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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
4章:街立魔法学院
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4-14.隠れ家

 俺達に声を掛けてきた露天商の兄ちゃんは薄い笑みを浮かべながら返事を待っている。

 いや〜どう考えても怪しいでしょ。売ってる商品も呪術とかに使いそうな怪しい物ばっかだし。


「俺達が店主を殺した人物を知りたいって…どうして思ったんだ?ただ通りすがりに、気になって見てただけなんだけど。」


 ここは1回惚けてみる。


「なぁに言ってんだよ。あれだけ警察相手に食い下がってたじゃねぇか。お前さんがあの店主の知人で、店主を殺した人物に用があるんだろうってすぐに分かるぜ。少なくとも、事件に多少なりとも関係がある人物なのは間違いねぇ。」

「……。」


 まぁ…そりゃそうか。

 俺の無言を肯定と受け取ったのか、露天商の兄ちゃんは卑下た笑いを漏らす。


「ひひっ。んで、どうするんだい?知りたいんなら、教えてやっても良いぜ?情報量は…10万円だな。」


 はぁっ!?10万円とかボッタクリだろ。


「いや、要りません。サヨウナラ。」

「えっ。ちょっ!?えっ!?」


 クルッと背を向けて俺達は歩き出す。


「わ、分かった!待ってくれ!」

「…はぁ。なんだよ。正しい情報を教えてくれるとも限らないのに、10万円も払えるか。寝言は寝て言いなさい。」

「う…分かったよ。じゃぁさ、俺が情報を教えてやるから、その情報が正しかったら俺の店の常連になってくれよ。最近売り上げが厳しくてさ。」


 お。大分譲歩してきたな。

 ってか、コイツ…常連にするのが目的で最初に10万円って言ってきた気がする。

 食えない奴だけど、その商売魂は認めるべき…かな?

 ただ、どの商品も欲しくないんだが…。干からびたカエルの足、毒草、吸血蝙蝠の牙…品揃えが偏り過ぎだろ!


「どうする?」

「いいんじゃない?」

「私も良いと思う。」

「オッケー。」


 軽く意志確認をした俺は、露天商の兄ちゃんに向き直る。


「じゃぁ、教えてもらおうかな。その情報が正しかったら、中央区に来る時は毎回立ち寄るようにするよ。」

「おぉっ!助かるぜ!よし…それなら、あまり大きい声では言えないから周りに集まってくれ。」


 こうして、俺達は露天商の兄ちゃんを囲んで店主を殺した人物についての情報を得る事に成功したのだった。

 さて、この情報が転売屋に繋がれば良いんだけど。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 露天商の兄ちゃんから情報を聞いた俺達は、中央区商業地区の北側へ来ていた。

 メインストリートから1本裏の通りを歩き、目的の店を探す。


「…あった。あの店だ。」

「普通の店だね。」


 俺の隣に立つクレアが人差し指を唇に当てて首を傾げる。

 どうやら、殺人鬼の潜伏先という事で、もっと雰囲気のある建物を想像していたみたいだ。


「龍人、魔力探知には特に何も引っかからないよ。」

「だな。俺もやってみたけど、普通の理髪店っぽいな。中には誰も居ないっぽいけど。きっとあの店の店主とかだろ。」


 俺達が露天商から聞いたのは、小売店店主を殺害した犯人を偶然見つけた彼が、後をつけた所…この理髪店に入っていったらしい。

 偶然見つけて尾行して、その殺人犯に見つからなかったっていう事自体が非常に怪しいんだけどね。

 さて、突入するか。


「店の中に入ってみよう。俺、クレア、遼の順番で行くぞ。遼は後方の警戒と遠距離攻撃中心に、クレアは俺と遼が負傷した時に治癒魔法ですぐに対応して欲しい。因みに近接戦闘とかいけるんだっけ?」

「あ、うん。武器は使わないんだけど、格闘術中心に戦えるよっ。」


 えっ。こんなに可愛い子が格闘?いや、そーゆーのが偏見ってのは分かるんだけど…意外だ。


「おっけー。じゃぁ、基本は最前列で俺。敵の数が多い時は一緒に戦おう。奇襲対応メインで、周囲の警戒を頼む。」

「うんっ!緊張するけど…頑張ろうね!」

「援護は任せて!」


 いやいや遼さんよ、君の役目は正確には援護ではないよ?まぁ、大丈夫か。

 フォーメーションを組んだ俺達は、理髪店の入り口に近付き、ドアを静かに押してみる。


「…開いてるな。」


 店のドアが施錠されていなくて、店の中に誰もいないってゆーのは、状況的にはあまり良くないよな…。

 クレアが俺の服の端をちょこっとつまむのが可愛い。


「皆、警戒を怠らずにな。」

「うんっ。」

「オッケー。」


 ドアを静かに押し開ける。

 入り口付近に人は…いないな。

 理髪店の中は薄暗く、埃臭さかった。髪を切る為の椅子(バーバチェア)が4つ並び、それぞれの椅子の前に鏡が置かれている。所謂、昔ながらの理髪店って感じだな。

 ………………。誰も居ないな。っていうか、本当にこの場所に殺人鬼が隠れてるのか怪しくなってきたぞ。


「…一旦バラけて店内を探してみるか。」

「うん。」


 戦闘態勢で店内に入ったけど、特に何も無さそうなので手分けして店内の捜索をする事にした。

 こりゃぁ…ガセネタっぽいな。

 この理髪店…暫く使われてないんじゃないかな。備品には埃が積もってるし…。


「あれ?」


 遼が首を傾げて店内の1番奥に設置されているバーバチェアをツンツンしている。


「どうしたんだ?」

「なんかさ、この椅子…他の椅子より埃が少ないんだよね。」

「マジか。」


 近付いて確認すると、遼の言う通り他のバーバチェアより埃が少ないかった。

 でも、埃自体は薄っすらと積もってるから使ってるわけではなさそうだ。

 遼と一緒にツンツンしてみる。

 ツンツン。ツンツン。ツンツン。ツンツン。


「あっ!これ可愛いっ!」


 そして、俺達の緊張感皆無な雰囲気が伝播したのか、クレアは事務机の上に置いてある熊のブローチを見つけて目を輝かせていた。

 …ん?クレアの足元にある本は……アレは18禁の!!??

 あんな物をクレアに見せてはいけない気がする!そんな事無いのかも知れないけれど!

 さささっと移動して本を机の下に蹴って移動させようとした俺は…服がバーバチェアに引っかかって転倒する。ずってんコロリン。あぁ恥ずかしい。


 ガコン…。


 今、何か聞こえたような。もしかして…後ろを振り向くと、バーバチェアがグルグル回っていた。えぇ、そりゃもうギャグ漫画のようにグルグルと回っております。

 で、今のガコンって音が問題だよな。これって何かのギミックが動いたとかそーゆー話だと…。


「きゃぁっ!?」


 クレア!?と思って振り返ると、クレアの姿が消えていた。

 代わりに見えたのは、事務机の前にぽっかりと空いた穴。

 隠し通路か!?隠し通路だな!?

 王道的展開じゃないですか!


「って…マズい。あの下に何があるか分からない。遼!」

「うん!」


 俺と遼は武器を取り出すと、警戒しつつも最大速度で穴の中に飛び込んで行った。

 数秒の落下後、着地した場所はホールのようになっている空間だった。

 地下ホールって感じかな。


「クレア…。」


 そして、俺達が見たのは8匹の犬に囲まれたクレアと、金髪ピアスの男だった。

 もしかしたら、コイツが転売屋か?でも、転売屋がどうしてこの場所にいるんだ?俺達が追っていたのは殺人鬼だ。…いや、違う。転売屋が小売店の店主を殺した殺人鬼だったって事か。


「お前…何者だ?」


 テンプレの質問を投げかけてみる。


「あ?さっき会っただろ?俺だよ。俺。」


 オレオレ詐欺ですかいな?…いや、違う。コイツの顔はさっきの露天商じゃないか。髪の色が違うだけだ。


「露天商の兄ちゃん…?」

「そうそう!良く分かりました!髪の色が違うだけなんだから、もっと早く気付いて欲しかったけどね!」

「って事は、お前があの店主を殺したのか?」


 露天商の兄ちゃんはペロリと舌を出すと、愉快そうに笑う。


「ひひひひっ!そうだよ。あの店主、俺の情報をペラペラ喋りやがるからよ、貴重な卸先だったのに残念だよ。」


 俺の情報…?店主が教えてくれたのは転売屋の外見だけ。


「もしかして、お前が魔力補充石の転売屋か?」

「だいせいか〜〜い!いいねぇ。どうよ?不思議に思わないのか?」

「そりゃぁ思うだろ。何で自分の情報を話した店主を殺して、その後に自分で俺達に隠れ家を教えてるんだよ。」

「それは…ひひひひひっ!簡単な事さ!俺の情報を知ってる奴がいると困るんだよ。だからさ…人目のないところで始末する必要があるだろぅ?」                                                                                                                                                                                                                                                 

「俺達を殺すつもりで誘き出したのか。」

「そうさ!ひひひひひひっ。」


 …なんだこの違和感。

 転売屋が俺達を始末しようと誘き出したのは理解出来た。けど、コイツに俺達を始末出来んのか…?魔力もあんま強く感じないし、正直戦って負ける気がしないんだが。


「お前ら…俺に負ける気がしないって思ってんだろ?ひひっ!!だがなぁ、俺は負けねぇ。」


 やっぱり変だ…。転売屋は多分俺達より弱い。クレアの周りに8匹の犬がいるけど、魔法を使える俺達が犬に負けるわけも無い。それなのに、転売屋からは「勝てる」という自信が滲み出している。

 …何か隠してんのか?


「龍人君!遼君!この犬…」

「ウルセェ!女は黙ってろ!いいかテメェらはここで死ぬ。それだけだ!これ以上話すことはねぇ!」

「なんなんだ…。遼!手加減無しでやるぞ!」

「え、マジ?」


 俺達はこのクエストを行う前に1つの取り決めをしていた。

 それは「無闇矢鱈に魔法を使って力任せで転売屋を捕まえない」という内容だ。

 相手が魔法を使えるか分からないし、そんな相手に一方的な武力行使は良くないって思ったからね。だけど、この転売屋は性根が腐ってそうだし…手加減無用だろ。


「遼行くぞ!クレア…今助けるからな!気張れ!」


 俺の合図で「遼は銃口を犬に向け」「クレアは両手を胸の前で組む」という行動を取った。

 それを見た転売屋はニヤリと口を歪める。


「イケぇ!殺せ!」

「ワンワンワンワンワンワン!!!」


 犬が吠え…黒い矢が飛翔する。黒い矢の正体は恐らく属性【闇】の魔法。やや珍しい属性の魔法だ。

 これを見た俺は驚愕に目を見張り、慌てて魔法壁で防御する。

 珍しい属性に驚いたんじゃない。それを使った奴に驚いたんだ。

 闇の矢を放ったのは転売屋…の「犬達」だ。

 あり得ねぇ。動物が魔法を使うなんて聞いた事が無い。


「龍人…どういう事だろ?」

「わからん。油断は禁物だな。」

「だよね。動物は魔法を使えない筈なのに…。」


 そう。動物は魔法を使えないんだ。人以外で魔法を使えるのは「魔獣」だけ。これは当たり前の常識。

 つまり、俺たちの目の前にいるのは犬の姿形をした魔獣って事になる。

 いやいやいやいや!おかしくない?エレメンタルウルフだって、外見は狼だけど、毛の色が属性によって赤とか青とかに変わるし。普通の動物ではあり得ない色だよね。

 魔獣ってのは動物とは異なる外見をしていて、尚且つ魔法を操る存在。…じゃなかったっけねー?

 まぁ…考えるのは後か。


「遼!やるぞ!」

「オッケー!」


 俺と遼は同時に行動を開始する。

 遼は犬達との距離を保ったまま横ステップで移動しつつ射撃。

 俺は龍刀片手に真正面からの突撃だ。

 犬が闇矢を放って対抗してくる。…が、俺にそんな攻撃は通じない。

 魔法壁を「斜め」に展開し、闇矢の軌道を強制的に変える。そして、その魔法壁の下をスライディングの要領で潜り、龍刀を振るう。


「キャン!?」


 先ずは1体。

 振り抜いた龍刀の軌道上へ魔法陣を4つ連続展開し、氷矢を犬に向けて叩き込んだ。


「キャン!?」「キャン!?」「キャン!?」


 …やっぱりおかしい。魔獣よりも弱い。魔法が使えるだけの動物って感じがするな。


「これで終わりだ!」


 龍刀に火を纏わせ、残った犬が放つ闇矢を避けつつ斬撃を繰り返す。

 そして、最後の1匹に袈裟斬りを叩き込もうとしたタイミングで、横から飛来した魔弾が犬の眉間を撃ち抜いた。


「あら。」


 ラストアタックを取られて、ちょっと拍子抜けだけど…まぁいっか。

 俺は龍刀の切先を転売屋に……あれ?


「う、う、動くなぁ!動いたらこの女を殺す!へ、へへっ…!こんな所に女を連れてきた事が仇になったなぁ!」


 そう叫ぶ転売屋はクレアの首筋にナイフを突きつけていた。人質作戦ですかい。クレアは…震えている。

 こりゃあ…ヤバいな。


「おい。やめとけ。多分危ない。」

「はぁ!?ナイフ突きつけてんだから危ないに決まってんだろうが!さっさと武器を捨てて両手を上げろコラァ!」


 ……こりゃあどうにもならないか。

 俺と遼は目を見合わせると、武器を床に置き、両手を挙げた。


「よし…!そのまま、お前が銃使いの両手両足を縛れ!」


 さぁやりますか。


「クレア。オッケーだ。」

「はぁっ!?何を言って……。…!?」

「ていやぁー!」


 可愛い気合いの声を出しつつ、ナイフを突きつける転売屋の腕の隙間を縫ったクレアの掌底が、転売屋の顎を打ち抜く。


「ぐふっ…!?」

「えいっ!」


 打ち抜いた動きから体を反転させる遠心力を利用した後ろ回し蹴りが…仰反った転売屋の脇腹に突き刺さった。


「グボヘェッ!?」


 体をくの字に折り曲げた転売屋は…壁に叩きつけられ、ゴミのように床に転がったのだった。

 そして、転売屋を一瞬でノックダウンしたクレアは…。


「うぅっ!怖かったよぉ。」


 …と、涙目を浮かべていたのだった。


 可憐で可愛くて、格闘が強いって…どーゆーギャップ萌えなんでしょうかね?

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