4-9.装備新調
ギルドクエストをクリアした俺は、遂に普通の生活を手に入れた。
エレメンタルウルフ討伐で2万を手に入れ、その後はお手伝い系クエストも地道達成。
今では貯金が10万円もある!!
Eランククエストの達成数は10個だぜぃ。
因みに、前回の討伐クエスト後に遼を誘ってエレメンタルウルフ討伐クエストをやってみたんだけど、余裕だった。
やっぱりソロだとクエスト難易度上がるな。と痛感させられましたよ。
やっぱり近接戦闘(俺)、遠距離(遼)っていう違う役割がいるだけで戦闘が格段にやりやすいね。
将来的にギルドでパーティを組むなら補助回復役と、中距離役は見つけたいな。ギルドでパーティ組んで活躍するとか、Colony Worldでブレイブインパクトのメンバーとして頑張ってた時が思い出されてちょっとテンション上がるぜ。
とは言っても、今の目的は強くなる事と天地に森林街と同じ事をさせたくないって事だ。
もう少し簡単に言えば、天地の目論見を封じる為に強くなりたいって事だね。これだけはブラさないようにしないとな。特に金の亡者にはならないようにしないとな。金欠って家庭を経ると、金を持ってる事の素晴らしさが身に染みるんだよねぇ。…なんてな。
ともかく、ギルドでのパーティ活動については追々考える事にして、今は……学食で何を食べるか。が重要だ。
今日の500円ランチはラーメン定食、トンカツ定食、レバニラ定食、サバ味噌煮定食の4択だ。地球のランチ王道4パターンなんだよね。どれも美味しそうなんだよ!
「龍人君。展示メニューを見ながら目をキラキラさせるのやめた方が良いわよ。」
「お、火乃花じゃん。」
「火乃花じゃん…じゃないわよ。」
…ん?火乃花が俺の周りに視線を送ったのにつられて周りを見ると、何故か可哀想な視線が…。
もしかして「貧乏人高嶺龍人が展示メニューを眺めながら妄想でご飯食べてるよ」…なんて思われてるのか俺?
「これはアレだ。誤解だ。俺はトンカツ定食を食べる!」
うん。即決力って大事だよね。
「はぁ…。龍人君って変な所で抜けてるわよね。」
「そりゃどうも。」
「褒めてないわよ?」
いや、それくらい分かるし!
「そう言えば…遼君は?最近教室以外だとあまり一緒に居ないわよね。」
「あぁ。遼は空いてる時間は属性魔法の練習してるよ。1年生で1人だけ属性魔法が使えないのを相当気にしてるからな。この前、ギルドの討伐クエストに連れ出すのも結構大変だったんだよなー。」
そうなんだよ。「俺は属性魔法を使えるようになるのが最優先」って言って断られたからな。
でも、「実戦で掴めるものもある」って何とか説得したんだ。結果的には魔獣討伐を通して何かを掴んだらしい。まぁ、まだ属性魔法は使えてないけど。
俺の話を聞いた火乃花が驚いた顔をする。そりゃあそうだよな。遼はそこまで悩んでる雰囲気出してないし。
「え、龍人君ギルドクエストやってるの?」
驚いたのそっちかい!遼の悩みフル無視な件について。
「やってるよ。収入源がそれしか無いしな。」
「…そーゆー事ね。因みに討伐系のクエストでどの辺りの魔獣を倒したのかしら。」
「魔獣?それだとエレメンタルウルフ、ゴブリンあたりかな。実際問題、あんまし討伐クエストやってないんだよね。最初のクエストで危なかったから、安全マージンは確保しようと思ってさ。」
「そうなんだ。私もギルドに登録してるから…今度一緒に行く?」
お?なんだこの展開。さり気なくデートのお誘い的な?魔獣討伐クエストデートとか斬新すぎる。
「いいね。火乃花と一緒なら安心して背中を任せられるよ。」
「ふふっ。私が安心して任せられないと困るけどね?高火力の攻撃方法まだ見つかってないんでしょ?」
「う…それを言われると何も言い返せないんですが。高火力は進展ないねー。それにマルチタスクのキャパオーバーも魔法陣の組み上げ上手くいかないし。」
俺達の会話から分かると思うが、俺は2つの壁にぶつかっている。
魔法陣マルチタスクキャパオーバーと高火力の攻撃方法だ。これが解決していれば、エレメンタルウルフの群れに1人で突っ込んでも大丈夫だったと思うんだけどなぁ。
で、火乃花にはその相談に乗ってもらってる。
火乃花の実家は比較的良い家柄らしく…詳しくは話してくれないんだけど…英才教育のお陰か火乃花の魔法に関する知識が豊富なんだよね。だから、魔法陣全集的な本を借してもらったり、魔力の練り上げ方とかを教えてもらってるんだ。
まぁそれでも中々上手くいかなくて、火乃花からは「龍人君の魔法って特殊ね。私がやってきた特訓方法だとあまり効果ないかも…。」なんて言われる始末だけど。
ただ、その中で分かった事もある。
まず、魔法陣は層で構築されているって事だ。イメージは木の年輪。
中心の魔法陣は属性構成を司り、その周囲に密度、形状、軌道、速度等の条件を付け足して魔法陣は効果を発揮する。
つまり、今まで感覚的に作ってた魔法陣は…実は豊富な知識があって初めて発動が可能だったっていう訳だ。
知識を得て、俺の課題を解決する魔法陣の構成方法が分かれば…きっと俺はもっと強くなれる。
ホント、色々教えてくれる火乃花には感謝だよ。
「ふふっ。まぁ、私も魔法陣はほとんど勉強してないから…あまりアドバイスは出来ないけど、本とかならいつでも貸すから、早く強くなりなさいよ?」
「なんか先生みたいだな。」
「あら。じゃあ火乃花先生って呼んでいいのよ?」
「いやー厳しそうなのでお断りします。」
「そーゆー事言うなら、本は自分で買って…」
「ごめんなさい!!」
俺と火乃花はいつも通りのなんちゃらない会話を繰り広げながら昼食を食べるのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
午後。
実践授業が終わった俺達は教室に集合していた。
いつもなら修練場でそのまま解散なんだけど、ラルフ先生が「確認しなきゃいけない事があんだよ。めんどくせぇ。」って言ってたから、何かの確認をされるんだろうな。
周りの同級生も当たり障りのない会話をしていると、突然教室内から悲鳴が上がる。
「キャァァァアアアア!!」
敵襲!?
…………はぁ。
「おぉいいね。プリップリだな!」
クラス中の白けた視線が向けられる先には、ルーチェの胸を後ろから鷲掴みにするラルフ先生の姿があった。
またセクハラですねー。恒例行事過ぎて反応する気もありませんー。
一頻り揉みしだいたラルフ先生は満足したのか、パッと手を離す。
真っ赤に熱った顔のルーチェはストンと椅子に座り、ラルフ先生を睨み付けるが、効果は無い!!
「うし。態々集まってもらって悪いな。」
胸を揉んだという犯罪行為が無かったかのような飄々とした顔で話し始めるラルフ先生。
…普通に考えたら異常な状況じゃね?
「今日確認したかったのは、装備品についてだ。」
装備品?鎧とか兜とかだよな?
「まー大体の奴が入学前に自分に合った装備品を買ってるはずだから、あんまり意味ねぇんだが、そうじゃない奴もいるからな。………一応言っとくが、自分で揃えても良い。俺が聞くのは、魔法学院の推薦状で…あのドレッサー=アダルツに装備品の依頼をしたい奴がいるか。って事だ。」
ドレッサー=アダルツ?聞いた事ない名前だな。
「マジか。あのドレッサー=アダルツに装備品作ってもらえるのか。」
「いやいや。俺は頼まないぞ。」
「そうね…私も失いたくないものが多いし…。」
「でも、リスクの先に最高の装備品がよ…。」
「うわぁ無理無理。失って何も手に入らないこともあるのよ?」
…なんだこの反応。何があんだよドレッサー=アダルツって奴に。
「おーら静かにしろ。反応的には知ってる奴が多そうだけど、一応条件を伝えるぞ。」
ラルフ先生が面倒くさそうに黒板に殴り書いていく。字下手くそだな!?
書かれた内容は以下の通りだ。
1-装備品の作成可否はドレッサー次第
2-料金は魔法学院経由の場合無料(通常100万円〜)
3-装備作成の際に起きる全ての事象を受け入れる。訴訟不可
4-装備メンテナンスは有料
「こんな感じだな。この条件を受け入れられる奴は土曜日の明日に、俺と行くぞ。はぁ。」
何故か本当に嫌そうなラルフ先生である。
周りを見ると、殆どの奴が嫌そうな顔をしていた。なんでだ?普通に考えて立候補するだろ。
「はい!俺、お願いします!」
「…龍人か。まぁそうだよな。流石に麻服のままは無いもんな。はぁ…立候補者ゼロが俺的には理想だったんだが。」
俺の立候補を皮切りに何人かが続けて立候補し、最後には遼も立候補していた。
麻の服兄弟…このチャンスを使って卒業しますよ!なーんてな。
火乃花、バルク、ルーチェ辺りは興味なさそうな顔してた。きっと自分に合った装備を整えてるって事なんだろうな。そう考えると…入学時点でのスタートラインが俺と遼って結構低かったんだな。なんたって麻の服だし。
良い装備品を作って貰えますように!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そして土曜日。
俺と遼、その他6人の合計8人は南区通行所の前に集合した後に、ラルフ先生先導のもと中央区を進んでいた。
他の6人は、あんま話した事が無い人ばっかなんだよねー。そう言うわけで、俺は遼と真面目トークを繰り広げていた。
「で、どうなんだ?属性魔法は。」
「んー…使える属性の目星が中々つかないんだよね。基本的な属性の魔具は学院から借りて試したんだけど…。もしかしたら特殊な属性かも。」
「特殊ねぇ。そうなると自分の魔力を媒体化…だっけ?をして発動できる属性を探さなきゃいけないんだろ?」
「うん。そうなんだよね…。各属性の特徴と発動原理を理解して媒体化しないと発動出来ないから…難航だよ。」
「あれ?でもさ、1人が使える属性魔法って3種類だろ?遼が使える属性全てが特殊な属性ってのは…流石に無いんじゃない?」
と言うか、全部特殊とか強すぎんだろ!それは勘弁してくれ。
「あ、確かに……そうだね。でも、先生にも基本属性は一旦忘れて、レアな属性を試そう。って言われたんだよね。」
ん?どうして「一旦」なんだ?
使えないんだから一旦も何も無いと思うんだけど…。
「あの…ちょっと良いかな?」
俺と遼が首を捻っていると、一緒にドレッサー=アダルツの下へ向かう同級生の1人が声を掛けてきた。
彼女は…名前何だっけね?覚えてないなんて言えないぞ…!?
「あ、クレア。どうしたの?」
そうか。クレアって言うのか。ナイスだ遼!!
俺は…覚えてたフリをしよう。
「えっと…属性の話なんだけど、多分遼君は主属性の覚醒が出来てないから基本的な属性を置いておこうって話だと思うよ?」
え、なにそれ。主属性?副属性?新ワードきました!
つーか、クレアって…正面から見るとかなり可愛いんですけど。童顔巨乳で背は小さいし。背中に届く長さの金髪もゆらゆら揺れててそそるし、服装も白ブラウスと黒スカートの上にベージュコートを羽織る落ち着いたコーディネートだ。
こんな可愛い子が同じクラスにいたのにノーマークだったなんて…俺、周りを見なさすぎだな。
反省。
「主属性と副属性って……何?」
お、遼が俺の代わりに会話を進めてくれる。
クレアは人差し指を顎に当てる。何それ可愛い。
「1人が使える属性魔法って3つまででしょ?1つが主属性、2つが副属性になるんだよ。基本的に…主属性が覚醒しないと副属性の覚醒は出来ないんだって。だから、主属性を覚醒させた後に…もう1度基本属性を中心に副属性を探すのが良いんじゃ無いかな?」
「そうなんだ…龍人知ってた?」
…俺に話振るなし!
ここは知ったかぶりをして………というのはやめておこう。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥ってね。
「いや、知らなかった。森林街だと魔法使える人そんなに多くなかったしな。魔法街は魔法が使えるのが当たり前みたいな雰囲気があるから、その辺りの超基本的な話は知ってて当然で省かれてたんじゃない?」
「だよねぇ…。そうなると、やっぱり俺の属性は……いや、それなら攻めるべき属性は………。」
あ、遼が考察モード入ったよ。
こりゃあ暫く話しかけても返事ないだろうな。
「クレア、ありがとな。基本的な事知らなくて恥ずかしいよ。」
「ううん。いいの。私も知らないこと一杯だし。」
…なんていい子なんだ!
ちょっと話して…みようかな?
「あ、龍人君って主属性はどれになるの?沢山の属性を使えるみたいだけど。」
「…どれになるんだろ?考えた事無かったな。」
「普通は主属性が1番使いやすいって皆言うよ?」
「……いや、どれが1番とか…ないかも。何なんだろうな、俺の属性って。」
「……なんか、ごめんね。」
「いいって!こっちこそ変な気を遣わせちゃってごめん!」
シュンとした表情のクレアも可愛いな。話題変えた方が良さそうだなコレ。
「クレアは今回なんの装備を頼むつもりなんだ?」
「あ…えっとね、私は治癒系の魔法を使うんだけど、今使ってる魔具…この指輪なんだけどね、がイマイチ馴染まないんだ。色々な魔具を試したんだけどダメだったから、有名なドレッサーさんにお願い出来ないかなって。」
「 なるほどね。魔具って基本的に自分の属性と同じ属性の物を選ぶんだよな?」
「うん。そうだよ。」
「それで使い勝手が良くないって不思議だな…。魔具の形状が合わないとかじゃなくて?」
「ううん。指輪型の魔具でも同じだから違うと思うんだ。なんて言うか…魔力がスムーズに属性魔法へ変換されないんだ。」
「そっか…。俺の知識じゃサッパリ分からないけど…何か相性みたいなのがあるのかもな。ドレッサーさんに良い魔具を作ってもらえると良いな。」
「うん!ありがと!」
そう言ってニッコリ微笑むクレアは、可憐で…。
「よし。着いたぞ。」
1つの建物の前で足を止めたラルフ先生は、いつになく真剣な表情で俺達へ振り向いた。
「いいか。ここから先はある意味で治外法権だ。この店の中で起きる全てのことは、犯罪行為以外は見逃される…というか黙認されている。というか、突き詰めれば一部の犯罪行為すら許される。」
おいおい…。なんか物騒な話だな。
「お前らに求めるのは、ドレッサーの機嫌を損ねない事。ドレッサーに無闇矢鱈に反抗しない事。これから訪れる悲劇に対して訴えるとか無駄な行為をしない事。訴えても棄却されるだけだ。分かったか?」
なんつー無茶苦茶な要求。なんなんだドレッサーさんって人物は。
「分かったか?」
俺達がラルフ先生の言葉の真意を読み取れずに戸惑っていると、念押しの確認がきた。こりゃあ承諾した人しかドレッサーさんに会わせないつもりだな。
「…分かりました。」
…最初に承諾の意を示したのはクレアだった。
のほほん系可愛い女子かと思ったけど、結構芯が強い子なのかも。
女の子が決心したのに、男の俺が尻込みしてるわけには…いかないよな。
軽く手を挙げて俺は「当たり前」風を装って口を開いた。…ちょっと格好付けただけだからな!
「俺もオッケーだ。」
「うん。俺も大丈夫。」
遼も一緒に賛同する。いつの間に考察モード終わったんだし。
3人が同意した事で他の皆も踏ん切りがついたのか、全員が首肯した。
「…ちっ。しゃーねー。行くか。」
おい!今舌打ちしたよな!?
ホント先生としてどうなのかね。って毎回疑問に思うわ。…けど、実力はあるからなぁ。弱っちくて超道徳的な人が先生なのとどっちが良いかって聞かれたら……悩むな。
……ともかく、俺たちはドレッサー=アダルツという人物がいるらしい建物の中に入って行ったのだった。
因みに店の名前は『アナタの心にピットイン』と看板に書かれていた。
嫌な予感しかしない。




