表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

第5話 イケメン彼女は一歩を踏み出す


 "好き"に少しだけ正直になる。


 そう心に決めて、頑張って行動したのに。


『俺は店員として当然のことをしただけだし、お礼は気にしなくて大丈夫だよ』


 勇気を出して送信したメッセージの返信は、実に速水くんらしい内容だった。


 彼はとても誠実で真面目な人だ。

 困っている人がいれば手を差し伸べるし、いつだってほしい言葉をかけてくれる。


 そんな速水くんが私は大好きだし、尊敬している。


 今日はそれが完全に裏目に出てしまった。

  

 でも、このままじゃ終われない。

 断られたままだと、お礼の気持ちと好きの気持ちが整理できない。

 

 だから今日一日、速水くんと話す機会を伺っていたんだけど……。


「全然話し掛けられない……」


 私が中々勇気を出せなかったのもあるけど、いざという時に限って階段から先輩が降ってきたり、後輩が喧嘩を始めそうだったり、クラスメイトが怪我をしてしまったり。

 

 トラウマから身を守るため、私は理想の男の子を演じてしまう。 

 それは少女漫画の王子様と、速水くんに影響を受けていて。

 ついつい、身体と口が動くようになってしまったのだ。


 だから――


「やっと捕まえた」


 速水くんに対しても、癖が抜けずにやってしまった。


 本当は、普通に話し掛けようとしたのに。

 緊張しすぎて足がもつれて、そのまま壁にドンって。

 テンパって変なセリフも言っちゃったし、絶対おかしいと思われてる。


 ああ、でもやっぱり速水くんはカッコいいな。

 顔も性格もカッコいいなんて、そんなの反則だ。

 このままずっと見ていたいくらい……。

 

「……はっ! ご、ご、ごめん速水くん! すぐどくから!」

 

 もう本当に、何やってるんだろ私。

 

「いきなりごめんね、驚かせちゃったよね……」

「別にいいけど、どうしたの?」

「それは……ちょっと話したいことがあって……」


 やっぱり速水くんは優しい。

 挙動不審な私と目線を合わせて、ちゃんと話を聞いてくれる。


 だからこそ、落ち着いてゆっくりと話がしたい。


「……速水くん、場所変えていい?」


 優しく、速水くんが頷いてくれる。

 

「こっち来て」


 あとは私が勇気を出すだけだ。




(何やってんだ私!!!)


 速水くんと手を繋いでしまった。

 正確には手首だけど、そんなの今はどうでもいい。

 全身が熱くなって、頭がどうにかなりそうだ。

 

「早乙女さん、話って何かな?」

「あっ、えっと……」


 そうだ、私は速水くんに言いたいことがあったんだ。

 ここなら空き教室で誰もいないし、話をする場所としては最適だ。

 

 メッセージでも難易度が高かったのに、直接は凄く恥ずかしいけど。


 ――"好き"に正直になっていいんじゃないかな?


 他ならぬ速水くんの言葉が、私の背中を優しく押してくれた。


「昨日送ったメッセージのことなんだけどね?」

「ああ、やっぱりそのことか」

「……やっぱり?」

「うん、ちょっと予想してた」


 ニコリ、と速水くんが人の良い笑みを浮かべる。

 いつも遠目から見つめていた、私の大好きな顔だ。

  

 また、"好き"の気持ちが強くなる。


 頑張れ、私。


「あのね……やっぱりお礼、させてくれないかな?」

「そう言われてもなあ。俺は本当に気にしてないよ?」

「私が気にするの! ……とても救われたから」


 思ったより、大きな声が出た。

 速水くんが目を丸くしている。


 もう一歩、あと一歩。


「私、素敵なカフェを知ってるから……一緒に行かない?」

 

 これで断られたら潔く諦める。


 だって、これ以上進むことは今の私にはできない。


 精一杯の勇気を込めた私の誘い。

 

 お願い、私と一緒に――


「そこまで言ってくれるなら。週末だよね、一緒に行こうか」


 いつだって速水くんは私がほしい言葉をくれる。


 その日の晩、私は"好き"の気持ちが溢れて眠れなかった。

 

次回、お出かけ編。


「面白そう」「続きが読みたい」という読者様は是非、ブックマーク登録をよろしくお願いします。

また、後書き下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れてもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] かわ……かわ……(語彙力消失)
[良い点] めちゃめちゃ可愛いじゃねぇか早乙女さん... [一言] こういうヒロイン視点でヒロインの心象がわかるのめっちゃいいですね(๑´꒳`๑)
[良い点] イケメン女子いいなぁ〜 ギャップがたまらんです いつも楽しみにしています!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ