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5-28.ハロウィン準備

 魔導師団選抜説明会が終わり、俺と遼はそわそわした日々を送っていた。

 あ、魔導師団の試験に緊張している訳じゃないよ?

 実は説明会の後にマーガレットからハロウィン当日に東区へ誘われたんだ。折角だから東区観光をしつつ、友好を温めようって名目で。

 まぁ…お婿候候補関連の話で外堀を埋められないように気をつけなきゃいけない気もするけど、他の区へ気軽に行くのって難しいから、今回は誘いを受ける事にしたんだよね。

 んでもって、ハロウィン当日に行くんだから、何かしらの仮装をするべきなのか?っていう内容でソワソワしてるって訳だ。


 遼が中央区に仮装グッズを下見に行ってくれてるから、俺はその間に別行動をする事にした。

 でだ。その俺が今いるのは図書館だ。

 目的は魔法街に於けるハロウィンの歴史を調べ、恥ずかしくない仮装をバッチリ決めるため。

 …んな訳あるか。

 目的はこの世界に里圏に関する情報がどれ位あるのかを文献から調べるためだ。遼が遊び担当。俺が真面目担当。

 …いかん。チョイチョイ話が逸れる。これもハロウィンを2日後に控えたワクワク感がそうさせるのかっ!?


 Colony Worldでは里圏は高難易度ダンジョンとして存在してた。俺達ブレイブインパクトが挑んだのがその中の1つである龍の里だった。

 俺の予想だけど、この世界はColony Worldに比較的準ずる世界構築になってる気がするんだよね。

 森林街も魔法街もあったし。街の作りとか基本ベースは一緒だし。

 もちろん魔法街戦争みたいな物騒なものは無かったけど。

 そうなると、里も存在するはずなんだよね。

 先ずは実在の確認と、どこにあるのか。この2つが判明したら楽なんだけど。

 セフが里の因子所有者を探していたってなると、高難易度ダンジョンとはまた違った意味合いがある気がする。それを知っているのと知らないのでは、今後の何かしらに大きく関わりそうな気がするんだ。特に天地の目的に近付ける可能性もあるしな。

 ま、そんな背景から図書館の書物を漁りに来たんだね。

 来たんだけど…。


「見つからん…つーか本多すぎだろ。」


 そう。全く手掛かりが無いんだ。伝承系の本とかも色々見たけど「確定情報」みたいなのは全く見つからなかった。

 唯一見つけたのは、トレジャーハンター日記に「里は世界を繋げるもの」という表記ぐらいかね。そのページも破れていてそれ以外は読めなかったんだよな〜。

 ………。

 あ!!凄い今更だけど思い出した。

 確か変遷に巻き込まれた時に聖龍が「私は封印される」みたいな事を言ってたな。

 つまり、この世界のどこかに聖龍が封印されて存在している可能性が高いって事にならないか?だとしたら、聖龍の封印を解けば色々な疑問を解決できるんじゃぁ…。

 封印されてるって言っても、どこに?ってはなしになっちまうけど。

 うん。天地の動向を確認しながら里の所在、聖龍の封印地を探るのが当面の方針になるか。

 さてと、図書館に情報がないんなら、詳しそうな人に聞いてみるか。


「って、ルーチェじゃん。」

「……ふぇっ!?」


 難しい顔で本を読んでいたルーチェは、変な声を上げながら本を閉じると俺を見て目をパチクリさせる。


「龍人君…びっくりさせないで欲しいですの。」

「あ、あぁごめん。」


 声を掛けただけでそんなに驚かれてもな…。変な本を読んでたとか?ふむふむ。「魔力効率化のススメ」とな。ぜんぜん普通の本じゃん。


「それで、何か用ですの?」

「あーごめん。見かけたからついつい声を掛けちゃっただけなんだよね。色々と調べ物をしてて空振りだったから、書物以外の方法で情報収集してみようかなと。」

「そうですか…。因みに、それは私達の目的関連ですの?」

「うん。そうなるかな。」

「それでしたら、お父様に話を聞く時間が取れないか確認してみますの。」

「あ、それ助かるわ。頼む。」

「分かりましたの。この後はどうする予定ですか?」

「ん〜、一先ず魔法学院の教師に聞いてみようかなと。」

「ふむふむ。それは有りですの。何か進展がありましたら教えてくださいな。」

「オッケー。じゃ、読書の時間を邪魔して悪かったな。」

「大丈夫ですわ。」


 俺とルーチェは軽く手を振り合って別れた。

 軽く振り返ったけど、今度は口をちゅんちゅんさせた普通の顔で本を読んでいた。…本を読みながら表情変わりすぎじゃね?

 突っ込むと怒られそうだから言わなけどねー。


 その後、ラルフ先生の所に行ったんだけど…。


「はぁっ?俺が天地とか里とか、何かが封印されてるとかそんな話知るわけないだろうが。一介の教師に期待しすぎたボケっ!」


 と、一蹴されました。

 もう少し親身に話を聞いてくれても良くない?

 いつも以上に機嫌悪かったな。ここ最近常に不機嫌だったけど、今日はその中でも最高潮。俺、タイミング悪いのかも。

 ラルフ先生に追い出されて、修練場をトボトボ歩いていると少し離れた所で足を組んで座り、手紙を読んでいるキャサリン先生を見つけた。

 なんでまた外で手紙なんか読んでるんかね。もしかしてラブレターか?…なーんてね。いや、エロ教師だし、その色気にやられて惚れる学院生が1人くらい居てもおかしくは無いか。

 一応キャリン先生にも聞いてみるかね。もしかしたら何か知ってるかもだし。


「ヒャッホゥ!!」


 うわー…修練場の真ん中に落ちてきたルフトがすげー楽しそうに着地したぞ。しかも着地時にルフトを中心に突風が吹き荒れて何人か吹き飛んでるし。…あ、スカートの中が見え…。


「ぶっ……!?」


 いきなり何かが俺の顔に張り付いた。


「……なんだよこの紙。」


 パシィイン!!


「…龍人君?人が読んでいる手紙を勝手に見たら、私無しじゃぁ生きられない体にしちゃうわよぉ?」

「怖っ!」

「全く…。教師のプライバシーを覗き見ようなんて、そんなに私の体が欲しいの…?」


 ルフトか巻き起こした風で吹き飛び、俺の顔に張り付いた手紙を高速で回収したキャサリン先生は下から俺を見上げるようにして顔を近づけてくる。

 近い…近いって!つーか、その体勢…色々首元から見えてんだって!


「なぁんてね。何か用があったんでしょ?」

「は、はい。えっと……。」


 それから幾つかの事を聞いてみたけど、ほぼほぼ収穫無しだった。

 ほぼっていうのは、「秘密の星に途轍も無い力が隠されているって、昔聞いた事があるような…ないようなぁ?」という、曖昧過ぎる話を聞けたから。


「それじゃあ…発散したくなったら私の部屋に来なさいね?」


 投げキッスをしながら陽気に歩き去るキャサリン先生だった。


 ………。んー、結局キャサリン先生の話からは重要な話は聞けなかったな。

 ……でも、あの手紙。一瞬だけ目に入ってきた文字が2つあった。

 1つは「戦争」。

 もう1つが「天地」の文字。

 あの手紙が実は天地からの司令書で、キャサリンが天地の手先という新事実。


「いやぁ…流石に話が突拍子もなさ過ぎるか。、」


 もしかしたら「天地が魔法街戦争を引き起こしたという過去の事実に対し、今後我々が取るべき作戦」みたいな内容かもしれないしな。

 うん。深く考えすぎて疑ってると「龍人の様子が変」みたいになって、余計な火種を生みかねない。

 キャサリン先生がどっち側でも俺がやる事に変わりは無いし。もし敵として立ちはだかるなら倒せばいいだけの事だ。

 ……倒せるかな?うぅっ…!夏合宿の一晩を思い出したら身震いが。


 その後、南区のギルドに行く事にした。受付のお姉さんならそーゆーの詳しいのでは!?っていう、ほぼノリと思い付きだ。


「あ、その話なら聞いた事あるわね。」

「マジっすか。教えてもらえませんか?」

「でも、噂レベルの話よ。星の集まりである各圏…星圏の軌道から外れた所に、里の名を冠する圏がある。みたいな感じだったと思うわ。」

「星圏の軌道から外れた所って…そもそも行きようがないですね。」

「それはそうよ。存在自体もあやふやだし。行くとしたら…宇宙空間を自在に移動する手段を見つけなきゃね。」

「…そりゃぁ無理ですね。」

「てしょ?夢物語を追いかけるんじゃなくて、現実的にコツコツクエストで稼ぐ方が良いわよ。」


 とまぁこんな感じで、微妙な情報だけが手に入ったのだった。

 んー、困った。思い当たるのはルーチェとか火乃花のお父さんくらいかな。つっても、2人の親とも激務らしく…前に親の情報網を使って天地の事を探ろうとしてくれた時も空振りだったみたいだから、そこまで期待できないんだよ。


「…ん?タムだ。キョロキョロしてどうしたんだろ。」


 ギルドの入り口を偶然見ると、挙動不審な様子のタムを発見した。緑のジャージに、モヒカンの部分だけ金髪の姿は遠目から見て間違うことはない。

 にしても…流石に怪し過ぎるだろ。周りの人達からも「何この変人」みたいな目で見られてるし。


「…面白いから尾行してみるか。」


 という訳で、魔導師団選抜試験でやるであろうスニーキングの予行練習を始める事にした。


 ……。

 うん。スニーキングって難しいな。

 つーかさ、スニーキングって良く考えたら周りの人に見つからないように行動する事だよね。俺がやってるのは尾行だから微妙にニュアンスが違う気がする。

 …!?

 危ね。今タムが振り向いたんですが。咄嗟に反対向きに歩いたから、ギリギリセーフか?

 タムが歩いている場所は南区の大通りだ。ずっとキョロキョロしながら歩いてるんだけど、もしかしたら周りの目を気にしているんじゃなくて、何かを探してるのかも。

 そうすると尾行の意味が無くなるかも…ん?


「やっと見つけたっす。」


 タムは路地裏に入っていく。尾行しにくい場所に行くね。これは魔法を使った尾行術を開発する必要が…。

 そんな事を考えながら路地裏を覗くと、タムは商人みたいな人と何かを話していた。


「何だ…あれ。」


 商人が小さい小袋を渡し、タムは金を払ってそれを受け取っていた。

 凄い怪しいんですが。麻薬…なんてオチないよな。流石に同級生がドラッグ中毒ってのはいただけないぞ。そもそも魔法街に麻薬ってものがあるのかも分からないけど。


「んじゃ、これで失礼するっす。」


 タムは軽い調子で商人に挨拶すると俺の方に向かって歩き始めた。

 話しかけるか?

 ………いや、やめておこう。尾行していた事は知られない方が良い気がする。

 もしかしたら、タムが天地の一員っていう可能性もあるよな。

 いやぁ…本当にそうだとしたら、辛いな。同級生がドラッグ中毒より辛い。


「ふんふんっふ〜ん。」


 大通りの看板影に隠れた俺に気付かず、鼻歌を歌って上機嫌なタムは軽い足取りで歩き去っていった。


「…今日は色んな場面を見たな。」


 キャサリン先生が持ってた「天地」「戦争」の文字が書かれた手紙。ドラッグ中毒疑惑?のタム。ルーチェにも無駄に驚かれたし。

 微妙に疲れたから、今日はもう帰ろうかね。


 いや。ここはコーヒーだ。美味しい一杯を飲んで、心身共にリラックスする事が必要だ!

 今日は高いやつを飲んじゃうんだからね。


 その後、美味しいコーヒーを飲んでホワッとしていると、大きな買い物袋を持った遼が疲れた顔で俺の所にやってきた。


「龍人…俺、こういうイベント関連の買い物向いてないかも。もぅ皆が凄い色んなものをオススメしてくるんだもん。」

「それは…お疲れ。結局、その買い物袋を見るに…色々買わされたのか?」

「まぁそうだね。でも、ちゃんとテーマを持って買ってるから変にはならないと思うよ。あ、代金1万5千円で〜す。」

「…はぁっ!?なんでそんな高いんだよ。」

「ふふふふ…それはこれを見れば分かる!」


 ドヤ顔で買い物袋を広げる遼。その中を見た俺は、思わずこめかみに手を当ててしまった。


「…本気かよ。」

「本気だよ?」


 …10月31日を迎えたくないんですが。

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