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3-3.街立魔法学院入学試験 模擬戦

 魔法操作試験を合格した俺は、模擬戦参加者待合スペースに座っていた。とは言っても…普通に修練場の一角が白線で区切られてるだけなんだけどね。

 まだ何人かの受験者が挑戦してるけど、多分100人くらいは最初の魔力操作試験で落ちてんじゃないかな。

 つまりだ、この後の模擬戦では一定以上の魔力操作能力を持った奴と戦うって事になる訳だ。

 にしてもあの赤髪…。


 バン!


「いってぇ!?」


 突然肩に走る衝撃。驚いて後ろを見上げると、石礫を飛ばしてた金髪ヤンキーが溌剌とした笑顔で立っていた。

 声かけてくるのは良いけどさ…叩かなくて良くない?


「悪りぃ悪りぃ!お前さ、さっきの試験凄かったな!」

「え…何が?」


 何故か褒められたぞ。別に大した事してないし…それで褒められても困るんだけど。


「謙遜すんなって!魔法陣を描かないで展開するなんて初めて見たぞ。聞いた事すらねぇ!」


 …え?

 もしかして魔法陣展開魔法ってこの世界でも固有能力なのか?

 レアなだけだと思ってたんだけど。


「それ、マジ?」

「マジだ。普通は魔具を使うだろ?それなのにお前は魔法陣だけで…」

「おいお前達!ペチャクチャ話すな!」


 うぉい。金髪プロレスラーに怒られちまった。


「はーい!…ったく、別に話してもいーだろーが。あ、俺はバルク=フィレイア。よろしくな!」

「お、おう。俺は高嶺龍人だ。」

「うっし。また後で話そうぜ!」


 バルクは俺の肩を再びバンバン叩くと、俺から少し離れた所に移動して座った。

 …なんでわざわざ場所を移動したんだ?隣に座れば少しは話せると思うんだけど。

 てか…肩が痛いんですが!アイツどれだけ馬鹿力だよ。

 それにしても、魔法陣展開魔法が普通じゃない…か。森林街では確かに魔法を使う時は武器を使ってる人が多かったけどな。

 言われてみれば俺は武器を使わないでも魔法が使える。でも、それはColony Worldでは当たり前だった筈。それがこの世界では普通では無い…か。

 俺って…地味にこの世界の常識を知らないな。真面目に勉強しないと、変な知識が元でいつか失敗しそうだな。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 それから15分後。

 全員の魔力操作試験が終わった所ですぐに模擬戦がはじまっていた。誰と戦うのかっていう事前情報は一切なし。

 いきなり名前を呼ばれた2人が戦う方式だ。

 今回の模擬戦では勝敗ではなく「戦闘内容」が重視されるんだとか。合計3回の模擬戦で合否判定をするらしい。

 つまり、3回とも勝利しても不合格の場合もあるし、3回とも負けても合格の場合があるって事だ。

 となると…、合否判定基準は何なのか。が重要になる。

 言ってしまえば街立魔法学院が「どんな素養のある学生を求めているのか」だよね。

 俺の予想は…まぁいいか。

 それよりも、模擬戦のレベルが…凄い事になってる。


「ていやぁ!」


 中華風の服を着た女の子が風を纏いながら回し蹴りを放ち、鎌鼬を放つ。

 対する学院長風眼鏡男子は指をパチンと鳴らして電気を発生させると五月雨式に放ち、鎌鼬に激突させる。風と電気が入り乱れて周囲を破壊し、その破壊劇が繰り広げられる中心では中華風の女の子と学院長風眼鏡男子が近接格闘の応酬を行う。

 ……正直言って、想像以上にハイレベルなんですけど。

 別の模擬戦では火と水魔法の戦いも繰り広げられている。普通…属性相性的に火が勝つはずなのに、何故か水魔法を使う方が押されているという謎現象。

 あ…でも魔力操作試験で目立ってた赤髪の女が火魔法の使い手か。まぁそれなら納得か。火は水に消されるけど、水だって火によって沸騰して蒸発するもんな。

 属性相性を克服した魔法使いって事なのか?


 うん。やばい。皆強いぞ。

 俺、この模擬戦でまともに戦えるかな。


「次!藤崎遼!」

「はい!」


 お、遼か。相手は…普通の青年って感じだな。

 隣に座る遼の肩を軽く叩く。


「遼!頑張れよ!」

「ありがとう。龍人…多分、俺達がいつもやってた特訓を思い出せばイケると思うんだ。」

「あの特訓を?正直この模擬戦の方がレベル高くないか?」

「ん〜俺はそう思わないよ。基本的に皆の戦いは綺麗過ぎると思う。」

「おら!遼!遅ぇ!」

「はい!すいません!!」


 金髪プロレスラーの急かす声に、遼は慌てて立ち上がると模擬戦を行う場所へ駆けていく。

 くそ。大事な話を聞きそびれたぞ。

 いや…遼の模擬戦を見ていれば、言いたかった事が分かるかもしれない。


「次は高嶺龍人!」

「あ…はい!」


 マジか。狙いすましたかのように俺の事を呼びやがった。これじゃあ遼の戦いを見てからとか悠長なことは言ってられないな…。

 綺麗過ぎる戦い…?綺麗なのは良くないのか?

 迷いながら模擬戦を行うぺく前に出ると、そこには冴えない女の子が立っていた。


「あ…お願いします。」

「こちらこそ。」


 互いにペコリと頭を下げる。…なんだこの初心であるからこそみたいな変な緊張感。

 この様子だと戦いにはあんま慣れてないのかな?初戦は楽勝かもしれない。


「始め!」


 試験官の掛け声が響き渡り…女の子の魔法が炸裂する。

 女の子は杖を振り、水の槍を複数生成。連続で撃ち込んできやがった。


「容赦ないな…!」


 俺は魔法壁を張って水槍を防ぎ、反撃で水矢を放つ。

 今回は敢えて同じ属性を使う。なんつーか、女の子の使う魔法に違和感があるんだよね。その違和感を掴む為にも同じ属性で戦うのが良いと思うんだ。

 相手からしたら「同じ属性なの!?」って感じだと思うけど。


「うっ…!」


 女の子は俺の水矢を魔法壁で受け止めつつも、水の鞭を生成して俺に接近。しなる鞭を俺の側面から叩きつけてきた。

 んー、なんだろうこの感じ。確かに強いとは思うんだけど脅威を感じない。

 森林街でセフっていう恐ろしく強い奴と戦ったからかな?

 俺は水の鞭を屈んで避けると、足払いを仕掛ける。


「きゃっ…!?」


 えっ?

 女の子は俺の足払いによって見事に体勢を崩して倒れ込む。

 いやいやいやいや。今の足払い…当たっちゃうの?

 俺の予定では避けられた足払いに対する相手の体勢に合わせて水魔法を叩き込む予定だったんですか。

 まぁでもこれはラッキーパターンだ。俺は倒れ込んだ女の子の首元に水魔法で作った水剣を突き付ける。


「…参りました。」

「試合そこまで!勝者、高嶺龍斗!」


 観客達と受験者達から疎らな拍手が送られる。

 けど、俺はその拍手を喜ぶ余裕は一切無かった。

 今の戦いの事で頭が一杯だったんだ。

 女の子に試合後の一礼を送り、控えスペースに戻って考える。

 あの女の子…魔法の発動速度も、威力も普通に申し分ないレベルだった気がする。でも、模擬戦では俺が簡単に勝った。同じ属性魔法を使って戦ったのにも関わらず…だ。

 …………。

 あぁ成る程!分かったかも。

 俺と女の子の違いは、今の戦いが「試合」だったのか「戦闘」だったのかって事だ。

 自分の力を見せる「試合」と、相手を倒す為の「戦闘」この2つは似ているようで大きく異なる。

それは…「試合」よりも「戦闘」の方がより実践的だという事。言ってしまえば戦闘はその先に命を失う可能性だってある。

 だから遼は「綺麗過ぎる」って言ったんだ。

 つまり、この試験に参加してる人達は、この模擬戦を「試合」として認識してる方が多数を占めるって事なんだろうな。

 この仮説が正しいとなると、入学試験の審査基準は「実践的な戦いが出来る事」ってなるのかも。

 それなら…。

 あぁうん。得意だわ。

 戦闘は魔法が全てじゃない…ってね。

 合っているのかも分からないけど、試験合格の道筋が見えた気がして俺はニヤリと笑みを浮かべるのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 模擬戦2戦目。

 相手は…おぼっちゃま風の偉そうな奴だった。

 けど、こいつも戦い方が「綺麗」ってやつで、勝つ為の行動を取った俺の圧勝で幕を閉じる。

 その後、2連勝という上々の結果にニヤつきが止まらない俺の隣に、3戦目を終えた遼が座った。


「龍人、3戦目も頑張ってね。」

「おうよ。」


 因みに遼の戦績は3戦2勝1敗だ。

 2戦目で戦った光魔法を使う女の子に負けた以外は、圧勝だったらしい。


「あの女の子…相当強いよ。お嬢様風だったから綺麗な戦い方なのかなって思ったんだけど、魔法の使い方が巧みで…。あーゆー人が英才教育を受けた人なのかな。」


 もう敵いません。みたいな表情で顔を横に振る遼。

 そんなに強かったのか?遼だって色々バリエーションのある魔弾で、結構厄介な戦い方が出来ると思うんだけど。


「お前がそこまで言うんだから、相当なんだろうな。」

「うん。綺麗な戦い方なのに隙が無いんだもん。反則だよね。」


 …?また難しい表現を。

 と、ここで俺の名前が再び呼ばれる。


「次は高嶺龍人。」


 よし。3戦目、気を抜かないでやりますかね。

 気合を入れて立ち上がった所で相手の名前が呼ばれた。


「相手は…霧崎火乃花。」


 ……。俺の中で時間が止まる。

 今、俺の相手誰って言った?

 フリーズしかける思考のまま、離れた所から立ち上がった赤髪の女を見る。

 クリっとした目にナイスバディ。童顔巨乳という言葉が相応しいその女は……。


「マジで火乃花なのか?」

「あれ?龍人、あの女の人知ってるの?」


 しまった。動揺して思わず心の声が出ちまった。


「あ、前に同じ名前の人に会ったことがあんだけどさ、多分別人だわ。」

「なんだ。そーゆー事ね。」


 うん。我ながら苦しい言い訳だ。けど、それを気にする余裕もないぞ。

 俺が火乃花に会ったのは地球で遊んでたゲームColony Worldの中だけ。だから、本人に直接会った事は無いけど…。

 ただ、Colony Worldのアバターは本人とほぼ同じ外見が生成される仕組みだったはずで、出来る事といったら専用アイテムでアバター各部位の色を変える位。だから、Colony Worldで一緒にプレイしていた火乃花の赤髪はきっと色変更した後だとは思う。流石にリアルでナチュラル赤髪って事は無いと思うし。

 …ん?ちょっと待て俺。

 この世界にいる霧崎火乃花は赤髪。うん。間違いない。

 Colony Worldの霧崎火乃花も赤髪。うん。間違いない。

 つまりだ、あそこに立ってるのは…霧崎火乃花で間違いない。いや、そもそもさっき名前呼ばれてたか。

 後は…遼みたいにColony Worldの、地球の記憶が無いのか、俺みたいに記憶があるのか。…それが大事だな。

 よし。落ち着いてきたら思考が回り始めた気がするぞ。

 えーと、どうすれば良いんだ?


「高嶺龍人!早く出てこい!」

「あ、はいっ!」


 そうそう。模擬戦やるんだった。

 色々確認するのは…模擬戦か終わってからだな。

 先ずは勝つ。そして、街立魔法学院に入学する。これだけらブラさないようにしないと。

 つーか、俺に地球の記憶があるってのが周りにバレないようにしないとな。どんなに動揺しても心の声は洩らさない。

 よし。

 勝つぞ。


 意を決した俺は模擬戦を行う場所に向かって歩く。

 俺たちの周りで行われてる模擬戦は2つ。殆どの人が3回の模擬戦を終えてるから、俺の3戦目がほぼ最後かな?

 1番多い時で同時に5つの模擬戦が行われてたし。

 って事はだよ?皆に見られながら模擬戦すんの…?

 やだ。恥ずかしい。

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