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3-7.街立魔法学院入学試験 テロ防止作戦2

 近未来都市のビル群を俺達3人は颯爽と掛けていた。

 目指す目的地はもうすぐだ。

 これから、俺達は火乃花の推測をベースにした作戦を実行する。それでテロ実行犯を捕まえられれば問題なし。失敗したとしても、尻尾を捕まえる事は出来るはずだ。その為には、各受験生達が行動を始めている今、スピード感が求められる。


「火乃花、遼、そこらで受験生同士の戦闘が始まってる。多分101人いるってのに皆が気付いたんだろ。隠れ潜んだテロ実行犯を炙り出す為なのか、疑心暗鬼によるのかは分からないけど…。このままだと相手の思う壺だな。」

「…思ったより展開が早いわね。龍人君みたいに都市全域の探知ができる魔法使いなんてそんなに居ないと思うんだけど…。」


 俺の横を走る遼がピコンと閃く。


「あ、それなら簡単だよ。受験生の中にテロ実行犯が潜んでるっていう情報操作をすれば良いんじゃない?そうすれば、他の受験生を潰してれば…いつかテロ実行犯に当たるだろうし。」

「そんなの完全に相手の思う壺だろ。そこまでの情報操作が出来るなら、その実行犯が受験生同士の潰し合いを高みの見物してんだろ。」

「だね。だとすると、テロ実行犯は頭がキレる人物の可能性が高いよ。」

「そうね。救いは…テロ実行犯が1人って事かしら。」


 火乃花が苦い顔をしながら言う。

 何故テロ実行犯が1人なのかって?

 そりゃぁ簡単だ。この3つ目の入学試験に参加したのは丁度100人。試験が始まる前に数えたから間違いない。そして、俺が探知魔法で調べたときに都市に居た人の数は101人。

 つまりだ、受験生の中にテロ役を割り当てられた人がいない限り、テロ役は1人って事になる。

 …これが、火乃花の推測その1だ。


「見えてきたわ!!」


 そして、これが火乃花の推測その2。テロ実行犯の標的だ。

 俺達の進む先に見えてきたのは、地上200階はあるのではないかという超高層ビルだ。

 転送時に受験生の配置が中心を外れていたという事。そして、こういう大きな都市でテロを実行するなら、その都市のシンボルとなる建物を狙うだろうという仮説から、都市で1番高いビルが標的だと絞り込んだんだよね。

 まぁ、この推測が外れたとしても、一般的にはこの推測で俺達受験生が動く事はテロ実行犯も予測するはず。それなら、このビルに何かしらの仕掛けがある可能性も高いんだよね。

 つまり、このビルを調べる事でテロに関する情報を得られる可能性が高いって事。


「…ん?あのビルの中に誰かいるな。しかも1人で上に向かって進んでる。」

「怪しいわね。今どの辺り?」

「大体ビルの真ん中あたりかね。結構な速度で進んでるぞ。」

「え、龍人、火乃花、今から追いかけても追いつかないと思うんだけど…。」


 確かに遼の言う通りだ。俺達の移動速度が超人的なら追いつく可能性もあるけど、相手は200階以上あるビルの中心…つまり100階付近。対する俺達は1階だ。倍の速度で登らないと追い付けない。

 ビル1階に到着した俺達は、正面入口の前で立ち止まる。


「こうなったら、全力で上に登るしかないか。」

「えぇ…龍人、流石に追い付けないって。」


 やる気満々の俺と、ゲンナリ表情の遼。そして、火乃花は何故か上を見上げていた。


「…仕方ないわね。2人とも暴れないでね。」

「えっ…!?」


 焔鞭剣を手に持った火乃花は遼の腰に火縄を、俺の首を左腕で抱え込み、焔鞭剣を鞭状にして上へ伸ばし…ビルの壁面に突き刺した。

 えっ。もしかして…ロッククライミングならぬビルディングクライミング的な?

 ギュンっという上昇感と共に、俺達はビルの壁面を上へ進んでいた。

 焔鞭剣を突き刺した位置まで進むと、炎の楔を壁に打ち込んで着地、再び焔鞭剣を上方へ伸ばし…の繰り返しである。

 魔法にこんな使い方があるとは。発想力の大切さを学ばせて頂きました。

 上へ突き進みながら窓からビルの内部を観察するけど、所々に資材を保管している上に掛けられた青いビニールシートが見えるくらいで特に何もない。

 てか、顔に当たるこのふくよかな、柔らかい感触は…!?


 ゴートゥーヘヴン。


 10分位かね。天国から現世に戻ってきた俺が見たのは、屋上っぽい風景だった。

 おぉ。ビルの屋上に到着したんだね。


「おえっぷ…。」


 後ろでは気持ち悪そうにビルの外側に顔を出して身を震わせる遼。

 そして、両手を腰に当てて汗を拭う火乃花。

 豊かなバストが強調されて眩しい…!


 違う違う。


「火乃花、ありがとな。」

「その言葉は後にしましょ。今は…あいつを倒すわよ。」

「アイツ?」


 火乃花の視線を追って後ろを見ると、資材の上に掛けられたビニールシートの陰から1人の人物が姿を現した所だった。

 そいつは金髪の前髪を立たせ、青いレザージャケットを着込み、腰回りにはチェーンのシルバーアクセを付けた…所謂ヤンキー風の男。鍛えられた体はしなやかな身のこなしで…って。


「えぇ…。」


 思わず声を出しちまう。

 だってさ、今回のテロ実行犯はインテリジェンスなイメージがあったんですが。

 それがさ、まさかのコイツが犯人?そんなのあり?

 そいつは俺達を見ると陽気に片手を上げた。


「おう!龍人!と…誰だっけ?」


 あぁはい。そうですね。魔力操作の試験後に俺の事を叩いたアイツですよ。

 名前は…確かバルク=フィレイアだったかな。

 いやぁ、コイツにテロ実行犯役は出来ない気がするんだけど…。

 けど、火乃花は違う判断をしたようだった。


「彼はバルクだったかしら?…ちょっと違和感があるけど、1人でこの場所にいるのは怪しいわね。まずは捕まえて吐かせるわよ。」


 おーぅ。その実力行使派な所、相変わらずだね。こうなった火乃花は止まらない。Colony Worldではそうだったから、きっとそうだろう。基本的な性格とかは遼も火乃花も、Colony Worldで俺と遊んでた時と変わらない感じっぽいし。

 つまり。ひと言で纏めると…「どんまいバルク」だな。


「問答無用よ!」


 ほら。火乃花が駆ける。

 対するバルクは一瞬戸惑いの表情を浮かべるも、すぐに獰猛な肉食獣みたいな顔をして火乃花を迎え討った。

 交錯する焔と石礫。

 火乃花の焔鞭剣が躍り狂い、バルクが拳を振るうのに合わせて石礫が飛び交う。

 …うん。凄い戦いだよ。たださ、この戦い…意味あんのか?なんか、凄い意図的に鉢合わせさせられた気がするんですが。

 火乃花とバルクの戦いを離れた位置で眺めながら、俺は思考を巡らせる。因みに遼は未だにプルプル震えている。…そんなに酔う程揺れたか?いや、確かに胸は揺れてたが。

 それよりも、気になるのは今の状況だ。まず、あのバルクが1人でこの高層ビルの屋上に来てるっていう事実が意外というか何というか…。

 だってさ、こんなこと言うとアレだけど…バルクって猪突猛進型っぽいじゃん?そーゆー奴がテロの標的とかそーゆー事を考えて動くのかっていう話ですよ。

 もし、誰かに誘導されてこの場所に来たのだとすると、バルクがこの場に来る事自体がテロの目的達成に関わってる事になる。

 それが何なのか。が分かれば……。あぁもう。バルクに聞くのが1番なんだけど、火乃花と絶賛闘魂バトル中だし。


「あれ?おにーちゃんだ!」


 …ん?この声は…。


「あ、金髪少年。」


 そこには屋上への入口から出てきた金髪少年と、その仲間?らしき4人の女性達が居た。


「何それー。金髪少年とか不良少年みたいでヤダな。」

「あ、わりぃわりぃ。」


 頬っぺたをプゥっと膨らませる金髪少年。うん。自分の可愛さ分かってやってんだろ?

 周りの女性達が「もう可愛いんだからっ。」なんて言ってチヤホヤしてやがるし。

 ていうか、この試験中にさり気なくプチハーレムを結成してるあたり、中々にやるじゃないか。少年の癖に大分スペックが高いとみた。

 その少年は火乃花とバルクの戦いを見ると首を傾げる。


「あれ?何で受験生同士で戦ってるの?」

「あぁ…それはだな…。」

「ちょっと君!君がテロの主犯じゃないの!?」

「そうよ!この状況で高みの見物してるとか怪しすぎるわ!」


 おっと、まさかの金髪少年ハーレム軍団から疑惑の目を向けられてるぞ。


「そりゃぁ無いだろ。俺達はこのビルがテロの標的になる可能性が高いと思って、屋上まできたんだよ。そしたらそこのバルクが現れて、なし崩しにバトル開始になったというか何というか。」

「えぇ。怪しいわね。」

「怪しいわ。私達を見る目つきもイヤらしいし。」


 うわー何それ。何で俺が変態扱いされなきゃいけないんだし。


「ぬあぁぁぁ!!」


 おっと。何か黒い物体がいきなり飛んできやがった。

 身を捻って避けると、それは近くの壁に激突する。


「ふぅ。中々に手強かったわ。」

「お、火乃花。って事は今のは…。」


 恐る恐る壁の方を見ると、あぁやっぱり…そこにはピクピクと痙攣するバルクが壁に埋まっていた。


「うわぁ!おねーちゃん強いんだね!」


 トトトトトッっと金髪少年が駆けてくる。火乃花を見る眼差しはヒーローを見る少年のキラキラなソレである。

 そして、金髪少年は資材に掛けられている青いビニールシートに引っ掛かって…コケた。


「あうっ。イテテテ…。へへっ転んじゃったよ。」


 テヘペロ気味に可愛らしく笑う少年。…この小悪魔が!

 なんてツッコム余裕は無かった。


「龍人君、もしかしてもしかするわよね。」

「あぁ。こりゃぁヤバイ。」


 転んだ少年の下に駆けよるハーレム軍団も、途中でソレに気付き…動きを止めていた。完全に現実に対して思考が追い付いてないよな。


「え?なに?どうしたの?僕なら大丈夫だよ?」


 首を傾げる金髪少年。


「やっと気持ち悪いの治ったよ…。って…えぇぇぇ!?なんで爆弾があんのさ!?」


 そして、凍りついた場を動かしたのは、図らずとも遼の叫び声だった。

 遼の「爆弾」という言葉を聞いてピクリと反応した金髪少年はゆっくりと振り向き、ビニールシートに隠されていた山積みの爆弾を目にする。


「ワーォ。ボクはトンデモナイモノヲミツケテシマッタネー。」


 現実逃避気味のお言葉ありがとうございます。


 さて、どうしようか?

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