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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-39.重光〜対峙〜

 紅葉原に聳え立つ巨大紅葉。その中程に登ったミリアは腕を組み、眉間に皺を寄せていた。


「こんなの…あったかな?」


 ミリアが見ているのは、巨大紅葉の幹が5つに分かれている部分だ。分岐している各4つの幹、それぞれの付け根部分近くに、分かりやすく何かを入れる窪みがあったのだ。

 実は、過去に何度か巨大紅葉に登った事があるミリアだが(紅葉原を象徴する木なので本来は登ってはいけない)、その時にこんな窪みがあった記憶は無い。


(私、ここで寝っ転がって空を見てたから…間違いないと思うんだけどな。)


 シンボルツリーを勝手に登り、寝っ転がって空を眺める。

 ヤンチャ少女そのものである。今もその雰囲気が時々顔を覗かせるのが、ミリアの魅力でもある。


「あっ、ここに象徴宝石を置けそうな気がするかも。」


 ミリアは緋宝石、涅真珠、地軸晶、桜乱玉を取り出した。それぞれの象徴宝石は淡く光を放っている。


「これで間違っていたら…どうなっちゃうのかな?」


 秘宝を手に入れるために、失敗は出来ないという状況に、ミリアは窪みへ象徴宝石を置いてみることを躊躇ってしまう。

 …のは、数秒だった。


「よしっ!置いてみよっ。」


 一瞬悩んだのはなんだったの!?という潔さで、ミリアは4つの象徴宝石をそれぞれの幹にポン!と置く。


 その結果。


 …何も起きなかった。


「うーん、やっぱりそんな簡単じゃないよねっ。」


 腕を組んで首を捻ってしまう。

 そもそも、巨大紅葉に象徴宝石を置くのが間違っているのか。それとも何かが足りないのか。

 もしかしたら…象徴宝石の置く位置が決まっているのか。


「……あれ?こんなのあったかな。」


 よく見ると、各象徴宝石を設置した中心部分…幹の丁度中心にあたる場所が盛り上がっていた。しかも、盛り上がった頂点部分には手の形に似た窪みが出来ていた。

 なんとも分かりやすい変化。しかし。


「これ、大丈夫かな。」


 分かりやすすぎるが故に、一抹の不安が過ぎる。

 例えば、秘宝を取りに来た者を試す罠の可能性。

 例えば、手を置いたら木の幹がバクッと手を噛みちぎるとか…。


「そうなったら…痛いよねっ。」


 当たり前である。

 誰かに相談できれば良いのだが…


「えいっ!」


 ミリアはほぼ躊躇せずに手を窪みに突っ込んだ。そして、何も起きなかった(2回目)。

 と、思ったのも束の間。


「あれ…?手が抜けないよ。」


 引っ張っても、押しても、うんともすんとも言わない。

 木の幹が手首を覆うように形を変化させており、ミリアの手はスッポリと抜けなくなっていた。

 更に変化は止まらない。

 4箇所に設置した象徴宝石らが淡い光を次第に強めていく。

 これから何が起きるのかが不明確であるが故に、ミリアの心のうちに不安が差し込んでくる。

 このまま手が抜けなかったら、この場所で生活しなきゃいけないのかな。とか。

 トイレにはどうやって行ったら良いんだろう。とか。

 そんな不安が次々と頭に浮かぶのだ。

 …そんな程度の不安。とも言えるが。

だが、幸いな事にミリアの頭には「これから何をすれば良いのか」が自然と浮かんできたのだった。それは直感的なもの。もしくは巨大紅葉がミリアの心に直接イメージを送ってきたかのように。


「えっと、こう…かな?」


 体の中心から【不死鳥】のエネルギーを手に送っていく。

 ボゥっと手から木の幹にエネルギーが流れていくのを感じると、象徴宝石の淡い光が少しずつ強くなっていった。

 それに鼓動するかのように、ミリアが手を突っ込んだ盛り上がった幹が形を変化させていく。


「え。これって…!」


 目の前で起きた現象。そして、現れた物を見たミリアは目を見開くのだった。

 それは…。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 織田重光。

 銀と紅葉の都に在する織田家当主。

 徳川家と長年政権争いを続ける名家に生まれた重光は、表裏の顔に大きな差がある性格をしている。

 表の顔は敬語を使う紳士。裏の顔は言葉遣いが悪く、人を見下す人物。

 そんな重光だが、幼き頃は「純粋無垢」だった。

 父親と母親の愛情をたっぷり受け、よく笑い、よく泣き、よく怒る。感情表現の豊かな、皆から愛される子供だった。

 重光自身も人見知りをする事無く、誰にでも気軽に話しかけ、すぐに懐いていた。

 そうであるからから、名家の御曹司である重光は「重光様」と呼ばれるのが妥当であるが、織田家の皆からは「しげちゃん」と呼ばれる程に皆から愛されていたのである。


 そんな重光の幼少期に大きな影響を与えた人物がいた。その者の名は藤吉郎。所謂、織田家の教育係である。




「あははっ!こっちだよ〜!」


 幼き重光はイタズラをして逃げる。という事が日常茶飯事だった。幼き少年であるのだから当然の姿であり、皆がそれを微笑ましく思っていた。


「しげ坊ちゃん!またそんなイタズラをして!どこにいきましたっ!?」


 ズダダダダ!!!と、喧しい足音を立てて走るのは藤吉郎。織田家に仕える重光の教育係である。

 面倒見が良く、重光と一緒に全力で遊び、勉強の時間は一切の妥協を許さない…そんなしっかり者で、重光がある意味で憧れる存在であった。


「キシシっ。ここに隠れていれば藤吉郎には見つからないぞぉ。」


 廊下に置いていある高価な壺の中でほくそ笑む重光は、藤吉郎が通り過ぎたら次はどんなイタズラをしようか。と考えを巡らす。

 あと1時間程度で勉強の時間になるので、それまでは全力で遊びきるつもりなのだ。

 両親からは「遊びも勉強も全力で」と常日頃から言われている重光は、本当に全てのことを全力で楽しんでいるのだ。親の教えを守る優秀な息子である。


「…静かになった。そろそろ藤吉郎は別の場所に行ったかな?」


 ドタバタ走りの音が聞こえなくなった事を確認した重光は壺の中から這い出そうと、頭上を見上げた。


「…ひぃっ!?????」


 そこに居たのは、爛々と光る1つ目。地獄の底から睨みつけるかのようなその眼は…。


「しげ坊ちゃん…見つけましたよ。」


 壺の入り口からグワっと手が突っ込まれ、首根っこを掴まれた重光は、いとも簡単に壺から引き摺り出されてしまう。


「あはは…。藤吉郎は見つけるのが上手だね。」

「それはどうもお褒めに預かりまして光栄にございます…ってちっがぁう!イタズラをするにも程がありますよ!?」


 重光を持ち上げながら怒る藤吉郎を見る他の家臣からクスクスと笑いが漏れる。


「そ、そうかな?カッコ良いよ?」

 

 ツーっと目を逸らした重光の顔がグイっと藤吉郎の方へ強制的に戻される。


「ぷっ。」


 重光の口から思わず笑いが漏れる。

 それもそのはず。藤吉郎の顔は、真っ黒に塗られており、顔の中心に目があるかのような「独創的&ハイセンスな一つ目」の絵?が書かれていたのだから。


「ぷっ。じゃぁありません!水で洗っても落ちないんですよ!?私はどうやって買い物に行けば良いのですか!?」

「そのまま?」

「このまま行ったら化け物扱いで直ぐにお縄頂戴ですよ!?」

「で、でも…カッコよいよ?」

「確かに遠くから見てもひとつ目で存在感バッチリですよね。って、ちっがぁう!」


 スッパァン!と重光のおでこにチョップが炸裂した!!


「いったぁぁい!?暴力反対だよ!?」

「悪い事をしたらそれ相応の罰が与えられるのです!」

「…顔、怖いよ。」

「これは生まれつき…って、しげ坊ちゃんがひとつ目にしたせいですよね!?」

「あははっ!たすけてぇぇっ!」


 重光と藤吉郎のコントみたいなやり取りは、織田家にとっては日常茶飯事であり、これがなければ1日が始まらない。と言われる程度には「皆が楽しみにしている毎日の可愛らしいイベント」になっていた。

 どんなイタズラをしても、起こりはするけど最後には笑って許してくれる藤吉郎が、重光は大好きだった。


「…今日の勉強は、漢字500問からやりますよ。」

「えっ。」

「問答無用です。その後は時間制限付きでそろばんの計算と、植物の名前問題、虫の雄雌見分け問題等をやりましょうか。今日は全力で過去に勉強した内容をどれだけ覚えているか。を確認しましょう。そうですね。それがいい。そして、あまりにも点数が悪かったら、今日の夜ご飯に出る予定の甘味は無しという事で。」

「…藤吉郎の意地悪。」

「えぇえぇそうでしょうとも。しげ坊ちゃんも私の顔に大分意地悪をしてくれましたからね。目には目を。意地悪には意地悪を。です。」

「やだぁ!!!」

「ダメです。」

「う…うえぇぇぇぇん。」

「……!?ぼ、ぼっちゃん?」

「ひっっく…ひぐっ…ぼ、僕がわる…ひっっく。」

「こ、これは…いいすぎまし…ぐぼぶちゅるほっ!?」


 泣き始めた重光に狼狽えて、宥めようとした藤吉郎の口の中に生卵がダイブ。懐に仕込ませていた生卵が大活躍を決めた瞬間である!


「へっへぇん。逃げるが勝ち!」


 生卵アタックに目を白黒させる藤吉郎の拘束から逃げ出した重光は、廊下を全力ダッシュして逃走を図るのだった。卵の殻がグシャッと藤吉郎の頭に乗り、その風貌をより怪しくさせたのは偶然だ。


「ごほっ…がほはっ…。な、なまたまご…ぶへぇ…。こうなったら、捕まえ次第勉強地獄ですからねぇ!!!」


 生卵を顔から滴らせるひとつ目お化けが疾走する!


 なんとも平和な日常だった。


 そう。あの時までは。

 今日に至るまで、織田家の外部には一才漏れていない「アレ」が起きるまでは。





 …………………………………。


「なんで…。」


 引き攣った顔で見上げる重光の顔にドス黒い液体がポツポツと滴った。


「なんで…ですか。イチイチ伝える義理もありませんが、敢えて言うなら…当初の予定通りだから。ですかね。」


 天井に刺さっていた刀を引き抜くと、それによって縫い留められていた人体がベシャリと床に落ちる。下に溜まっていた液体が四方へ飛び散るが、重光にそんな事を気にする余裕は無かった。

 今天井から落ちたのは父。重光の隣に倒れてピクピクとか弱く痙攣するのは母だったのだから。


「なんで…。」


 重光の前に立つ男…藤吉郎は、いつもの優しい瞳とはうって変わった冷め切った感情の無い瞳で重光を見下している。「なんで」としか言えない重光に失望したのだろうか。深く、長い溜め息を吐くと、僅かに頬を歪めた。

 その笑みが、恐ろしく、深く濁った理解のできない感情を表しているようで。

 重光の全身が粟立つ。


「貴方の両親を殺したのは、目的の為。…ほんの少し、私の両親を殺されたという感情もありますが。あくまでもそれは付随的なもの。そして、貴方の命もいずれ貰い受けます。然るべき時に、然るべき方法で。」

「ふ…ざけんなぁ!」


 震える膝に、折れそうな心に鞭を打って必死に立ち上がる。


「俺は…俺は……信じていたのに…!」

「信じる。という事曖昧なものに頼る事が間違いですよ。私が憎いですか?憎いでしょう。それならば、力を付けてみるが良いでしょう。私に復讐出来るだけの力を身に付けてみなさい。そうすれば、再び相見える際に貴方が貴方のために私の命を獲れるかもしれませんね。」

「復讐…。」

「そうです。子供の貴方に理解出来るかは知りませんが。」


 藤吉郎は右手に持つ刀を無造作に動かし、重光の右肩を貫いた。


「ぐ…!?ぎゃぁぁぁっぁ!」


 突き抜ける痛み、焼きつくような熱が全身を走り抜ける。


「痛いでしょう?体の痛みは。心の痛みはもっと痛い。直らない。故に、罪は重い。その痛み…心に刻むが良い。」


 ズッ…と刀を引き抜いた藤吉郎は懐から出したハンカチで血糊を拭くと、静かに歩き出した。


「ま…まて…。」


 激痛に視界がチカチカする重光が必死に呼び止めようとするが、藤吉郎は意に介さず部屋から出ていった。


 後に残されたのは両親の骸と、血を流して意識を手放しかけている重光。


 薄れゆく意識の中で、「力の重要性」を心と体に刻みつけられた重光は誓った。

 もう、誰にも負けない。と。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 重光が無造作に振るった古武将の戦刀が周囲の人々を斬り伏せていく。血飛沫が舞い、苦悶に呻く声が残酷極まりないBGMを奏でる。


「全て、壊れれば良いのです。そして、私がイチから創生してあげましょう。」


 切先を天に向けた古武将の戦刀の刀身にドス黒い赤線が脈打った。

 禍々しい雰囲気を放つ戦刀から放たれるエネルギーは、重光の精神にも影響を及ぼしていた。


「壊れろ。死ね。全ては…平穏の為に。」


 破壊衝動が心の内でのたうち回り、重光の両眼が赤に染まる。

 目に映る全てが…両親を殺した藤吉郎に見え、全てを壊す。壊さなければならない。という強迫観念に縛られていく。


「叫べ。乞うが良い。全身全霊で立ち向かって来るが良い。」


 鬼。そう評しても誰も違和感を感じない相貌で重光は殺戮を重ねていく。

 だが、そんな悪役がいつまでも自由に出来る訳がない。


 そう。現れるのだ。ヒーローが。


「もう…それ以上は許さないんだからっ!」


 お決まりの台詞を叫びながら広場の中央に降り立ったのは、ミリア。


「お前は…ミューチュエルのミリアか。」


 重光は炉端の小石を見るかのような冷め切った眼で、細劔を構えるミリアを眺めた。


「織田重光…なんでこんな酷い事をするのっ!?」

「酷い事?これのどこが酷いと言うのか。平和を守る為には犠牲が必要。これはそれと同義。古い体制にしがみ付く小蠅どもを駆逐しているにすぎない。」

「そんな…。」


 己の行為に一切の罪悪感を感じていない重光の返答に、ミリアは思わず下唇を噛み締める。星を導く役を背負っているはずの…政権を争う者が、人民の命を粗末に扱うことに耐えられなかったのだ。


「ん…?お前の持つ武器…不思議な力を秘めているな。どこで手に入れた。」

「そんなの言うわけないんだからっ!」

「ふん。くだらん。ならば、力尽くで奪うのみ。」


 重光はミリアの返答を意に介さない。己の意にそぐわない者は斬り捨てれば良いのだから。単純。故に極悪。

 赤い双眼が細められ、ドス黒い線が脈打つ古武将の戦刀が空を疾る。


「んあっ!?」


 その斬撃を知覚できたのは一瞬。ほぼ条件反射で体の前に構えた細劔へ強烈な衝撃が加えられ、ミリアは吹き飛ばされた。


(何、今の…!?)


 空中で体制を立て直して着地したミリアが見たのは…赤黒い魔力を纏う重光の姿だった。

 何がどう。…等と考える猶予は無かった。

 重光の姿が消えたかと思うと、ミリアの上下左右から怒涛の如く斬撃が浴びせられたのだ。


「くぅっ…!」


 辛うじて斬撃を防いでいくが、剣の技量か、武器の差か、ミリアは防戦に回ることしか出来なかった。


「温い。その程度で某の道を阻むと言うのか。」

「ぐ…貴方の…暴挙は許せないのっ!」

「良く言う。お主はその偽善で仲間を失ったのではないか。名前はブリティ…と言ったか。織田家忍者の一員となった者。元はお主の仲間だろう。」

「ブリティが…いるの!?」

「無論。中々見所がある者だ。今も織田家忍者と共に広場のどこかでこの戦いを見ているだろうよ。して…ミリア。お前はその偽善で人々を助け、仲間に見放されたのだろう。糞みたいな偽善は誰の心も助けない。そうであるが故の結果。」

「そんな事…ないんだからっ。」

「潔く諦めろ。お前は誰も救えない。誰も助けてくれない。偽善であるが故に孤独。孤独であるが故に我儘。己の無力を知れ。そして、死ね。」


 重光は回し蹴りでミリアを吹き飛ばすと、古武将の戦刀を鞘に仕舞い、左肩を前に半身を向けた。

 対するミリアは肩で荒い息をしながらも、不屈の眼で重光を見据える。


「…気に食わないな。こうまで実力差が合っても諦めないとは。」

「私は…誰かが困っていたら、放っておけないの。私は、皆が幸せになってほしいの。だからね、諦めない。全部、諦めない。今は離れちゃったけど、ブリティだって…いつか分かってくれるんだから!!!」

「下らん。散れ。」


 抜刀術。神速の如き速度で抜き放たれた古武将の戦刀は、漆赤黒の斬撃を飛翔させた。

 莫大なエネルギーが込められた斬撃は、途上に居る人や物を全て破壊し、ミリアへ襲いかかる。

 重光の回し蹴りで胴を打ち抜かれたミリアは、まだ呼吸を整える事が出来ていない。魔力を練ろうにも上手くいかず、迫り来る暴力を見る事しかできなかった。

 それでも、ミリアは「負けない」という思いを捨てずに立ち向かう。

 少しでも生き残る可能性を高めるために細劔へ魔力を込め…


「偉そうな為政者っていうのは、鼻につくのにゃ。」


 クルクルっとミリアと漆赤黒斬撃の間に着地したのは、織田家忍者の一員となった筈のブリティだった。

 両手のサンドクローがギラリと輝き、巨大な砂爪を形成して重光の斬撃と相殺してみせる。


 パァン!!!


 と、砂が舞い散り降り注ぐ。


「ブリティ…どうして…?」


 顔だけ振り向いたブリティはミリアを見てニカっと笑った。


「にゃはは。ミリア、裏切ったフリをしてごめんなのにゃ。」

「え、フリ?」

「そうなのにゃ。ブリティの気持ちを確かめるために一度離れてみたのにゃ。」


 そう言ってくれれば良かったのに。

 という表情が顔に出てしまうミリアを見て、ブリティはグイっと親指を立てた。


「テキナカにゃ。」

「ふぇ?」

「敵を騙すには仲間から。にゃ。」


 中々の策略ぶりである。本人の策略かどうかはさて置き。


「それに、織田忍者の一員になったからクルルに色々情報も流せたのにゃ。ブリティは立派なスパイを実行したのにゃ。」

「そっか…。嫌われちゃったのかなって思ってたんだ。……グス…良かったぁ……!」


 両眼に涙を浮かべながら笑うミリアを見たブリティの頬が赤く染まる。


「う、うにゃ。そ、それににゃ…ブリティはこれで分かったのにゃ。ブリティはミリアとクルルが大好きなのにゃ!」

「ありがと…!…………あれ?」

「う…。」


 誰か1人忘れているのでは?という微妙な沈黙が流れる。


「うにゃぁ…龍人も…ちょっとは好きにゃ。」

「そっかぁ…!良かった。ブリティ、ありがと。」

「うにゃぁ〜〜。」


 何故かミリアとブリティの間にラブコメ風雰囲気が流れ始めた。


「感動の再会はそれくらいにしてもらおうか。」


 重光が古武将の戦刀を横へブン!と振り下ろす。当然、地面が斬撃によって裂かれ、軌道上に居た人々が吹き飛んでいく。それこそギャグのような勢いで。


「1人が2人になった程度で某に対抗出来るとでも?」


 殺気が迸る。


「対抗するのにゃ。」

「うん。私も、本気を出すよ。この不死鳥の細劔があれば全力を出せるはず。」

「ふん。雑魚がいくら集まろうとも、圧倒的強者に勝てる道理は無いに等しい。見せてもらおうか。悪足掻きを。」


 3者は其々の武器を構え、同時に動き出した。

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