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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-33.象徴宝石

 ミリアとザキシャは其々の武器を構え、互いの動きを静かに注視していた。

 ザキシャは両手に苦無を。ミリアはレイピアを。2人の間の空間が静かに揺らめいている。


「先に聞いておきたい事があるよっ。」

「何さね。」

「どうして私達の実力を知りたいの?」

「ふんっ。それこそ、実力を測った後じゃなきゃぁ言えないさね。」

「そっか…うんっ。分かった!じゃあ、もういくねっ!」


 それで納得するんかい!と、俺が心の中で突っ込んでいる間に戦闘が開始された。

 タタン!とステップを踏んだ音が聞こえた瞬間に、ミリアの刺突がザキシャの胸元へ吸い込まれていく。


 キィン!


「ふっ。甘いさね。」


 体を回転させる動作に苦無での防御を連動させ、ミリアの細劔を弾くと下方からの斬り上げを放つ。防御と反撃が一体となった無駄のない動き。…ザキシャの奴、俺が思っているより遥かに強いぞ。


「私だって負けないんだから!えいっ!」


 苦無と細劔が踊るように火花を散らしていく。


「ははっ!中々の実力さね!」

「ありがとうっ!でも、負けないんだからっ。」

「気概も十分。けどね、戦いっていうのは…裏をかいた者が勝つのさ。」


 ザキシャの動きに変化が起きた。それまで刺突を弾いていたのに対し、アクロバティックな動きで回避行動を取ったんだ。流れるような動きでミリアの背後を取ると、両手の苦無で斬りつけた。

 ……いや、違う?ミリアの体が宙に浮いたぞ!?


「ぐ…うっ!?」


 宙で腹部を押さえたミリアが苦悶の声を洩らす。…そうか。苦無での斬撃と見せかけて、蹴り上げたのか。


「甘いねぇ!?」


 ザキシャが蹴り上げた右脚を軸にして左脚の踵落としをミリアへ叩きつける。…なんだ今の。右脚が空中に固定されているみたいな動きをしたんだけど。


「うぅ!!」


 背中に踵落としが直撃したミリアは、衝撃に体をのけ反らせながらも床に手を突いて威力を相殺しつつザキシャから距離を取って着地した。

 今の攻撃で何も出来なかったら床に叩き付けられて負けていたな。ザキシャ…想像よりずっと強いし、戦闘技術が半端ない。

 確か黒水と雪の都で最初に見たときは怪盗アーベルハイトとの戦いで風っぽい魔法は使っていたっけか。今の所その風すら使っていない。

 ミリアも魔法は使っていないけど、体術や剣術(苦無術?)ではザキシャに分がある気がする。

 この勝負…大丈夫かな。


「まだ…まだだよっ!」


 ミリアが再びザキシャに向かっていく。負けないという闘志を漲らせた瞳を受けて、ザキシャも瞳を爛々と輝かせた。


「その気概、好みさね!さぁ、もっともっと力を見せてみな!」


 なんか、ザキシャからSMの女王様的な雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。…服装が際どいからそう思えるだけかな。うん。きっとそうだ。


 それにしても、これからどう動くのが良いのやら。ブリティは織田陣営に行っちまうし、この星では秘宝の情報は全く無かった。唯一入手出来たのは地軸晶のみ。

 白金と紅葉の都に帰ったら、きっと選挙戦は佳境に入っているだろ。

 古武将の戦刀の行方だって不明なままだし。もしかしたら、クルルが情報を入手しているかもしれないけど…。

 ミューチュエルの活動目的である「DONが白金と紅葉の都を私物化するのを防ぐ」っていうのを実現できるビジョンも現時点では全く見えない。DONに対抗する力をつけるために、ミリアの使う焔に耐えられる都圏の秘宝を手に入れたいのに、イマイチそこも進展がないし。寧ろブリティが居なくなって戦力マイナスじゃん。

 こうなると、俺とミリアがもっと強くなるか…新しい仲間を見つける必要がある。

 でも…そんなすぐに仲間が見つかるとは思えないし。これ、結構状況としてはヤバいんじゃないか?


 あれこれと考えを巡らせている間にも、2人の戦いは激しさを増していく。


 キィィィィン!!


 金属が弾かれる甲高い音が響く。


「いやぁ!!痺れるさね!ミリア、アンタ最高だよ!」


 見れば、両手の苦無を失ってミリアの細劔を首元に突き付けられたザキシャが目をトロンとさせながら笑っていた。え、もしかして…SMのS側じゃなくて…M側の人なのか?


「まさかあんな速度で刺突を繰り出せるとは思わなかったさね。」

「はぁ…はぁ…これで、私の勝ちだよっ。」

「合格さね。けど、甘さがあるのは否めないさね。」


 ザキシャの右脚がヒョイっと動いてミリアの脚を掬い取った。


「きゃっ!?」


 ペタンと尻もちをつくミリア。


「はい。床に倒れたのはアンタさね。試合に負けて勝負に勝った…というトコロさね。」

「うぅっ!」


 普通に可愛らしく尻もちを突いてしまって恥ずかしいいのか、顔を赤らめて頬っぺたを膨らませるミリア。


「…ミリア、アンタ…その顔はやめた方がいいさね。無駄にファンを作る事になるよ。」

「え?」

「ほれ。」


 ザキシャが後ろを親指で指すと、そこにはミリアをガン見する徳川忍者の面々がいた。いや、忍者頭巾で顔のほとんどが見えないから確実では無いけど…目からハートマークが浮かんでいるように見える!


「えっと、ご、ごめんねっ?」


 どう反応したら良いか分からなかったんだろうね。ミリアは首を横にコテンと倒し、人差し指を唇の下に添えながら誤った。


 ズッキュゥゥゥゥン!!!!

 徳川忍者達はハートを撃ち抜かれた!!!


 …天性のアイドル気質なのか!?そうなのか!?


「はぁ…男はバカばっかりさね。」

「ほぇ?」

「まぁいいさね。本題に入るよ。」

「あ、うん。」


 ミリアをジッと見つめたザキシャは静かに右手を差し出した。


「アンタの実力を認めるさね。よって、アタイ…これは徳川舞頼の意志と取って貰って構わない…はアンタ達ミューチュエルに共闘を申し込むさね。」

「えっ!?」


 うわ…想定外の展開。


「今、ここで決めてもらうさね。他の誰でもない…ミリア、アンタの意志で。」

「私の?でも…なんで共闘なの?」

「簡単さね。今、白金と紅葉の都の勢力図は厄介さね。徳川家と織田家の選挙戦もそうだけど…アンタ達も知っての通り、織田家のバックにはDONが付いているさね。単純に考えて、今の徳川家は1対2と数的不利。だから、DONの暗躍を止める為に手を貸して欲しいのさ。」

「対DON…。」


 おいおい。いきなり確信に迫る話だな。

 俺達ミューチュエルの目的はDONによる白金と紅葉の都私物化を防ぐ事。

 つまり、ザキシャの提案は完全に合致している。

 けど…それだけで決定して良い問題じゃない。


 ミリアもそれを分かっているはず。右の頬に人差し指を当てて、考えながらザキシャへの返答を始めた。

 そのポーズを見た徳川忍者達が静かにざわめいたのを…俺は見逃さないからな!


「あのね…確かに私達はDONを止めたいって思っているよ。それと同時に織田家と徳川家も止める対象になる可能性があるの。私は…私達は皆が幸せになる未来を目指しているんだっ。徳川家は、本当にそこへ向かっているのかな。」

「難しい事を言うさね。」

「ううん。難しくないよ。私は…今のままじゃぁ駄目だって思っているんだ。」


 うわっ。バッサリ「今の徳川家政権じゃ駄目」って断定したぞ。

 ザキシャから発せられる気配が…少し剣呑なものに変わった気が。


「…その心は?」

「織田家が幸せにならないでしょ?」

「はっ…?」


 空気が一瞬…止まった。

 ザキシャは「理解不能」のように呆けた表情で口を開けているし、徳川忍者達は「時間停止」技を受けたのか、変なポーズで固まっている。

 …コント集団なのか?そうなのか?


「アンタ…それ、本気で言っているのかい?」

「うん。」

「はは……ははははっ!!じゃあ、聞くけど、アンタが考える理想の未来は何さね?」

「理想の未来……。」


 少しだけ考える素振りを見せたミリアは、揺るぎない視線でザキシャを見据えて口を開く。


「……………………が良いと思うんだっ。」


 その内容はあまりにも理想的で。

 でも、だからこそ。


「アンタ…最高だね。」

「姉御…!?」


 ミリアの言葉を否定しないザキシャに徳川忍者がどよめく。


「今の発言は許すまじきもの!この場で処断も厭わぬべきでは!?」

「五月蝿いさね。あたいの本分は徳川家の為に働く事ではないんだよ。今は金で雇われているから。それだけさね。アタイはこれまで暗殺者として色々な事案に関わってきた。その中で知っていること。それは…常識に囚われない発想こそが、革新をもたらすって事さね。」

「しかし…!」

「あぁん?何さね。アタイは何もしないよ?もし、強要しようって言うなら報酬を10倍にしてもらわなければ無理さね。さもなくば…アタイは徳川家用心棒を辞めるさね。」

「そ、そんな横暴な事が叶うと…」

「叶うんだよ。それがアタイさね。」


 有無を言わさないザキシャの態度に徳川忍者達は顔を見合わせて動く事が出来ない。


「はん。臆病者共だねぇ。さて…ミューチュエルの2人。」

「なに?」

「アタイ達はこのまま退散するよ。どうせ秘宝も手に入らなかったしね。本来なら、無理やりにでもアンタらを徳川陣営に取り込もうって算段だったけど、さっきの話で気が変わったさね。アンタらは自由に動くべきだ。」


 楽しそうに笑みを浮かべたザキシャはクルッと踵を返すと徳川忍者達の方へ歩いていく。


「ほら。帰るよ。これ以上この星にいる理由は無いさね。早く戻って舞頼の護衛をした方が良いだろうよ。織田忍者共が先に戻ったからね。下手をするとこのタイミングで強襲されるさね。」

「…!!よし、皆、即帰投するぞ!」


 徳川忍者達は自分達が不在の状態で織田忍者が先に戻ったという事態の緊急性を理解したのか、とっても素早く立ち去っていった。

 ホールから出ていく時にザキシャが俺たちに向けて、こっそりとウインクをしてきたのは…どういう意味だったんだろうか。まさか「女王様的プレイのお誘…」ゲフンゲフン。


「なんか…あっと言う間に皆帰っていったねっ。」

「だな。」


 塔の最上階に車でがかなり大変だったから、他の2陣営がアッサリ帰ったのは…意外というかなんと言うか。


「これからどうする?」

「ん〜…取り敢えず私達も白金と紅葉の都に帰ろっか。ちょっと話したい事もあるし。」

「話したい事?」

「うん。後でねっ。クルルとブリティの事についても話さないといけないし…。」


 ん…?話したい事ってブリティの事じゃないのか。

 ミリアはグンっと伸びをするとスタスタと歩き始めた。


「龍人っいこっ?」

「お、おう。」


 こうして俺達も黄土と砂塵の都を後にしたのだった。

 因みに、ミリアはちゃっかりと地軸晶を持って帰ってきていた。なんだかんだ確りしているのね。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ミューチュエルにて。


 バーカウンター兼キッチンの椅子に俺、ミリア、クルルの3人が座っていた。

 俺達の表情は深刻だ。

 ここに来るまで、色々な問題に出会ってきた。

 そして、その殆どの問題が解決出来ていないという事実。


 まず、都圏の秘宝について。高い焔耐性を持つという秘宝を手に入れられれば、ミリアの戦闘能力が大幅に上がる。現状、強い焔を使うとミリアの細劔は熱に負けて壊れてしまう。ここが解消できれば、織田家擁するDONの暗躍を止める為の戦力アップを狙う事が出来る。

 次に徳川家と織田家の選挙問題。ミューチュエルとしてはどちらの陣営が政権を獲得する事が「白金と紅葉の都に住む皆が幸せになる」事に繋がるのかを見定める事は出来ていない。

 ここから派生して…黒水と雪の都で行方がわからなくなった古武将の戦刀。これを持っているのが誰なのかで、各陣営の戦力バランスが大きく変わる。

 DONの目的。白金と紅葉の都をテーマパーク化させるつもり。って話しだけど、民衆に話している自然を残しつつっていうのは嘘で、最終的には自然を残すつもりなんか一切ないらしい。という説が有力だ。っていうか、DONがテーマパーク事業を推し進める本当の目的が以前不明なまま。

 あ…そう言えば、怪盗アーベルハイトってのもいたっけ。やつの正体は香橋光秀。最初に出会ったのは赤火と雨の都でドレイムと戦っている時だったかな。良く良く考えてみると、俺たちが他の星に行く時にちょいちょい現れている気がする。光秀が怪盗として何をしたかったのかは…若干不明だけど、またどっかで遭遇する気がする。

 で、最後の問題が「ブリティ家出問題」だ。こればっかしは本人の意思だからどうにも出来ないけど…。どうにかコンタクトを取って戻ってきてもらいたい。って考えるのは俺だけじゃぁ無いはずだ。


 こうやって振り返ってみると、俺がミューチュエルのメンバーに加わってから、結構な問題が出てきているんだよね。…本当にこれらの問題を解決出来るのか。


 そんなこんなで諸々の問題について3人で情報整理をしている時だった。

 ミリアがとんでも発言をした。


「あのね、黄土と砂塵の都にあった石碑なんだけど…あそこに書かれていた文字ね、読めたんだ。」

「え?」

「それ、本当なの?」

「うん。あそこで読めるって言うと、徳川とか織田の人達に色々言われそうだから静かにしていたんだけどね。」

「なんて…書いてあったんだ?」

「えっと…、紅葉が舞う大樹の幹に、象徴を捧げよ。さすれば不死鳥がその姿を現さん。だったかな。なんで読めたのかも分からないんだけどねっ。文字を見たら自然と意味が理解できたの。」


 なんだそりゃ。それじゃぁまるでミリアの為に作られた石碑みたいじゃん。


「その紅葉が舞う大樹の幹っていうのは…紅葉原にある巨大紅葉の事よね。あとは象徴…。」


 顎に指を当てて考え込むクルル。

 俺にはさっぱり分からないぞ。象徴ってなんだし。各里のオブジェでも作ればよいのかね。

 あれ…?象徴?……んー、、、どこかで聞いた事があるワードのような。


 ポンっとクルルが手の平を打ち合わせた。


「分かった…気がするわ。多分…になっちゃうけど、各里を象徴する宝石の事じゃないかしら。」

「宝石…あっ!」


 ミリアがバーカウンターの端に置かれた地軸晶を指差した。


「これっ?」

「そうね。都圏には全部で4つの象徴宝石があるわ。赤火と雨の都は緋宝石、黒水と雪の都は涅真珠、黄土と砂塵の都は地軸晶、蒼木と桜の都には櫻乱玉。これで4つね。白金と紅葉の里に象徴宝石が何故ないのかしらって思っていたけれど、きっと秘宝を保管しているから。なのかしら。」

「あ。」

「どうしたのかしら?」


 思わず声を出しちまった俺にクルルが薄目で睨んでくる。いや、話している所に割り込んだのは悪かったけど、そこまで睨まなくても。


「いや、あのさ、黒水と雪の都にある大聖堂内の大広間…知ってるか?」

「えぇ。何度か入った事があるわね。」

「あの壁面と天井って絵画になってるじゃん。あの絵って…この象徴宝石と宝石を描いていたんじゃないかな。」

「龍人、それ、ビンゴよ。」


 クルルがビシッと親指を立てる。


「とにかく、巨大紅葉の所へ象徴宝石を持っていく必要があるわね。」

「あれ…俺達、全部の象徴宝石って持ってたっけ?」


 緋宝石と櫻乱玉は俺が持ってきて、地軸晶はミリアが。涅真珠は…確か怪盗アーベルハイトの襲撃で所在不明なんだよな。

 となると、もう一度黒水と雪の都に行って探す必要があんのか。…さみーんだよな。あの星。


「象徴宝石は全部あるわよ。」

「だよな…。あの寒い星を探し回るのは嫌だけど、頑張るか!」

「だから、全部あるのよ。」

「そりゃぁ寒いのは嫌なのはわかるけど………えっ?」


 何を今更?みたいな顔で見られても困るんですが…!


「もしかして、涅真珠は前から持っていたのか?」

「…?」


 クルルの眉が顰められた。俺、何か変な事言ったか?


「ミリア、もしかして言っていないのかしら?」


 何故ここでミリア?


「えっと…うん。なんとなく言うタイミングがなくて。」

「悪意なしだったんだから、そこまで気にする必要はないわよ。むしろ、そのお陰で今の状況なのだし。」


 ん?つまりどういう事なんだ?

 俺と視線が合ったミリアは瞳を左右に動かし、ほんの少しだけ逡巡した後に独白した。


「あのね…黒水と雪の都で怪盗アーベルハイトが暴れている時に、大聖堂の近くに落ちていたからね、綺麗だなぁって思って持って帰ってきちゃったんだ。」

「えっ。」

「うん。」


 ちょい待て。ビークールおれ。

 うむうむ。つまり、情報を整理すると…。


「所在不明になっている涅真珠は、それと知らずにミューチュエルで保管しているって事か?」


 クルルが澄まし顔で頷く。


「その通りよ。正確に言うと、持って帰ってきた時はそうとは知らなかったけど、保管する際には涅真珠って分かっていたわ。」

「つまり、ミリアが知らずに持って帰ってきて、涅真珠って分かったクルルが誰にも言わずくすねたと?」

「表現はムカつくけど、その通りね。」


 ぐはっ。クルルに脛を蹴られた!!


「…いってぇ。……あ、だから徳川舞頼の所に呼ばれた時に疑うような目を向けられたのか。」

「まぁ…あれは私達が容疑者の1人。程度のものだったと思うわよ。恐らく怪盗アーベルハイトが犯人だと考えているでしょうし。」

「そっすか…。何にせよ、象徴宝石が全部あるから秘宝が手に入れられるって事になるんだよな?」

「えぇ。今までの情報に間違いがなければだけれど。」

「そうしたら…今から行くか?」

「うんっ!私も早く動いたほうが良いと思うなっ。」

「そうね。選挙もまもなく投票日だし、織田家も徳川家もどう動くか分からないわ。」


 方針が決まったな。これで秘宝ってのが手に入れば…ミリアが焔の力を制限して使わなくて良くなる。そうすれば、ミューチュエルとしての戦力は飛躍的に向上するはず。

 ブリティが居なくなった分くらいは…穴埋めできるかな?


 ドンドンドン!!


 あら、こんな時にお客さんか?


「私が開けるねっ。」


 ミリアがトトトトッと駆け寄ってドアを開けると、中に入ってきたのは…チヨばあちゃんだった。

 月に1回くらい大量の荷物運びを依頼してくれる常連さんだ。

 前回の依頼から1ヶ月経ったっけ?


「うむ。ブリティがメンバーから外れたのは予想外じゃったが…表情は悪くないと見えるのぉ。」


 のんびりとした様子で。それなのに、何故か隙を見せない佇まいでミューチュエルの中に入ってきたチヨばぁちゃんは俺達を見回した。


「依頼じゃ。アタシの娘を守って欲しいのじゃ。」

「娘さんを?こんな時にどういう事かしら。内容によっては選挙後の対応しか出来ないわ。」

「そうじゃろうのぉ。じゃが、こう言っても同じ返答になるかのぉ?古武将の戦刀の所在が分かったのじゃ。それを所有する狂気の者から守って欲しいのじゃ。」


 それは、白金と紅葉の都に於ける…俺達の運命が加速する依頼だった。

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