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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-24.攻略開始

久々の更新です。

今週もう一回…更新できるように頑張ります!

 塔の中へ入って白い廊下を進む事、5分くらいかな?

 俺たちは円形のホールに到着していた。ホールの中は塔の外見と同じく白一色。

 白すぎて若干遠近感が分かりにくい。それに壁自体が発光しているのか、暗くもなく、眩しくもなくって印象だ。不思議素材だね。


「なぁんにも無いね。」

「だな。」

「寧ろ閉じ込められた感じにゃ。どうしたら良いのにゃ?」

「「「ん〜。」」」


 俺とミリア、ブリティは3人で首を傾げてしまった。

 塔に入ったものの何も無い。何も起きないという…ある意味安心設計。

 さてさて、本当にどうしたら良いんだろうか。中に入ったらモンスターがいるとか、なんか謎解きが始まるとかってのを予想していたんだけど、まさかの何も無い。だもんな。


「確かこの塔って上に伸びていたのにゃ。…天井をブチ壊すかにゃ?」


 流石のブリティさん。発想が野蛮だ。


「ん〜それもありだけど、先ずはこの塔がどういうモノなのかが分からないとじゃないか?変に天井を壊した瞬間に、塔が爆発したら…俺たちもお陀仏だろ。」

「むむっ、そこまでは考えていなかったのにゃ。」


 俺とブリティが攻略法を話している横で、天井を見上げていたミリアが声を上げた。


「あっ。天井に何かあるよ?」


 ミリアが指差す先を見ると、天井の中心部分に何か…書かれてるのか?


「見てくるのにゃ。」


 魔法で発生させた砂に乗って天井近くまで上がったブリティは、天井に書かれているものを確認すると、上から叫んできた。


「ココを押せって書いてあるのにゃ!押すにゃ〜。」

「えっ。」


 カチっ。と小さな音が聞こえた。

 罠の可能性もあるよね?

 すると、ゴゴゴゴ…と地響きが。


「ブリティ!何で押しちゃったの!?」


 スチャっと降りてきたブリティは、押した事を非難するミリアを見て目を吊り上げた。…えぇ、普通に怖いんですけど。


「あぁん?押せって書いてあったから押したのにゃ。問題あるかにゃ?」

「あるよっ。これで皆が危険になったらどうするの?」

「あぁん?他に何も無いんだから、押さなきゃ何も始まらないのにゃ。そんなのも分からないのにゃ?」

「分かるけど…もう少し慎重に。」

「ミリアって本当に五月蝿いのにゃ。」

「そんな…!」


 うわっ。また喧嘩が始まったんだけど。この2人、前はラブラブだったのに蒼木と桜の都に行って以来、本当に険悪な関係だ。なんとか仲直りして貰えないかな…。

 因みにこんな痴話喧嘩?的なのをしている間も地響きは続いているんだよね。ある意味、緊張感ゼロ。


「おっ。」


 喧嘩している2人を眺めていると、ホールの中央に四角い台座みたいな物が迫り上がってきた。


「2人共、そろそろ言い合いは終わらせよう。何か出てきたぞ。」

「…ほ〜ら見るにゃ。ボタンを押したからにゃ。ザマァ見ろにゃ。」

「…ごめん。」


 ドヤ顔で悪態をつくブリティと、ガチで落ち込むミリア。一緒に居るのが本当に嫌なんだけど。

 …取り敢えず気を取り直して台座を調べるか。


 台座には手形みたいなのが描かれた丸い窪みがあった。ブリティとミリアに目線を送ると、無言で頷かれた。なるほど俺がやれって事だな。

 恐る恐る窪みに手を入れてみると…変化が起きる。

 ブゥンと文字が浮かび上がった。しかも、その文字を叫ばなければいけない。と書かれている。


「これは、どういう事なんだろうな。」

「これぞ試練にゃ。」

「まぁそうなんだけど。」

「でも…これ、恥ずかしいね。」

「試練に挑む者はってなっているから、誰がやるかだな。」

「ミリアがやるのにゃ。」

「えっ!?」

「この台座を出したのはブリティにゃ。」

「それは…。」

「問答無用にゃ。」


 ギロリとブリティの「睨み付ける」が発動した。

 普通にイジメみたいになってるんだけど。


「ブリティ…」

「龍人は黙るのにゃ。」


 諌めようとしたら睨まれた!?


「龍人、ごめんね。大丈夫。私…やる。」


 若干涙目のミリアは、覚悟を決めたのか台座の前で仁王立ちをした。

 一応補足しておくけど、仁王立ちの指定はない。


「わ…わ…。」


 顔を真っ赤にしたミリアは一旦口を噤むと、チラッと俺を見た。

 …なんで俺を見る?

 そして、もう一度前を向いて、思い切り息を吸い込んで…叫んだ!


「私の心は貴方達のものよ!私を滅茶苦茶にして!」


 …お〜ぅ。聞いているだけでも恥ずかしいなコレ。


 そして…まさかの。


「何も起きないのにゃ。」

「うそ…私、頑張ったのに。」


 ミリアは両手両膝を床について激しく落ち込んだ!

 と、思ったら。


「あ、出てきたのにゃ。」

「えぇ…私の『恥ずかしいが無駄だった落ち込み』を返してよー!!」


 ミリアの心の叫びがホール内に反響する。


「おい!そんなん言ってる場合じゃない!来るぞ!!」


 天井から降下してきたのは小型のゴーレムが10体。複数の正方形ブロックが集まって人型を形成したような、若干チープに見えるゴーレムだ。


「排除スル。」


 無機質な声。ゴーレムって低い声のイメージがあったんだけど、ロボットみたいな機械的な声だ。意外。


 ゴーレムはドカドカと騒がしい様子で直進し、四角い手を叩きつけてきた。


「ブリティ、ミリア、散開して各個撃破でいいか!?」

「勿論にゃ。」

「私もオッケーだよ!」


 おし。一先ず1体ずつ確実に倒すのが吉。だろ。


「うっらぁぁ!!」


 ゴーレムの攻撃をサイドステップで避け、体を横回転させる遠心力をパワーに乗せた木刀の横薙ぎによる一撃を胴体へ叩きこむ。

 衝撃に体が傾いだゴーレムの首がぐるぐる回り、俺を捉えて止まった。


「ガガ…ピッ!敵勢力ノ抵抗ヲ確認。排除モードカラ殲滅モードへ移行。」


 …今、不穏なワードが発せられたね。


 ガシャン!ゴション!ガガガン!!


 機械が変形する。みたいな音を響かせながらゴーレムの姿が変わっていく。


「…二刀流の剣士か?」


 ゴーレムは等身が高くなり、両手は四角から鋭利な剣先に変化していた。

 なんつーか、普通に俺の戦闘スタイルを真似られたみたいでやなんだけど。


「滅スル。」


 ワードチョイス怖!?

 って、確か殲滅モードとか言ってたっけ。まぁ…それなら納得か?

 ゴーレムは剣になった両手を振り回しながら突撃してきた。


 キィン!キィン!!


「意外に…強い!」


 ゴーレムは手が剣であるからリーチは短いんだけど、格闘術の攻撃全てが斬撃になったイメージで各攻撃の切り返しが俺の木刀よりも速い。

 しかも、リーチが短いゴーレムは俺の懐に入ろうと動き、俺は木刀の間合に合わせようと後退しながらの応酬。踏み込みと攻撃を上手く合わせられなくて…防戦に回らざるを得ない。


「くっ…マジか!?」


 慌てて屈んだ俺の頭頂部を剣先が通り過ぎていった。髪の毛切れた?寧ろ頭皮を削られた感覚が…!?

 ゴーレム1体の相手で一杯一杯になっていたけど、普通に考えれば1人3体は相手をしなきゃいけないんだよな。


「うらぁ!」


 姿勢を低くしてゴーレムの下を潜り抜けるような動きに斬撃を組み合わせる。


 ガギィン!


 ん?とても綺麗に弾かれたんですが。

 そっか。ゴーレムって一般的には斬撃耐性があって、弱点は打撃か。俺の戦闘スタイル不利じゃん。


「クタバレ!下郎!!」


 言葉遣いが年代を遡っていませんかねぇ!?

 対抗手段が打撃だとするなら…。


「魔力形状変化で刃の形にしていた魔力を…こうだ!」


 木刀を覆う魔力が、そのまま木刀の形をトレースする。

 イメージは木刀の打撃力強化だ。

 魔力で身体能力強化を出来るのと同様に、木刀自体の強化を魔力形状変化で行う事で…単純に打撃力の強化は出来るはず。


「お前らが…くたばれ!!龍劔術【双刀6連閃】!」


 ガガガガガガ!と連続打撃を叩き込む。


「ピーガガ…不測ノジタ……イ。」


 打撃で歪んだ体を傾けたゴーレムは、ガクッガクッと動くと沈黙した。

 おっし、これなら倒せる!

 続け様にもう1体のゴーレムを滅多打ちにして戦闘不能へ追い込んだ俺はブリティとミリアの方を向いた。


「ブリティ!ミリア!こいつらは打撃が有効……マジか。」


 ブリティの周りには体を陥没させて横たわるゴーレムが5体。

 ミリアの周りには体がブロック毎に分解されて散らばるゴーレムが3体。

 …普通に自信喪失するんだけど。


「全て殴ったのにゃ。」

「細劔で間接みたいな所を狙うの大変だったよ…!」

「…さいでっか。」


 うん。改めて俺が1番弱いって事を再認識させられたぜ!

 けど、ここで落ち込んでいるように見られる訳にはいかない。…男として。無駄な意地かもしれないけど。


「ゴーレムを全部倒したら…どうなるんだろうな。」

「単純に考えたら上の階に進めるのにゃ。」

「そんな安易にいくか?」


 ウィーン


 お、天井が丸くくり抜かれた円盤みたいになって下に降りてきたぞ。


「安易にいったにゃ。」

「…だな。」


なんか、この塔に入ってから俺…ダサくない?


「じゃあ、乗ってみよっかっ!」


 ミリアに続いて俺とブリティが乗ると、円盤は静かに上昇していった。この動力がどうなってるのかが気になるのは俺だけか?やっぱ魔力なのかな。


「……アンビリーバボーにゃ。」


 2階に到着した俺たちの目に飛び込んできたのは、まさかの1階と全く同じ光景。

 唯一違うのは、上がってきた俺達のすぐ隣に台座が最初から設置されている点かな。今回は天井のボタンを押さなくて良いらしい。序でに言うと、窪みもなくて…それでも恥ずかしいワードは相変わらず刻まれていた。


 つーか、秘宝を探すためにこの塔に来たけど…本当に合ってるのかな?若干ふざけた要素がある謎の試練を謎に受けているだけのような気が…。何か意味があるんだろうか。


 そんな事を考えながらも、俺はブリティにならってミリアへ視線を送っていた。


「えーっと…、今回も私なのかなっ?」

「なのにゃ。」

「文面的に女性口調だしな。」

「うぅっ…順番とか…」

「却下にゃ。」


 有無を言わせない即却下にミリアは膝から崩れ落ちた。プルプルと震える全身が、内に渦巻く羞恥心と全力で戦っていることを窺わせる。


「さぁやるにゃ。それやるにゃ。」


 ブリティさんよ…煽り方が。


「……もう、なるようになれだよねっ!」


 ミリアがいきなり吹っ切れた!?


「全力で言っちゃうんだからね!!」


 吹っ切れたってか、ヤケになってんのか。

 思い切り息を吸い込んだミリアは、ヤケッパチな様子で叫んだ。


「貴方の大きなそれで私を満足させてみせなさい!」


 ……うん。最早何も言うまい。俺はこの塔を作ったのが相当な変人だと確信しているよ。


 ゴゴゴゴゴ……!


 1階と同じく地響きと共に出現したのはまたもやゴーレムが8体。さっきよりも大きいから、今回は中型ゴーレムって感じなのかな。


「うぅ……恥ずかしいんだからねっ!もう!!」


 羞恥に火照るミリア出陣!

 取り残された俺とブリティは「どうする?」と顔を見合わせるのだった。

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