺の実力じゃ…火日人さんには勝てない。けど、認めさせる事は…出来る筈だ。
…少し落ち着いて考えてみよう。俺がこの黒い靄を出した時に何が変わるのか。基本的に攻撃力と速度が向上するのと、あとは…発動出来る魔法が2段階目の形状が面の魔法まで使えるな。
これが俺の力だと思ってたけど、火日人さんの言葉で気づいた事がある。
魔法使いには主属性が存在するって事だ。
例えば、火乃花は属性【焔】…といった具合に。
じゃあ俺の主属性は何なんだろうな?
わかりやすく言っちゃえば全属性。ってな感じなんだろうけど、地球で読んでたラノベとかでも全属性扱えます的なキャラは沢山いた。けど、其々得意属性があったんだよね。この世界に主属性って概念がある以上、俺にもある筈なんだ。
つまりだ、それを知る事が出来なきゃ…根本的に俺が強くなる事は出来ないんではないかって話だ。
高火力の攻撃魔法を使えないのも、主属性っていう自分の得意属性を把握していないから。そう考えると確かに納得感はあるんだよね。
問題は、それをどうやって把握するのか。
ヒントはある。俺の職業『龍人』。これは大きなヒントになりうる筈。
その人の戦闘スタイルを端的に表したのが職業で、その職業と主属性は密接に関係している筈だ。
…安易に考えれば龍に関する何らかの属性なんだろうけど。思いつくだけで龍って色々いるじゃん?焔龍、水龍、雷龍、風龍…各属性にそれを司る龍はいそうだよね。そうなると、俺の職業『龍人』ってどの属性龍に属するの?って話になって、結局話が最初に戻っちまうんだよね…。
…………だぁぁぁああ!!
やめだやめ。
深く考えてもよく分からんし。
こうなったらヤケだ。
俺の中の力を全力で引き出して、渾身の一撃を叩き込んでやる。
「さぁ、来い。準備が整うまで待ってやる。」
火日人さん…余裕だな。悔しいけど、俺と火日人さんの間にはそれ相応の実力差がある。
今はこの余裕感に甘えるしかない。
もう一度…森林街で起きた惨劇を思い出す。セフへの怒りを、憎悪を。大切なレフナンティの人々が殺された場面を。
ブワッ
黒い靄の量が増える。
それと同時に体の奥底から湧き上がる黒い感情が爆発的に増え、俺の中の魔力が暴走を始めた。
「ぐ……。」
視界が真っ黒に染まっていく。
手足の感覚が消えていく。
まるで、俺が俺じゃ無くなるかのような…、奈落の底に落ちていくかのような感覚。
「おいおい。大丈夫か?」
…大丈夫じゃねぇっての。答える余裕も無い。少しでも気を緩めた瞬間に自我が吹き飛びそうだ。
けど、けど…踏ん張るしかない。
「い…くぞ!」
龍刀に魔力を込める。魔法陣を展開する……余裕は無い。無理だ。
この暴走しそうな魔力を凝縮して放つしかない。
明滅する視界の中で火日人さんをなんとか捉え、全身の力をフル動員して…ん?今、負荷が軽くなった。
……これは、龍忍装束か黒い靄を吸収してる?
そう言えば、ドレッサーさんが「龍魔力のコントロールを強化する」って言ってたっけ。…この事だったのか。
龍忍装束による負荷軽減で余裕が出来た事で気付いたけど、夢幻も黒い靄に何らかしらの作用を及ぼしてる気がするな。なんつーか、魔力の強化的な?
これなら…イケる!
「ラァァァァァァ!!」
叫び、駆け、右手の龍刀、左手の夢幻を全力で振るう。
黒い靄が尾を引きながら、漆黒の斬撃が火日人さんへ叩き込まれる。
「こりゃあ……!!」
対する火日人さんは楽しそうに笑っていた。
まるで、俺の成長を喜ぶ先生みたいに。
そして…赤い剣が高速で閃き、気づいた時には俺の両剣は弾き飛ばされて宙を舞っていた。
「……か……はっ…!?」
鳩尾に減り込む膝。肺の空気が全て吐き出され、一瞬で手足が痺れ、視界が明滅する。
フッと、火日人さんの顔が俺のすぐ横に近付いてくる。
「お前の力は分かった。託す。火乃花を…頼む。あいつは俺のせいで信じる事を恐れちまってる。」
それってどういう…。
火日人さんの言葉の真意を聞きたかったけど、生憎…今は鳩尾に膝蹴りを喰らっているという最悪な状況。
問いかける間もなく、俺は再び壁に叩きつけられてしまうのだった。
…立てない。体も動かない。ヤバいな。
火日人さんはグッと伸びをすると上に向かって手を振った。
「おし!終わりだ!救護班は龍人を回復してやってくれ!」
こうして、俺と火日人さんの戦いは俺の完敗という形で終わったのだった。
俺、もっと強くならなきゃな。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
その後、駆けつけた救護班とクレアによって回復した俺は皆と一緒に執行部長官室へ戻っていた。
戻る途中、火乃花に「降参しなさいって言ったでしょ!?この馬鹿!」…とめっちゃ怒られました。はい。反省しています。ごめんなさい。
そして、何故かクレアは心配そうな顔で俺に付き添ってくれている。距離が微妙に近いせいで、膨よかなアレか腕に当たって……集中出来ない。なんて無いんだからね!
長官室に到着すると、火日人さんは自分の椅子に座るとすぐに口を開いた。
「よし。約束通り、俺の話せる情報を教えてやる。」
「お願いします。」
「そうだな…。先ず、アウェイクに関しては本当に大元は掴めていない。販売ルートをどうやって探しても、必ず最後の元締めに辿り着く前でプツンと情報が途切れてるんだよなぁ。」
「…この役立たず。」
「うわっ!?父親に対して役立たずって言うのは良く無いぞ!?」
「実際にそうでしょ?」
「まぁまあ、お2人共…ここは親子喧嘩をする場所では無いですの。」
ルーチェの仲裁で父娘ともに「ぐ…。」とバツが悪そうな顔をしていた。仲が悪くても親子だね。
「えぇっと、そうだ。それで俺達が動かないのは、官僚が口出しをしてきたからだ。」
「…どう言う事?」
「つまり、官僚が口出しをしてきて、警察の動きを抑制した上で何をしようとしているのかを探ってんだよ。これで執行部が独自に行動をして、それが官僚側に漏れたらどうなる?それこそ僅かに残っているかもしれない証拠を完璧に隠滅されちまうだろ。」
なるほどね。だから俺達なのか。
「だから、お前達…街立魔法学院が独自に動き始めたっていう事実に官僚の目を向けて、慌てさせるのが目的なんだよ。」
「それなら、その官僚に繋がる情報を渡しなさいよ。」
「それは無理だ。官僚が警戒しちまう。その代わり…アウェイクに繋がるかもしれない情報を1つ渡す。中央区の雑貨店で売られている魔力補充石の判別を行ってみるんだ。」
「判別…?それってどうやるのよ。」
「持った時に違う感覚があるかもしれないだろ?それが分かれば、魔力補充石にアウェイクが紛れ込んでいる可能性が潰せる。怪しいと思ったら使ってみ。そうすれば魔力の回復度合いで確かめられる。」
「すげー曖昧だし、人を実験みたいに使うなよ。」
…はっ!?思わず突っ込んでしまった。
「まぁそう言うなって。アウェイクが紛れていれば販売元を追える。紛れていなければ、裏ルートを中心に探れば良い。少し地道だが…これで調査範囲は絞られるだろ?」
「成る程…ですわ。火乃花さん、龍人君、クレアさん、火日人さんのアドバイス通り動いてみるのはどうでしょうか?一定の効果は見込めそうな気がしますの。」
「でも…。」
ルーチェの提案に火乃花は何かを言いたそうな顔をしていたが、ルーチェのさり気ないウインクを見るとため息を吐いて頷いた。
「はぁ…。分かったわ。それで動いてみましょ。」
「おっ。素直な娘ってのは、親からしたら可愛いもんだぞ?」
「言っておくけど、私は嬉しくないから。…行くわよ。」
プイッと火日人さんから顔を背けた火乃花は先に歩いて出て行ってしまう。
俺も火日人さんに会釈をして出ようと踵を返す。
「火日人さん。ひとつだけ…聞いてもよろしいですの?」
「なんだい?」
ルーチェ?いつにもなく真剣な顔だな。
「火日人さんは、私達が真実に到達できると考えて…あの助言を下さったのですよね?」
「勿論だ。俺は火乃花に嫌われちゃぁいるが、魔法街に関わる事件に関して適当な操作をするつもりはない。例え、仲間を騙したとしても、裏切ったとしても…俺は悪人を許すつもりはない。」
「そうですの…。何の為に、そんな強い意志を持っていますの?学院生である私には、まだそこまでの覚悟は出来ませんの。」
「そんなの簡単だよ。俺は俺の大切な人達を守る為に覚悟してんだ。」
「それは警察官になってから変わらない気持ちですの?」
「ん?あぁそうだな。この気持ちが変わった事は無いぜ。」
「分かりましたの。私も信念を持つ事が大切ですわね。ありがとうございます。」
ニコっと微笑んだルーチェは軽やかな足取りで長官室を出て行った。
今のやり取り…なんだったんだ?何かの意味があったのかね?
「龍人君、私達もいこ?」
「あ、あぁそうだな。火日人さんありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
「いいって事よ。龍人、頼んだぜ。」
俺とルーチェは再度の会釈をすると長官室を後にした。
「なぁクレア。少し離れても大丈夫だよ?」
「ううん。まだフラつくかもしれないから、私が傍にいるよ。龍人君…無茶するんだもん。」
恋愛ゲームだったらプチフラグ回収イベント的な流れなんですけど!
俺、こーゆー展開に弱いんですが!
煩悩に翻弄されながら警察庁を後にする俺なのであった。
ともあれ、今後の行動方針も決まったし。頑張って調査しますかね。




