2-10.幕間〜藤崎遼〜
予約投稿ミスをしていました。
更新が遅くなり、申し訳ありません。
本話は藤崎遼にスポットを当てています。
俺の名前は藤崎遼。
レフナンティに住む、極々普通の青年だ。自分で青年って言うのもどうなのかなって思うけど…。でも24歳だから青年だよね?
つい先日、俺はレフナンティのギルドに加盟する事に成功したんだ!ギルド加盟試験は相当厳しいものだと思ってたんだけど、闘技場で試験官と戦って少ししたら「君は合格だ。」って言って試験官が自分から場外になったんだよね。
想像以上にイージーだったというかなんというか…。
でも、龍人の試験官はかなり厳しい人だったらしくて、合格スレスレだったらしいんだ。俺は良い試験官に当たったのかもね。まぁ…魔獣討伐をする訳だから、命を失う危険もあるし、言っちゃえば厳しくてナンボって気もするけど…。
あ、そう言えば今名前を出した龍人…俺の幼馴染みなんだけど、本当に遅刻癖が凄いんだよね!
待ち合わせは毎回遅刻してくるし!流石にギルド加盟試験の時は時間ギリギリか数分遅れで来ると思ってたけど、まさか大事な日にも寝坊するなんて…呆れを通り越して、尊敬しちゃうよ。
まぁ…そんな寝坊男とだけど、龍人と一緒にギルドに加盟出来たのは良かったよ。
この日の為に2人で毎日特訓してたからね。
ほぼ毎日俺の家に来て、当たり前のようにご飯を食べてるのはちょっとどうかなって思うけど、それも当たり前の日常になってるし…問題は無し……かな?
ま、どちらしにろ、信頼できる親友である事に変わりはないって訳で。
そして、ギルド加盟が決まった翌日。
龍人がまさかの時間前に待ち合わせ場所にいるという奇跡!!
思わず本気の2度見をしちゃったよね。このまま雪でも降るんじゃないかって心配になっちゃったよ。
まぁそれは余談として…。
初めてのクエストはゴブリン討伐!ぜーんぜんテンション上がらないよね。だってさ、龍人との特訓でこっそりゴブリンと戦ってたし。
という訳で、テンション上がらないままゴブリン討伐に行ったんだけど、そこからまさかの展開!
ゴブリンロードが現れたんだよね。いや、本当にビックリしたよ。ちょっとヤバいんじゃないかって思ったけど…俺が森から湧いて来るゴブリンを足止めしている間に龍人がゴブリンロードを倒したんだ。
ちょっと危ない突進の仕方だったけど、龍人らしい上手い戦い方だった。
…俺はあんな戦い方は出来ないな。
ちょっと納得出来なかったのは、ゴブリンロードを倒した後に振り向いた龍人の顔が引き攣ってた事。
んー…、ゴブリンの動きを止めるのを優先にして手足を打ち抜きまくってからかな?確かに身動きが取れない多数のゴブリンが周囲で呻き声を上げながら踠いてたから、グロテスクだったかもだけど…。
でもさ、「鬼の所業をする遼」…なんて言い過ぎだよね?
んで、このゴブリン討伐のクエストを達成した事で、俺と遼は警護団への入団を団長さんから打診される。
嬉しかった。けど…龍人は大分悩んでたみたい。
正直、俺1人で警護団への誘いを受けてたら…入団していたと思う。だけど、龍人が「警護団に所属するデメリット」を言ったのを聞いて…確かになぁって思っちゃったんだよね。
俺も龍人もギルドで活躍する事がまずの目標だったから。
ギルドで活躍して、沢山のお金を稼ぐ。
それが…俺の目的だったんだ。
何故お金を稼ぎたかったのかって?
それは、姉さんを楽に生活できるようにしてあげたかったんだ。
俺と姉さんは2人暮らし。親は俺が小さい時に死んじゃったらしくていない。だから、これまで姉さんが頑張って働いて俺を育ててくれたんだ。
10代の時から働いて…とても辛かったんじゃないかって思う。でも、姉さんは辛そうな顔を俺の前では見せなかった。いつも優しく笑って、美味しいご飯を作ってくれたんだ。
料理が得意な姉さんは、レフナンティのレストランで働いていて、贔屓目に見ても美人な顔立ちと、抜群の料理センスで人気者だったらしい。
流石に毎年、豊穣祭で姉さんの料理中毒者が出まくるのは…やり過ぎだとは思うけどね。
うん。俺の自慢の姉さん。その姉さんが少しでも楽な生活を出来るようにしたいんだ。
…その姉さんが、殺された。
信じられなかった。唯一の家族である姉さんが死ぬなんて。しかも、事故とかじゃない。どこの誰かも分からない奴に殺されるなんて…。
どうして。どうして。どうして?
何故、姉さんが殺されなきゃいけないんだ?
レフナンティの皆が殺されなきゃいけないんだ?
意味がわからなかった。理解出来なかった。理解もしたくなかった。この、今、この場で起きている全てが夢であって欲しかった。
姉さんが死ぬ瞬間は見ていない。けど…あの銀髪は全員殺したって言っていた……。そして、ギルドの前に到着するまでに生きている人には出会わなかった。
その事実が俺の心を否応なしに締め付ける。希望などないと。
俺は、怒りに我を忘れて攻撃したんだけど、全然効いていなくて…。銀髪の刀のひと振りで意識を失ってしまった。
…夢を見た。
微笑む姉さんがギルドの前に建てられた櫓の近くに立って、俺と龍人に向かって手を振っていた。
周りでは小さな子供達が姉さんの作った料理を美味しそうに頬張っている。
日常。小さな小さな幸せを感じる、掛け替えの無い日常。
ずっと続くと…思っていた。
ずっとずっと…姉さんと、龍人と仲良く、騒ぎながらもレフナンティで過ごしていくと。ギルドで活躍するようになっても、クエストの合間では家に帰って、姉さんの美味しいご飯を食べて、クエストであった苦労話とか龍人のダメダメストーリーなんかを話したりして、3人で笑う日々。…そんな日々が続くと思っていたのに……………。
ふと、空が陰る。
何事かと上を見ると、巨大な瓦礫が空から落ちてきていた。
「姉さん!危ない!!」
助けに行かなきゃ。そうしないと姉さんが…!
……足が、動かない。まるで俺の足じゃ無いみたいだ。何故だ。何故動かない…!?
早くしないと姉さんが……!!
瓦礫が地面にぶつかり、姉さんは下敷きとなって見えなくなる。
それと同時に、地面が瓦礫落下の衝撃に爆ぜ、俺は吹き飛ばされてしまう。
体が宙に浮く。
そして、後頭部に強い衝撃を受けたと認識した時には…俺の意識は途切れていた。
…目が覚めると、夜空が広がっていた。
そして、俺の顔を覗き込むように1人の老人が立っていた。両手には意識を失った龍人が抱えられている。…龍人、凍り付いてない?
「お主の名前はなんであるか?」
銀髪はどこに行ったんだろうか。
「……藤崎遼。」
「遼…。遼か。そなたも来るかの?」
「何処に?」
この老人は大丈夫なのかな。
実は銀髪の仲間ってこともあるんじゃないかな。
「儂の住む星。魔法街にじゃ。」
「…魔法街。」
俺は…戸惑う。
まさか老人が別の星から来た人だなんて思わなかった。
「どうしたのじゃ?」
「魔法街の人がどうしてここに…。」
「そうじゃの…それは、今は言えんのである。しかし、追々話すことは約束出来るのである。」
「……。」
俺はどう返事をして良いのか分からなくて、沈黙を貫く事しか出来なかったら。
すると、俺の反応を不信感の表れと感じたのか…老人は薄く微笑む。
「こんな事があったのじゃ。疑うのも無理はないのである。じゃが、儂はお主の味方なのである。例え…周りがそうでないとしても…じゃ。」
そう語る老人の目は優しげで、どこか寂しそうだった。
「…分かった。俺も、行く。」
「良かったのである。龍人も1人じゃ寂しかろうて。せめて同じ星の人が1人でも近くにいれば、少しは気も楽になるじゃろう。」
「…他に生きてる人は?」
「おらんかった。周囲一帯を探知魔法で探したんじゃが…。残念なのである。」
「そっか……。龍人と俺だけ…か。姉さん………。幼馴染みの俺達が生き残ったのは…まだ救いかも知れないね。」
「なんと…お主ら、幼馴染みなのであるか。ならば、龍人を助けてやって欲しいのである。皆の死を背負って1人でセフに立ち向かった龍人は、恐らく相当な心の傷を負っておる。勿論それはお主も同じだとは思うんじゃが…。」
セフ…あの銀髪はセフっていうんだね。
…老人の言葉が胸に突き刺さる。皆の死を背負って…か。
俺は、姉さんが殺されたって事だけに怒りの感情を爆発させた。
でも、龍人は……。
「うん。分かった。俺が…龍人を支えるよ。」
「頼んだのである。お主も無理をするでないぞ?龍人もお主の支えとなるであろう。」
俺は、小さく、力強く頷く。
「それでは行こうかの。…そうじゃ、名乗りがまだだったのである。儂はヘヴィー=グラム。魔法街にある街立魔法学院の学院長なのである。」
俺は立ち上がると、ヘヴィーと共に歩き出した。
この先に何が待っているかは分からない。でも、俺は…立ち止まらないよ。
立ち止まったら…きっとそこで心が折れてしまうと思うから。
ほぼ既存内容だったかとは思いますが、遼の心情が少しでも伝わればと思って執筆致しました。
続きが気になった方は是非ブックマークよろしくお願いします。