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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-25.恥ずかしいんだからね!

 羞恥心に震えるミリアによる怒り(というか八つ当たり?)の閃撃で瞬く間に分解された中型ゴーレム…部位毎に床に転がる姿は、若干の同情を誘うものだった。

 けど、まぁゴーレムだし。向こうから襲いかかってきたし…同情の余地は無いか。いや、今回はミリアから戦いに行ったような?でもミリアも恥ずかしい言葉を叫んでいたし、発散先は必要だよね。

 ともあれ、俺とブリティがポカンと見ている間に勝利を収めたミリアは、荒い息を吐きながら近づいてくる。


「はいっ!次に行くよっ?」


 有無を言わさない様子に、俺とブリティは首を縦に振る事しか出来なかった。

 今ここで従わないと、本当の鬼を見ることになる…と本能が警鐘を鳴らしていた。ミリアの背後にゆらりと鬼らしき姿が見えたのは、きっと気のせいでは無いはずだ。


「よし。また床が降りてきたから、3階に行こうっ。さぁ、次はどんな事を言わせるつもりなのかな!?」


 あぁ…自棄っぱちになっている。もうミリアの暴走は止められないのかもしれない。

 そんな感じのなんとも言えない感情を抱きつつ、3階に到着すると、例の如くフロアの中央には台座があり、例の如く恥ずかしい文言が書かれていた。


「…!?」


 その文言を見たミリアが硬直する。

 1階、2階で叫んだ言葉と繋げて考えると…相当に恥ずかしいセリフの連続だ。


「ミリア…。」

「ううん。龍人、何も言わないで。私、大丈夫だから。」


 硬直を解いたミリアは毅然とした様子で息を吸い込んだ。


「流石に大き過ぎるわ!無理!やめて!」


 ずがぁぁぁぁぁぁん!!!


 大型ゴーレムが現れた!!

 姿形は小型、中型と同じだけど、大きさが半端ない。20メートルくらいあんじゃないかな。

 堂々と恥ずかしい言葉を叫び切ったミリアは、その堂々とした姿に目をまんまるくして見ていたブリティへ物凄い勢いで振り返った。顔が晴れ晴れとしているように見えるのは気のせいか!?


「ブリティ。あなたの出番っ!」

「うにゃ?ブリティかにゃ?」

「そうよ。2階では何もしなかったでしょ?それに、ブリティのお陰で先に進む方法が分かったけど、恥ずかしさと…女の子としての尊厳を投げ捨てながら、私は頑張ったんだからねっ!倒すくらいしてっ!」

「うにゃ!?それはミリアの勝手な言い分にゃ。これだけ大きかったら皆で…」

「へぇ…ブリティはこんなのも1人で倒せないんだ。思っていたよりも弱いんだね。」


 ピィン!!とブリティの尻尾と耳が逆立った。


「…言うのにゃ。なら、見るが良いにゃ。ブリティの本気を。」

「俺も一緒にやろ…」

「龍人は黙っているのにゃ。隅っこで座っているのにゃ。手出しをしたら毛玉にしてやるのにゃ。」

「…はい。」


 いやいや、人間をどうやって毛玉にすんだよ。

 とは思ったけど、相当お怒りの様子だったので、静かに従う事にする。


「こんなの一瞬にゃ。」


 ブリティの両手にシャッキィィン!!とサンドクローが装着された。


「侵入者。排除スル。」


 大型ゴーレムの肩がガコガコガコン!と開き、ミサイルが複数発射された!

 え、ロボットですか?男の子のロマンが詰まっているように見えるのは気のせいだろうか。秘密機構とかありそうだぞ。


「こんなの朝煮干し前なのにゃ。」


 サンドクローが閃き、砂の刃がミサイルを両断していく。


 ドォン!ドォン!ドォン!


 分たれたミサイルが連続で爆発し、それらが発生させる爆炎を縫うようにしてブリティが宙へ躍り出る。

 キラァン!とサンドクローが光った。


「死にさらせにゃ!砂陣【乱斬首】!」


 ブリティのスキルか!初めて見たぞ。ってか、スキル名物騒だな!

 ブワッと砂刃が無数に出現して大型ゴーレムを上から下へ斬り刻んでいく。

 ズッパァン!!!と足まで斬りつけて砂が波のように広がり、忍者のようなポーズで着地していたブリティへ収束していった。


「終わりにゃ。」


 収束した砂が創り出したのは…大型ゴーレムよりも巨大な猫の手。

 それは容赦なく振り下ろされて、大型ゴーレムを叩き潰した。

 あまりの衝撃に床の一部が崩落。グチャグチャに潰されたゴーレムも階下へ落ちていった。


「どうにゃ。」

「やるじゃない。」


 大型ゴーレムを倒したブリティとミリアは、往年のライバルのように睨み合うと「フン!」と顔を背け合う。

 …仲直りしようよ。



 さて、無事?に4階へたどり着いた俺たちは、束の間の休息を取っていた。

 4階には「最後の休憩フロア」とご丁寧に書いてあって、俺たちはその文字を信じて休息する事にしたって訳だ。丁寧過ぎて信じて良いのか若干不安になったけどね。


「なぁ、この塔…ちょっと意味が分からないんだけど。俺だけ?」

「ううん。私も変だと思う。変な事を叫ばせるし、秘宝があるにしては…欲に塗れていると思うな。」

「だよなぁ。なんであんな恥ずかしい言葉を叫ばなきゃいけないのかも謎だし。この塔の1番上には何があるんだか。」

「でも…これだけ嫌らしい内容だから、ちゃんと貴重な物はあるんじゃないかな?」

「だと良いな。」


 俺とミリアが話していると、少し離れた所に座っていたブリティが会話に参加してきた。


「他にも謎があるのにゃ。一緒のタイミングで塔に入った織田家と徳川家の奴らがいないのにゃ。ブリティ達は特に遅いスピードで攻略してもいないから、普通はバッティングするはずなのにゃ。」

「そりゃそうだな。3つのうち2つはハズレの入口でどっかに飛ばされたとかかね。」

「そうだったら良いんだけど…なのにゃ。ともかく、いずれ奴らと会う可能性は常に考慮しておく必要があるのにゃ。」

「だなぁ。」


 …ブリティが話し始めたらミリアが黙った。

 休憩を始めたからずっとこの調子だ。ブリティとミリアが直接会話をする事がない。

 全ての会話が俺を介して行われている。


「まぁ、今はこの塔を上に進む事を最優先で考えよう。まだ何階まであるのかも分からないしな。」

「うにゃ。」


 こうして、30分位かな?の時間を休んだ俺達は5階へ進む。


 そこに待っていたのは…。


 下の階と同じく台座。そして、その隣に転がる1メートル位の大きさのクリスタルだった。

 クリスタルに触ったら爆発か!?…とか警戒したけど、少し離れた所からブリティの砂魔法でツンツンしたり、ミリアの炎をチロチロさせてみても何も起きなかったので、恐る恐るクリスタルに近付く。


「…重いのにゃ。持ち上がらないのにゃ。」

「私もやってみる。」


 クリスタルだから重そうではあるけど、持ち上がらないって…そんな事あんのかな。

 ミリアもクリスタルに手を添えて持ち上げようとるけど…。


「んんんん…!!駄目っ。ピクリとも動かないよっ。床にくっ付いてるのかな?っていう位に動かないっ。」


 えぇ?もしかして、持ち上げられるように見えて持ち上げられない的なオブジェなのか?とんだイジワル仕様だな。


「一体どういう仕掛けだよ…。どれどれっと。」


 何が面白くて持ち上げられそうで持ち上げられないオブジェがあるんだか………。ん?


「龍人…怪力男なのかにゃ?」


 え?普通に持ち上がったんだけど。重いどころか、メッチャクチャ軽いんですが。


「これ、軽いぞ?」

「そーゆー怪力アピールは不要にゃ。」

「持ってみって。」


 片手で持ったクリスタルをブリティに渡してみる。


 ガァァァン!!


「…嘘吐きにゃ。こんなの持てないのにゃ。」


 クリスタルが床に突き刺さった!?え、俺そんな力持ちだったのか?もしかして、気付かない内に怪力覚醒してたとか?…んな訳あるかぃ!


「いやいや、何かおかしいぞ。俺、そんな怪力じゃないし。」


 もう一度クリスタルに手を伸ばし…持ってみる。


 ヒョイっ!


「軽い…な。」


 手を離してみる。


 ズガァァァン!!……床に突き刺さった。ははぁん…これは。


「分かったっ!龍人が持つ時だけ軽くなってるんじゃないっ?」

「多分な。そうなると…俺がクリスタルを台座に嵌めるしかないのか。」


 台座には「クリスタルをココに置いてね!」と言わんばかりに分かりやすいクリスタル型の窪みがあるからな。

 大型ゴーレムを瞬殺したブリティでもなく、塔に入る結界を開けたミリアでもなく…1番活躍していない俺だけがクリスタルを動かせる理由が不明だけど。

 でも、状況的には俺がクリスタルを置く事に意味があるんだろうな。

 まぁ…やるしかないか。

 恐る恐るクリスタルを持ち、台座の窪みに合わせて置いてみる。


 ブゥゥン


 淡く発光すると、クリスタルの周りに文字が浮かび上がる。


 『主の記憶より試練を生成。6階…完了。7階…完了。8階…完了。9階…完了。10階…完了。主と挑戦者の認証中……エラー。試練挑戦者不足。調整中……不足分に対して主を挑戦者に設定…調整完了。……試練の設定が完了しました。6階へお進み下さい。』


 どういうこった。

 この表示された文字の主って…クリスタルを置いた俺の事か?でも、俺が主って意味が分からないよな。もしかしたら、この塔の上に主ってのがいて、その記憶を使って試練を生成したのか…?

 ん〜イマイチぱっとしないけど…。ミリアとブリティへ視線を送ると力強く頷かれた。


「龍人、やるしかないのにゃ。」

「そうだね。誰が主とか…関係ないよ。分からないもんっ。」


 疑問だらけの塔攻略だけど、こーゆー前向きな意見は大事だ。少し前向きになれたもんな。


「ははっ。そうだな。じゃぁ…6階に試練が待っているらしいし、行ってみるか。」

「そうなのにゃ。前向きに気楽に行くのにゃ。」

「うんっ!頑張ろうね。」


 良い雰囲気でまとまって…と思ったのも束の間。「はっ!?」と我に返ったブリティとミリアはチラッと目線を交わし、プイッと顔を背け合った。もう良い加減、仲直りすれば良いのに。意地になっちゃってる感がプンプンだぜ。


「はいはい。いきますよー。」


 例の如く上から降りてきた天井が繰り抜かれた円盤に乗り、俺達は6階へ向ったのだった。


 この先、想像も付かない試練が待っているとは思わずに。

次回より本格的に塔の試練が龍人達に襲い掛かる。…予定です!

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