4-22.火日人との戦い
予約投稿ミスで、遅れてしまいました。
お待ちになってた皆様すいません。。
火日人さんに連れて来られた訓練所は、周囲を壁に囲まれた広めの部屋だった。大きさのイメージだと、小学校の体育館くらいかな。
上の方にガラス窓があって、そこから火乃花、ルーチェ、クレアが俺たちの様子を見ている。漫画とかで実験施設の悪い科学者が覗いているような窓だ。
つーか、警察庁の中にこんな場所があるとはね。床も壁も一面真っ白で、ちょっと落ち着かない。
「さぁてと…やるか。」
腕をグルグル回す火日人さんから猛獣みたいな気配を感じるのは…気のせいだろうか。明らかに好戦的な雰囲気の笑みですよねアレ。
「よろしくお願いします。」
「おう!手ぇ抜いたら痛い目みるぞ?」
「はい。」
…ほら!やっぱり好戦的な男じゃんか!火乃花が火日人さんの事を「強すぎる」って言った事を考えれば、確かに手は抜けない。最初から全力で行くしかないな。
魔法陣から龍刀を取り出して構える。
今の状況は相手が火日人さんだけだから、魔法陣の同時最大発動数6個全てを戦闘に使えるのは大きい。攻撃に4つ、防御に2つを基本構成にして戦うのがベターかな。
…やるかっ!
「いきます!」
「こい!」
魔法陣を4連続で展開しつつ彼我の距離を駆け抜け、魔法陣を連続で展開していく。
1つは風魔法。体に纏う事で移動速度、攻撃速度強化の一助とする。
1つは水魔法。龍刀に属性付与。
1つは電気魔法。龍刀に付与した属性【水】に追加付与。
「…っらぁ!」
龍刀を横一文字に一閃する。
火日人さんの属性は恐らく属性【焔】だろ。火乃花と同じか、それ以上の属性だと思うんだよね。主属性は親から遺伝する事が多いって聞くし。
だからこそ、焔に有利な水と電気の合わせ技での先制攻撃だ。
卑怯?…いやいや、勝負に卑怯も何もないと思うんだよね。だってさ、正々堂々と戦いすぎて負けたら意味ないじゃん?
ってな訳で、俺は初っ端から全力の攻撃を火日人さんに叩き込んだ。
キィィン!!
「くはっ!やるねぇ。良い一撃だ。」
「…マジかよ。」
火日人さんは俺の攻撃を剣一本で受け止めていた。赤い剣からは焔が吹き出し、龍刀に付与した水と電気を難なく防いでいる。
…属性相性無視とか反則だろ。
「反撃…いくぞ!」
力技で俺の剣を弾いた火日人さんは、俺の腹目掛けて剣を突き出してくる。
「くっ…!」
速すぎる突きに対応しきれず、切先が俺の腹に突き刺さる。
「かはっ…!?」
「おうおう。余りにも弱すぎんだろ。……!?ちぃ!」
腹に剣を突き刺され、口から血を垂らす俺を見て火日人さんは落胆した様子を見せる。…が、舌打ちをすると横に飛び退いた。
その火日人さんが居た空間を剣閃が斬り裂く。
「はっ。まさか属性【幻】も操るとはな。」
腹を突き刺された俺の姿がブレて消える。
そして、無傷の俺は火日人さんに向けて龍刀を再度構えた。
…ん〜、4つ目の魔法陣で幻を発生させて、油断した火日人さんに攻撃を当てる予定だったんだけど、通用しなかったか。
「いや、今の流れで擦り傷位は負わせる予定だったんですけどね。」
「甘いな。あの程度じゃぁ俺には届かないよ。」
「そうですか。じゃぁ、今度は正々堂々と行きますね。」
「いいねぇ。来いよ。」
「はい!」
火日人さんへ再び肉迫し、連続した剣撃を叩き込む。
風魔法で速度を上昇させた俺の攻撃を、火日人さんは難なく受け流していく。
くそ…このままじゃ反撃された瞬間に崩されちまう。
縦の斬り下ろしから、遠心力を利用した回し蹴りを放つ。
「うぉっ!やるねぇ!」
見事に直撃。剣の腹で受け止められたけど、距離を少しだけ空ける事に成功した。
この僅かな隙間で龍刀に4つの魔法陣を直列励起させる。発動するのは属性【電気】。高密度の電気が龍刀の刀身から迸る。
「はぁぁ!」
そこから放つのは無詠唱魔法と風魔法による身体能力の2重強化を施した連撃だ。
斜め下から水平に剣を薙ぎ、体を回転させてのもう1撃、受け止められた瞬間に電気を爆発的に膨張させて視界を奪い、連続突きを放つ。
「むぅ…!」
火日人さんは俺が放つ全力速度の攻撃に反応し、突きを躱し、受け流していく。
ギリギリの鬩ぎ合い。…に見えるかも知れないけど、まだだ。
突きから体を捻って足払いからの斬り上げ、燕返し。不敵な笑みを浮かべる火日人さんの顔スレスレの位置を龍刀が通り過ぎていく。これだけの攻撃を紙一重で避けるとか…強すぎんだろ!
そして、全力の剣戟は地面に刺さってしまう。
「ここだな。」
剣先が地面に刺さった事で生まれた隙を火日人さんが見逃す筈が無かった。
赤い剣から爆炎が迸り、渦を巻きながら襲い来る。
「けど…まだだ!」
地面に刺さった龍刀の切先から魔法陣を展開し…鎌鼬を火日人さんに向けて解放する。
「ほぅ…!」
爆炎の剣は軌道を変え、鎌鼬に向けて振われた。
斬撃と共に爆炎が猛威を奮っめ鎌鼬とぶつかり……爆発が起きた。
「ぐあっ…!?」
爆発に吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。
くそ…!至近距離で鎌鼬をぶつけたのは失敗だった。モロに爆発の衝撃をくらっちまった。
「ふぅ。まぁまぁ機転は効くみたいだな。」
「そりゃどうも。」
「だが…」
赤い剣を肩に担いだ火日人さんは、厳しい表情だ。
「攻撃力が乏しい。人間の使える主属性と2つの副属性を合わせた3属性を超える属性魔法を使えるのは、驚愕に値する。しかし、全ての魔法が第1段階だろ?点と線の攻撃だけじゃあパターンが限られる。更には点でも線でも魔法の質が脆い。そんな程度の実力で何が出来るってんだ?」
「それは…。」
悔しいけど、火日人さんが言っている事は全て事実だ。俺の攻撃魔法が威力不足なのは周知の事実。どうにか改善したいとは思ってるんだけど、魔法陣の構成が中々上手くいかないんだよね。
「お前の実力がこの程度なら、俺からお前達に話すべき事は無い。聞いたって、死ぬだけだろ?俺には弱い奴を無慈悲に送り出す趣味は無い。」
「………。」
何も言い返せない。
俺は確かに…弱いのかもしれない。
きっと火乃花にだって勝てないだろう。
ルーチェにも、クレアにも勝てないかもしれない。
数多の属性魔法が使えたとして、それは汎用性が高いってだけ。真の強敵と戦う時に…俺は役立たずだ。
「………ない。」
けど……俺は。
俺は。
………2度と仲間を失いたくない。
だから、諦めたく…ない。
「俺は……諦めない。」
「はん!諦める諦めない以前に実力不足だろうが。諦めざるを得ないんだよ。」
「………五月蝿い。」
「はぁ?弱っちい奴がほざくな。ママのおっぱいでも飲んで寝てろ。」
「俺は、守る。2度と失わない!!」
集中だ。俺にはまだ使える力が残っている。
自由に扱う事は出来ないけど、それでも過去に2回だけ使う事が出来た。
1回目は激しい怒りから。
2回目はルフトの魔法と共にラルフが飛んできて、命の危機を感じた時に。
怒りという強い意志。生きたいという強い意志。きっと、コレがあの力を呼び起こす鍵なんだと思う。
思い出す。レフナンティで起きた虐殺を。セフを。
……俺は、俺は………!
感情が爆発する。そして、同時に体の奥底から何かが膨れ上がった。
「……なんだ。この力はよ。」
驚く火日人さんを睨み付けながら、俺は3匹の龍が絡まったような刀身をした龍刀を構える。その内1匹の龍が黒く染まっている。
凄い力だ。そして、凄い力の奔流だ。怒り、憎しみの感情が俺の中で吹き荒れ、食い破って外へ出ようと暴れ回っている。
1匹の龍が黒く染まった龍刀の周りには黒い靄が薄らと浮かび、強烈な存在感を放っていた。
「これが……今の、俺の、全力だ!」
地を蹴り駆ける。足下が脚力によってひび割れ、火日人さんとの距離が一瞬で縮まる。
…凄い力だ。気を抜いた瞬間にコントロールが効かなくなりそうな程の力。多分コレ、相当体に負担が掛かってるよな。力が切れた瞬間に動けなくなりそうな気がするわ。
短時間で勝負を決める必要があるな。
それに、やっぱり内側で膨れ上がる感情が…暴走しそうだ。感情のタガが外れた瞬間に殺戮マシーンになってしまいそうな感覚を抑えつつ、火日人さんへ攻撃を仕掛ける。
「マジか!?」
剣戟を数度繰り返した後、一旦俺から距離を取った火日人さんは苦笑いを浮かべていた。
「お前…とんでもない力を隠していやがったな。」
「まだまだですよ。」
龍刀を後方に靡かせるようにして踏み込み、体の軸を先に回転させて発生させた遠心力を利用した大振りの一撃を叩き込む。
火日人さんは赤い剣で龍刀の軌道をずらすように受け流し、ガラ空きになった俺の脇へ剣を閃かせた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
…龍人君とお父様の戦いは、私が想像すらしなかった展開を見せていた。
お父様が強いのは、小さい頃から稽古を付けてもらったりしてたから知っているけど、まさか龍人君がここまで強いだなんて。
隣で一緒に戦う様子を見物しているルーチェとクレアは「凄いですの!」とか「かっこいいね!」なんて盛り上がっているけど…私はそんな気分にはなれなかった。
理由は幾つかある。
1つは、龍人君が私が考えていたよりも強くて、なんだか少し遠い存在に感じちゃったことかしら。…べ、別に寂しいとかじゃないんだから。
ただ、剣に纏わり付く黒い靄とかを見ても、龍人君が普通じゃない事は分かるわ。元々使える属性数が1人3属性の枠を外れてたり、魔法陣展開魔法を使ったりと普通じゃなかったんだけど…。
でも、入学試験の時に龍人君に私が勝ったし、私の方が強いって思ってたのよね。だからギルドクエストも一緒に行こうって誘ったんだし。勿論、一緒に行きたかった…って、何言わせるのよ!
龍人君が毎日魔法陣の研究をしたり、努力を積み重ねているのは知っていたわ。けど、私も毎日魔法学院で授業を受けているし、そう簡単に実力差が開くだなんて思っていなかったの。
私の怠慢が、龍人君と私の成長曲線に大きな差をつけてしまった。
そして、その龍人君がお父様が笑う位に良い戦いをするという事も…複雑な気持ちの大きな原因なのよね。
もしかしまら、こっちの方が割合としては大きな割合を占めるかも。
私は……お父様が嫌い。お父様の強さも、警察も嫌いよ。
強い事が嫌いなのはおかしいって?
そうかも知れないわね。でも、強いからこそ負うものがあるわ。勿論、強くなきゃ誰かを守る事が出来ない。でも、強くても守る気がなったら守ることすら出来ない。
そして、私のお父様は…強いからこそ、守るという事を忘れた。
強くなんてなくていい。普通でいい。ありふれた生活で良い。それなのに…。
「うらぁぁあああ!!」
私が物思いに耽っている間に、お父様と龍人君の戦いは佳境を迎えていた。
龍人君が繰り出した大振りの一撃を、絶妙な剣の角度で受け流したお父様が…龍人君の脇へ剣を突き出した。
不可避のタイミング。やっぱり、お父様の戦闘センスは抜群ね。あの速度と威力の斬撃をいとも簡単に受け流すなんて、常人に出来る技じゃないわ。
「え……!?」
「まぁ!」
「龍人君…凄い。」
けど、お父様の剣は龍人君には届かなかった。
大ぶりに振った剣が受け流された事で、背中を見せるような体勢になっていた龍人君は…左手に展開した魔法陣から一振りの刀を取り出してお父様の剣を弾き、2本の刀による連撃を放った。
あの刀…魔法を使う動物と戦った時にも使ってたわね。でも、その時は銀色だったような。今は漆黒の剣。…どれだけ隠し球を持ってるのよ。
「凄いですわ。龍人君の諦めない覚悟…感服ですの。」
感激したルーチェが胸の前で両手を組んで、目をウルウルさせてるわね…。涙が浮かぶとか感受性抜群じゃない。
それにしても、諦めない覚悟…か。
私にも…その覚悟出来るかな。
お父様と龍人君の戦いは更に熾烈を極めていく。
前回の更新が同じ話を重複投稿してしまいました。
更新ペースを落とすのは申し訳ありませんので、
3/12は9時、17時と1話ずつ、合計2話を投稿します。
これからも当小説をよろしくお願い致します。




