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5-29.ハロウィン〜魔法街東区にて〜

 遂に待ちに待ったハロウィンがやってきた!

 街は南瓜とお化けで一杯だぜぃ〜!お化けの仮装をして言うしかない。「トリックオアトリート!!お菓子をくれなきゃイタズラするべ!?」ってな。

 魔女っ子コスプレ、エロサキュバスコスプレ等で歩く人達は俺の気を引きまくる。こりゃぁ楽しい。どっちを見ても目の保養。エロエロパラダイスだぜぃ!!



 …ってなりゃぁ良かったんだけどなぁ。


「龍人。流石にテンション低くない?一応東区に遊びに来てるんだから、せめていつも通りのテンションは保とうよ。ハロウィンだよ?」


 遼…分かるよお前が言いたいことは。けどさ、そういう問題じゃぁないのだよ!

 こいつの仮装センスを疑うぜ。


「あのなぁ…なんで俺だけこんなコスプレなんだよ?」

「えっ?」


 ドラキュラの格好をした遼は首を傾げて目をパチクリさせる。ルーチェみたいな行動取るなし!

 遼は普段のコスプレがややドラキュラ気味?というか似ているというか…あぁもう!とにかくそんな感じだから、大きな違和感はないんだよ。

 それなのに、俺の…俺のコスプレは…!


「そうかしら?龍人君のコスプレ…素敵よ。………プッ。」


 火乃花のやろう…めっちゃ楽しんでるじゃないか。


「私も素敵だと思いますわ。中々見ない個性的なコスプレですの。」


 魔女っ子の格好をしたルーチェは楽しそうにユラユラ揺れている。

 火乃花は何故か囚人コスプレだ。スタイルが良いから、白黒縞々の服に体のラインが浮き出て…エロい。


「私は…私も素敵…?だと…思うよ?黄色くて目立つし。」


 ナース姿をしたクレアが真剣に悩みながら褒めてくれる。

 そういうの…地味に傷付くんだよなぁ。普通に「ちょっと似合わないかも」とか言ってくれれば、それだけで「でしょ!?別のコスプレに変えてくる!」って言えるのに。中途半端な優しさは人を傷付けるってのはこういう事なんだなぁ。

 つーか、ナース姿のクレア…めっちゃ可愛いんだが。


「俺っちはもう少し奇抜にしても良かったと思うな!例えば…腐ってるバージョンとかねっ!」

「ニシシ。これはこれで十分に奇抜だよっ。」


 スーパーマンコスプレのルフトと、普段と同じ服装(つっても魔女っ子みたいだけど)のミラージュがチャチャを入れてくる。


「…もう良いよ。俺はこのままハロウィンを満喫するよ。」


 駄目だ。どうしても逆らう気が起きない。

 これから東区の人達と交流するってのにテンションが上がらないのは非常にまずい気がする。

 あ、因みに東区は南区とそう雰囲気は変わらない街並みだった。

 街を歩く人達は半分くらいの人が仮装してるかな。俺たちの一団がやけにはっちゃけてる雰囲気は出てるけど。

 そして、何より俺の姿。半分以上の人が仮装をして歩いているのに、皆が俺の事を見て目を丸くし、微妙に視線を逸らしてヒソヒソ話しながら通り過ぎていく。

 …やっぱ着替えようかな。


「皆様お待たせしたのですわ。本日は東区までようこそお越しになったのですわ!これから色々と美味しいお店等を紹介するので、楽しみにするのですわ!」


 通りの角からヒョコっと顔を出したマーガレットは、これまた際どい格好をしていた。

 黒をベースに白いエプロンを付けたメイド姿。それだけなら普通なんだけど、何故か胸元は大きく広がっていて豊満な谷間が丸見え。そしてスカートはミニスカレベルで短く、パンツが見えそ…見えてるな。

 そんな際どい格好をしたマーガレットは俺たちを見回して首を傾げた。


「あら?龍人はいないのですか?」


 不思議そうな顔をするマーガレットの肩をウサギの着ぐるみを着た少女がポンポンと叩いた。

 あ、マリアか。ロリ系な外見だからウサギコスプレ似合うな。


「マーガレットそこにいるわよ。ほら、そこの黄色いの。」


 マリアが俺を指し示し、俺を見たマーガレットは目をまん丸くして叫んだ。


「龍人…バナナですの!?」


 止めろ!叫ぶな!余計に注目されるだろうが!!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 そこから色々と一悶着合った後、俺たちはゾロゾロと東区の大通りを歩いていた。

 美味しいケーキが食べれる店があり、その店にコスプレした格好でいくとクッキーを追加でもらえるんだとか。

 …え?一悶着が何かって?

 それは…まぁ簡単に言うと「龍人!バナナという事は私に…むかれたいのですわね!それは…つまり求婚の証と受け取って良いのですか!?私もメイドとしてアレやこれやを…していただいて構いませんの。ポッ。」…的な感じだ。むかれたいってさぁ…まさか、アレの事じゃぁないよね?

 こっから先は想像に任せるけど、俺が大分大変な思いをしたのは間違いないと思う。


「あ、ここですわ。少し混んでいるかと思いますが、席の予約をしてあるので問題なく入れる筈ですわ。」


 俺の腕をガッチリホールドしたマーガレットは楽しそうにはしゃいでいる。こうしていると普通の女の子なんだけどなぁ。

 店の中に入ると、フロア係のお兄さん(執事コスプレ?)が俺たちを奥の部屋に案内してくれる。内装が中世ヨーロッパみたいでお洒落だな。

 席に着いてドリンクとケーキを頼んだ後、俺達は其々の魔法学院の様子について情報交換を行なった。つっても、そんなに大きな違いは無かったけどね。

 話の中で初めて知ったのは…他の2つの魔法学院が割り当てられている魔法街での役割って所かな。街立魔法学院は既知だけど…治安維持。ダーク魔法学院は魔獣討伐。シャイン魔法学院は学院交流。という其々の役割があって、授業内容は其れ準ずるカリキュラムが取り入れられているんだとか。

 ん〜、俺達の魔法学院って治安維持に関わる授業なんてあったかね?魔法街の歴史的な授業は合ったけど、それが治安維持に繋がるかは分からないし、治安維持活動をした事もない。

 そんな疑問を言うと、すぐに答えが出てきた。


「えぇっ?龍人ちゃん、もしかしてそんな事も知らないのっ?私ビックリなんだよっ。」


 両手を口の前に当てて分かりやすい驚きのポーズを取るのは魔女っ子ミラージュ(いつも通り)だ。


「そうだなぁ…あっ!最近だとアウェイクの事件がそれに該当するんだよっ。私たち1年生に調査依頼がきたでしょ?あーゆー時に、1番最初に動く事になるのが街立魔法学院の役割なんだよっ。」


 あぁ…そう言えばラルフ先生がそんなような事言ってたかも。完全に忘れてたよ。


「それにしても、シャイン魔法学院も大変ですの。学院交流は魔法学院間のスタンスが異なりますから、下手すると揉め事に発展しますわ。」


 魔女っ子ルーチェが指を顎に当てながら「本当に大変ですの」と染み染みと頷く。

 けれど、マーガレットは腕を組むと誇らしそうに肩を上下に揺らした。


「ふっふっふ。それがそうでも無いのですわ。」


 おいおいっ!そんなに揺らしたら…溢れるって。つーか、見えそうだからっ!

 なんてツッコミは出来ないので、俺は横目に素晴らしい光景を眺める事にした。


「シャイン魔法学院の役割である学院交流は、現状としてちゃんと機能はしておりませんの。と言うよりも、魔法街戦争後に学院間の関係修復を担う為に、厄介な役割を押し付けられたというのが真実ですわ。だから、ノルマはありません。強いて言うなら、揉め事の発端となってしまうと学院長にとても厳しく処罰される位ですわね。」


 うわぁ…学院長に処罰されるとか無理だわ。

 キャサリン先生との壮絶な一夜を思い出して、俺は思わず身をブルっと震わせる。

 シャイン魔法学院の学院長を知らないけど…そーゆー立場のあるポジションに居る人で普通の人はいないってのが通説だからな。


「シャイン魔法学院の学院長ってどんな人なの?」


 ナースクレアが人差し指を口に当てながら質問する。

 …ナース姿、可愛いな。ちょっと犯罪レベル。


「そうですわね…。とても美しい方なのですが、中身はおっさん気味なのですわ。」


 …はぃ?

 やばい。凄い俺の中のイメージが変わっていくんだが。シャイン魔法学院っていう位だから、極端に言えば天使みたいな…というか聖母?みたいな人が学院長だと思ってたんだけど、全然違うっぽいな。

 おっさん気味のおっさんの種類にもよるけど、場合によっちゃぁ相当厄介な存在かもしれない。


「へぇぇ!じゃぁきっと逞しいんだねっ!」


 そしてクレアよ。何故どうして目を輝かせているんだ。強い女に憧れているのか?

 俺としては今の可愛らしいままでいて欲しいんだけどなぁ。


 とまぁ、こんな感じで皆で楽しく色々な情報交換をして楽しい時間を過ごす事が出来た。

 たまには別の魔法学院の人と交流するのも悪くないな。


 …なんて思っていたら、ウサギマリアがマーガレットの肩をポンポン叩く。


「マーガレット、そろそろ本題に入るべきなのよ。」

「んっ?あ、そうでしたわ。今日皆さんをお呼びした本来の目的を忘れる所でしたわ。」


 あれ?皆で交流してハロウィンを楽しく過ごそうっていうのが目的じゃないのか?

 マーガレットは少しだけ居住まいを正すと、仮装をした俺達1人1人と視線を合わせると静かに頷いた。


「そうですわね。やはり、皆さんとても良い人達ですの。だからこそ、伝えなければならない事がありますわ。マリア。」


 マーガレットの合図に頷くと、マリアは部屋の内側に結界を張った。


「良いわ。」

「ありがとう。それでは、本題を話しますわ。今回の魔導師団選抜試験ですが、今のままですと街立魔法学院はボロ負けになる可能性があります。」

「…それは聞き捨てならないわね。」


 目つきを細めた火乃花が静かに言う。

 そりゃぁそうだよな。暗に俺達の学院の魔法使いは弱いって言われてるんだし。

 けど、そんな俺達の反応は予想済みなのか、マーガレットは口元に浮かべた微笑を崩す事はなかった。


「それは勘違いですわ。弱くはありません。しかし、実践という視点でシャイン魔法学院の方が習得が進んでいるのですわ。恐らくはカリキュラムの違いかと思います。」

「ふぅん。それじゃぁ何が足りないのか教えてもらおうじゃないの。」


 うわぁ火乃花怒ってるな。隣に座っているクレアがあたふたしてるじゃんか。

 怒れる囚人にあわてるナースって、非常にシュールな光景だ。というか意味不明か。


「簡単ですわ。恐らくは街立魔法学院では1年生の間に基礎魔法を完全に習得する方針なのだと思います。それは、魔法使いの育成に於いて時間は掛かりますが、確実な教育方法ですわ。しかし、シャイン魔法学院もダーク魔法学院もそれよりは実践寄りの教育課程ですわ。具体的に言うと…同じ魔力でも魔法の威力が変わるという事ですわ。これを習得しない限り、相当な魔力量差がない限り、ジリ貧になります。」


 どういう事だ?

 同じ魔力で魔法の威力が変わるって言うのは…良く分からないな。


「成程ですの。」

「そういう事ね。」


 ルーチェと火乃花はどうやら納得しているみたいだった。


「でも、そう簡単に習得できるものじゃないわ。」

「そうですの。私もそれなりに時間が掛かりましたの。」

「大丈夫ですわ。基礎が一定以上習得出来ている状態であれば、コツを掴めば1週間位で実践で使えるようになると思いますわ。先ずは…移動しましょう。」


 なんか魔女っ子ルーチェと囚人火乃花とメイドマーガレットだけで話が進んでるけど…。


 ともかく、俺達はマーガレットに連れられてとある屋敷に移動する事になるのだった。


「デカイ…。」


 マーガレットが連れてきた屋敷の前に到着した俺達は、その大きさに唖然とするばかりだった。屋敷っていうか豪邸。っていうか大豪邸?億万長者レベルの家なんですけど。


「こちらが私の家ですわ。周りに迷惑を掛けずに見せるには私の庭が最適ですわ。周りから野次を飛ばされる事もありませんし。」


 そう言ってツカツカと塀に付けられたドアを開けて中に入っていくマーガレット。


「龍人…凄い人に好かれたね。」


 ボソッと遼が耳打ちしてきやがった。

 余計なお世話だし!こんな金持ちと結婚したら、俺の精神が保たないっての。どうせアレやコレやの作法とかに厳しくて、窮屈な日々なんだろうなぁ。

 まぁ、マーガレット自体はとても良い奴なんだけどね。


「皆さん早く来るのですわ〜!」


 塀の中からマーガレットの声が聞こえる。こりゃぁ入るしか無いよなぁ。


「はっ?これが…庭?」


 塀の中に入るなり俺達は再び呆気に取られてしまう。

 デカイ。庭がデカ過ぎる。いやいや。ここは某富士山の下にある某遊園地ですか?って位にデカイ。


「それじゃぁ、私が実践で見せますわ。皆様は椅子に座ってゆっくりしてください。」


 いやいや、椅子なんて無い…え?

 気付けば召使いみたいな人達が椅子を持って立っていた。


「バナナ…?」


 あ、今召使いさん達の誰かが俺の事を見て疑問の声を上げたぞ。俺は、俺は聞き逃さなかったんだからな!


「さぁてと、やりますわ。」


 こうして、マーガレットによる魔力講座が開講したのだった。


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