4-1.街立魔法学院入学式
魔法学院生活が始まります!
パンパカパーン!パンパカパッパッパーン!!
管楽器の壮大なファンファーレが鳴り響く。
時は4月1日。場所は街立魔法学院修練場。
俺達新入生は乱れなく整列し、その向かいにはヘヴィーグラム学院長がホクホクとした微笑みで立っている。
ファンファーレを演奏するのは管楽器集団だ。地球とちょっと違うのは、楽器が全て綺麗に宙に浮いて音を奏でているって事かな。奏者も居ないし。
あれも魔法なんだろうけど、どうやるのかさっぱり想像も付かない。
因みに俺を含む新入生は綺麗に整列しているけど、全員が私服なので一体感は全然無い。
そして、1分程度に渡る音楽隊の演奏が終わると、ヘヴィー学院長がゆったりと話し始めた。
「皆の者、先ずは入学おめでとうなのである。儂は学院長のヘヴィー=グラムなのである。ほとんどの者が知っているとは思うが、儂は魔法街に於ける魔聖という役を担っておる。その魔聖の責務として、魔法学院の学院長を務める事が定められているのじゃ。それは何故か…分かる者はおるかの?差しはせぬ。手を挙げて欲しいのである。」
パラパラと手が上がる。
マジか。この星では常識…なのかな?まぁ魔聖とか強そうな称号だし。
ヘヴィー学院長は俺達新入生が手を上げる様子を確認すると頷いた。
「うむ。知らぬ者もいるようじゃから、簡単に説明するのである。」
あっ。今俺の事チラッと見ただろ!?
「魔法街は魔法を操る者が集まる星じゃ。それは、強き力を持つ者が集まるという事に他ならぬ。つまりじゃ、その力が誤って悪き力として振るわれれば…悲劇が生み出されるのである。それを防ぐ為…魔法使いとしての在り方を教える責務が儂にはあるのじゃ。」
ごもっともだな。
「そして、皆の想像通り…悪き力として振るわれる事は往々にして有り得るのである。その時、お主らが、その場面に直面した時、抗える力を身に付ける。それは結果として魔法街の治安を保つ事にも繋がるんじゃの。」
うんうん。そりゃそうだ。
「これまでなら、それだけじゃった。」
…お?周りの学院生も一瞬騒つく。
「今この星は…世界は、詳しくは言えぬのじゃが……ある意思によって変革を迎えつつあるのである。それはまだ地の底で蠢く程度に過ぎぬ。しかし、いつかそれは成長し、地を食い破って姿を現すじゃろう。その時に魔法学院の学院生達が正しき心を持って対峙できる事。それが最重要課題だと認識しているのである。まだ難しいじゃろう。分からないじゃろう。だからこそ、街立魔法学院での学びに真摯に向き合い、仲間との時間を大切に過ごして欲しいのである。絶望を乗り越えるのは1人では出来ぬ。暗闇の中で前に進む光は、共に歩む者が隣に居る時、幾万の可能性の中から拾い出すのである。新入生達よ、強くなるのじゃ。儂は、魔聖という高みでお主らが辿り着くのを待とう。…これが儂がお主らに送る入学祝いの言葉じゃ。」
静寂だった。ヘヴィー学院長の言葉は入学に浮かれる俺達の心を強かに打った。
ただ魔法を学ぶだけでは無い。
学ぶ先に見据えるものが大切って事を伝えたいんだと思う。
話の中に幾つもヒントはあったな…。
じゃあ、俺が街立魔法学院で学ぶ先に見据えるものは。
…分からない。
俺は何をしたい…いや、すべきなのか。
ただ、漠然と分かるのは、俺にしか出来ない事をすべきなんじゃないかって思うって事。
地球の記憶、変遷、異世界転生。
これらは…きっと俺しか知らない事実。もし、この異世界転生に何かしらの思惑が入り混じってたとするなら、平和なまま終わる筈が無い…と思う。
だとしたら、俺がすべき事は……いやぁ、漠然としてて明確にコレってのは無いな。
まぁ…いっか。深く考え過ぎてもしゃーないし。
あ、ヘヴィー学院長が後ろに下がった。なんか…良い事言ったぜ的なドヤ顔してるように見えるのは気のせいか?
「ふふっ。じゃあ新入生の皆さんはぁ…教室に行きましょう。はぁい、ついて来てね?」
うぉっ!?一歩前に出て案内を始めたのは金髪美女だ。気が強そうだけど…なんつーか全身からエロエロオーラ半端ないそ。
紺色の制服のスカートから伸びるタイツを履いた足が…やべぇ。ムチムチっとしてて、でも鍛えられてて引き締まってる。あの足で挟まれたら……。
……って違う違う!俺は何を想像してんだ。
「あらぁ?私のオシリばっか見てる男の子が多いわね?ふふっ。そんなに見つめてると…オッキしちゃうぞ?」
……何人かの男がクラッとしたぞ。こりゃあ落ちたな。
つーか、すげー教師もいるもんだな。逆セクハラで訴えられたら1発終了だろ。
変に絡まれて過ちを犯さないように気を付けないと。
あんなんに迫られたら…断れないって。
「はーい。ついて来てねぇー。」
新入生達はエロ教師の後について移動を開始したのだった。何人かチミっと前屈みになってたのは…誰も突っ込まないでやってくれ!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
エロ教師に連れて来られたのはラブホ…ではなく教室だ。
其々に割り当てられた席に座って待っていると、エロ教師が再び教室に入ってきた。
「待たせたわね。じゃぁ…これから1年生のカリキュラムについて話すわねぇ。」
エロ教師は妖艶な笑みを見せながら教卓に立つ。
「まず、自己紹介をさせてもらうわ。私はキャサリン=シュヴァルツァーよ。1年生の副担任を務めさせてもらうわ。困った事があったら…いつでも待ってるわよ?魔法の事、プライベートな事、夜の相手…気兼ねなく言って欲しいわぁ。」
キャサリン先生…うん。エロいな。今の自己紹介を聞いただけで、これまで何人の男子学院生が食べられちゃったのか気になっちゃうもんね。
「さぁて、話すわよ?街立魔法学院は4年制よ。そして、各学年で習得する大きなテーマが決まってるの。1年生は基礎の習得、2年生は応用の習得、3年生は高等技術の習得、4年生が概念変化ね。あくまでもテーマだから、既に習得している人も稀にいるのは心得ておきなさいね。体の相性を調べる魔法を知りたい人は…個人的に教えてあげるわ。ふふっ。」
…もう俺は突っ込まないぞ。
キャサリン先生は金髪の横髪をかき上げながら耳に掛ける。いちいち指先で髪をクルクルするのとか、中々のさり気なさテクニシャンだな。あの指でサワサワされたら耐えられなさそうだわ。
「という訳だから、今日からさっそく基礎の習得状況確認と、強化に取り組んでいくわね。その前に…先ずは魔法についての基礎知識を学んでもらうわ。講義をするのは…主担任のラルフよ。」
げっ。マジか。あの金髪プロレスラーが担任とか…色々な意味で嫌な予感しかしないんだが。
同じ事を考えた人が多いのか、他のクラスメイト達も似たような反応をしていた。
「おいおい。俺が主担任ってのは世間一般的な認識では恵まれてんだぞ?喜べし。」
…へっ?
声が聞こえた後ろを見ると、頭の後ろで手を組みながら壁に寄り掛かったラルフがニヤニヤと笑っていた。
おいおい。いつ教室に入ってきたんだよ。ドアが開く音も、軽く音も聞こえなかったぞ。
「お前達、俺の強さが分かってないだろ?うしっ。舐められたままじゃあ…今後の受講態度に関わるからな。先ずは俺の力を見せてやるよ。」
「ラルフ…それはやめた方が…」
キャサリン先生がラルフを止めようとするが、次の瞬間にはラルフの姿がかき消え…女性陣の悲鳴が教室内を埋め尽くす。
「きゃぁっ!?」
「いやぁぁぁっ……!」
「はぁんっ……!」
「へ、変態!!」
「はふっ……。」
そして、キャサリン先生の横に現れるラルフの手には…色取り取りの下着がぶら下げられていた。
……もしかして。
「どうよ?俺の動き見えた奴いるか?いやぁ良い体してる学院生が今年は多いな。触り甲斐があって良かったぞ。」
見れば女性陣が胸元を押さえながら涙目でラルフを睨み付けていた。
おぉ。これは見事なセクハラ。
そして、同時に実力の差を見せつけられた。素直に称賛出来ないあたりが…なんとも言えないけど。
「お前達の下着を取るっていう無駄に面倒な作業。これを…首を掻っ切るってゆー単純作業だったとしたら、この場で生きてる奴はいるか。って話だ。」
ニヤリと笑うラルフ先生は、言っている内容はご最も。でも…下着を幾つもぶら下げながら言ってると、ただの変態だけどな。
「はぁ…。無駄にセクハラを行わなければ皆も話を受け入れると思うんだけどね。ラルフ、少しは自重しなさい。」
おぉ。エロ教師のキャサリン先生が真面目コメントしてる。
けど、ラルフ先生には反省した様子は全く見えず…。
「はっはっ…!これ位の遊び心かないと、学院生活が堅苦しくなっちまうだろ?セクハラされたくなきゃ、強くなれってんだ。あと、俺は今日は授業しねぇぞ。魔法基礎の準備があるからな。」
「貴方のセクハラでどれだけの女性が……いえ、この話はイイわ。てゆーか、授業しないとか聞いてないわよ?誰が授業するのよ。…私に放り投げるつもりね。後で後悔させてやるわ…。」
おぉう!?キャサリン先生の目付き…めっちゃ怖いんですけど!?
「はぁ…全く…。取り敢えず、これから魔法学の授業を始めます。ラルフが授業やる気無いみたいだから、今日の授業は私が担当するわね。ふふっ。覚えやすいように噛み砕いて話してくから…教科書を出して準備して頂戴。」
…こうして、俺の魔法学院生活が始まった。
てかよ、教師陣…癖ありすぎじゃね?
次回は授業編です。




