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3-6.街立魔法学院入学試験 テロ防止作戦

 次の日、街立魔法学院の修練場に集まった受験生は俺と遼を含めて100人丁度だった。

 んでもって、金髪プロレスラー…名前はラルフと言うらしい…が腕を組んで俺達の前に立っている。

 今何をしてるのかって言うと…一応、ヘヴィー学院長の到着待ちだ。

 ふと横を見ると、少し離れた所に火乃花が座っている。

 俺と目が合うとプイッと顔を背けられてしまった。…なんなんだ?さっきは「昨日はやり過ぎたわ。悪かったわね。」って謝ってきたのに。

 どうしてこんなに冷たい反応なのですかね!?俺は火乃花との仲良くしたいのですが!

 なんたって、Colony Worldで一緒に冒険してた仲間だからな。勿論、その記憶が無いことも覚悟してるし、記憶が無い火乃花と関わる事で、否応の無い寂しさを感じるであろう事も分かってる。

 それでも…仲良くなれたら良いなって思ってるんだ。それなのにこの反応は…先が長そうだ。

 …お、ヘヴィー学院長が出て来たな。


「皆の者、待たせたのである。これより3つ目の入学試験を始めるのである。舞台は近未来都市のような大型ビルが建ち並ぶフィールド。試験内容は、この都市に潜むテロ組織のテロ防止と逮捕なのである。」

「……。」


 突拍子も無い試験内容に受験生達は無言を貫く。

 そりゃあそうだ。テロ組織と戦えとか…大分意味が分からん。それに、近未来都市って何処にあるんだし。


「ほっほっほ。戸惑っておるの。しかし、現実は待ってはくれぬ。早速始めるのである。」


 ヘヴィー学院長が指をパチンと鳴らすと、指にはめられた銀の指輪が虹色に輝き…。


「マジかよ。何処だよここ。」

「凄いね…。」


 俺と遼は突如周りに現れた高層ビル群を見てお登りさん気分を味わっていた。

 他の受験生達も同様の反応でポカーンと周りを見ている。


「さて、これから2時間後にこの都市のどこかでテロが行われるのである。お主らにそれを防ぐ事は出来るかの?お主ら全員がテロで消されないように頑張るのじゃ。」


 愉快そうに笑いながらヘヴィー学院長とラルフは一瞬で姿を消してしまう。

 普通質疑応答くらい無いか?

 こんなトンデモ展開…誰も予想してないだろ。


「遼、どうすっか。」

「んー、先ずはテロ組織の潜伏場所と、テロの実行場所だよね。」


 …順応早いな!…とは言え、ここで現実逃避しててもしゃーないのは間違いないか。

 うし。少し考えてみるか。

 周りにいる受験生達も近くの人と話し合いを始めていた。

 つーかさ、この試験…凄い嫌だな。だってさ、隣にいる受験生は結論的に受験のライバルだろ?そんな奴と手を組むって…結構勇気がいるよな。もしかしたら最後の美味しいタイミングで裏切られるかもしれないし。

 そう考えると、本当に信頼出来る奴以外と組むのは…。


「龍人君。手を組みましょ。」


 うぉ!?ビビった。いやマジでビビった。だってさ、火乃花から話しかけて来たんだよ?デレてツンしてデレるとは…男心をくすぐるじゃ無いの!

 …なんて冗談は置いといて。


「どうして俺と手を組もうって考えたんだ?」


 これが目下最大の謎だな。

 試験に合格したいなら、単独で成果を上げる方が評価は高くなるはずだ。

 けど……実力的には他を圧倒的に引き離してそうな火乃花が、他人と協力関係を築こうとするってことは…。


「この試験、見られるのは実力…じゃあ無い可能性があんのか。」

「そうよ。」

「えっ?何それどう言う事?」


 同意する火乃花と、はてなマークを浮かべる遼。


「簡単だよ。この試験では、実際にテロの危機に瀕した時にどういう行動を起こすのか。…が見られている可能性が高いって事だ。つまり、魔法力とかそういうものではなくて、ある意味で判断力や人間力が問われるんだろうな。」

「そう。つまり、今この場における最優先課題はあくまでもテロの阻止って事よ。この場でライバルである他の受験生を蹴落とそうとする人は、不適格の判断が下される可能性が高いと思うわ。」

「そういう事か…。」


 指を顎に当てて考え込む遼は、5秒程でピンっと人差し指を立てた。


「つまり、今最優先で調べる必要があるのは、テロ実行犯の人数と、テロの標的がどこなのか。だね。」


 流石は俺の幼馴染みにしてライバルの遼だな。状況理解と現状把握が早い。

 火乃花が頷く。


「そうよ。つまり、試験開始直後の今が正確な状況把握に1番適してるタイミングなの。そして、手を組むなら…前の試験で色々な意味で実力があると考えられる人達がベスト。それが貴方達ね。」

「そーゆー話なら断る理由もないか。」

「えぇ。試験に合格する為なら、どんな手段も厭わないわ。」


 おぉ。なんか凄い覚悟だな。

 さて…やるとしたら現状把握を最優先で進めるべきだろうな。だとすると…。


「ねぇおにぃちゃん。」


 ん?


「ねぇねぇねぇ。」

「うぉっ!?なんだお前。」


 気付けば俺の服を引っ張りながら小学生くらいのしょうねんが俺を見上げていた。

 …いつの間に。


「どうしたんだ?てか、受験生か?」

「うんっ!僕はね、街立魔法学院の学院長さんになるのが夢なんだ。」

「そ、そうか。頑張ってな。」

「ありがと!」


 火乃花と遼に視線を送るが、2人とも何故かさり気な〜く視線を逸らすんですが。あぁ…はい。そうですか。子供のお守りは俺の役目なのね。

 それにしてもこの少年…金髪で両腕に金のブレスレットを付けてるよ。なんか…教師のラルフを子供にしたみたいな出で立ちだな。


「でねでねでね。」

「ん?」

「この試験、何をすれば良いのかな?」

「そうだな…。まずはテロを起こそうとしてる人達がどこにいるのか見つけるのと、どこでテロを起こそうとしてるのかを突き止める事かな。それで、どちらかを狙ってテロを防ぐしかないだろうな。」

「ふ〜ん。あのね。テロって何?」


 …そうきたか。


「テロっていうのはだな、悪い人達が悪い事をして、悪くない人達に悪い要求をしたりする事かな。」

「分かりにくい説明するわね…。」


 ボソっと火乃花が隣で突っ込んでくるが…気にしない。俺は気にしないからな!


「そっか。じゃぁ、そのテロを起こす悪い奴をやっつければ良いんだね!」

「だな。」

「分かった!!僕、頑張る!ありがとうお兄ちゃんとおねぇちゃん!!」


 金髪少年は手をブンブン振ると、もの凄い速度で走り去っていったのだった。


「あの子…大丈夫かしら。」

「まぁ大丈夫だと信じよう。」

「え、追いかけないの?」

「追いかけない。追いかけたい気持ちはあるけど、情に流されて本来の目的を見失うのは言語道断だからな。」

「あ、はい。すいません。」


 謝る遼は置いといて…。


「なぁ火乃花。」

「なに?てゆーか、私の事名前で呼んで良いなんて言ってないけど?」

「あ、はい。すいません。」


 しまった。やらかした。ついつい普通に呼んじまったよ。

 こりゃぁひと波乱あるか?

 …なんて警戒してたんだけど、火乃花は小さくため息を吐くと肩を竦めた。


「まぁいいわ。好きに呼んで頂戴。それで、何を聞きたかったの?」

「お、おう。ありがと。えっと…探知魔法ってあるじゃん?」

「あるわね。」

「あれの探知範囲を広げる時って、どういうイメージで使ってる?もう少し細かく言うと、炎魔法の威力を強化する時とどんな風に違うのかも知りたいんだけど。」

「…?そうね…。」


 俺の質問の意図が良く分からないのか、疑問の表情を浮かべるも、火乃花は少し考えてから答えてくれた。


「炎魔法の威力を上げるときは、魔力の質を高めるイメージが近いわね。探知魔法の範囲は質というよりも、幅を広げるイメージね。…分かるかしら?」

「なんとなく…。つまり、この都市全部の探知を行うには…直列じゃなくて並列かな?」

「なにを…。」


 火乃花が何かをきこうとしてきたが、俺はそれに構わず探知魔法陣を展開する。

 まずは俺の前に1つ。そして、その両脇に魔法陣が繋がるように1つずつ。これで3つ。さらにその両サイドに…。

 最終的に8つの魔法陣が俺の周囲360度に展開された。


「魔法陣の展開…改めて見ると凄いわね。」


 火乃花からお褒めの言葉を頂きました。ありがたき幸せ。なんてな。

 魔法陣を展開する。8つ同時に。

 つまり…魔法陣並列励起ってやつだな。

 探知魔法の魔力が広がり、俺の頭に大量の情報が次々とフィードバックされる。


「うぉ…。」


 想像以上の情報量に思わずフラつく。

 てかこの都市…凄い広いんですが!2km四方正方形程度の空間っぽい。

 まぁ今大事なのはそこではなくて…。


「今、この都市に居るのは101人だな。で、戦闘っぽいのは行われていない。人の配置は…皆が動き始めてるからなんとも言えないけど、中央部分を避けるようにして配置されてる気もする。」

「凄いわね…。」


 俺の情報を聞いた火乃花は少し考えこむと、真剣な瞳を俺と遼に向ける。


「今の龍人君の情報から幾つかの推測が成り立つわ。それをベースに行動してみましょ。上手くいけばテロを防げるはずよ。」


 火乃花が話した推測は、やや大胆ではあるが、中々に鋭いものだった。


「いいね。ちょっと危険な気もするけど、実際のテロ相手に絶対安全な策なんて無いだろうし。やってみますか。」

「うん。俺も良いと思う。火乃花って凄いんだね。」


 遼の賛辞を受けて、火乃花は何故か頬を少し赤らめる。


「ほ、褒めても何もないわよ?じゃぁ、行きましょ。」


 プイっと顔を背けると、スタスタと歩き始める火乃花。

 俺と遼も顔を見合わせて頷くと火乃花を追いかけて移動を開始するのだった。


 この時、俺は密かに懐かしい気持ちを感じていた。

 Colony Worldでギルド『ブレイブインパクト』を結成して、高みを目指してた時を思い出したんだ。

 遼、火乃花、俺。この3人が中心メンバーとなって、日々切磋琢磨してたっけな。

 そういや、この世界でもギルドでパーティ的なのは作れるのかね?そうだとしたら、このメンバーでそういうのを結成できたら楽しいんだろうけど。


 一応言っておく。この時、俺は気軽な気持ちでそんな事を考えていた。


 でも、気軽な気持ち通りに現実が進む筈もなかったんだ。その時、俺は、重大な決断を迫られる事になる。

 勿論、それはまだまだ先の話ではあるのだけれども。

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