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3-8.街立魔法学院入学試験 テロ防止作戦3

 近未来都市中心に聳え立つ超高層ビル屋上に大量に積まれた爆弾。

 それを見付けた俺達は、動く事が出来なかった。

 爆弾が怖いから?違う。

 高い所が怖いから?それも違う。

 動けないのは、ここに爆弾が積まれているという事実から推測される事態が厄介なものだったからだ。


「火乃花。遼。この状況…どう考えるよ?」


 問い掛けつつ、俺も思考を高速回転させる。

 つまりだ、この場所に大量の爆弾が積まれているという事実から幾つかの結論が導き出されるんだよな。

 それは単純明快な答え。この高層ビルがテロの破壊目標であるという事。

 もう1つ。テロの破壊目標であるビルに爆弾が設置済みである以上、テロ主犯はこの場所にいない可能性が高いって事。だってさ、ビルの屋上に向かうまでに、各階に同じ様な青いビニールシートが掛けられてる物を見たしね。

 各階に爆弾が仕掛けられているのは疑う余地も無いだろうな。爆弾設置済みの破壊目標に留まり続けるなんて、テロ主犯としては陳腐も良い所だ。

 状況からして考察するに、このビルが爆破されればテロ成功。爆破されなければテロ失敗って事なんだろう。けどさ、ここまで爆弾が設置されてたら、後はどの階層の爆弾でも良いから爆発させればテロ成功だろ?だとすると、テロ主犯がどこに潜んでいるのかが重要になってくる。いや、遠隔操作も出来るか。

 圧倒的にテロ主犯側が有利な状況。 

 この状況でどうやって防げば良いんだよ。ってな訳。

 普通に考えたら中々に絶望的な状況なのですよ。


 そういう訳なんだけど、疑問も残る。いつ、どのタイミングで大量の爆弾を設置したのかって事だ。少なくとも1時間程度じゃ設置不可能な物量だと思う。

 そして、ここで1つの情報も鍵を握るんだ。それはヘヴィー学院長が「テロの実行は2時間後」って言ったという事実。それが本当なら、まだ試験が始まってから1時間も経っていない訳で、爆弾が爆発する事は少なくともあと1時間は無いって事になる。

 学院長の言葉が本当なら…な。


「学院長が言っていた2時間後にテロ実行って言葉を信じるなら、爆発はしないと思うんだ。」

「その意見には私も賛成よ。」

「うん。…そうだね。」


 遼の反応がイマイチ沸切らないけど、そこは置いとくか。


「だとすると、あと1時間位の間にテロ主犯を捕まえるしか無いよな。」

「そうね。でも…今の状況じゃぁ正直、居場所は分からないわ。」

「俺もそう思う。」


 でも、俺には1つ心当たりがある。

 それはバルクをこの場に向かわせた人物だ。

 いや、そもそもそんな人物がいるとは限らないんだけど、居たとしたら…そいつがバルクを犯人に見せかけようとしてた可能性はあると思うんだ。

 つまり、そいつが犯人である可能性が高いんだよな。くそっ。バルクから話を聞ければ良いんだけど…まだ無理そうだ。

 火乃花も同じ事を考えていたのか、気絶しているバルクを見て悔しそうに下唇を噛んでいた。


「あの…。」


 そして、このやや膠着した状況で手を上げたのは金髪少年だった。


「あの…ここから脱出した方が良い気がするんだけど。」

「そ、そうよ。この爆弾が爆発したら…私達死んじゃうわ!!」


 キャー。みたいに騒いで金髪少年の取り巻きが階下へ続く扉へと姿を消していく。

 危機的状況になった瞬間に一瞬で崩れ去るハーレム。ちょっとだけ「ザマァ」って思ったのは秘密だ。

 俺達は…というと。続いて起きた予想外の展開に動く事が出来ずにいた。


「あの…何で僕、狙われてるの?」


 金髪少年に双銃の銃口を向けていたんだよね。気付いたら。遼が。

 なんで遼が金髪少年を狙ってんだ?

 少なくとも、俺には金髪少年がテロ主犯だとは思えないんだけど。


「俺、おかしいと思うんだ。」

「何が…?」


 不安そうに見上げる金髪少年。


「だってさ、これだけの量の爆弾を短時間で設置はできないでしょ?そうすると、2時間後にテロが実行されるっていう学院長の言葉と矛盾するんだよね。つまり、学院長の言葉を言い換えれば、2時間後にテロを実行する何かしらの必要性があるか、テロ実行の準備に2時間必要っていうどちらかだと思うんだ。準備が必要なのに爆弾が設置済みとか変でしょ?爆弾設置済みなら2時間後に爆発させる何かしらの理由があるはず。それなのに、こんな適当な隠し方はあり得ないよ。2時間隠し通す意思が感じられない。どちらにしても、矛盾するんだ。」


 全員が話を聞く中、金髪少年に銃口を向ける遼は淡々と続ける。


「可能性がもう1つあるとしたら、単に試験だから2時間以内にテロ実行犯を見つけてみろっていう、試験的な要素かな。でも、それだと現実味を帯びない試験内容になるから、俺はその可能性は除外しても良いと思う。」


 成る程。


「そうすると、最初に言った2つのどちらかになるんだけど、試験っていう特性がある以上、そして事前になんの情報もない事を考えると2時間後にテロを実施する意味は無いと思うんだよね。これが国家的に重大な会議が2時間後に開かれますとか、そーゆー背景があるなら別だとは思うけど。」


 おぉ。流石の考察力。


「つまり、テロを実行するのに2時間の準備が必要だと考えるのが妥当なんだよね。そう考えると、この爆弾はブラフの可能性が高いと思うんだ。」


 …へ?それはちょっと。


「この場所でブラフの爆弾を発見させる事で、俺達をテロの本当の目的から逸らすのが目的なんじゃないかなって。そう考えるとさ、この金髪少年君がこのビルに来た理由がよく分からないんだ。それに、さっきビニールシートに引っ掛かったのもワザと臭かったし。君、何が目的な訳?」


 そこ迄見てたのか。ただ単に気持ち悪くてプルプルしてただけじゃなかったのね。ごめんよ遼。…使えない奴だななんて、思ってないからな?

 最終的に遼から犯人扱いをされた少年は目をパチクリさせる。


「え?僕、疑われてるの?」


 女性の心を鷲掴みにしそうなクリクリお目々がウルウルと…。


「そーゆーの要らないよ?」


 対する遼は冷酷無比な冷たい目で睨みつけている。


「遼君って思っていたよりも鋭いのね。」

「だろ?アイツ、何だかんだキレ者なんだよ。」


 俺と火乃花はヒソヒソとコトの成り行きを見守る。…だってさ、この状況でそれ以外何も出来ないだろ?

 遼の容赦無い言葉を受けた少年は、見開いた目からひと筋の涙を流して泣く。…否、笑った。


「ははっ!はははははっはははははははは!!!」


 腹を抱え、身を捻り、湧き上がる笑いという感情に蹂躙される。そんな風に狂ったように笑う金髪少年は…ハッキリ言ってキモい。

 何が楽しくて笑ってんだよ。てか、今この場面で笑うとか…自分がテロ主犯だって言ってるようなもんじゃんか。


「ははははっ!!!良いね。その洞察力、素晴らしいよ。」


 少年は銃口を気にするコトなく立ち上がる。

 そして、両手を天に向けた。


「そうさ。この爆弾はブラフ。良く気づいたね!テロが爆弾だって誰が決めつけた?それらはただの思い込みに過ぎないんだよ!つまり、この場にいるという事自体が全て僕の描いた絵の通りなのさ!君達にはもう分かってるのかな?テロの目的が、思想が、信念が!そんなものも分からず、テロと戦おうとしてたのなら…。」


 少年は口を閉ざす。そして、下を向く。

 次に口を開いた少年の口から出たのは、君が悪いほどに低い声だった。


「タダの無能な魔法使い…だね。」


 ゆっくりと持ち上がる少年の右手。パチン。と指が鳴る。


「な…!?」


 次に起きたのは視界を埋め尽くす閃光。爆音。叩き付ける衝撃だった。

 俺はすぐ隣にいた火乃花の体を抱き寄せると魔法壁を展開し…吹き飛ばされた。

 マジかよ。あの金髪少年…爆弾を爆発させやがった…!

 そして、ドン!!という強い衝撃に背中を打たれ、意識を手放したのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 パラパラと瓦礫の破片が落ちる音が鼓膜を刺激する。

 イテテテ。身体中から激痛が。

 む?右手に何か当たってるな。ムニュムニュっと…柔らかい?中々な弾力もあるな。それでていて包み込まれるような。

 薄らと目を開けて横を見る。

 そこには火乃花が倒れていた。あぁ、そうか。金髪少年が爆弾を爆発させて、それに巻き込まれた俺達は吹き飛ばされたんだっけ。

 あ、火乃花が目を開けた。

 …ん?俺を見て、顔を赤くしたぞ?何で赤くするんだし。白馬の王子様に見えたのか?いやぁ、火乃花に限ってそーゆー夢見少女的な妄想はしないだろ。

 あ、火乃花の左手が持ち上がった。


「この…変態!!」


 バッチィィィン!!!

 おっ…!?目から星が!?てか何で叩かれるし!?

 くそ、右手が何かに挟まれて動かない…!


「だから…止めろっていってんでしょーっが!!!」


 バッチィィィン!バチバチバチバッチィィィン!

 ドス!ガス!ボコ!メリ!

 ゴギィィィ!!

 以下省略。


 5分後。全身を傷だらけにした俺は空を仰いで倒れていた。不可抗力だって…。

 隣に座る火乃花は落ち着いたのか、腕を組みながら座っている。


「龍人君。」

「はい。ごめんなさい。」

「いや…その話はもう良いから。恥ずかしいから止めて。」

「あい…。」

「はぁ。まぁ良いわ。それよりも、あの金髪少年の言っていた事、気にならない?」

「あぁ…テロの目的、思想、信念ってやつか?」

「えぇ。このテロ試験はほとんど情報が無いわ。その上で、あの目的、思想、信念って言葉を言ったのが気になるのよ。」

「ホントだよな。情報と言ったら試験前に学院長が話してた内容だけだし。大した事言ってなかったし。」

「でも、このまま闇雲に動いても多分無駄よ。同じブラフを掴まされて踊らされるだけだと思うわ。」


 あぁ、それは間違い無いだろうな。現にこうして俺達が休憩している間にも、そこかしこで爆発の音が聞こえている。

 つまり、各所にブラフ爆弾が設置されていて、それが次々と爆発しているんだろう。


「あ、いた!」


 お、今の声は…遼かな。

 声のした方を見ると、遼とバルクが肩を組んで互いに支え合って歩いて来る所だった。


「2人とも無事だったんだな。」

「龍人達もね。」


 俺達の近くまで移動してきた遼とバルクは地面に座り込む。

 そして、遼が「あっ」と声を上げて続ける。


「さっき歩きながら聞いたんだけど、バルクにあの高層ビルへ行くように言ったのは金髪少年君だったらしいよ。」

「マジか。」

「あぁ。つっても、爆弾の事は言われなかったけどな。1番高い所に行ったら、テロ主犯の動きを上から見つけられるんじゃない?みたいに言われただけだ。」


 真面目な顔で大仰に頷くバルク。


「バルク君。あんな高層ビルの屋上から下の様子なんてちゃんと見える訳ないじゃない…。」

「…はっ!?確かにそうだな!俺とした事が気付かなかったぜ…!!」


 いや、気付けし。


「なぁ、遼とバルクは何か覚えてる事無いか?この試験、テロの思想とか目的とか金髪少年が言ってたけど…そーゆー情報が何もない気がするんだよね。」

「ん〜…。」


 考え込む遼とバルク。


「あ、そうだ。俺、あの台詞ムカついたな。」


 ぽんっと拳を叩くバルク。


「なんか言ってたっけ?」

「言ってたじゃんかよ!確か…お主ら全員テロに消されぬよう頑張るのじゃな。…みたいにさ!俺達はそんな簡単にテロに屈しないってぇの!」

「そりゃぁテロをテーマにした試験なんだからそれ位言うだろ。」


 ったく、バルクって変なとこを覚えてんだな。

 ………。

 …ん?


「あ。」

「あ。」


 俺と火乃花の声が重なる。


「もしかして。」

「龍人君も?」

「うん。」

「じゃぁ…。」

「だな。だとするとこの後のテロ主犯の動きは……。」

「爆発地点を調べましょう。そうすれば、誘い込まれる地点は分かるはずよ。」

「んだな。ちょいと上空から見て来る。」


 俺は風魔法で体を浮かせると近未来としの上空へ飛翔する。

 上空から見た都市の姿は酷いもんだった。彼方此方が爆発によって瓦解してやがる。

 こりゃぁ都市崩壊レベルだな。

 けど…これで分かった。

 地上に降りた俺は火乃花達に向かって頷く。


「東に向かおう。」

「ちょっとどういう事?」

「俺にも教えてくれ。サッパリ分かんねぇんだけどよ!」

「移動しながらな。」

「体力と魔力の回復も兼ねながらいきましょ。ここから先は、動き出したら休む暇はないわよ。」


 こうして、俺達はテロを阻止すべく、迅速に行動を開始した。

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