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2-5.クエスト完了

2020年12月16日

クエスト達成報告の場面を加筆修正しました。

 ゴブリンを倒した俺と遼は、少しだけ迷った後にゴブリン等が陣取っていた洞窟の中へ進む事にした。

 まぁ…基本的に今回のクエストのメインであるゴブリンの討伐は達成してるんだけどね。

 だから、そのままレフナンティに帰って報告しても良かった。

 あ、因みに討伐の印でゴブリンの耳を切り取って持って帰らなきゃいけなかったんだよね…。1体や2体ならともかく、30体近くのゴブリンから耳を回収するのは流石にゲンナリしたよ…。しかも、両手両足を撃ち抜かれてるだけで生きてるから、トドメを刺さなきゃいけなかったし。

 ちょっとばかし、処刑人の気持ちが分かった気もするよ…。分かりたくは無いけどね!?

 あと、ゴブリンロードは討伐の印が良く分からなかったから、角の生えた兜を回収してある。

 え、耳を持って歩いてるのかって。

 …まさか!そんな気持ち悪い事はごめんだよ。

 そんな時に役立つ魔法陣。ってね。

 俺が魔法陣で別空間に物を収納できるから、そこに放り投げてある。

 話が…逸れたな。

 ええっと……あぁそうそう。

 ゴブリンを討伐して、討伐の証も回収したから…クエスト達成なのは間違いない。

 ただ、ゴブリンが北門近くに出現するようになった原因は未だ不明なままなんだよね。てゆーか、ゴブリンが増えたから北門近くに出るようになった気がする。

 つまりだ、ゴブリンが増えた理由を見つける必要がありそうなんだよね。

 そう考えた時に1番怪しいのは…洞窟だろ?

 ってな理由で洞窟の中を調べることにしたって訳だ。


「龍人…魔獣の気配がなさ過ぎる気がしない?」


 横を歩く遼が不安そうな声を出す。

 …けど、俺も同意見だ。

 この洞窟の前にはゴブリンが陣取っていた。そして、戦闘を開始したらゴブリンロードが現れた。恐らくは洞窟の中から。

 これらが事実であるのならば、この洞窟には何かがあるはずなんだよね。そう思わない?

 そんな心構えをして洞窟に乗り込んだのに、何もないんだ。魔獣の気配もないし、お宝も無いし。

 でも、何故か洞窟の中は歩きやすい感じになってるんだよな。何かしらの手が加えられてる気がする。


「1番奥に何かがあるかも知れないだろ?最後まで気を抜かず進もう。」

「…だね。不安だよ…。」


 この後、俺と遼は黙々と洞窟の中を歩き続けた。

 30分位経った頃…遂に洞窟の最奥へと到達する。

 洞窟の最奥。そこはやや広い空間になっていた。

 空間の中心に魔法陣が突如として浮かび上がり、怪しい輝きを放つ。次の瞬間には魔法陣から巨大なゴーレムが姿を現す。

 …みたいな展開がありそうな雰囲気だね。


「遼、いくぞ?」

「…うん。」


 俺は刀を、遼は双銃を構え、油断なく、一歩一歩最大の警戒をしながら進む。

 そして…遂に…入口の反対側へ到着した。

 …おい!何も出ないのかよ!


「…意味分からんな。」

「ホントだね。」


 頭の後ろで手を組んで壁に寄りかかる。

 …もう完全に拍子抜けだかんね。

 俺の様子を見た遼が非難の声を上げる。


「あ、やる気なくしたでしょ!?遠足は家に着くまでって教わらなかった?」

「いやいや、ここまで勿体ぶって何も出てこないとか、こっから何か出てくる事はないだろ。」

「それは龍人の主観でしょ?気は抜いちゃダメだって。」


 ガコン


「…今何か音がしなかったか?」

「あ、えーと、ごめん。俺だと思う。」


 見ると遼が壁に手をついた場所がヘコんでいた。

 あぁ。アレね。壁のスイッチを押すと的な。


 ゴゴゴゴゴ……。


 洞窟が低い地響きを立てながら揺れる。

 もしかしなくても…これは洞窟が崩れるってヤツだろ。

 だってほら、パラパラと岩の破片が降り注いでるし。

 よし。状況をまとめてみよう。

 遼が洞窟の自壊スイッチを押した。…こんなとこだろうな。


「遼。速攻で逃げるぞ!」

「うん!!」


 そこからは…これまでの人生で1番頑張った気がする。

 風魔法による速度強化。

 魔力を全身に巡らせる身体能力強化。

 降り注ぐ岩は俺の風刃と遼の魔弾で吹き飛ばす。

 あとは、全力ダッシュ!!

 死に物狂いで外に飛び出した俺と遼のすぐ背後で、ガラガラと洞窟は音を立てて崩れ去ったのだった。


「………死ぬかと思った。」

「……。」


 遼は無言で突っ伏している。

 空を見上げると、綺麗な青空が広がっていた。

 なんでこんなに喉かなのに、俺と遼だけ死にそうになってんだよ…。理不尽だ。

 まぁ…命があっただけめっけもん。って感じか。

 今は少しだけ休もう。

 ……周りにゴブリンの死体が転がってなかったらもっと気が楽なのにね!?


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「今回のでは判断出来ないか。」


 崩れる洞窟から脱出した遼と龍人がレフナンティへ帰っていく後ろ姿を観察しながら、その者は呟く。


「しかし、魔法陣の使い方は他にいないわ。予想通りじゃないかしら。」


 黒装束に全身を包み、後ろに控えた女が言うと、観察する者は肩を竦める。


「だが、あの程度で判断は出来ない。時間は掛けられないか…。」

「まさか…アレを実行するつもり…?」

「…フン。俺は手段は選ばない。目的の為ならば、この身を地獄の業火に捧げることも厭わぬ。」

「……。」


 女は沈黙を保つ。それは…すぐ目の前に立つ者が、何があっても譲る事のない決意を秘めている事を知っているからこそ。


「…準備するわ。」

「頼む。」


 こうして、裏で暗躍する者達が静かに動き始めた事は誰も知らない。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 崩れる洞窟から奇跡的な生還を果たした俺と遼は、その後レフナンティのギルドでクエスト達成の報告を行った。ゴブリンの耳を数えながら、受付の人が顔をピクピクさせてたけど…。初クエストでゴブリン30体を倒したのって凄いことなのかね?別に普通だと思うんだけど。

 ゴブリンの大量出現に加え、ゴブリンロードが現れた事は比較的一大事らしく、すぐに警護団の調査隊が編成されて派遣されたらしい。

 そして、俺達はというと、警護団の団長に呼び出され…怒られていた。


「ホントすいません。」

「ごめんなさい。」


 平謝り。いやぁ、流石に突っ込みすぎたのは間違い無いからね。

 団長は俺達2人を睨み付ける。


「本当に何を考えているのですか!?私達警護団がいる意味を理解して欲しいのよ!」


 ん?団長が女なのかって?

 そうなんだよ。女なんだよね。

 しかも、ロリ。いや、見た目がね。

 亜麻色のロングヘアーに絵描きみたいな薄紫のベレー帽を被り、フリフリの薄紫と白を織り成したドレスを着ている。

 どう見ても良いとこ育ちのお嬢様なんだよな。

 ただ、ロリという見た目に反して実力は折り紙付きらしい。実際に戦ってるところを見た事がないからよく分からんけど。

 ともかく、俺と遼はそのロリ団長…プラム団長に怒られまくっているのだった。


「貴方達、自分の行動がどれだけ危険だったのかわかっているのかしら?まず、ゴブリンの集団に2人で突っ込むという無謀さ。そしてゴブリンロードが出現した時に逃げの一手を選べない無謀さ。…まぁ、貴方達がレフナンティに及ぶ危険性を考えて戦うことを選択したのは評価しますが。」


 …お?なにいまの。

 ロリお嬢様がツンデレを発動した気がするんだが。


「コホン。それだけではありません!ゴブリンロードが出て来たと思わしき洞窟に入り…それだけでも無謀ポイント追加なのです!…更に、その洞窟を崩すなど!調査隊の派遣はしましたが、恐らくゴブリン大量出現の原因は掴めないでしょう。」


 ジロリとロリ団長…じゃなくてプラム団長が睨んでくる。一丁前に腕も組んでるし。この外見で25歳ってんだから、本当に見た目の若々しさは異常だよ。

 てかさ、ロリだけど意外に体型か良い気がするのは気のせいかな?もしかしたら夜になるとロリサキュバス的な…。

 スコパーン!!


「いって!?」


 頭に衝撃が走る。見ればプラム団長の手には先端が花になった杖が握られていた。


「話を聞いてるのかしら!?」

「す、すいません。」

「全く…!いい!?2度と無謀な行動は起こさない事!さもないと、ギルド資格を剥奪します!」


 えっ!?それは…困る!


「すいませんでした!!」


 全力謝罪だぜ!


「……ゲンキンなのよ。」


 げっ。バレてら。


「龍人。悪いのは俺たちなんだし、素直に謝ろう。」


 そう言って遼はプラム団長に向けて深々と頭を下げた。


「そうなのよ。素直に心から謝る事が大事なのだと思うわ。分かるかしら龍人君?」


 何故か俺だけ責められるパターンね。

 うん。まぁ俺の態度が悪かったのが原因か。

 怒られてる最中に変な妄想してたしな。


「すいませんでした。今後、自重します。」

「よろしい。」


 俺が頭を下げたのを満足そうに頷きながら見たプラム団長は、人差し指をピンっと立てる。


「それでは本題です。」


 …ん?本題?今まで怒られたのは前段って事?

 俺と遼が顔を見合わせるのを微笑みながら見たプラム団長は、胸の前で腕を組む。


「今回の行き過ぎた行動は先にも言った通り、目に余るものがあります。しかし、その行動を完遂する実力があるのも事実なのよ。故に提案します。貴方達…警護団に入りませんか?」


 俺達を警護団に誘ったプラムは、ロリ趣味の男が見たら卒倒しそうな可愛らしい微笑みを浮かべる。

 おぉ。可愛い。

 ま、ロリ趣味じゃないけどね。

 ともかく、本題について答えなきゃならないよな。


「その提案は…考えさせてもらっても良いですか?」

「…あら。大体の人は警護団への勧誘は喜ぶんですが…何か不満、不安があるのかしら?」

「いや、単純にギルドで活躍していきたいってのが俺達の目的なんです。」

「それは…ゆくゆくは星を跨いで…という意味も?」


 プラム団長は可愛らしく首を傾げる。しかもキョトン顔ときたもんだ。これ、狙ってやってるだろ?


「そうですね。森林街だけでずっと活動するつもりは無いです。」

「そうなんですね。それならば、尚更警護団に入るべきです。」

「えっ?」

「警護団は通常のギルドクエスト以外の極秘クエストを受ける事もあります。つまり、経験を積んで強くなりたいのなら…警護団に入るべきですよ。退団は自由で結構です。」


 マジか。想定外の話だな。

 警護団はずっとレフナンティに常駐して街の平和を守る的な役割だと思ってたよ。

 プラム団長が話した事が本当なら、入るメリットは大きい気がする。

 遼の方を見ると…予想通りに困り顔をしていた。

 そうだよな。即断は出来ないよな。


「勿論、すぐに答えを出す必要はありません。そうですね…7日後の豊穣祭でお返事を貰いたいわ。」


 7日後…。それなら十分に考える時間はあるな。


「分かりました。」

「俺も、それで良いです。」


 俺と遼はプラムに承諾の意を伝える。

 これで話はお終い。

 そう思った矢先だった。


「ところで…多数のゴブリンとゴブリンロードを打ち破った貴方達の実力、気になりますの。手合わせしませんか?」


 はい?警護団団長と手合わせとか…無理!

 それに実力云々じゃぁない。

 プラム団長が戦い始めたら、嬉々とした表情で延々と戦い続ける話のは有名なんだ。

 実力よりも、そっち方面で恐れられているのは本人以外にとって周知の事実。

 絶対にやだね…!こんなとこで、くたばってたまるか!!


 それから30分。

 俺と遼は死に物狂いで手合わせを断り続けたのだった。

 ある意味ゴブリンロードと戦ったり、崩れる洞窟から逃げ出した時より必死だったかも。

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