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3-9.街立魔法学院入学試験 テロ防止作戦4

 爆弾による破壊が続く都市を足早に東へ進みながら、俺は遼とバルクに説明をしていく。


「いいか。今回のテロ試験に於けるテロ目標は多分…俺達受験生だ。」

「えっ。そんな事ってある?」

「無いと思いたいけど、そう考えんのが1番しっくり来るんだよ。」


 驚く遼とバルク。

 俺の隣を歩く火乃花が説明を続けた。


「学院長が言った言葉…全員テロに消されぬよう…っていうのが、そのままテロの目的だった訳ね。」

「でも、だったらどうして爆弾なんかを……。あ。」

「気付いたみたいね。受験生が狙いだから、爆発させるのよ。近づいた傍からね。そうする事で、本来の目的に対するミスリードを仕掛けたんだと思うわ。」

「鬼畜…。」


 げんなり気味の遼だが、火乃花は肩を竦める程度だった。


「悪い事ばかりでも無いと思うわ。私達が居たあの高層ビル…本当だったらもっと沢山の受験生を巻き込むつもりだったんだと思うわ。私がビルを登ってる時に、ビルへ向かう集団を結構見たもの。」

「なるほどね。案外早く看破されたから、予定より早く爆破せざるを得なかったと。」

「だと思うわ。…私達も良く無事だったわよね。」


 激しく同感。


「でも、これらから予測出来る事もあるわ。爆弾の設置が私達を狙ったものである以上…爆破漏らしの策があるはずなのよ。」

「それってよ、爆破で倒せなかった俺達受験生を一網打尽にする策って事かよ?」


 お、バルク冴えてんな。もっとお馬鹿なのかと思ってたよ。…おっと失言。てか、俺の説明する出番無くね?

 火乃花は頷く。


「えぇ。多分だけど、ここから先は爆弾に狙われた人の心理を逆手に取った手法だと思うわ。1つは安全地帯に逃げ込みたいっていう心理。もう1つはテロ主犯を倒したいという心理ね。」

「そっか…。爆弾が設置されていない場所の情報、そしてそこにテロ主犯がいる可能性が高いという情報…この2つを流せば、自然と人の流れが1カ所に集中するかも。」


 よし。ここからは俺の説明…


「なるほど!で、俺達もそこに向かってんのか!」


 俺の…


「そうよ。私達が狙うのは、テロ主犯の…あの金髪少年が集めた私達を一網打尽にする手段を使う瞬間ね。恐らくは範囲内に向けた高威力魔法の行使をしてくると思う。コレを防いで反撃するのよ。」


 ちょっと…


「だとすると、その魔法を防ぐ策が必要になるよね。」

「それは私がやるわ。」


 え?俺がやるつもりだったんですが…。


「ちょっと燃費は悪いけど、魔法障壁を可能な限り全力展開するわ。後は3人に任せる事になると思うけど…。」

「魔法障壁って魔法壁の上位版だろ!?すげぇな火乃花!」


 バルクが目を見開いて絶賛する。


「大した事無いわ。貴方達だって練習すればすぐに使えるようになるわ。…それよりも、相手の攻撃を防いだ後の一点突破、失敗しないでよね。」

「おう。任せとけ!俺の必殺技でガツンとやってやんよ!」


 腕をまくって力瘤を見せ付けるバルク。

 ここで筋肉関係あるのか?いや、無いよりはあった方が良いのか。

 てか、練習すれば…のくだりで火乃花が少し悲しそうな目をした気がするんだけど気のせいか?


「龍人君…さっきから話してないけど、大丈夫?」

「あ、あぁ大丈夫だよ。頭ん中でシミュレートしてただけだ。今回は気を抜けないからな。」

「そういう事。頼りにしてるわよ。」

「任せとけっ。」


 …話す出番を尽く奪われて悲しかったなんて言えるか!!


 それから移動する事20分。

 俺達は都市の東側へ到着する。


「この辺りは爆弾の被害が少ないみたいね。」

「あぁ。上空から見た限り、北側、南側、西側は爆発が散発的に起きてたけどな。」

「だとすると…ここがテロ主犯者が狙う受験生の誘導場所…?」


 俺たちが見る先には、高層ビル群に囲まれた広場があった。かなり広く、これなら死角からの襲撃も無さそう…ではある。

 問題があるとしたら…。


「分かりやすく受験生が集まってきてるね。」


 遼の言う通り。パッと見で70名以上の受験生が広場に集まっていた。周囲を警戒しつつ情報交換…そんな雰囲気だな。

 けど、これだけ集まってたら…狙い撃ちにされたらひとたまりもないぞ。広範囲殲滅魔法…なんてのがあるか知らないけど、そういう類の魔法を使われたらかなりやばいだろ。


「じゃあ手筈通りにいきましょう。」


 想定より悪い状況だけど、火乃花は変わらない。流石ですよ。その大胆さ?は見習わないとな。


「よし。気を抜くなよ皆。」

「うん。龍人もね。」

「俺の一点突破、楽しみにしてろよ?」


 いや、バルクの一点突破が1番心配なんだが…。

 まぁ、ここまできたら信じるしか無いか。


「後は、私達と同じ考えの受験生がどれだけいるか。ね。まぁ、居なくても成功させるけど。」


 こりゃぁ、頼もしい限りで。


 こうして俺達は行動を開始した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 3つ目の入学試験用に用意された近未来都市。

 その都市に建ち並ぶビル群。実はその全てに爆弾が設置されていた。

 これらは全て…金髪少年の手によるものだ。

 今回彼が与えられた任務は「受験生の殲滅」というもの。条件は「テロっぽく」。

 やや難しい条件だが、テロと言えば爆弾。そんな短絡的な思考から今回のテロ作戦は構築されていた。

 爆弾テロと見せかけて、広範囲を狙った高威力魔法による受験生の殲滅。…を装った爆弾テロ。からの…。という数段構えの畳み掛けが今回のテーマである。

 入学試験内容としてはかなり過激な内容だが、この試験が行われる空間では、一定以上のダメージを負った受験生は自動的に保健室に転送される事になっている。

 万が一にも死なない様に爆弾の威力も軽減してあるため、金髪少年は躊躇う事なく爆弾を爆発させる事が出来るのだった。


「さーて、良い感じに集まってるね。」


 都市の東側に設置された広場に居る「金髪青年」は誰に言うでもなく呟く。

 少年の姿は既にテロ主犯だとバレてしまっている。いや、正確には楽しくなってバラしてしまったのだが。

 つまり、本当に鋭い洞察力を持った者がいるのなら、金髪青年と金髪少年を同一視する者もいるかも知れない。いまこの場に金髪青年の姿でいるのは、ある意味で彼にとっても賭けではあるのだ。

 なんと言っても、彼自身が金髪少年の姿で各受験生達を爆弾のあるビルへ誘導し、爆発に巻き込ませたのだから。


(けど、今ここにいる奴らは比較的近距離での爆発を凌いだ奴らって事になる。想定以上に残ったな。)


 元々の予定ではこの段階で50名程度まで絞り込むつもりだったのだ。

 言ってしまえば、街立魔法学院1年生の定員である40名に絞り込むにはこの段階でその程度の人数になっていなければならないのである。


(騙された状況からの脱出。都市の状況から最終決戦になる場所の割り出し。これらの力を観る予定だったけど、少し甘過ぎたか?)


 見た感じでは「安全地帯」というワードに引かれて集まった者も一定数いるようで、目論見通りの優秀な受験生だけが集まったとは言い難い。

 そもそも、爆弾でのリタイアが想定以上に少なく、止むを得ず「安全地帯」ワードでの集客力(客では無いが)強化を狙った側面もあるのだから仕方がない。

 想定外が続く試験だが、金髪青年は「そうだからこそ良い」と考える。

 想定通りの試験など、受験生の実力が想定内に収まっていると言う事であり、期待出来る者が居ないという事なのだから。


「さて、そろそろか。」


 金髪青年は立ち上がるとニヤリと笑う。

 周りにいる受験生達は、これからどうやってテロに対抗するのかを話し合っている。今更。である。

 少し離れた所には金髪少年ハーレムの女性達も集まっていた。今すぐ飛び込んであちこちと揉みまくりたい衝動に駆られるが、今は自重。


(何人かは今の状況について正確に把握してるかな?この場にいながら話し合いというよりも…周囲への警戒が強い。集まった受験生への攻撃があると予測してんのか。中々見所があるじゃないか。但し…。)


 金髪青年は思う。

 現実の厳しさを受験生達は本当に理解しているのか…と。

 現時刻は試験終了35分前。つまり、35分後にテロが実行される「予定」となっている。

 そして、現実とは残酷なものなのだ。

 予定とはそれを決めた者の都合によるものであり、確たるものではない。つまり、それを決めた者に異変が生じれば…変わってしまうのだ。例えそれが「気分」という陳腐なものだったとしても。


「さぁ、クライマックスだ。」


 金髪青年は予め準備していた魔法陣を発動させる。

 それは広場一面のタイルを覆うような巨大な魔法陣。

 まず、ドーム状の結界が展開された。薄青色の魔法壁と物理壁。これらは隔絶結界と呼ばれ、結界に対する双方向に対して結界の効果を発揮する。つまり、誰も出る事が出来ない牢獄の完成。

 次に結界の内側に…次々と爆弾が出現し結界内を埋め尽くす。そして、結界内の空間が歪んで爆弾を巻き込んで爆発させる。

 更に空間の歪みは爆発を誘発しながら結界内を駆け巡る。

 最早…結界内に居る者達の生存は絶望的。

 そう判断せざるを得ない規模の包囲攻撃だった。


 結界外にいた者達は、攻撃を免れたという事が偶然にしろ、必然にしろ…起きた事象の強大さに言葉を失う。


 圧倒的蹂躙。


 これは本当に試験なのか?そんなら疑問さえ抱かせるような魔法。


 そして、この魔法が試験終了の合図となるのだった。

 受験生全員の不合格。という理不尽極まりない結果を伴って。


「お…?…………やるねぇ。」


 だが、幸か不幸か…事態はそう簡単に終わらなかった。

 金髪青年は結界内に認めた「変化」を観察し、笑う。


「さぁ、やろうぜ。お前達の真髄…見せてみろ!!」


 金髪青年は両手を広げて叫ぶ。

 歓喜に震える悪の化身の如く。


(…マジでこのイカれたキャラ演じんのハズいんだけどよ!)


 金髪青年のそんな心の声に気付く者はいない。

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