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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-22.襲撃

 ヒュゥゥゥゥン…ドガァン!


「…なんだ!?」


 心地良く寝ていたのに、爆撃みたいな音と衝撃に叩き起こされたんだが!?

 って視界が…砂埃でほぼゼロだ。今の爆発?か何かで砂漠の砂が巻き上がったのか。

 原因はまた巨大生物の襲来か!?


「………こっちか!」


 背後から感じた殺気に反応して、魔力強化した木刀を後方へ突き出す。


 ギィィン!!

 受け止められた?この感触…生物じゃないぞ。


「ははぁん。やるさね。織田の犬め。」


 話したって事は、相手は人間か。

 ん?織田の犬…。もしかして、俺は織田忍者の一員って思われてるのか?

 それに、なんか聞いた事がある声のような。


 ふっと木刀に掛かる圧力が消える。

 しかも、気配が遠ざかっていった。諦めたのか?いや、この状況でそんな訳無いと思うんだが。


「うわっ!?」


 いきなり足元が盛り上がった。更に砂の塊がフックパンチみたいに連続で…!


 ドッパァン!ドッパァン!


 木刀で砂の塊を弾き飛ばす。1つ1つの砂の塊の質量が半端ない。1つ弾き飛ばす毎に手へ響く衝撃がかなり強い。


「こうなったら…!」


 砂埃でほぼ視界ゼロの状況にも関わらず、相手の攻撃は正確に俺を捉えている。

 つまり、何かしらの方法でこちらの位置が把握されているって事だ。

 加えて砂塊は全て俺の前方から飛んできている。多少の方向は違うにしても、全ての攻撃の軌道を逆算して…凡その中心点に相手がいるはずだ。


「っっらぁぁぁ!!」


 普通なら遠距離攻撃での迎撃をする。けど、俺が選択したのは突撃だ。

 俺が相手なら遠距離攻撃で撹乱しつつ、特大の遠距離攻撃を叩き込む。それを防ぐには…こちらから接近するしかない。

 砂埃の中を突き進む。

 俺の予想がただしければ…この辺りに砂塊を飛ばしてくる相手がいるはず。


「…!そこだぁ!」

「うにゃ!?想定外の突進なのにゃ!」

「私がフォローするね!」


 …ホワッツ?


 ガギギギギギギギギン!!

 連続の刺突が砂埃を突き抜けて襲い掛かってきたのを、ギリギリのラインで防ぎつつも回避に成功する。

 あっぶねぇ。もう一歩踏み出してたら蜂の巣にされてたぞ。


 ってゆーか、今の声って。


「とっりゃぁぁぁ!!!」


 なんとな〜く間抜けに聞こえなくもない掛け声と共に、前方から攻撃…いや、人が飛び込んできた。


「アレ!?思ったより近…きゃっ!?」

「ぬわっ!?」


 いきなり突っ込んできた人影に反応できず、タックルを受けた俺は後ろに倒れ込んでしまう。


「……あれ?龍人君?」

「おう。」


 仰向けに倒れた俺の目の前には、ミリアの顔が超至近距離にあった。

 パッと見では熱く抱擁するカップルに見えなくもない。


「うにゃ!?やっぱり龍人なのにゃ!ラッキースケベ野郎なのにゃ!」


 そして、やっぱりもう1人はブリティか。

 となると、さっき聞こえた声は…。


「はん。生きていたか。しぶとさはピカイチさね。」


 抱き合って倒れ込む俺とミリアを見下ろすように立っていたのは…ザキシャだった。


「ブリティ、砂埃を一担落ち着かせるんだ。織田忍者相手に奇襲したってのに、相手が龍人っていうのは…想定外の事態さね。辺りに織田忍者がいるはずさね。」

「うにゃ。了解にゃ。」


 ブリティが指を鳴らすと一瞬で砂埃が晴れていく。


「龍人君…。」


 ミリアが何かを言いたそうだったけど、人差し指をミリアの口に当てて「静かに」と伝える。

 再会を喜ぶよりも、今は大事なことがある。


「織田忍者…この星にまで来ていたとは、呆れるほどの執念さね。」

「徳川忍者。お前らの思い通りにはさせない。」


 俺達を挟んで徳川陣営と織田陣営の忍者部隊が対峙していた。

 今ここで戦闘が始まって、巻き添えをくらうのは…なんとしても回避しないと。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 どこまでも青く晴れ渡る空。静かに抜け行く風。

 早朝にも関わらずジリジリと焼き付けてくる太陽。


 俺の頬を伝い、顎から落ちた汗が音もなく砂に吸い込まれていく。

 砂の色が汗の水分で濃く変色するも、数秒後には数多の砂が水分を奪っていき…何もなかったかのように元の色に戻ってしまう。


 そして、俺の左右で構えを取って身動きをしない…徳川忍者と織田忍者。


 現在、白金と紅葉の都で展開されている選挙戦における政敵同士の睨み合いは、5分は続いていた。

 これだけは言いたい。砂漠で身動きせずに待つ5分って…すっごい長く感じるし、無益なんですが!!暑い、暑い、暑いっす!


「あの〜。」


 ビクッ!!!????と全員が視線を向ける。

 全員からもの凄い形相で睨み付けられたブリティは「うにゃ!?」と両耳と尻尾の毛を逆立てながら、人差し指を伸ばした。


「提案にゃ。」


 この場の状況で提案。

 全面戦争か、1人ずつの勝ち抜き方式か。もしくは何かしらのゲーム方式で無益な殺生を避ける方向か。

 どちらにせよ、ブリティが何を言うかでこの場の行末が決まってしまう雰囲気だった。そのブリティが碌でもない事を言うのは目に見えているし…やべーなコレ。


「休戦するのにゃ。」

「なに!?」

「…面白い事を言うねぇ。」


 想像と180度反対方向の提案に、思わず場の空気が緩んだ。


「何故、こやつらと休戦しろと言うのだ!?」

「まぁまぁ…そう怒鳴らず、聞いてみるさね。」


 織田忍者のリーダーは「言語道断!」とばかしに憤慨しているけど、ザキシャはどことなく楽しそうにも見える。


「お前らは馬鹿なのにゃ。ブリティ達全員の目的は、この星のどこかにある塔…もしくは古代遺跡なのにゃ。その場所は結界で隠されている…とザキシャが言っていたのにゃ。つまり、頑張らないと入れないのにゃ!協力した方が楽なのにゃ。ブリティは頑張りたくないのにゃ。」


 最後に本音が出たな。

 けど、建設的な意見であることに間違いない。

 現にどちらの陣営も「どうするよ?」みたいに顔を見合わせているし。


「…ブリティの言う事は最もさね。」


 ザキシャの言葉に織田忍者リーダーが首肯した。


「あぁ、それは認めよう。ただし、我らは…恐らくは同じものを狙う者。最終的に敵対する事は否めない。故に、ブリティの提案を受け入れる事で我らの不利益に繋がる可能性を否定できない。故に…」


 おっと、このままだとマズイ。口を挟むか。


「なぁ。そんならさ、塔だか遺跡の中に入るまでは協力。裏切りも無し。互いに人質を出し合う。そんで、塔の中に入る直前で人質の交換。入った瞬間から敵対関係再会ってのでどうだ?まぁ、仲間を見捨てない前提の話にはなるけどさ。」

「ふむ…我らはそれなら良い。」

「アタイ達も構わないさね。」

「よし、じゃぁ人質は各陣営のリーダーで。」

「なっ!?」

「…いいねぇ。」

「それって…私?」


 驚く織田忍者リーダー、楽しそうに笑うザキシャ、驚くミリア。

 三者三様の反応だけど、中途半端な人質って効果が無い可能性が高いからな。リーダーを切り捨てる事は出来ないだろうし。


「そうだ。1番効果的な人質だろ?」



 …という事で、速やかに人質交換1回目が実施された。




「さて、どうやってこの先にある結界を解除するか…が問題さね。」

「うむ。普通に考えれば結界の発生源を解除するのが妥当だが、この広さ…相当手間が掛かる事は想像に難くない。」


 両手両足を縛られた状態で織田忍者リーダーとザキシャが作戦会議をしている。

 …そこまで普通に話し合えるなら、人質交換不要だったのでは?と思うのは気のせいかな。まぁ、互いに人質となっているからこそ、変な打算とか無しに素直な作戦会議を出来ている可能性も高いか。


「アタイの予想だけど、この結界は…時空を捩れさせているさね。アンタ達と会う前に一度試したんだけど、結界の方向へ歩いていても気付けば反対方向に歩いていたさね。」

「そうなると…。むぅ。これは。」


 ん?時空を捻じ曲げているって分かっているなら、対処方法もあるんじゃないのか?


「なんでソコで黙っちまうんだ?」


 織田忍者リーダーは俺を見ると肩を竦めた。


「うむ。時空が捻じ曲がっているという事は、我らで言う時空忍術と同義になるのだ。発生源を探す事が困難である以上、対応忍術で干渉をして結界をすり抜けるしか無いのだが…時空忍術のような超高等忍術を使える物はこの場にいない。」

「うん。アタイ達も右に同じさね。織田忍者は爆遁、徳川忍者は木遁がベースさね。」


 ふぅむ。


「だったら、無理やり結界に穴を開けるしかないんじゃないか?」

「…どれだけの力が必要か分からないさね。下手すると全員が力を使いすぎて動けなくなるさね。そうしたら、結界の中に入れても党の攻略が出来ない。」

「手詰まりなのにゃ!!!」


 シャッキーン!とギャルピースポーズを決めるブリティに、ザキシャが眉をピクピクさせた。


「あんたねぇ…。」

「あの。」


 躊躇いがちにミリアが指をピコンと上げた。

 きっと手を挙げたいんだろうけど、縛られているからね。


「もしかしたら…なんだけど、私、この結界を通れるようにできるかも?」


 …今、なんと?

 俺を含めた全員がポカァンとミリアを見ることになったのだった。

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