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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
4章:街立魔法学院
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4-15.転売屋の最後

 転売屋の襲撃を返り討ちにした後…。

 縄でぐるぐる巻きにされて床に転がる転売屋を眺めながら、俺達はこれからの行動について相談をしていた。


「ホント…ビックリしたね。怖かったよ…。」


 そう言って目に涙を浮かべながら言うのは…クレアだ。

 怖かったのは分かる。でも、怖がらなくて良いレベルの実力があったように思えるのは…気のせいじゃないはずだ。現に遼も口元をピクピク動かしてるし。


「まさか魔法を使う犬が居るとは思わなかったな。てか、クレアめっちゃ強いじゃん。」

「そ、そんな事ないよ。龍人君が言ってた可憐な少女作戦のお陰だよ。」

「はは…まさか本当に使うことになるとは思わなかったけどな。」


 俺達は転売屋の隠れ家に潜入する前に「可憐な少女作戦」を立てていた。

 それは、男2人女1人のパーティだと女が狙われる可能性が高い。という予想が容易だったからだ。

 で、クレアが狙われるって状況になった場合に、それを逆手に取ろう…と言うのが作戦の主旨だ。

 具体的には可憐な少女のフリをしたクレアが、相手の油断を誘って不意打ちを仕掛け…そこに俺達が畳み掛けるって戦法だ。

 その予定だったんだけど、まさかあそこまで強いとはね…。クレアを囲んでた犬8匹も、俺達が手を出さなくても制圧出来たのでは?疑惑もあるが、まぁその辺りは濁しとこう。本能的に突っ込んではいけない気がするんだよね。


「問題は転売屋をギルドに連れて行くか、警察に連れて行くか…だよね。」


 どこかの探偵風に遼が言う。…いや、そこ悩むところか?


「普通にギルドの依頼だから…ギルドに連れて行けば良いんじゃないか?」

「でもさ、このぐるぐる巻きの転売屋を連れてギルド迄行くのって面倒くさくない?」

「んー多分さ、警察に連れてっても犯罪の証拠不十分。…とかになると思うんだよな。」

「私もそう思うよ。警察とギルドはあくまでも別組織だから、ギルドクエスト対象の持ち込みをしても無意味な事が多いって聞いた事あるかな。」


 へぇ…そうなんだ。その話は知らなかった。って事は、大きな犯罪があって、警察も追いかけている犯人がギルドクエストの逮捕対象になってる的な展開じゃないと両組織の協力は無いって事か。

 ま、これで方針は決まったか。


「よし。じゃあ転売屋をギルドに連れて行こう。」

「ククク……。」


 転売屋が…笑う。目が覚めたか。てか、起きてすぐ笑うとか…。


「何だよ。お前。」


 気でも狂ったか?まぁ元から話し方が大分キマッてはいたけど。


「もう遅いんだよ。お前達が来た時には…アレはもう俺の手を離れてんだ。」


 …アレって何の事だ?


「俺を捕まえた所で、アレは勝手に広がっていく。無駄だ!ははっ!ザマァねぇな。」

「あの…何の話をしてるんですか?」.


 首を傾げながら聞くクレアを見て転売屋は一瞬動きを止める。…今、クレアの事を可愛いって思ったぞコイツ。絶対そうだ。

 けど、そんな感情も一瞬で落ち着いたのか、転売屋は自虐的な笑みを浮かべやがった。


「お前ら…何も知らねぇのか。けっ!ただの使いっ走りかよ。………良いだろう。どうせ俺は、何処に連れてかれても殺される運命だ。教えてやるよ。お前達が足を踏み入れた…闇の世界ってのをよ。」


 おいおいー。ちょっと待て。

 ……コイツ、厨二病か?「俺の右目が疼くぜ」と言い出しそうな雰囲気なんですけど。


「イイか。テメェらの街には俺があの魔力補充石を広めた。広まりが止まる事はねぇ。仕組みが出来たからな。そして…あの魔力補充石の本質は……が……ご……グブ………」


 異変が起きた。

 苦しそうな声を漏らした転売屋は体を痙攣させ、首を退け反らせる。


「な、なんだ!?」

「ゴボ……ゴ……。」


 ミキミキと体が変な音を立て、白目を向いた転売屋は糸が切れて壊れた操り人形のようにダラん…と上半身を前に投げ捨てる。

 そして…爆ぜた。


「うわっ!?」

「うぇ!?」

「きゃっ!」


 何があるかも。って警戒して魔法壁と物理壁を展開準備しといて良かった……。

 いや、なに。爆ぜた訳ですから、スプラッターですよ。惨劇ですよ。

 いやぁもう…気持ち悪くなってきた。


 それから20分後。

 ひと通りの吐き気を収めた俺達は1階の理髪店で休んでいた。もう地下には行かないぞ。暫く夢に出そうな気がするよ…。


「さっきの転売屋が死んだやつだけど…。」

「うん。」

「その話…する?」


 遼が嫌そうだ。思い出したく無いのは分かる。けど、確認しなきゃ行けないことがあるからな。


「2人も同じ事を考えてるとは思うけど…転売屋は殺されたんだと思う。」

「それは俺もそう思うよ。」

「うん。私も。」

「だよな。で、問題は転売屋が言ってた…魔力補充石だ。それが広がっていく…とか言ってたよな。」

「言ってたね。あれ、どう言う意味なんだろ。」

「これは俺の予想だけど…、その魔力補充石はただ単に魔力回復率が高いだけじゃ無いと思う。それを広めて、使う人を増やすメリットが何かあるはずだ。転売屋は、それが今後魔法街で使用する人が増える…そんな仕組みを作り上げた。みたいな風に言ってたんじゃ無いかな。」

「それって…その魔力補充石が、もし悪い影響を与えるものだったら、使う人が増えたら大変な事になるかも知れないの?」


 …クレアの言う通りだ。転売屋の言っていた魔力補充石がどんな影響を及ぼすか次第で、今後…大きな事件に発展するかもしれない。


「……その可能性はあるよな。一先ず、この話も含めてギルドに報告しよう。」

「うん。……なんか、怖いね。」

「龍人、報告は任せたよ。」


 なんか、遼が最近俺に頼り気味な感じな件について。まぁ頼られるのは悪い気はしないけどね。


 それからギルドに行った俺達は事の顛末を報告し、ギルドの職員と共に現場の理髪店に赴いた。

 そこから先の展開は容易に想像出来ると思うけど…ギルド職員が惨劇の現場を見て失神したり、実は俺達が転売屋を殺したんじゃないかと疑われたり。

 いやぁ…散々だった。仕方ないんだけどさ。

 そして、肝心の回復効率の良い魔力補充石に関しては、ギルドが本腰を入れて秘密裏に捜査を始めるらしい。

 ギルド職員は「その魔力補充石がどんな特性を有しているかも大事ですが、これまで魔力20%回復が当たり前だったものが30%というのは…素晴らしい発明です。ただ、その魔力補充石が公ではなく、裏ルートで流通していたと言う事実が…非常に危険かと思われます。早急に調査をし、必要であれば皆さんに指名でクエストを出させて頂くかもしれません。その際は是非、ご協力ください。」……と言っていた。

 正直、これ以上この件に関わりたく無いんだけどね。流石にヤバいでしょ。下手したら命を落としかねないと思うんだよね。

 って相談したら、まさかの遼から反論をされました。


「龍人、その気持ちは俺も凄くわかる。でも、今後もギルドでクエストをやるんなら断らない方が良いと思うよ。ギルド側に立ってる人と、ギルドの意志にそぐわない人だと優遇のされ方が違うからね。もし俺達が、ギルド側が俺たちの顔色を伺うくらいに実力があれば話は別なんだろうけど…。」


 との事でした。ごもっとも過ぎて何も反論できなかった。…という事で、もしギルドからクエストがきたらよっぽどの事が無い限り断らない。という方針で固まってしまった。

 因みに、ギルド職員に「あなた達のパーティ名は?」と聞かれたけど、臨時パーティですと言っておいた。俺は「この人なら背中を任せて戦える」って思った人としか正式にパーティを組むつもりはないからな。

 …それ位の人じゃないと、また大切な仲間を失う事になるかも知れないし。

 きっと、俺がパーティを組んだら、そのパーティは天地に関わる騒動に巻き込まれる事になる。それが俺の目的だしな。

 だから、パーティを組む事になったなら、その前にメンバーには俺の目的については話す予定だ。流石に転生の話をするつもりはないけど。


 話はちょっとそれちゃったが…ま、そんな訳で、俺達のランクアップクエストは無事に達成となり、俺達はギルドランクDに昇格したのだった。

 これで…もっと強い魔獣が対象の討伐クエストを受注出来るぞ!

 その為にもマルチタスクキャパオーバーと、火力不足の問題を早く解決しないとな。


 それから1週間。問題解決の為に、俺は魔法陣の研究に勤しむのだった。


 余談だけど、新しい装備を試したいから受けたクエストなのに、イマイチその性能を確かめられなかった件については…家に帰ってから気付いた。

 ま、明日から授業とかで試せば良いでしょ!


 更に余談だけど、服装が大きく変わった俺と遼を見て、クラスの皆が騒ぐ。…なんて事は無かった。むしろ「ドレッサーさんが作った装備か」と興味津々の目で見られるくらいで…。期待してて恥ずかしい。

 この世界だと装備変更は珍しくないのかな?

 文化の違いに戸惑う毎日だ!

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