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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
4章:街立魔法学院
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4-10.ドレッサー=アダルツ

 ラルフ先生に連れられてきた店『アナタの心にピットイン』の店内に入ると、そこはソファーとテーブルが置かれた応接室だった。

 武器とか防具を作ってくれるって話だったから、色々な装備品が並んでるのかと思ってたから…ちょっと意外だな。


「お前達はそこに座ってろ。」


 ラルフ先生はソファーを指し示すと、応接室の奥にあるドアをノックする。


「どうぞー。」


 中から返事が聞こえると、ラルフ先生はひと呼吸し…口元に笑みを浮かべて隣の部屋にに入っていった。

 …今の笑みはなんだ。ラルフ先生が絶対にやらなそうな営業スマイルにしか見えなかったんだけど。

 それに、部屋の中から聞こえた声…女の人の声だったな。武器や防具を作る人って男のイメージが強かったから、意外感ぱねぇ。


 それから数分間。俺達は沈黙を保ったままソファーに座っていた。

 下手にあれこれ話してドレッサーさんって人の機嫌を損ねたら良くないからな。


「おいおい…。マジかよ。……なら少しは……が良くないか?」

「それはぁ………ね。だってワタシのポリ……だぁものね。」


 何かを言い合ってるのか、途切れ途切れにバルク先生とドレッサーさんの会話が扉越しに聞こえてくる。

 そして、バンっと扉が開いたかと思うとラルフ先生が諦めの表情を浮かべて部屋から出て来る。


「お前ら、1人ずつ隣の工房に行け。んで、終わった奴は1人で南区に帰る事。これがドレッサーからの条件だ。順番は……。」


 俺達の意思確認を取らず、ラルフは男子学院生の1人を隣の部屋…工房に送り込む。


「う!?え!?えぇ!?ちょ…………っまっ………。あっ!!!ダメ……!!」


 突然、悲鳴みたいな声が工房から響き渡る。


「え…なにこれ。」

「ちょっと怖いね…。」


 引き気味に言う遼とクレア。

 いやいや、ちょっとじゃなくてかなりヤバイと思うんだが。叫んでいるのが女なら、身体測定などの理由をつけて全身を触られるセクハラってのは…まあ想像出来るよな。

 でも男だ。ドレッサーさんは声からして女だろ。

 …どういう状況になりゃあんな風に叫ぶんだよ。


 それからは聞くに耐えない時間が続いた。

 1人目の男子学院生はゲソっとした顔で出てくると、ゾンビみたいにフラフラ歩き、ソファーに座る俺たちを一瞥する事なく店から出て行ってしまう。


「ほら、次だ。」

「は……はい。」


 次に呼ばれた女子学院生は怯えながらも工房に入っていく。


「え!?や、やぁん!そこは…………ダメ………!!

まっ………イヤァァォァァ!!!」


 再びの悲鳴。。

 そして、廃人となった女子学院生がフラフラと店から出ていく。

 その後も3人の学院生が廃人となり、次はクレアの番だ。


「どうしよう…怖いよ。」


 両手を胸の前で組みながら、目をウルウルさせていた。何それ可愛い。

 まぁ実際怖いってのは分かる。あの部屋の中で何が行われているのかが全く分からないもんな。

 ラルフ先生は廃人になった人が出てくる度に肩を竦める程度の反応しか示さず、淡々と次の人を送り込んでいるし。

 でも、怪我とかしてる人はいないんだよな。どっちかっていうと強力な精神攻撃受けた。的な感じ。

 クレアみたいな可憐な少女が耐えられるのかが…心配だ。


「ほら。クレア。行ってこい。」

「はい。」


 ラルフ先生に促されて立ち上がったクレアと目が合う。

 目で頷くと、クレアがちょっと嬉しそうに微笑んだ。

 ……何今の!?俺を惚れさせる気か!?

 取り乱したようだ。落ち着け俺。


「失礼します。」


 ドアをノックして隣の工房に入るクレアを見送る。

 大体部屋に入って1分程度で悲鳴が聞こえるからな。

 ……。

 ……。


 ほら、聞こえない。え、聞こえないの?


「…こりゃあお眼鏡にかなったか?」


 指を鳴らしたラルフ先生が呟く。

 どことなく嬉しそうだな。でも、つまりこれまでの5人は全員不合格?的な感じで装備を作ってもらえないって事か?

 俺と遼が目を見合わせていると、工房のドアが静かに開く。


「次、どうぞぉー。」


 はいっ?クレアは出てこないのか?


「うしっ。これで俺の貞操は守られた。遼、行け。」


 はいっ?貞操?どーゆー事だし。


「え、行きたくないです。」

「あぁん?そんなの認めねぇから。お前の為に自分を犠牲にする訳ねぇだろ。それに、遼より龍人の方がハマるだろ。大丈夫だから行ってこい。」


 はいっ?俺の方がハマるってなによ?


「う…わかりました。」


 おいおい。遼も簡単に説得されるなし。

 トボトボと隣の部屋に入っていく遼の背中を見送った後、俺はラルフ先生をジト目で睨み付ける。


「…なんだよ?」

「あの部屋で何があるんですか?」

「それは……言えねぇ。」

「どうしてですか?」

「そーゆー契約だからだ。」

「契約?」

「あぁ。アイツは人の本質を見定める。だから、何も言えねぇんだ。理解しろ。」

「本質を…。」

「とにかく、何も聞くな。部屋に入れば分かる。」

「でも…。」

「……。」


 それ以降、ラルフ先生は何を聞いても答えてくれなかった。

 なんつーか、自分自身の保身のために何も言っていない感があるんですけど

!?


「えっ!?やめて!!無理!!!無理だってば!!あぁぁぁああああああああああああ!!!!!?????」


 ドガン!ガタン!ボキッ!!

 そして、沈黙。

 たっぷり5分程経った頃に工房のドアが静かに開いた。普通にホラー映画のワンシーンみたいなんですが!?中に入ったら誰もいなくて背後から襲われる的なね!

 ってゆーか、遼…出てこないんですけど!?


「終わったみたいだな。龍人、行け。」

「げっ。」

「抵抗は無駄だ。」

「はぁ…。分かりましたよ。」


 ここは素直に行くしかないか…。

 腹を決めた俺はゆっくり立ち上がるとドアに近付いていく。開いたドアに軽く3回ノックをして中に入った。


「失礼します。」

「はぁい。どうぞぉ〜。」


 部屋…工房の中に居たのは…綺麗な紫髪の女性だった。

 女性。…女性?いや、確かに見た目は綺麗なんだけど、声も女性なんだけど、どことなく体格的に女性の格好をした男のような。

 いやいや、でも、うなじのエロい感じはフェロモンムンムンの女性っぽいし、耳に輝く金の宝石がついたイヤリングも凄い似合ってるし。素敵な女性…だよね?でも、何故か女性って割り切れないこの複雑な感じは何なんだ!?


「えっと、初めまして、高嶺龍人です。よろしくお願いします。」

「ふふっ。行儀良くて素晴らぁしいわ。ワタシの事はドレッサーさんと呼びなさい。アナタも装備を作って欲しいのよねぇ?」

「はい。そうです。」

「それじゃぁ…答えてもらおうかしら。」


 髪を掻き上げたドレッサーさんは妖艶な目付きを細める。


「アナタは、ワタシの装備を手に入れて何をしたいのかしら?」


 何をしたいのかって…難しい質問だな。

 いや、答えは明確か。けど、それをこの人に話して良いのかどうか。

 俺はどう答えるべきか悩みながらドレッサーさんの視線を受ける。

 …なんだこの目。まるで俺の全てを見透かしているような、見透かそうとしているような…不思議な瞳をしている。この人、ただの装備屋じゃないぞ。何か…特別な力を持っていそうな気がする。

 選択肢は2つ。正直に話すか、嘘をついてはぐらかすか。


「…。」

「…。」


 ドレッサーさんは俺の答えを静かに待つつもりなのか、口を開く事なく俺を見つめてくる。

 …。よし。決めた。


「俺は強い装備を手に入れて、天地って組織を潰すつもりだ。」

「あらぁ。そんな事がアナタみたいなヒヨッコに出来るのかぁしら?」

「違うんだよ。出来るかどうかじゃない。やるかどうかだろ。」


 おいおい。ドレッサーさんって天地の事知ってるのか。


「やるかやらないか。その心意気は素晴らぁしいわねん。でも、天地を相手にするという事は、大切なものを失うわぁよ。」

「俺は…もう沢山失ったんだ。だから、これ以上は失わない。失わせないつもりだ。」

「なめんじゃぁないわよ?」

「…!?」


 えっ!?ドレッサーさんが野太い声を出したんですが。やっぱり男なのですか!?いや、女が野太い声を出せるパターンだってある筈。逆か?男が女みたいな声を出してんのか?

 会話内容よりも男か女か問題でパニックに陥った俺を見て、ドレッサーさんは鼻を鳴らす。

 野太い声が続く。


「ふんっ。何理想を語ってるのかぁしら?天地相手に失わない?そんな夢物語、誰が信じるのぉよ?」

「……。」

「黙っていても何も分からないのよん。理想を言って、自分を格好良く見せてワタシに装備を作って貰おうって魂胆なのはぁ分かってるのよ。だから薄い。言い返せない。芯が無ぁい。ただのホラ吹き。偽る者にはぁ、心が無い。優しさすらないわぁ。そんなチンケな奴にワタシが装備を作ることは一生無いのよ。さっさと消えなさぁい。」


 何なんだこいつ。ちょっとムカついてきたんですけど。確かに夢物語かも知れない。俺の実力じゃ天地には敵わないのは分かってる。

 でも、だから諦めるのか?尻尾を巻いて逃げて、奴らが何かをやっても部屋の隅で丸くなって、嵐が去るのを待つのか?

 ……違う。俺は、そんなの望んじゃいない。

 俺は、戦う。敵わないのなら、敵うように強くなる。その為に利用できるものは何でも利用する。

 武器も、防具も、俺自身の特殊な職業も、スキルも。場合によっては…仲間だって利用するつもりだ。

 こいつは俺のその決心を知らない。まぁ言ってないけど。

 いや、言う必要はないな。こーゆー奴の一方的な誤解を解く為に態々言うとか、癪に障るんだよ。


「さぁて、帰る前に、ワタシのお楽しみ…」

「もうイイです。ドレッサーさん。多分あなたには俺が満足する装備は作れないと思います。」

「……!?言うわねぇ。」

「いやいや。一方的に決めつけてアレコレと言ったのはドレッサーさんですよ?そーゆー偏見の塊みたいな人が、純粋に強さを求める俺に合う装備が作れる訳がない。こっちから願い下げだ。じゃ、そーゆー事で。」


 ドレッサーさんに背を向けた俺は部屋から出るべく歩き出す。


「…!?ふふ。っふふふふふふふふっ!!」


 へっ…?女の声に戻ったぞ。笑い方が気持ち悪いから、男の声でも女の声でも怖い事に変わりは無いけど。

 俺の言葉を聞いたドレッサーさんは身を捩って笑う。そして、一頻り泣いて目に浮かんだ涙をハンカチで拭くと、ニッコリと微笑んだ。


「潔いわね。判断の速度はやや遅い傾向にあるけど、迷いが無かったわぁ。アナタはある程度の修羅場は過ごしてそうね。それに、嘘を付かなかった事も好評価ぁよ。実はワタシ、属性【鑑定】っていう特殊な属性をもっているのぉよね。だから、アナタが真実を話しているか否かはすぐに分かるの。それに、アナタの使う属性…レアね。どういう星の下に生まれたらその属性を授かるのかしら。」


 …なんだこの人。俺とのちょっとしたやり取りでそこまで分析したのか?もしかしたら今言っていた属性【鑑定】ってやつの効果もあるのかも知れないけど、凄い洞察力だ。俺の属性も鑑定したのか知ってるし。ていうか、俺自身が自分の属性を知らないのに。


「えっと、ありがとうございます?」


 やべ。疑問形になっちまった。態度がコロッと変わったから、どう接して良いのか分からないんですが…。


「ふふっ。良いのよ。名前は龍人くぅんよね。アナタの装備を作りましょう。」

「え?だから作らなくて良いですって。」

「何を言ってるのよん!ワタシ以上の装備を作れる人なんて魔法街にはいないわぁよん。」


 ……もしかして、さっきの悪態は俺を試してたのか。

 やや逆ギレ状態だったけど、何とかなったって事か。

 それなら、お願いしても…良いのか?作ってもらって気に入らなかったら使わないって感じでいっか。


「じゃあ…お願いします。」

「勿論よん!先ずは、体の採寸をさせて貰ぁうわ。じゃぁ、両手を上にしてもらぁえるかしら?」


 ドレッサーさんに言われた通りに両手を上に挙げる。

 …異変が起きた。

 ギュッと抱きしめられたのだ。採寸って言ったよね?メジャーで測るもんだよね?なんでハグされてんだ俺?


「はぁん。良い体ねぇん。細身ながら鍛えられた肉体。もう少し筋肉があっても好みだけど、このちょっとだけ頼りなさそうな雰囲気を感じるのもたまらなぁいわ。ふぅん。興奮してきたわぁん。さぁて…どんどんいくわぁよ!!!」

「えっ!?マジか!?うあわぁぁっ!???まって…!!ぐふぅっ…。」


 それから体験した出来事は…壮絶だった。

 なんつーか、18禁の世界。いや、これは21禁だな。

 言えることといったら、数えたくないくらいに沢山のハグとキスをされた。…とだけ言っておこう。これ以上は…言えない。それこそ「龍人は過激な体験をしたが、それは別の話。」ってやつだわな。


 30分後。

 ドレッサーさんから解放された俺は、部屋の隅に気を失って寝かされていたクレア、遼と並んで横たわっていた。

 気は失わなかったけど、動く気力はないのですよ。無理なのですよ。無理無理。足腰がガクガクで動けません。


「うぃ〜っす。終わったか?」


 そう言って部屋に入ってきたのはラルフ先生だった。


「あらぁん。ラルフくぅんもワタシの寵愛を受けたいのかぁしら?」

「慎んで断る。」

「つれないのねぇん。」

「いやいや!俺がどれだけお前に体を弄られたと思ってんだよ!これ以上は触らせないからな!」

「あらぁそぅ?寂しいこと言うのねぇん。」


 妖艶な視線を送るドレッサーさんを見てラルフ先生はため息をつく。


「はぁ。8人中5人が失格で、3人が合格ってゆー良い結果だとしても…動けない3人を連れて帰るの面倒くせぇんだよ。」

「いいじゃぁないの。アナタなら魔法で一発でしょぉ?」

「それはそうなんだがよ…。」

「それにしても…ラルフくぅん。今年の1年生は面白い子が多そうじゃぁないの。」

「やっぱりお前もそう思うか。」

「そうねぇん。珍しく、そして喜ばしいことだぁけど、もしかぁしたら…動くかも知れないわぁん。」

「あぁ。分かってる。だからこそ、このタイミングで連れてきたんだ。」

「…ふふっ。どうせその話も学院生にはぁしてないんでしょぉ?」

「当たり前だろうが。こんな不確定な話をしてられっかよ。無駄に不安にさせるだけだろ。そもそもアイツが………」


 あら…?ヤバイ。なんかすげぇ眠たくなってきた。

 ラルフ先生とドレッサーさんが結構重要な話をしてる気がするんだけど、限界だわ。


 俺は何とか意識を保って2人の話を聞こうとしたけど…無理だった。

 瞼が抗えない重さに引っ張られて閉じていき…俺は気を失った。

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