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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-21.蛇!蛇!蛇!

 蛇。ニョロニョロと移動し、敵に巻き付いて締め付けて息の根を奪う。時には噛みつき、毒を注入して敵を殺害する。凶暴の代名詞とも言える生物だ。

 アナコンダ等の巨大な蛇は仔牛程度なら丸呑みする事ができるらしい。これは、上顎と下顎が伸縮性に富んだ丈夫な靭帯で繋がれているから…とかなんとか。よく分からないけど、口が大きく開くって事かね。人で言うなら顎が外れた状態とでも言うのかな。

 そんなアナコンダの大きさは3メートルから6メートル。特に大きいと9メートルの全長を誇る個体も居るらしい。


「んで、コイツらは20メートルくらいあると…!ひぃっ!?」


 体を弓みたいにして巨大蛇の噛みつきを回避する。

 ガスっ!と床に牙が突き立ち、ジュウジュウと煙が上がる。

 毒…?溶けてるし、牙から強酸でも分泌されてるのでは!?マジ怖い!


「くぬぅ!6体の巨大蛇…強敵に他ならぬ!」


 俺と赤黒忍者3人が巨大蛇を撹乱し、後衛の赤黒忍者5人が爆遁なるものを使って巨大蛇を倒していく。

 即興ながらセオリー通りの戦術。これによって確実に1体ずつ巨大蛇は倒れていき…。


「ってなる筈だったんだけどな!」


 横から噛み付いてきた蛇の下顎を、全力を乗せた木刀で打ち上げる。


「グッシャァ!」


 顔を数秒逸らすも、巨大蛇はすぐに噛みつき攻撃を再開する。噛みつきってか、丸呑み攻撃だな。

 少し離れたところでは後衛の赤黒忍者5人が爆遁を放ちつつ、騒いでいた。


「どうすんですか!?爆遁の効果が薄いですよ!」

「うぬぅ…!あの鱗、流石は砂漠に生息する蛇!熱耐性が高いみたいだ。」

「高いみたいだ……じゃなくて、次善策を練らないと全滅しますが!?」


 爆遁の威力からみても実力はありそうなのに、テンションが学生みたいなノリだ。

 ……ってか、そろそろ俺を含めた前衛4人は体力の限界なんだが。巨大蛇の動きがトリッキーすぎて、回避も困難。体力の消耗がやばい。

 このままだと、消耗戦で負けちまう。

 んなら、守るだけじゃなくて攻めるしかない。


「………なぁ。」

「なんだ!?」

「鱗がダメなら…ここしか無いだろ。」


 俺の指が指した先を見た前衛の赤黒忍者1人がギョッとする。


「いや…それ、自殺行為だと…。」

「俺がやる。お前は全力で頼んだ。」

「へぃ…!?」


 赤黒忍者が素っ頓狂な声を上げているけど、無視して走り出す。なんたって、周りには6体も巨大蛇が居るんだ。少しの躊躇が即死亡に直結する。


「フシャァァ!!」


 俺の接近に気付いた巨大蛇が丸呑みにせんと顎門を開いた。


「……シャ!?」

「何やってんだアイツ!?」


 蛇と赤黒忍者後衛の驚きも無理は無いかな。

 だって、俺が迷わず巨大蛇の口の中に飛び込んだんだもんね。

 ガッキィン!と顎門が閉じられ、俺は丸呑みに……


「グシャァ!?」


 ならなかった。いや、正直際どいラインかなぁとは思ったんだけど、なんとかなった。


「今だ!!俺は気にせずぶっ放せ!」

「お、おう!」


 巨大蛇の口内から叫んだ俺へ前衛の赤黒忍者が飛び出す。

 早くしてくれよ…!木刀に魔力形成で巨大刃を形成して、蛇の口が閉じるのを防いでいるとは言え、どこまで耐えられるか。


「う、上手く避けろよ!」

「大丈夫だ!」

「よしっ…!爆遁【熱線】!」


 赤黒忍者が突き出した両手から、真っ赤に光るレーザーが飛び出して巨大蛇の口内に吸い込まれる。貫通特化の攻撃か。良いチョイスだ。


「…で、俺も避けないと…!」


 熱線と入れ替わるように、全力で巨大蛇の口内から飛び出した。……あぁ、ダメだ。木刀を取るタイミングが無い!


「キシャァァァァア!?」


 口内に吸い込まれた爆遁【熱線】が蛇の後頭部を突き破って貫通した。ついでに俺の木刀も真っ二つ…!


 ドシィィン


 地響きを立てて沈黙する巨大蛇。


「成る程。あのような方法があったか。ならば我らも同様の手筈で倒そう!」

「あの程度の爆遁で倒せるのであれば2人1組でいけます!」

「うむ!早急に陣形を組み直すぞ!そこの青年!」

「なんだ!?」

「他の蛇1体を倒すまで、1体だけタゲ取りを頼む!数十秒で終わる筈だ!」


 なるほどね。巨大蛇は残り5体。8人の赤黒忍者が2人1組で戦うから4体までは対応可能で、余りの1体を俺か。他の蛇を倒したら赤黒忍者が俺が相手をする巨大蛇を引き受けてくれそうだし、問題ないかな?


「分かった!早めに頼むぞ!」

「うむ!早急に片付けようぞ!」


 なんたって、俺は木刀を1本失っている。二刀流は使えないから、木刀一本でなんとかしなきゃならない。

 くそー。属性魔法でも使えれば全然違うのに。

 噛みつきを木刀でいなし、体当たりを横ローリングで回避する。ついでに魔力の刃で斬りつけてみるけど…鱗が僅かに削れただけ。

 って…やべぇ。円を描く胴体の内側に入っちまった。このままだと巻き付かれて締め殺される。


「…さっきのバリアを出せれば、耐えられるか?」


 ガララララ!と巨大蛇が俺を中心にとぐろを巻き始める。ヤバい。時間がない。どうにかしてあのバリアを出さないと。

 確か…体の内側から魔力みたいなのが…集中して…。


 ドォン!


「ブシャァ!?」

「……!?助かった!」

「すぐに脱出しろ!仕留める!」


 別の巨大蛇を倒したらしい赤黒忍者ペアが助けに来てくれた。頭部への爆撃で怯んだ巨大蛇の締め付けから脱出した俺は、木刀を構えて駆け出し……。あれ?


 ドォン!ブシャァ!


 巨大蛇が次々と頭部を破壊されていく。

 赤黒忍者さん達素敵です!!

 という訳で、俺は特に何をするまでもなく、残りの巨大蛇討伐となったのだった。




「青年よ。助かった。名はなんと言う?」


 塔の入口前で軽く休憩をしていると、赤黒忍者のリーダーっぽい人が声を掛けてきた。

 そういや、咄嗟の戦闘協力開始!だったから自己紹介すらしてなかったな。


「俺は高嶺龍人だ。」

「ふむ…龍人。良い名だ。」


 不意に赤黒忍者リーダーの動きが止まった。


「……龍人?………龍人龍人……。」


 いきなり俺の名前を連呼し始めたんだけど。普通に怖いんだけど!

 ピコーン!と赤黒忍者リーダーの頭上に閃きマークが現れた。


「お前、あのミューチュエル新人の龍人か!」

「え?そうだけど。案外俺って名前を知られてんのな。」

「むむぅ…これは。」

「で、あんた達は?」

「……うむ。」

「うむ。じゃなくて、名乗れし。」

「………我らは織田家に使える者。織田忍者と呼ばれる事が多い。」


 ……え?


「つまり、我らと龍人は、微妙な立場の関係。という事だ。」

「成る程。一応聞くけど、この星には何をしに?」

「一応聞くが、お主も何をしに?」

「「…………。」」


 なんだこの嫌な雰囲気の探り合いは!

 面倒だし、普通に言うか。


「俺はこの星にお宝があるって聞いて探しにきたんだ。」

「そうか…我らは………同じく宝探しだ。」


 …同じ目的?そんな事あんのか?しかも、選挙で大切な時期に家臣の忍者勢を他の星に送ってまで探すお宝って。


「そのお宝って、具体的にはなんだ?」

「そこは分からぬ。遺跡の頂上にある。としか。」

「……俺は、塔の頂上にあるお宝を探している。」

「ふむ。」

「つまり、俺達は敵同士。の可能性が高いな。」

「では……ここでやり合うか?」

「………それはやめておこう。」

「うぇい?」


 臨戦態勢を取っていた赤黒忍者達がガクッとずっこける。素晴らしいチームワークだね!


「いや、だってさ、ここで対立して戦っても良い事無いだろ?謎の巨大生物はウジャウジャしてるし。」

「一理ある…か。我らの遺跡と龍人の塔は同じ可能性が高い。しかも、我らが事前入手した情報では……遺跡に入るのは非常に困難だ。」

「……困難ってどういう事だ?」

「不確定情報だ。現地で確認する方が良いだろう。一先ずは、遺跡に到着するまでは手を組むか。」

「まぁ…そうだな。そうするか。」

「そうしたら、この塔を登ろう。」

「あぁ。」

「よし。休憩を挟んだ後に塔を登るぞ。」


 …良かった。ここで対立!バトル開始!ってなったら俺に勝ち目は無いもんな。


 それから30分程休憩をして、俺達は塔の扉に手を掛けた。

 この塔が探していたものかは分からない。けど、織田忍者か入手していた「入るのが困難」っていうのには、当てはまる気がするんだよね。

 まず塔の入り口に続く穴には巨大ネズミが鎮座していたし。そもそもか砂漠の峡谷の底にある時点で見つける事も難しい。これで地上にも入り口があったら話は別だけど。


 ま、行けば分かるか。


 織田忍者の1人が塔の扉を静かに開ける。


「階段…があります。」


 ポカッ!


「いてっ!」

「アホか!階段の有無ではなく、敵の有無を報告すべきだろう!?」

「し、失礼致しましたっ!」


 リーダー…苦労してそうだな。戦闘だと頼りになるのに普段は抜けているってのは、若干親近感湧くけどね。


「よし。進もう。塔の扉は閉めていこう。基本的に警戒するのは前方のみにする。」

「「「了解。」」」


 こうして俺達は未知の党に足を踏み入れた。


 そして…約1時間後。


「到着したな。砂漠に。」

「…うむ。」


 登って登って、敵も出てこず、やっと辿り着いた扉を開けた先には、俺の言葉の通り見事に砂漠が広がっていた。

 なんだろう。微妙な脱力感を感じるのは気のせいかなぁ。

 こうなると、また別の塔を探さなきゃならないって事だよね。


「どうする?」


 織田忍者リーダーに声を掛けてみる。


「うむ。仲良く…旅をするか。」

「そうなるよねぇ。」


 織田家の忍者達と一緒に旅をするってのは凄い微妙な選択だけど、砂漠のひとり旅は普通に無理だろうから…背に腹はかえられない。

 向こうも俺を投げ出さないって事は何かしらの意図はあるんだろうけど。


「どっちに向かうんだ?」

「………さて、どうするか。」

「マジ…?」

「うむ。皆目見当も付かぬ。」


 沈黙。俺もだけど、織田忍者他7名全員がポカーンとなっている。まさか見事に砂漠で迷子になるとは。


「……だが、策はある。」


 織田忍者リーダーの策を聞いた俺達は「うわぁ…。」となったけど、それ以外に次善策が思いつく訳でもなく。


 砂漠を放浪する旅が始まった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「あぢぃ〜。みずぅ〜。」


 俺の隣を歩く織田忍者の限界が近い。

 砂漠の放浪を始めて…もう5日。オアシスなんかも見つからないし、水不足、食糧不足が深刻だ。


「……はぁ。そろそろ正午です。」


 ギンギラ太陽が容赦なく照り付けてくる。


「次は………俺の番か。」


 げっそりした様子で肩を落としたのは織田忍者リーダー。


「リーダー頑張れ。」

「…うむ。……爆遁【花火】」


 全く気合いの入っていない爆遁が空へ打ち上げられ、上空で火の花を咲かせる。

 この花火が織田忍者リーダーの策。

 リーダー曰く、塔の周辺には結界らしいものがあるらしく、花火を一定時間毎に打ち上げる事で結界の影響を確認出来る可能性が高いらしい。

 8人の忍者が1時間おきに花火を打ち上げているから、個人別で見れば8時間に1回の役回りだけど…。砂漠の過酷な環境と相まって本当に辛そうだ。


「今回も変化は………あれ………変化あり?」


 綺麗に丸く広がる花火の一部が……欠けてる?もしかして。


「リーダー。手抜きで変な形の花火にしてないよな?」

「するか!寧ろ変な形の花火の方が難しいっての!…どちらにせよ、これで目的地に着いた可能性が高い。」

「どなると、次の課題は見つけた結界をどうやって通り抜けるか。だな。」

「うむ。相当な魔力を消費する可能性が高い。一旦、あそこの岩陰で休息を取ろう。」

「了解。」


 近くにあった大岩の下へ移動して腰を落ち着ける。

 いやぁ…久々にちゃんと座った気がする。岩が変な形(踊る人?)をしているから日陰がちゃんとあるのが素晴らしい。

 日陰と日向でここまで体感温度が違うとは。


「ほら。食え。」

「お、ありがとう……え、何これ。」

「非常食だ。」

「いや、形…う◯こじゃん。」

「む?2種類の素材を巻き合わせたからの造形だぞ?2つの味が織りなすハーモニーは、非常食の割にレベルが高いと評判なのだが。」

「そ、そうか。」


 きっと、美味しいんだろうけど…食べるのを躊躇うんだが。だってう◯こだよ?完成された形ってのがまたよろしくない。

 でも、他の赤黒忍者達は躊躇なくポイポイ口に放り込んでいるんだよねぇ。


「い、いただきます。」


 観念して食べるしかないか。食べたいけど食べたくない。こんな気持ちになったの初めてだ!


「しっかり噛むんだぞ。その方が魔力回復効果も高まるから。」

「はぁい…。」


 覚悟を決めて口に放り込む。こーゆーのは勢いが大事だよね…!


「ボリっボリっ………あれ、美味い。」

「だろ?」


 なんなんだこの味!?何味って表現が難しいけど、凄い美味いんだが。満腹感と同時にジワジワと魔力が回復する感覚も広がって…神食料だなコレ。


 それからは赤黒忍者が交代で結界の様子を探りつつ、基本的には翌日の朝まで休憩を取ることになった。結界の種類、規模、形を把握して、効率的に結界を破る方針らしい。

 赤黒忍者達の爆遁ってのは便利なもので、極寒に冷える砂漠の夜は爆遁【暖域】ってので快適に過ごす事が出来た。


 いやぁ、魔法って便利だ。…魔法ってか忍術か?何が違うのっていうと、呼び方が違うだけのようにも思えるけど。


 そうして翌日、起きてすぐ。


 早々に事件が起きる。

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