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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-5.新しい依頼

 右手に買い物袋、左手に買い物袋、両肩に買い物袋、背中には買い物した商品が沢山詰まったリュックサック、両腕の中には…おばあちゃん!!


「ほーっほっほっほっ。龍人ちゃんありがとぅねぇ。月に一度の買い物は沢山買いたくなるからねぇ。おまけにお姫様抱っこまで……若い時を思い出してときめいてしまうでのぉ…!」


 俺の腕の中にいるおばあちゃん…チヨばぁちゃんはミューチュエルへ月に一回依頼をしてくるおばぁちゃんだ。先月迄はブリティが対応していたらしいんだけど、大量の荷物を持つのが嫌らしくて今月から俺の担当になった。…つーか「力仕事は男……新人の仕事にゃ!ヘトヘトになってミリアと話す気力を失うがイイにゃっ!」って押し付けられたんだけど。

 それにしても、チヨばぁちゃん…どんだけ金を持ってんだろう。俺が持ってるの、ほとんどが白金と紅葉の都で高級ブランドって言われるものばかりだ。

 ロイスヴァティン、クーチ、ボロガリア、ミョーメー…年に一度自分へのご褒美に買うような品を躊躇う事なく買う姿には感心させられる。

 俺は絶対やんないけどね!っていうか、そんな金ないし。


「それにしても…細身ながら良い体をしとるでのぉ。」

「ぬわっ!コラっ!人の体をまさぐるな!」


 足以外の全てが荷物やらチヨばぁちゃんで塞がっているのを良いことに、撫で回してくるんだがっ!……おい!服の中に手を入れるな!


「ぐふふ…もう少し若ければこの素敵ボディを堪能するんじゃが。」

「しなくて良いわ!」

「照れるでない照れるでない。」


 駄目だ。このばぁちゃん止める気サラサラ無いぞ…!


 それから15分程度、サワサワされながら歩き続けて…漸くチヨばぁちゃんの家に辿り着いた。


「よっと!」


 俺の腕から軽快に飛び降りたチヨばぁちゃんは、家のドアを開けると俺が持っていた荷物を次々に中へ入れていく。

 ……え。


「うむ。まだまだ若いもんには負けぬのよぉ。」


 10袋位の塊をヒョイっと持ち上げた?


「ヨボヨボながら中々の力じゃろう?惚れたかいな?」

「いや、惚れないけど。俺、必要でした?」

「なぁに言っとる。あんな大量の荷物を1人で持っていたら、周りの人々から憐れみの目を向けられてしまうじゃろう?故の依頼よのぅ。」


 うわー。複雑な気分。

 チヨばぁちゃんって本当に変わっている。家もどんな豪邸なのか!?って思っていたら普通の平屋だったし。

 能ある鷹は爪を隠すならぬ、金ある老人質素な家に住む的な感じか?


「じゃ、そーゆー事で今日の依頼は終了かな?」

「そうじゃの。お姫様抱っこが嬉しかったからまた頼むけぇのぉ。」

「今度からはお姫様抱っこはオプションでお願いします。」

「ほほぅ。幾らでも払うぞよ?」

「…強い。」


 とまぁ、こんな感じで日々の依頼を終わらせる。


 んでもって次に向かうのが…あの道場だ。道場破り再び。ではない。

 あれから俺に足りないものを考えて、魔力に頼らない武力ぅて結論に達したんだ。

 んて、体の感覚的に刀の二刀流がしっくりくるから、空き時間に道場へ通って剣術の訓練をしているってわけ。


「こんにちはー。」


 道場の門を潜ると上から殺気が迸った。


「せぇい!!」

「…??今日もいきなりかよ!」


 天井の柱から飛び降りてきた弟子による容赦ない突き。

 体を捻った回転行動で槍先を避け、背中に掛けていた2本の木刀を抜き放ちつつ横から叩きつける。


「ぐぬぅ!?」


 槍の持ち手部分で受け止めた弟子は、木刀の勢いを利用してバック転で俺から距離を取った。


「今日の奇襲は上手く行くと思ったのだが…。」

「毎回門を潜るたびに奇襲されていたら、流石に警戒しないわけないだろ?」

「そう。その警戒を超えることこそが目的だ。」


 ここの道場…俺のせいで変な方向に向かっていたりする。

 前までは「試合での強さ」を目標に研鑽を積んでいたらしいんだけど、俺とミリアの道場破り以降は「本格的な実践における強さ」を狙っているらしいんだよね。

 そのせいで、毎回来るたびにサバイバル演習みたいになってんだよなぁ。面倒なのが、俺と道場の弟子達って構図にはなっていないってこと。

 毎日ペアやソロを決めて、道場内を使った本気の戦いを繰り広げているんだとか。んで、時間が空いた時に来る俺は「乱入者」としてサバイバルに参加している訳だ。

 正直な所、地道に二刀流の型とかを学びたいんだけど、そんな雰囲気は皆無。サバイバルの中で相手の動きを盗むしかないんだよなぁ。

 ま、悪い事ばかりって訳でもないんだけど。

 実際に二刀流は攻めでの手数が強みであるのは当たり前として、防御にも長けた剣術っていうのが分かってきた。

 勿論、弱点もある。両手で操る武器と片手で操る二刀流…必然的に1発の重みが変わってくる。

 この弱点を強みに変えるには…を今は模索中だ。


「では!最近会得をした五月雨突昇竜波を試させてもらおう!」

「……はい?」


 いきなりゲームみたいな技名が飛び出したんだけど。五月雨突きは分かるけど昇竜波って…。


「覚悟…!」

「くそっ!待ったなしか!」


 得体の知れない技を受ける義理はない!左手の木刀で五月雨突きを弾きつつ後方に飛び退る。

 …今、笑ったぞこいつ。危険な予感!


「はぁぁっ!」


 五月雨突き最後の一発が豪快に突き出され、穂先から衝撃波が放たれた。…どういう原理だよ!?

 つーか、コレ普通の槍術じゃないだろ。魔力使ってるに違いない!いや、確かに魔力を使っちゃいけないってルールは無いから、反則ではないんだけど。

 でも、俺は魔力を使わないで二刀流の研鑽を積みたいのに…!


「くっそぉぉ!!」


 渾身の力を込めて衝撃波へ木刀2本で上段からの交差切りを叩き付ける。


「ぐ…ぐぁっ!?」


 しかし、というか当たり前に昇竜の如く昇る衝撃波に弾かれて吹き飛ばされた。


「ど…どうだっ!はぁっ…はぁっ!必殺の一撃の威力はっ………!」

「どうもこうもあるか…!」


 衝撃波をモロに受けたダメージが大きい…。

 向こうも五月雨突昇竜波一発で相当スタミナを消費しているみたいだけどね。元々魔法を使えない筈なのに、魔力を使う技を習得するとか…武術者って凄いな。


「こ、これで…っ!フィニッシュだ…!」


 息切れしながらも、弟子が槍を突き出してくる。二発目の五月雨突昇竜波じゃなくて良かった…!


「ま…けるかぁ!」


 痛む全身に鞭を打って突きを躱わし、交差させた木刀を槍に当てて捻る事で槍を手からもぎ取る。


「そんな…!」

「…らぁ!」


 そのまま木刀で弟子に連打を叩き込んだ。


「無念…。」


 倒れる弟子を横目に、俺は建物入口を見ながら頬を引き攣らせた。

 なんたって、容赦なく第二陣が現れたんだもんよ。しかも二人組で。斧使いと鞭使いという異色コンビだし。

 つーか、俺は双刀使いと戦いたいんですけどね…!?




 その後。

 続々と現れる弟子に打ちのめされた俺は、強打を食らって痛む脇腹を押さえながら帰路についていた。

 いやぁ、今日も実戦の理不尽を味合わされた。1人対多人数の場合の立ち回りをもう少し考えた方が良さそう。今日は左右から同時攻撃を受けた辺りから、痛みで体がいう事を効かなくなったもんね。

 一般理論?で言えば、多人数相手に戦う場合はどうやって1対1のシチュエーションを作るか。だよな。

 つまり、無闇矢鱈に戦うんじゃなくて、逃げや回避を中心に自分にとって有利な状況に持っていく必要があるって事になる。

 剣術も大事だけど、戦う環境を把握する力も必要か…。


「ただいまー。」


 悶々と考えながらミューチュエルのドアを開けると、小躍りするブリティとこめかみを押さえるクルルがいた。

 うわっ。嫌な予感。


「戻ったのね。」

「ういっす。」

「早速話があるわ。」

「お断りして良い?」

「駄目ね。」

「ういっす…。」

「龍人!ブリティとダンジョン冒険にゃっ!」

「ダンジョン?」


 テンション爆上がりのブリティに不安しか感じない。


「クルル。説明プリーズ。」

「はぁ…ブリティのテンションが高過ぎるのよ。えっと、赤火と雨の都っていう星に子供で迷子が発生したのよ。」

「それって、白金と紅葉の都が属する都圏にある星の1つか?」

「そうね。お宝を探しに行っちゃったらしいわ。お母さんにプレゼントするって飛び出しちゃったらしいのよ。10歳の女の子でレンちゃんって名前よ。」

「迷子か。その赤火と雨の都がダンジョンなのか?」

「えぇ。地上にダンジョンだけが広がる星よ。ちょっと特徴的なダンジョンだけどね。そこにブリティと一緒に行って欲しいの。」

「ブリティが敵を薙ぎ倒すのにゃん!」


 シャドーボクシングを始めるブリティ。

 クルルは無視して話を続ける。


「それでね、前に話したミューチュエルの目的である秘宝があるかも知れないのよ。ダンジョン内にある晴れ部屋の中でも特にレアな大晴れ部屋っていうのがあるらしくて、そこに秘宝が眠るって噂があるらしいわ。レンちゃんも転送装置に飛び込む瞬間にひほうって言っていたらしいのよ。」

「なるほどね。そったら、レンちゃん捜索と秘宝探しが今回の任務か。」

「そう。依頼はレンちゃん探し。ミューチュエルとしては一緒に秘宝も探す。クルルも一緒に行かせたいんだけど、今は別の星に行っちゃっているから、あなた達でお願いね。」

「まっかせるにゃ!」

「やるだけやってみるよ。」


 シュシュシュシュっ!とブリティの拳が空気を切り裂く!


「じゃあ、明日の朝9時に出発しましょう。1日で終わらない可能性もあるから、そのつもりで準備してね。」

「ガッテン承知にゃ!」

「分かった。」


 こうして俺とブリティの「赤火と雨の都で迷子を探せ!」依頼が決行される事になったのだった。

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