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固有職業『龍人』を得た俺の異世界生活  作者: Scherz
6章:白金と紅葉の都
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6-1.白金と紅葉の都

 前を行く猫娘の後ろを、周りを眺めながら歩く。

 凄いな。見渡す限り紅葉が広がっている。めっちゃ綺麗だ。きっと相当有名な観光名所だぞ。紅葉狩りをしている人もチラホラ見かけるしね。


「うにゃっ!蝶々さん発見なのにゃ!」


 …目の前を歩く猫娘は、きっとコスプレじゃなくて本当の猫娘なんだと思う。頭に付いている猫の耳も、お尻から出ている猫の尻尾も作り物にしては動きがリアルだ。亜人ってやつかな?

 猫娘は両手をわきゃわきゃ動かしながら蝶々を捕まえようと飛び跳ねている。

 …飛び跳ねる度にグレーのスカートから可愛いパンティーがパンチラしまくってんだよなぁ。本人は全然気にしていないし、周りの人もチラッと見ても気にしていないし…そーゆーキャラなのか?

 グレーのパーカー、白シャツ、グレーのスカート、ピンクと白のストライプパンティ。挙句の果てに猫娘。ツッコミどころ満載だな!?


「はっ…!蝶々さんに夢中になっていたのにゃ。君!こっちにゃ!」


 猫娘は本来の目的?を思い出したらしく、名残惜しそうに蝶々をチラチラ見ながらも再び歩き出した。


 今、俺は困った状況になっている。

 パンチラへの欲情が抑えられない。…とかじゃないからな?

 俺、完全に記憶が飛んでるみたいなんだよね。外傷は全く無いんだけど、頭がズキズキするから…それが原因なんだと思う。紅葉狩りで調子に乗って木登りして落ちたのかな。

 で、猫娘はそんな俺の身元を探してくれるらしく、自分が働いている店に連れて行ってくれるらしいんだ。

 やっぱ猫娘が働く店だから、猫娘カフェとかかな?

 可愛い猫娘がニャンニャン言いながら擦り寄ってくる系のお店だったらムフフだぞ。ちょっと楽しみかも。


「…おぉ。」


 邪推しながら歩いていると、突然紅葉だけの景色の先に白を基調とした都市が姿を現した。

 基本色が白だからか、凄い綺麗だ。


「やっと着いたのにゃ。疲れてないかにゃ?」

「あ、あぁ大丈夫。」


 話しかけるのに合わせてすっごい顔を近付けてきたんだが!?この猫娘、天然で男を誑かすタイプか!?


「ほーら!危ないよ!道端でチューしてんなよ!」


 バカラっバカラっ!と馬が俺達のすぐ横を通り過ぎて行った。いや、チューしてないからな?てゆーか馬!?

 よく見ると都市の中は馬が走っていたり、馬車がガラガラ走っている。…江戸時代みたいだ。

 電車とか車とか無いんだな。普通に考えたらちょっと不便そうだ。逆に風情があるとも言えるかも?


「あと10分位歩けばお店にゃ!」


 猫娘は投げ掛けられた「チュー」という単語を全く気にする事なく、鼻歌を歌いながら歩き始めた。…マイペースだ。

 取り敢えず、後について行こう。


 そこからは特にトラブルがある訳でもなく、のんびりと都市の中を観察しながら歩く事が出来た。機械っぽい文明がほぼ見られないから、本当に江戸時代みたいな感じだ。なんつーかタイムスリップした気分。

 露天商が野菜を売っていたり、呉服屋みたいな店もあったりで風情はあるけど。

 そう言えば、俺の服装は微妙に忍者っぽいからか、そんなに浮いてはいない…かな?いや、チラチラ視線を向けられるから目立ってはいるか。だって忍者だもんな。「どこの忍びの里からやってきたお主!?」とか言われたらどうしよう。

 因みに好奇心な視線以外にも敵意みたいな視線も向けられるんだけど…。俺って元々悪者だったのかね。

 どちらかと言うと正義の味方希望です。

 素朴な服装の人が多いから、単純に目立っているだけ。だと思っておこう。


「ここにゃっ!」


 立ち止まった猫娘が指差したのは、大通りに面した一軒家だった。看板には「ミューチュエル」って書かれている。


「さぁさぁ入るにゃん。」


 猫娘に促されて、ちょっとドキドキしながら中に入ると…。


「あら?」

「何にゃ?」

「い、いや、何でもない。素敵な内装だな。」

「うにゃっ。」


 猫娘は褒められたのが嬉しいのか、にっこり笑うと尻尾をブンブン振り始めた。なんて分かりやすい反応なんだ。

 猫娘カフェじゃなくて落胆しただなんて言えないっ!

 建物の中は、バーカウンターがあって、その反対側にテーブルと椅子があるだけのシンプルな造りだった。

 ミューチュエルって何の店なんだ?ガールズバーとか?まだ営業前だから、女の子が出勤してないだけなのかな。


「あら、お客様かしら?」


 バーカウンターからひょこっと顔を出したのは…長身美人キャリアウーマン。胸もデカいし、こんな人が自分の秘書だったら毎日眼福ものだな!これから猫耳付けるのですか!?


「あ、こんにちは。」

「クルル!迷える子羊さんを見つけたのにゃっ。」


 クルルと呼ばれた女性は「子羊…?」と呟くと、俺を頭の上から爪先まで観察し始めた。めっちゃ吟味されてない?


「貴方…お名前は?」

「えっと…」

「この人は記憶喪失で、紅葉原で倒れていたのにゃ。」

「ふぅん?」


 うわー、めっちゃ疑われてる気がするんてすが。


「す、すいません。本当に何も覚えていなくて。」

「まぁ…しょうがないわね。ただ、身元が分からない人物を置いておくわけにもいかないし、持ち物を調べさせてもらえるかしら?」

「あ、はい。…とは言っても、特に何かを持っている訳では無いんですが。」


 クルルに促されて服をゴソゴソと漁っていると、ポロリ…と何かが落ちてクルルの足元で止まる。

 金枠の白いカードだ。なんだろう。怪しいお店の会員カードだったらどうしよう…!

 そのカードを拾ったクルルは、俺を見る視線を更に鋭くした。…やっぱり怪しいお店の会員カードだったか。


「貴方の名前は高嶺龍人…みたいね。他の情報は載っていないけど……これはギルドカードかしら。」

「高嶺龍人…それが俺の名前か。」

「それなら龍人って呼べば良いのにゃっ。でも、白金と紅葉の都にギルドなんて無いにゃ。」

「え…。じゃあ、俺は別の星にいたってことか?」

「それは分からないわね。このギルドカードが昔の物かも知れないし。大体、都圏にギルド自体が無いのよ。他の圏と交流が盛んな訳でも無いはずだし…ホント、あなたどこからやって来たのよ。」


 それは俺が知りたい所だよ。


「自分で調べてみるしかないか。」

「それなら手伝うにゃっ。」

「いや、流石に悪いよ。えーっと……。」

「……もしかして自分の名前を伝えてないのかしら?」


 クルルの冷たい声に猫娘の耳と尻尾がビーン!と逆立った。


「…すっかり忘れていたのにゃ!ブリティなのにや!ブリティ=アーショ!よろしくなのにゃっ。」

「はぁ…。私はクルル=ローラン。一先ずよろしく。かしら。」

「じゃあ早速聞き込にゃっ…!?」


 クルルに襟首を掴まれたプリティか悲鳴を上げた。忙しないな。


「ブリティ。貴女は依頼をしなきゃでしょ?」

「忘れてたのにゃ…。」

「依頼ってなんなんだ?」

「その話をしていなかったわね。私達はミューチュエルっていう何でも屋をやっているのよ。この家が事務所ね。」


 はい。猫娘ガールズバーというほんのちょっとだけの細やかな淡い希望は潰えました。クルルが猫耳付けたら、相当な破壊力があると思うんだけど。


「……良いことを思い付いたわ。」


 変な妄想をしていたら、眼鏡の奥で瞳を怪しく光らせたクルルがそんな事を言った。

 …まさか、営業をして依頼を取ってこいとか言わないよな?


「記憶喪失だから、下手をするとミューチュエルと暫く関わりそうだし…龍人にも依頼をやってもらおうかしら。」

「…はいっ?流石にそれは」

「だって貴女、住む所あるの?」

「……そういえば無いな。」

「どこに住むのかしら?」

「分からないな。」

「この街のこと何か知ってるのかしら?」

「何も知らない。」

「誰に教わるのかしら。」

「う…。」

「私達がそんな貴方を見捨てると思う?」

「思わない…かな。」

「居候のタダ飯食らいって罪よね?」

「……罪です。」

「そしたら、龍人。どうするの?」

「働かせて頂きます!」

「はい。じゃあ依頼はコレ。」


 満面の笑み(勝ち誇った)でクルルが紙を渡してくる。


「拒否権は無いから。あと、ウチのリーダーもその依頼をやりにさっき出たばかりだから、一緒にやる事。すっごい強いから、粗相しないように。」

「強い…?」

「はいっ!いってらっしゃい!」


 ドンドンと背中を押されて元気から押し出された俺が尻もちをつく目の前で、ドアが静かに閉まっていく。


「クルル!あの依頼は危険…ふぎゃっ!?」


 閉まりきる直前で不穏な言葉が聞こえたような…。強いって、そのリーダーさんはスーパームキムキマッチョマンだったりするのかな。

 道ゆく人たちが「なんだこいつ?」的な好奇の目線を向けてくるのを必死に無視しつつ、俺は渡された紙を開いてみる。


「書いてあるのは地図と…リーダーの指示に従って戦う事…?」


 とーっても不安な気持ちになる内容しか書いていなかった。戦うってなんだし。化け物狩りでもすんのか?

 とにかく行ってみるしかないか。流石に死ぬような目には遭わないだろ。…と思いたい。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 そして!

 目的地に到着した俺はワナワナと震えていた。

 恐怖…ではなくクルルへの怒りだ。


「騙された…幼稚園かよ。」


 どんな危険な場所なのかと思っていたら、幼稚園だとは。

 要は小さい子供の相手をすれば良い訳だろ?


「こんにちはー。依頼の手伝いでミューチュエルから来たんですけど…」

「あら!ミューチュエルの方ですか?園長せんせーい!もう1人お手伝いが来てくれましたよ!」

「あら!!」


 ドタドタと走って来たのは、恰幅の良いおばちゃん…もとい、園長先生だ。


「まさかもう1人くるだなんてねぇ!今日は特段人手が足りないから助かるわぁ!じゃぁ、早速ここの部屋で一緒に子供達の相手をお願いね!お昼まで2時間位かしら。年中の子達で、オムツは取れてるから遊ぶだけで良いと思うから、しっかり頼んだわよ!」


 恐るべき園長先生は、俺の返答を一切聞かずに手を引っ張ってキリン組と書かれた部屋に俺を放り投げた。恐るべき腕力…!そして問答無用!


「いてて……え?」


 尻餅をついた俺は立ち上がろうとして周りを見てフリーズ。

 子供………30人くらいいるんだけど!?


「あれっ?君は…誰かな?助っ人?」


 横から声を掛けてきたのは、両手と背中と胸に男の子を貼り付けた金髪のお姉さんだ。シルバーとターコイズブルーの配色が綺麗なバトルドレスを着た美人だ。胸に張り付いている男の子の目が垂れ下がりまくっている。エロガキめ!


「あぁっと、色々あってミューチュエルのお手伝いをする事に…。高嶺龍人だ。よろしく。」


 うん。記憶が戻っていないのに自己紹介するの、すっごい違和感。一瞬自分の名前が出て来なかったし。


「そっか!よろしくねっ。私はミリア=フェニー。詳しい話は後にして、今はこの場を乗り切ろうね!女の子は任せたよっ。」


 ミリアと名乗った金髪お姉さんは爽やかに笑いながら、男の子達をぶら下げて部屋の奥へ歩いていった。

 てか、なんで俺が女の子担当なんだ?普通は逆じゃ…


「ぐはぁっ…!?」


 突然、鳩尾に何かが突進してきた。綺麗に鳩尾の骨と骨の間にめり込んだんだが!?


「な、なんだ?」


 見ると、そこには可愛らしい女の子が居た。年は5歳〜6歳位かな。可愛らしい笑顔がまぶし…


「ぐはぁっ…!?」


 次は背中から衝撃が…


「ぬぁっ!?いてっ!?ちょっ…!?」

「みゆちゃんだけずるーい!私もあそぶー!」

「かなえちゃんはあっちいって!このイケメンおにいちゃんはわたしとあそぶんだよ!」

「だ、だめだよ。みんなで仲良く分け合うってえんちょーせんせい言ってたよ。」

「えーー。でもこの顔を分けたらバラバラだよ?」

「…そうだね。」

「でしょっ?だから、さいしょにくっついたわたしとあそぶのー!」

「いや、ちょっと待って…」

「でもみゆちゃんだけはだめだと思うよ!」

「……う、ぅぅぅかなえちゃんのばかぁ!ぁぁぁああああん…!」


 嘘だろ。取り合いっこからいきなり号泣したんだが。


「うそなきだーめ!」

「………ちっ。」


 えぇっ?嘘泣きだったの?てか、いま舌打ちしたよね?子供ってこんな歳から腹黒なの!?

 女の子は精神年齢が高いって言うし…。


「じゃあみんなで、りゅうとのおよめさんをきめよっ。アピールはじゅんばんこね!」

「あの……。」

「さいしよはわたしからっ。」


 みゆちゃんを皮切りに、ここから女の子達のアピール合戦が始まった。

 それはもう凄くて「抱っこさせてあげる作戦」「三つ編みやらせてあげる作戦」「そんなにチューしたいならさせてあげてもいいよ?作戦」「おままごとでおいしいご飯作戦」「浮気したから縛り付ける作戦」「鞭で叩かれるよ喜ぶんでしょ?作戦」「わたしと付き合うなら金出しな作戦」等々…。

 いや、本当に凄かった。幼稚園児って進んでるのな。


 そうこうしてお昼寝の時間になんとか辿り着き、怨霊のように体に張り付いてくる子供達を寝かしつける事に成功。

 職員の人に部屋を任せて、職員室に来ていた。


「あ、お疲れ様ですっ!」

「ん?あぁミリアか。お疲れ様ー。」


 気の抜けた返事をした俺を見て、ミリアは「ふふふっ。」と笑いを漏らした。


「龍人疲れてるねっ。大丈夫?でも…女の子達の相手をしてくれて助かったよっー。」

「そりゃどうも。子供のバイタリティを舐めてたよ。」

「ふふっ。子供って気力がゼロになる直前まで120%で動き回るもんねっ。」

「いや、本当に。」


 ソファーに腰を下ろすと、沈み込むような感覚を覚える。この2時間ちょっとで相当疲労が溜まってんなこれ。


「あ、そうそう。それで、龍人はどうしてミューチュエルの依頼を手伝う事になったの?」

「その話をしてなかったか。えっとだな…」


 紅葉原で目覚めてからの話をすると、ミリアはクスクス笑う。


「それは大変だね。私は龍人がミューチュエルに居候するのは良いと思うよっ。最近依頼が少し増えていて断っているものもあったし。」

「ん〜甘えちゃって良いのかな?行くあても無い中で言うのもアレだけど…迷惑じゃないか?」

「全然だよ?寧ろ助かるかなっ。ミューチュエルって女の子しかいないから、男の人がいるだけで色々と出来る範囲が広がるんだ。」

「…そう言ってくれるなら、俺の記憶が戻るまでお世話になろうかな。」

「うんっ。それが良いと思うよっ。」


 ニッコリ微笑んでくれるミリアは、なんというか…とても優しい雰囲気を感じさせる。ともかく、寝泊まり出来る場所はこれで決まったか。あとはどうやって記憶を戻すのか。…だな。


「…ん?何か聞こえないか?」


 遠くの部屋から叫び声?というか、気合の入った…みたいな声が聞こえる。


「あ、もうそんな時間かぁ。年長組の子供達が武術の授業をしているんだよ。」

「幼稚園で武術?早くないか?」

「そうかなっ?この星に住む人って魔法を使える人が少ないから、肉体を鍛えている人が多いんだよ。ここの子達的には武術の先生に憧れて!っていう子が多いかもだけど。」

「魔法を使える人が少ない…って、魔法?」

「え?」

「魔法?」

「うん。魔法だよ?」

「ミリアは使えるのか?」

「うん。使えるよ。龍人は?」

「…分からん。」

「そっか。記憶喪失だから分からないよね。じゃぁ、今度試してみよっか。」

「魔法が使えるか調べられるんだ。」

「うん。簡単だから、ミューチュエルに戻ったらやってみよ?」

「お、おう。よろしく。」


 何故かニッコリ微笑みながら顔を近づけてくるミリア。いや、普通に顔が近くて恥ずかしいぞ。普通に美人だし。こんな人が彼女だったら毎日が幸せなんだろうなぁ。とか邪推してしまう位には。


「あらあら。お二人共仲が良いのねぇ!そろそろ子供達がお昼寝から起きる時間よ。午後は園庭でプール遊びになるから、最後までよろしくお願いね!」


 園長室から出てきた園長先生は、ドン!と俺とミリアの前に大きなゴム製?の何かを置いた。


「園長先生。これって…。」

「プールよ!今日が今年初めてのプールだから、まずはプールに空気を入れなきゃいけないの。そうねぇ、ここは男が頑張るところね!龍人頑張って!」

「マジか…。」


 それから俺は必死に4つのプールを膨らませ、群れる女の子達の相手をし(微妙にセクハラまがいの手つきが多かったのはきっと気のせいだろう)、夜の6時に最後の園児を見送るまでノンストップで働き続けたのだった。


 園長先生を始めとした職員の皆さんにとっても感謝されながら挨拶をした俺とミリアは、ミューチュエルへの帰路をのんびりと歩いていた。


「龍人、今日はお疲れ様っ。」

「本当に疲れた…。ブリティが危険ってぼそっと言っていた意味が良く分かったよ。」

「あははっ。ブリティは猫の亜人だから、園児達からと〜っても人気なんだよ。ブリティが行くと、今日の龍人の倍くらいは子供が群がっているかなっ。」


 あぁ成る程。それは地獄だ。


「今日…いつもと違って楽しかったなぁ。」


 両手を後ろにして歩くミリアはご機嫌で、体から音符が湧き出ていそう。

 とととっ、と先に進んだミリアはクルッと微笑むと、俺の手を取った。


「龍人、これからよろしくねっ!」

「お、おう。こちらこそよろしく!」

「じゃぁ、早く帰ろう?幼稚園の依頼をやっている日はクルルがいつも美味しいご飯を作ってくれるからねっ。」

「それはちょっと楽しみかも。」

「ふふっ。クルルの料理はと〜っても上手なんだから。」


 程なくしてミューチュエルに着いた俺たちを出迎えたのは、エプロン姿のクルルと、テーブルに置かれたハンバーグを前に「待て」を言い渡されて涎ダラダラのブリティだった。

 余談ではあるが、クルルのハンバーグは絶品で、外でご飯を食べる必要が無いと感じてしまうほど。っていうか、ミューチュエルでレストランをやったら相当繁盛するんじゃないか?とも思ってしまった。クルルはそのつもりはサラサラ無さそうだったけど。


 ともかく、こうして俺は白金と紅葉の都での生活をスタートする事になった。

 一先ずの目標は俺自身の記憶を取り戻す事だな。

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