5-58.魔聖会議
警察庁執行部秘書室。ひと言で言えばコンセルさんの部屋。
その部屋中央に、俺は正座をしていた。
「……………。」
部屋の中は重苦しい沈黙に支配されている。
俺の前に立つのは、気まずい顔をしたコンセルさん。
そして、怒りを露わにした鬼神…火乃花。
ギャラリーにクレア、ルーチェ、遼がいるけど、そんなのはどうでも良い。
因みに、俺を連行した数名の警察官も俺の後ろに正座をしていた。
「それで、どうしてこんな事になっているのかを教えてもらえるかしら?」
「…んーっと、そうだな。お姉さんに話を聞きに行ったら、襲われたんだよね。そんで、返り討ちにした所で警察の皆さんが突入してきたといいますか。」
「わ、我々は通報を受けて現場へ急行し、犯人と思しき……り、龍人殿を連行…………いたしました。」
警察官の言葉が途中で詰まったのは、火乃花が鬼のように鋭い視線を突き刺したからだ。
圧倒的迫力にブルッたに違いない。
「そう。龍人君があの家を意味もなく破壊したっていうのかしら?」
「い、いえ……何かしらの理由はあるかとおもいますが、それは今後の取り調べで…。」
「今後の?」
「あ、い、今すぐに!」
「違うわよ。現場の魔力反応を確認したのかしら?」
「これから………です。」
「はぁ……。あのね、警察官でない私が言うのもおかしな話なんだけど、事件が起きたら現場の魔力反応を即座に調べて、状況把握に努めるのは基本よ。それをしていない時点で、犯人を逃しているとしか思えないわ。」
「………すいません。」
火乃花は鬼教官の素質がありそうだな。生徒にはなりたくないけど。
「1番の問題は…龍人君よ。」
ビクッ!?
「警察が来たんだから、犯人情報を伝えてすぐに捜索って出来たわよね?」
「いや、まぁそうなんだけど…….全然聞いてくれなかったというか。言い訳がましくアレコレ言うより、大人しく捕まった方が穏便に収まるって思ったっていうか?」
「………はぁ。」
火乃花は眉間に手を当てて盛大なため息をついた。典型的な悩める上司像だな。
因みに、俺がすぐに犯人像を伝えなかったのには…一応理由がある。それは、ユウコの存在をどう伝えるか迷ったからだ。
天地メンバーのユウコがいたって事は、ブースト石と天地に関わりがあるって事になる。ただ、天地の存在を公にすべきかどうかが…俺には分からなかったんだよね。
なので、捕まって警察まで移送されている間に考えてたんだ。
んで、警察で取り調べを受けるぜ。っていうタイミングで、俺と警察官達は今いる部屋に呼び出されたっていう流れだ。
なので、まだ何も伝えていない。
「まぁまぁ。火乃花さん。龍人さんなりに考えての行動だと思いますよ。それに…執行部長官の娘である貴方がお怒りになっていると…流石に彼らが可哀想です。」
「……しょうがないわね。」
コンセルさんの取りなしで火乃花が怒りを収めると、俺を捕まえた警察官達はスゴスゴと退散していった。
因みに、今回の事件に関わる取り調べはコンセルさんが執り行う。という話で纏まった。
警察官達が退散したのを確認すると、コンセルさんは真面目な表情をして俺に問い掛けてきた。
「龍人さん。警察官の彼らに事件の詳細を伝えずに、捕まったのには理由がある。との認識でよろしいですか?」
「あぁ、それなんですけど…」
「た、大変です!!!!」
ドッバァァァン!と秘書室のドアを開けて中に入ってきたのは、新人?っぽいフレッシュな警察官だった。
「今、取り込み中ですよ。ノックはするべきかと思いますが?」
マナーのなっていない警察官の行動に剣呑な雰囲気を漂わせるコンセルさん。おぉ怖い。
けど、フレッシュな警察官はそれでも只ならぬ雰囲気を収める事はなかった。
「しっ失礼いたしました!しかし、各地区でまさかの事態です!このままでは…!!」
「……?まさかの事態とはなんでしょうか?一度、深呼吸をしましょう。」
フレッシュな警察官はコンセルさんのアドバイスで胸に手を当て、静かに大きく呼吸をすると、叫んだ。…おい、深呼吸の意味!
「ブースト石に魔瘴気という有毒な魔力を混ぜた証拠がっ、各地区で発見されました。しかもっ、南区で見つかったものは東区の陰謀によるという証拠、東区で見つかったものは北区の陰謀によるという証拠、北区で見つかったものは南区の陰謀によるという証拠ですっ!!!このままでは各地区間の対立が急激に悪化する事は否めません!更に、平等派と至上派の対立激化も間違いなく…紛争、いえ、戦争になる可能性がっ…!!!!」
…おいおい、マジかよ。
「……それは非常によろしくない状況ですね。警察上層部に対応を確認してきます。皆さん、大変申し訳ありませんが調査は一度中断します。これから中央区含め各地区で争い事が勃発する可能性が高いので、巻き込まれないように、迅速に南区へお戻りください。」
ギラリン!と完全に仕事モードへと顔付きを切り替えたコンセルさんは、スタスタと超高速早歩きにて部屋から出て行ってしまった。フレッシュな警察官も頭を床にぶつけそうな勢いで俺達に頭を下げると、コンセルさんの後を追いかけて走り去った。
「…どうするよ。」
火乃花達に視線を送ると、皆が戸惑った様子を隠せない状況だった。
「ともかく、一度南区に戻りましょう。ここまでの事態に発展してしまうと、私達でどうにか出来ると言う状況を越えていますの。」
「そうね。一旦は様子見が良いと思うわ。」
「うん。…怖いね。」
「俺…ちょっと不安かも。」
「まぁ、のっぴきならない状況だとは思うけど、俺達に出来る事は何かあるはずだ。それを考えよう。」
「勿論ですの。」
…という事で、俺達は南区へ戻ったのだった。
その日は街立魔法学院に到着した段階で解散し、翌日に食堂に集合。という事になった。
翌朝。
「龍人!龍人!起きて!!!」
「むぁ?なぁぁんだよ。俺は…眠い。」
「いや、そんな状況じゃないから!」
「んぁ?」
ったく、何で気持ちよく眠っているのに起こされなきゃならんのだよ。
眠い目を擦りながら起き上がると、俺の部屋に勝手に入り込んだ遼が、やけに焦ったような表情で立っていた。
「あ、あの…えっと、俺達…地区同士の話し合いの場に参加する事になった。」
「はい…?」
良く見ると、遼の向こう側…俺の部屋の入り口にはコンセルさんが立っていた。
いやいや、何で俺達が各地区の話し合いに参加すんのよ?もっと適任が沢山いるでしょうに。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
俺が遼に叩き起こされてから1時間後、俺と遼、火乃花、ルーチェ、クレアの5人は中央区にある魔導推進庁の会議室の隅に座らされていた。
ここで強調したいのは、「座っていた」ではなく「座らされていた」という事だ。あくまでも俺達の意志ではない。寧ろ拒否したくらいだ。それなのに、コンセルさんが「この事件は天地と関係ある可能性が高いです。その交渉の場にいる事でなにかが見えるかも知れません。各地区共に護衛は引き連れてくるでしょうから、警察庁側の戦力として参加してください。警察庁が警察官ではなく、魔法学院生を連れていると言う事で、公平な立場を示そうとしている。とのアピールにもなりますので。」…と、有無を言わせなかったからだ。
いやぁ…警察が平等派を謳う南区の魔法学院生を連れているって事で、それはそれで物議を醸し出しそうな気がするんだけどなぁ。
とは言っても、もうこの場に座らされている以上、逃げる事は出来ない訳で…俺は会議室の中を静かに観察する事にした。
「にしても、凄い面子だな。」
この場に居るのが…場違いだと、一瞬で理解させられる面々が、重苦しい顔で並んでいた。
南区、街立魔法学院学院長のヘヴィー=グラム。白髪白髭が特徴的なおじいさんだ。
北区、ダーク魔法学院学院長のバーフェンス=ダーク。黒く右に持ち上げつつ流した前髪、黒い目元が…なんつーか病んだ雰囲気を醸し出す男。なんつーか、ホストっぽい。目が赤いのはちょっとドラキュラっぽいかも。
東区、シャイン魔法学院学院長のセラフ=シャイン。一言で言うと女神様ですか?ってレベルで綺麗な女性だ。金髪を結ぶ青いリボンが良いアクセントになっている。んでもって、なぜか服のお腹部分が肌けているプチエロコスチューム。絶対ファンクラブあるよな。
この各魔法学院学院長3名が静かに座り、その隣には警察庁執行部長官の霧崎長官、魔導推進庁のロア長官だ。
各魔法学院長の後ろには護衛っぽい魔法使いが4人ずつ控えていて、俺たちは霧崎長官…火日人さんの後ろにいる。ロア長官は…1人だ。この状況で平然とした顔で1人で座ってるって、すっげぇ胆力だと思う。
「さて、全員揃ったようだし、早速本題に入ろうか。」
口火を切ったのはロア長官だった。
「この場に集まってもらったのは他でもない…ブースト石に魔瘴なるものを混ぜ込んだ首謀者が、各魔法学院だという証拠が各区で見つかった。この事実について確認を取る必要があると思い召集させてもらった。世論は激しく動揺している。下手をすれば紛争が始まる勢いだ。確りと真実を見極め、今後の魔法街の在り方について議論をする必要があると思うが、各学院長はどのようにお考えかな?」
どストレートな切り口に、会議に参加している面々の緊張感が一気に高まる。
最初に口を開いたのは、セラフ学院長だった。
「私は冷静に状況把握をするべきだと思うわ。今回、同時に証拠が見つかったというのは…誰かしらの陰謀としか思えない。この程度の事で対立を深めるのは、愚の骨頂ね。」
セラフ学院長の言葉に頷くと、ヘヴィー学院長も口を開く。
「そうであるの。儂も同意見なのである。そもそもブースト石に混ぜられた魔瘴がどのようなものかも不明瞭なのである。字面から良くないものというのは…分かるのであるが、だからと言ってそれら全てを鵜呑みにするのは愚かと言わざるを得ないのである。北区、東区、南区が冷静に対応する事が、愚かな戦いを防ぐ最善の道なのである。」
うんうん。そうだよね。このまま穏便に話が収まるかな?
…と思っていたら、そうはならなかった。
バーフェンス学院長によって場が…荒れる。
「お前らアホか?これがどの地区が策略を巡らせたとしても、どこかの誰かが陰謀を仕組んだとしてもだ、冷静に対応する?糞だな。いいか。戦いが望みなら、戦争が望みなら、やりゃぁ良いんだよ。そうしなきゃ首謀者の尻尾は掴めねぇだろうが。冷静に対応?そんなんしてたら、のんびり調べ物をしている間に、より大きな何かを仕掛けられるんだ。俺は反対だね。徹底的に戦うべきだ。そうすりゃ、東区か南区がボロを出すか、別の首謀者が尻尾を覗かせるだろうよ。」
「なっ!?バーフェンス!お前は、魔法街の民に戦って命を危険に晒せ。というつもりか!?」
バン!とテーブルを叩いて立ち上がったセラフ学院長の頬は、怒りに上気していた。
「たりめぇだ。有事の際にのんびり他人面して生活しているとか、あり得ねぇだろ。そもそもここは魔法街だ。魔法が主体の星で、魔法が使える奴の有り難みを全員が再認識すべきなんだよ。」
「むぅ…バーフェンス。それは至上派寄りの発言と捉えられかねないのである。」
「はぁ?俺は元より至上派の考えに賛成してんだよ。ダーク魔法学院の方針は知ってんだろ?強き者が正義だ。平和ボケしてんだよ。この星は。」
「それは言い過ぎよ。」
「セラフ…。シャイン魔法学院の教育方針は中立者としての平等を魔法で体現。だろ?つまりよ、魔法が使えなきゃ中立を保てないって言ってるようなもんだろ?中立って言葉が笑わせるぜ。根本は至上派の流れを汲んでんだよ。いいか。ここは魔法街だ。魔法街なんだよ。それを忘れるな。魔法を使えなきゃ、結局魔法を使える奴に最後の最後で頼るしかない。そういう星なんだよ。」
「………。」
沈黙が場を支配する。
セラフ学院長は無言で座ると、静かにバーフェンス学院長を睨み付けた。
…あれ、怒りを通り越して冷静になったやつだ。
「話が並行だな。」
腕組みをして話を聞いていたロア長官が困ったように言う。
「私としては各区間の争いは極力控えて欲しいのだが。折角進んでいる魔導師団の話が止まってしまう。」
「はん!その魔導師団だって至上派寄りの組織じゃねぇか。魔導師団設立の話で世論が盛り上がってんの知ってんだろ?お前が騒動の発端とも言えんだよ。」
「ほぅ。魔法街の未来を案じる私の策を愚弄するか。」
「根本的に違うんだよ。魔法街なんだから、魔法抜きで考える事自体がイカれてんだよ。」
再びの沈黙。
……けど、バーフェンス学院長が言う事はちょっと理解出来るかもしれない。
魔法街なんだから、魔法が主軸にあって何がおかしい。…か。ある意味で筋が通っているかも。その考えに賛同できないのなら、極論…別の星に移住すれば良い訳だし。
でも…。
「おいおい。至上派と平等派ってのは、そんな極論じゃねぇだろう?」
仲裁に動き出したのは火日人さんだ。
「至上派は強き魔法使いが魔法街を先導すべきって理念。平等派は魔法に長けた者、頭脳に長けた者等を適材適所で配置し、より良い星を目指すって考えだった筈だ。魔法街戦争が終わった時に、平等派の理念で進めば魔法街に住む万人が幸せな星にできるはず。って結論に落ち着いただろ。今、この場でどっちの派閥っていう議論をする事自体が違っていると思うけどな?」
おぉ。流石は警察庁執行部長官殿。
上手く話を纏める流れに持っていったぞ。
各魔法学院学院長達がちょっと気まずそうに互いの顔を確認していると、ここで異変が起きた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
魔法学院学院長達が話し合っている時。
魔法街では誰しもが予期せぬ自体が起こっていた。
それは、会議の内容が…音声が…生中継されていたのだ。
「証拠が見つかったのは…陰謀としか思えない。」
「愚かと言わざるを得ないのである。北区、東区…が愚か……なのである。」
「糞だな。いいか。戦いが望みなら、戦争が望みなら、やりゃぁ良いんだよ。………徹底的に戦うべきだ。そうすりゃ、東区か南区がボロを出す。」
「なっ!?バーフェンス!お前は、魔法街の民に戦って命を危険に晒せ。というつもりか!?」
「たりめぇだ。有事の際にのんびり他人面して生活しているとか、あり得ねぇだろ。そもそもここは魔法街だ。魔法が主体の星で、魔法が使える奴の有り難みを全員が再認識すべきなんだよ。」
「むぅ…バーフェンス。それは至上派寄りの発言。」
「はぁ?俺は元より至上派の考えに賛成してんだよ。ダーク魔法学院の方針は知ってんだろ?強き者が正義だ。平和ボケしてんだよ。この星は。」
「それは言い過ぎよ。」
「セラフ…。シャイン魔法学院の教育方針は中立者としての平等を魔法で体現。だろ?つまりよ、魔法が使えなきゃ中立を保てないって言ってるようなもんだろ?中立って言葉が笑わせるぜ。根本は至上派の流れを汲んでんだよ。いいか。ここは魔法街だ。魔法街なんだよ。それを忘れるな。魔法を使えなきゃ、結局魔法を使える奴に最後の最後で頼るしかない。そういう星なんだよ。」
中継された内容は、各区が激しく対立していると捉えざるを得ない内容。
そして、平等派、至上派という2つの世論が対立をしている今の状況で、各区代表の魔法学院学院長…魔聖達が対立をする音声は、まさしく火に油だった。
故に「力で正しさを証明するしかない」と認識した民衆は、一触即発の状態にまでボルテージを上げていた。
そして、とどめの一発が放たれる。
ドォォォォォォォオオオオン!!!!!
南区、東区、北区、中央区…各区へ同時に爆撃が為された。
それは、魔法街が平和な道を選ぶ事を決定的に妨げるもので、人々は争いの道を「自分達の意志で選択」したのである。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ドォォォォォォォオオオオン!!!
「…な、なんだっ?」
いきなり爆音が響き渡ったかと思うと、建物がゴゴゴっと振動する。
すっげぇ嫌な予感がすんだけど。
隣に座る仲間を見ると、火乃香、遼、クレア、ルーチェは引き攣った顔をしていた。皆が同じ事態を予測しているって事だろう。特に状況把握が得意なルーチェは引き攣る…というか、最早顔が青褪めている。
「むぅ…これはテロか?」
ロア長官が冷静に呟く声が、何故か部屋全体に響き渡るように聞こえた。
緊急事態で五感が鋭くなったのかね。
バタン!!!!!
例によって部屋のドアを物凄い勢いで開け放った魔導推進庁職員が、必死の形相で叫ぶ。
「た、た、ったったたたたた大変です!各区が爆撃されました!」
その内容は、俺の予想を超えたものだった。
中央区だけ爆撃されたんじゃないのか。各区って事は南区も?
それって、ヤバくないか?どうやって収集つけんだよ。
「やってくれるな。こりゃぁこの場は交渉決裂だ。俺は俺のやりたいように動く。てめぇらも勝手に動け。」
ドッガァァァン!!と交渉のテーブルを蹴り上げたバーフェンス学院長は、身を翻すと颯爽と部屋から出て行ってしまった。
「そんな…これでは…。」
セラフ学院長は「信じられない」という表情で拳を握りしめている。
「この状況では、最早収拾が付かないのである。バーフェンスの言う通り、別行動を取らざるを得ないのである。」
セラフ学院長の肩をポンポンと叩いたヘヴィー学院長は、杖をヒョイっと動かすと、南区の護衛達と共にパッと姿を消してしまった。
「…私達も戻ろう。対策を練る必要がある。」
軽く目を瞑って首を横に振ったセラフ学院長も、シャイン魔法学院の数名と共に部屋から出て行ってしまった。
「交渉決裂か。想定外の事態だな。そして、タイミングが良すぎる爆撃。内部犯を疑わざるを得ないか。」
ロア長官は俺達をチラッと見ると立ち上がる。
「職員に伝えろ。各区の被害状況を早急に把握せよ。また、各区で暴徒発生の可能性も否めない。魔法街全体の状況把握から、事態収拾案を立案する!」
そして、職員にテキパキと指示を出しながら立ち去ってしまった。
後に残されたのは火日人さん、コンセルさんと俺達の7人だけ。
「最悪だな。火乃花、一旦お前達も南区へ戻れ。」
「分かったわ。」
「コンセル、先に警察庁へ行って中央区の状況を把握しておいてくれ。」
「かしこまりました。」
コンセルさんが足速に立ち去ったのを確認すると、火日人さんは俺達の方へ顔を向けた。
「お前らは縛られずに動け。」
「え、どういう…」
火乃花が聞き返そうとしたけど、火日人さんは「んじゃ。」と言って出て行ってしまった。
「縛られずにって…何によ。」
「ともかく…南区に戻りますの。今後の方針はそれから考えるしかありませんの。」
「だな。」
こうして、ブースト石を発端とする…魔法街全体を巻き込んだ事態は始まった。
この事態の行く末に待っている結末は、俺に…俺たちにとって堪え難いものになってしまったんだ。
2022年9月より更新再開します。
只今、魔法街後半のプロット修正をしております。
思ったより時間がかかってます(゜ω゜)