第10話 イケメン彼女の独白
速水くんの言葉に背中を押され、私は"好き"に少しだけ正直になることにした。
勇気を振り絞って、メッセージアプリで週末デート(?)に誘った。
一度は断られたけど、直接アプローチして約束を取り付けた。
当日は、精一杯の可愛い恰好をして待ち合わせ場所に向かった。
世間一般的に、こんなことは本当に小さな小さな一歩かもしれない。
けれども、私にとっては大きな大きな一歩で。
速水くんに「似合っている」と言われるだけで、「女の子っぽい」と思ってもらえるだけで、私は全てが救われた気がした。
それなのに。
私のトラウマは私に絡みついて離れない。
久しぶりに、人前で女の子の格好をしたからかもしれない。
どうしても、あの日の事が頭を過ってしまう。
私の"好き"が否定された日の事を思い出してしまう。
"好き"に正直になりたい。
そう願う一方で。
"好き"に正直になるのは辛い。
だから。
「早乙女さんが無理をしてると思ったんだ」
速水くんに、そう言われた時。
私は涙が溢れそうになった。
どうして貴方は、私がほしい言葉をくれるのだろう。
どうして貴方は、いつも私に寄り添ってくれるのだろう。
どうして貴方は、こんなにも優しいのだろう。
色々などうしてが浮かんでは消える。
結局、私は一つだけ聞くことにした。
「……どうして分かったの?」
彼は答えた。
「早乙女さんの"好き"を偶然知ったから」
一瞬、ドキッとするその答えの続きはとてもよく考えられていた。
可愛い服が好きなのに、男物の制服を着ていること。
みんなに見られたくない、知られたくないと頼んだこと。
SNS用の写真を本当は撮ってみたいという気持ちも見透かされていたらしい。
「早乙女さんは何か理由があって、"好き"なことを我慢しているんじゃない?」
幾重にも重なる分析の下で、速水くんは私の無理を見破った。
同時に、彼が五年前の私との出会いを覚えていないとことを悟った。
でも今は、そんなことどうでもいい。
「早乙女さんの力になれるといいんだけど……」
どうやら彼は、一度や二度だけじゃなく、何度でも私を救ってくれるみたい。
やっぱり、速水くんは私のヒーローだ。
だから信頼して、全てを話すことができる。
私は私のヒーローに、私のトラウマを話した。
五年前の出来事は内緒にして。
だってそれは、トラウマであると同時に、淡い初恋のエピソードだから。
一番の”好き”をいつか君に伝えられるといいな。
第一章完結間近。
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