4-3.魔法学その2
俺が魔具を持ってなくて、しかも色々な属性を使えるといくカミングアウトをしたせいで混乱に陥った教室内は10分程度で落ち着きを取り戻していた。
俺の体感時間では1時間くらいだったけどな。
皆を落ち着かせながら自分も落ち着かせたキャサリン先生は、まだ動揺が抜けきらないのか…やや落ち着かない様子で授業を再開する。
「えっと……そうね。龍人君の魔法については、後々検証していきましょう。先に職業とスキルについて説明しちゃうわね。」
お?動揺してるからか、エロい雰囲気が全然無いな。
元々美人だし、エロっぽく無い方がモテるんじゃないか?
「スキルは修練を積む事で習得出来るものよ。効果は消費魔力の省力化、発動時間の短縮ね。習得に関しては、突然頭にスキル名が天啓のように閃くのよ。スキル習得の条件は基本的に不明ね。スキルは基本的に固有技という括りになるから、基本的には同じ名前のスキルを習得する事は無いわ。基本スキル…に関しては稀に重複する事もあるらしいけれど。」
あー、これはColony Worldとほぼ一緒だな。Colony Worldだと、どうすればスキルの習得がしやすいかって情報はあったけど、この世界だとそーゆーのは無さそうだな。
「質問は後回しにするわ。次は職業についてよ。これは簡単ね。個々人がどんな戦い方に向いているのかを示すものよ。これは絶対では無くて、中には職業の特性と削ぐわない戦い方を貫く人もいるわ。後は…職業は上級職にランクアップする事もあるわね。剣士が魔法剣士にランクアップ。みたいな感じよ。特級職もあるけど、これは本当にレアケースだから気にしなくても良いと思うわ。」
お、ここは結構違うな。Colony Worldだとゲーム開始時に職業を決めて、あとはその職業を深掘りしてくるスタイルだったもんな。
一応職業変更クエストとかあったけど、上位職業が絶対に強い訳でもなかったし。
でも、そうなると…今の職業が全然違う戦闘スタイルのものだった場合は、基本的にそれと一生付き合ってく事になるのか。
ランクアップって表現をしたって事は、基本的に今の職業と違う種類の職業にはなれないって事だろうし。
「良く聞かれる質問の答えを先に言うわね。ランクアップではなく違う種類の職業になれないのか。…という点に関しては、不可能ではない。とだけ言っておくわ。」
一応可能なのか。でも…表現が微妙だな。
「過去にそういう例があったのは事実よ。但し…記録に残っているのは1人のみね。公式記録に残っているのは、名前がシンジって事だけ。そして、現在は行方不明。どんな職業からどんな職業になったのかも不明よ。」
シンジ…ねぇ。昔人気だったSF系ロボアニメの主人公と同じ名前だな。
てゆーか、過去に1人のみとか…ほぼ奇跡じゃんか。
いや、でも隠匿されていて…的パターンもあるかもしれない。無いと断定するよりも、あるかもしれないと思っていた方が可能性が広がりそうかな。
「つまり、そう言う事。違う種類の職業を望む事はオススメしないわ。それに、ほとんどの人が直感で自分の職業に準ずる武器だったり戦い方を選んでるから、職業と戦い方のズレは気にしなくて良いと思うわ。」
キャサリン先生は俺達の顔を見てニコっと笑う。
「後日、職業の鑑定も行う予定だから、楽しみにしててね。」
おー流石は魔法学院だ。ま、自分の職業を把握して研鑽を積んだ方が成長は早そうだもんな。
にしても、俺の職業は何になってるんだか。…まさかColony Worldと同じなんて事は無いよな?
聖龍との戦いで暴露した時、マジで恥ずかしかったんだから。
「と言うわけで、魔法学の授業は終わりよ。午後からは魔法の基礎力について実技を行うわ。各自時間を守って修練場に集合してね。」
色っぽく微笑んだキャサリン先生は、手をひらひらと振って教室から出て行った。
さり気なく質問タイムを取ってくれなかったし。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
午後。
修練場に集まった俺たちは…必死の形相で逃げ惑っていた。
「はいっ!頑張って!無詠唱魔法と結界魔法の探知を使って攻撃を感知して避けるのよー。」
それは分かるんだけど…感知できても反応出来るとは限らないんですがっ…!
「実技は実戦の中で習得するのが1番の近道よ。感電したくなければ、必死に頑張ってね。」
「ぷぎゃぎゃぎゃっ!?」
キャサリン先生が言う側から…修練場を無作為に飛び回る雷球に触れた生徒の1人が感電して崩れ落ちた。
鬼だ。「100個の雷球」を操りながら、余裕の表情だし、感電しても知らんぷりだし、寧ろ楽しんでる風ですけど!?
「龍人っ。苦戦してるね。」
背後から迫った雷球をギリギリで避けた俺の近くに遼が寄ってくる。…何故だ。とーっても余裕そうなんですが!?
「何でそんな簡単に避けてるんだよっ!?」
「何でって言われても…元々そういう戦い方だったからかな?」
「マジで?ただ銃を撃ってるだけじゃなかったのか。」
「そりゃ当たり前だよ。遠距離から中距離で戦う場合は相手との位置取りが重要だからね。無詠唱魔法での探知は前からやってたし、相手の動きを予測しての立ち回りもやってたから。」
「マジかよ。探知を常時行いながらの回避行動とか…俺、結構厳しいんだけど。」
「慣れだよ!龍人ならすぐできると思うけどな。」
「慣れねぇ…。」
「そうそう。……って雷球が集まってきた!一緒にいると危ないね。また後で!」
「お、おう!」
遼は軽快なステップで雷球を躱しながら去っていった。「ほっ!よっ!」なんて声を出しながら。…猿か!
つーか、ホントにコレ…大丈夫なのか俺?
「あ。」
前方から飛んできた2つの雷球を避けようと左にステップを踏んだ俺は…バルクと激突する。
そして…。
「ぷぎゃぎゃぎゃぎゃ!?」
見事に感電して撃沈したのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
初日全ての授業を終えた俺は、修練場に座っていた。
キャサリン先生は結局、俺の魔法についての話…検証?はしてくれなかった。まぁカリキュラムも詰まってるだろうし、初日から個人に時間は避けないよな。
それにしても……実技の授業後にクラスメイトが詰め寄ってきてからの質問攻めはマジで凄かった。「何で魔具無しで、しかも普通の人より多い属性が使えるの?」って聞かれても、どこまで答えて良いのか分からなかったから、納得させるのに苦労したよ…。
結局「生まれつき」ってゆー無難な説明と、皆の前で魔法陣展開魔法を見せる事で落ち着いたけど…これからは慎重に自分の事は話した方が良いのかな…。
その内、職業鑑定もあるみたいだし。そこで職業『龍人』って出た時に、そのまま言ったらまた騒がれそうだよね。…いや、まだ職業『龍人』って決まった訳じゃないんだけど。もしかしたら職業『魔法陣師』って出るかも知れないし。そんな職業があるのか知らないけどね…!
にしても、自分の普通じゃないポイントで…ここまで苦労するとは。魔法学院生活はまた始まったばかりだってのに。地味に先が思いやられるな。
にしても、さっきから色々と試してはいるんだけど…。
「……やっぱり普通と少し違うな。」
今やってるのは、魔法陣展開魔法を展開して発動して…の繰り返し。
今日の雷球を避ける授業では明らかに俺だけが苦戦してたんだよね。
で、気になったのが…今日の授業で習った属性魔法と媒体の話なんだ。
属性魔法は媒体が必要で、無詠唱魔法は媒体無しでの発動が可能って話だった。無詠唱魔法には身体能力強化、結界魔法、探知魔法がある。
これを前提とすると、俺の魔法陣展開魔法の魔法陣を媒体って考えるのが普通だよな?つまり、無詠唱魔法は魔法陣の展開をしなくても使えるはず。…なんだよねぇ。理屈的には。
けど…。
「……出来ない。」
そう。発動出来ないんだよ。結界魔法も探知魔法も魔法陣を介さないと発動が出来ない。
これはColony Worldで遊んでた時と同じなんだよな。
そもそもColony Worldでは媒体なんて概念は無かった。普通に魔力を属性魔法として発動出来たんだよね。
で、俺は魔法陣を介さないと属性魔法を使えなくて…結界魔法も探知魔法も同様だった。魔法陣が必要なかったのは身体能力強化位かね。
つまり…俺の使う魔法はこの世界の魔法原理?みたいなのから外れてるっぽいよね。
この仮定が当たってるとすると、俺はどうしたら良い?一般的な魔法習得手法では周りと同じように成長出来ないって事になる。
俺だけの、やり方を見つけないと。…だな。
先ずは探知魔法と身体能力強化の併用を当たり前のように出来るようにならないと。
「もう一回やってみるか。」
先ずは探知魔法の魔法陣を展開して発動。…うん。周囲の状況がこれで把握出来る。
ここで無詠唱魔法の身体能力強化を施して…動く!
前に飛び、後ろに飛び、ステップで左右の動きを取り入れながら魔法陣を展開して探知魔法の更新。
「んー…。」
駄目だ。これまでなら普通に出来るけど…これ以上増えると俺のマルチタスクキャパを超えそう。今は「相手」になる存在がいないから良いけど、ここで相手の動きを把握して、移動に物理攻撃やら攻撃魔法の発動を織り交ぜたら…厳しい。
「魔法陣の展開が必要だから、他の人より思考を必要とする工程が1つ多いのか。探知魔法も本来なら魔力をそのまま探知魔法として発動出来るのに、俺は魔法陣を展開してから探知しなきゃいけない…。明確な課題だな。」
とは言え、課題を解決する為の具体的手法を考えない限り、俺の成長は無い気がする。
「こんな基礎の所で躓くとはなぁ。」
正直、自分の魔法が特別な事は分かっていたから、魔法学院に入ったら「俺ツエー」展開が待ってるもんだと思ってた。
現実は甘くないもんだよ。
「基礎だからこそ良いんじゃねぇか。何となく基礎が出来てるって思い込むと応用で躓くからな。そーゆー奴らよりは遠回りじゃねぇよ。」
…この声は。
「よっ!」
振り向くと、そこに立っていたのはラルフ先生だった。
ヤンキーっぽい雰囲気は変わらないけど、どこか柔らかい雰囲気もあるような…。なんつーか、雰囲気がコロコロ変わる人だな。
ラルフ先生はニヤッと笑うと親指で自分の後方を指さす。
「ちょいと付き合えや。」
おっと。学園物で定番の呼び出しきたね。
きっと校舎裏に連れて行かれて、有りもしない因縁をつけられて、ボコられて、埋められるんだ俺。
ヘルプミー!!




