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5-41.スニーキング試験2

 天二の光針が地面に突き刺さり、そこに光槍が突き刺さって引き起こした爆発は…俺が想定していた以上の威力だった。やっばり天二は強いわ。


「……成功。」


 いまいちやる気の無さそうな表情で親指をぐっと立てた天二。


「すげーなコレ。」


 我ながら凄いことをしたもんだと思う。

 この部屋の壁と床は、恐らく一定以上の魔法耐性を持った素材で出来ている。だからこそ、俺の魔法で熱疲労を起こして天二の魔法で突き破ったんだけど……。

 俺達に向かってきていたペイントは俺たちの周りに空いた穴から下に流れていっている。穴が開いていない部分からペイントが到達するのでは?って思うかもしれないけど、そこは大丈夫。3箇所くらいが辛うじて繋がっている程度て、俺達を中心に円を描くように綺麗に穴が空いたからね。


「にしても、このトラップ鬼畜すぎないか?」

「……うん。逃げ道が無い。」


 いや、待てよ。魔力操作で宙に浮けばペイントには触れなかったか。

 それに、ペイントが放流されていた穴の部分を凍らせれば………。冷静になるとそんなにヤバい状況じゃなかったのかも。


「天二……いや、なんでもない。次も一緒に行くか?」

「……残り3つ迄一緒。」

「まぁそれも有りだな。じゃ、行くか。」


 因みに…だけど、今回のスニーキング試験は基礎4種類と総合1種類に分かれている。基礎全ての秘密文書を集めると総合に挑戦できるんだとか。

 最後の総合は一人で挑戦したいって事なんだろうな。

 にしても、基礎があと3つ残ってるのは…地味に面倒くさいな。4つそれぞれが違うコンセプトらしいけど、今さっき俺達が挑戦したのは1番オーソドックスだと思う。

 最後の仕掛けも嫌らしかったし、スニーキングと違う要素を求められてた気もするし。


「次はどれにす……ん?」


 ピキピキという嫌な音が…。

 ガコン…!

 うそっ!?足場が崩落寸前なの忘れてた…!

 そのまま落下した俺達は、下の階に溜まっていたペイントに突っ込みそうになる。…というプチドタバタ劇を披露することになった。

 そして、ビルから出た俺達の所へ係員が近づいて来る。


「お疲れ様でした。あのような方法でこの試験突破したのは、貴方達だけですよ。」


 微妙に怒ってるように感じるのは気のせいか?


「全く…あの部屋をぶち抜くとか……。えぇと、次の試験ですが最初の時と同じように選べません。ランダムに転送された先で頑張ってください。」

「はーい。」

「……残念。」


 自分で選べないのか。これまた残念。となると、天二とはここでお別れだな。


「はい。転送しますよー。」


 変わらず不機嫌そうな係員によって強制転送された俺が見たのは…真っ直ぐ伸びる1本道だった。


「……また一緒。」

「お。天二も一緒か。」

「……これ、難易度が高い。」


 面倒臭そうな口調の天二が言う通り、俺達の前から伸びる一本道は普通では無かった。

 まず、天井付近の至る所に光源となる魔法陣が設置されていて、一定範囲を照らしている。

 そして、至る所に穴?が空いている。


「普通なら、あの魔法陣が照らした範囲が索敵範囲だから、そこに引っ掛からないように進め。だよな。」

「……多分もっと厄介。」

「だよね。」


 なんと言っても今回のスニーキング試験の前提は「潜入されている事が分かってる状況」だもんな。

 簡単に言えば、あの魔法陣が監視カメラだとしたら「警備モード」が「警戒モード」になるんだろうし。それに、俺達の少し前にはスタートラインみたいな赤い線が引かれてるんだよね。あのスタートラインを越えた瞬間に…色々大変なんだろうなぁ。と思ってしまう訳で。


「……一緒?別々?」

「普通に考えて別々じゃない?通路幅そんなに広くないし。」

「………どうぞ。」

「うわっ。様子見かい。まーいいか。先陣切らせてもらうよ。」


 腕をグルグル回しながらスタートラインの手前に立つ。

 さ、思い切って行ってみるか!

 魔法陣をいつでも発動できる状態にして、最初の一歩を踏み出すと…すぐに変化が現れた。

 まず、通路を照らす魔法陣がグリングリンと動き出す。索敵中の監視カメラ的な役割だな。でも、これなら…抜けられるな。

 通路の奥に向かって駆ける。時に身を捻り、バックステップやらサイドステップを織り交ぜながら魔法陣の光を巧みに避けていく。

 この程度なら案外すぐに突破出来るかも。


「…うわっ!?」


 通路幅を埋め尽くす赤い水の膜がいきなり俺に向かって突き進んできたのを通路の穴に入ってやり過ごす。

 なに今の。穴が無かったら回避不可能だったんだけど。


「やぁやぁ。ルールを説明するのを忘れていたよ。このスニーキング試験は咄嗟の判断力と周囲の状況把握、これに加えて緊急対応としてどこ迄の身体能力を発揮出来るのかを試すものだ。色の付いた水に触れる、魔法陣型サーチライトに照らされる。このどれかに該当するとスタート地点に戻される。1つの通路には最大2人迄配置するから、個人、協力の判断は任せよう。それでは頑張ってくれ。」


 この声…ロア長官だな。始まる前に説明しろし!


 ゴゴゴゴゴ…。


 なにこの音。

 ガンっ!?

 いきなり何かに突き飛ばされた俺は。穴の中から通路に押し出された。


「おいおい。マジかよ!?」


 俺が逃げ込んだ穴が、内側から迫り出した壁で埋まっていた。

 もしかして、一回使った穴は埋まる方式!?


「…って危ねぇ!」


 すぐ目の前まで迫っていたサーチライトをバック転の要領で躱す。そして、再び迫る水の膜を避けて穴に飛び込み…休んでられないな!

 避けて穴に飛び込んで、穴から飛び出てを続けながら少しずつ前に進んでいく。これ、結構ハードだぞ。

 それに、壁に空いてる穴の数が先に進むにつれて減ってきてるし!

 100メートル先位にゴールが見えるんだけど…残りの50メートル位先には穴が無さそうなんですが。


「…穴が無いけどサーチライトも無いな。」


 残り50メートルの地点で一旦足を止める。

 壁に穴も無ければサーチライトも無い。ごくごく普通の真っ直ぐな通路。


「だからこそ嫌な予感しかしないけどな。」


 最後に変な仕掛けを用意してそうだし。そう言った意味ではロア長官を信頼している。

 ……やるしかないね。最大限の警戒をしながら一歩を踏み出す。

 カッカッカッカッシャーン!カッカッカッカッシャーン!ブンパパパッバパーラパッパ、パラッパラッパラパラっ!

 パッパラッパーパーパーパー。パッパラッパーパーパーパー。パーパーラパーパーパーラッパーラー。パーララーパーパパーララー!


「こ、この曲は!?」


 最早意味不明な展開に反応が出来ない。てゆーか何でこの曲が流れんだし!みんなが知ってる◯◯◯パ◯の主題歌じゃんか。

 んでもって激しくもカッコいいメロディーに合わせて、床が突き出たり引っ込んだり、サーチライト魔法陣が現れたり消えたり、壁にいきなり空いた左右の小さい穴から穴へ赤い水が放たれたり。

 一言で言うならジャズ風の曲調に合わせたリズミカルトラップ?


「…………カオス。」

「うわっ!?……天二か。いきなり背後に現れるなし。」

「………遅いのが悪い。」


 遅いとか失礼な!つーか、俺より後に始めた筈なのに追い付くとか攻略スピード速いな。


「……どう攻略する?」

「法則が見つかれば抜けられそうな気もするけど、この音楽に合わせた感じの動きは……流石に法則を見つけるのも厳しいかも。」

「………じゃあ力尽くで。」


 天二が両手に光球を出現させる。


「なにする気だ?」

「……サーチライトは僕が消す。あとは任せた。」


 はいっ!?

 サーチライトが消えるとなると、突き出る床と、赤い水だろ?えぇっと…。


「……いくよ?」


 天二が両手を前に突き出し、眩い閃光を放った。イメージ的に某格闘漫画の目眩ましアタック。


「だぁぁ!いきなりすぎるんだって!龍人化【破龍】!」


 閃光を放った天二を抱え、風魔法併用で速度を最大限まで向上させ…通路の中に物理壁で覆われた通路を展開して突っ込んだ。

 ガチだ。ガチで全集中で物理壁を展開しないと間に合わない…!


「ぬぉぉぉおおおお!!」


 通路を抜けた所でズザザザァァァ!っと止まる。…いや、マジで危なかった。所々物理壁の展開間に合わなかったし。魔法陣の並列励起を使えなかったら詰んでたぞ。


「つ、疲れた…。」


 脇に抱えていた天二をドスンと落とし、座り込んでしまう。

 その天二は……え、首が変な方向に曲がってる?


「う…ぎ………。」


 ……言葉が出てこない。いつぶつけたんだ?物理壁の展開が間に合わなかった何箇所かで、突き出た床が当たったのか?いや、でもそんな衝撃は……。


「とにかく治癒魔法師を…!」

「……なんちゃって。」


 グリン!っと首が回って通常の顔配置に戻った天二が、したり顔で親指をグッと突き出した。

 …いや、マジで洒落にならないやつだったからね?


「天二…確実に死んだレベルの曲がりようだったと思うんだけど。」

「……企業秘密。」

「魔法か?って事は光以外に幻術?みたいな属性が使えるのか?」

「………いやん、恥ずかしい。」

「棒読みで言うセリフじゃ無いからな?」

「……秘密は魅力。」

「聞いた俺が馬鹿だったよ。」


 そもそも天二とここまで話せてるのが大きな進歩なんだし、もういっか。…かなり気になるけどね!


「お疲れ様です。スムーズにクリアしましたね。」


 ニコニコ笑顔の係員が声を掛けてきた。

 さっきの怒ってる風な係員とは正反対だな。やっぱりスマイルは大事。


「残る基礎試験は2つですね。どちらもあまり難しくないので、すぐに終わると思いますよ。」

「お、難しくないのは良いですね。どんな試験ですか?」

「1つが決まった数の爆弾で建物を効率よく破壊する試験。もう1つが遠距離からの狙撃試験です。遠距離魔法が使えない人は、相手に気づかれないように後ろから首を絞める内容に変わります。」


 どちらもぶっそうだなオイ。


「……スニーキングというよりテロ。」


 天二の突っ込みは的確だと思うぞ。確かにテロに必要なスキルな気がする。


「テロだなんてとんでもありません。あらゆる状況に対応できるか…の視点で構成された試験ですよ?」


 そんなニコニコの笑顔で言われたら反論はしたくなくなっちゃうな。


「では、次の試験にお送りしますね。」


 パチン!と係員が指を鳴らし、俺達は次の試験へ転送されたのだった。

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