VIII 金属製品から出来る二酸化炭素削減法
私達の身の回りには、金属で出来た製品がたくさんあります。
この作品を見るために使用しているパソコンや、携帯電話にも色々な金属が使用されています。
その金属を鉱石から精製するためにも、たくさんのエネルギーが使用されています。
ですから、それを捨ててしまえば、そのエネルギーを無駄にしてしまうことになります。
そして新たに金属を精製するために、またたくさんのエネルギーが必要になります。
当然のことではありますが、金属は地球上に無限にあるわけではありません。
今のまま採掘を続ければ、あと100年以内に枯渇すると考えられている金属はいくつもあります。
中にはあと20〜30年と推定されている資源もあります。
日本は世界の中でたくさんの鉱産資源を輸入し、そして消費している国です。
世界の人達から見れば、批判を受けてもおかしくないと思います。
私達は毎日の生活の中で、そのことを忘れてはいけません。
化学の参考書に載っていましたが、金属の精製の仕方は次のとおりです。
1. アルミニウム
ボーキサイト(酸化アルミニウムを含む鉱石)に水酸化ナトリウムを加えて、酸化アルミニウムを溶かす。
Al2O3 + 2NaOH → 2NaAlO2 + H2O
これに空気を加えながら水と反応させて水酸化アルミニウムにして沈殿させる。
NaAlO2 + 2H2O → Al(OH)3↓ + H2O
水酸化アルミニウムを焼いて、純粋な酸化アルミニウムにする。
2Al(OH)3 → Al2O3 + 3H2O
氷晶石という鉱物を混ぜて約1,000℃に加熱し、炭素棒を使って電気分解する。
Al2O3 + 3C → 2Al + 3CO
化学反応によって生じた一酸化炭素は、恐らく二酸化炭素にして大気中に出しているものと考えられます。(以降の化学反応式においても同様に考えられます。)
この時、大量のエネルギーを消費しています。
Yahoo! JAPANで検索したところ、ボーキサイトから1トンのアルミニウムを作るのに使う電力は約21100kWhとなっていました。
これは一般的な家庭1ヶ月の電気使用量(240kWh)の88倍に当たります。
1kWhの発電によって二酸化炭素が450g排出されるというデータに基づいて考えた場合、二酸化炭素排出量は9495トンにもなります。
(この値は電力に基づいて算出したものなので、電気分解によって発生する一酸化炭素、二酸化炭素まで考慮すると、排出量はさらに増えます。)
一方で、リサイクル品からアルミニウム1トンを作れば、そのわずか3%の電力(約590kWh)で済みます。
二酸化炭素排出量に換算すれば、265.5トンです。
これを踏まえて考えた場合、350mlのアルミ缶(重量16g)に入った飲み物を飲んだ後、それを道端に捨てて放置してしまった場合、計算上337.6Whの電気を無駄にしたことになります。
これは、32Wの蛍光灯1本を10時間半点灯させた時の電気量に相当します。
(二酸化炭素排出量に換算すると151.92g)
そして、また同じサイズのアルミ缶をボーキサイトから製造するために、また大量の電気を使うことになります。
一方、そのアルミ缶をリサイクルにまわした場合、計算上9.44Whの電気で製造することが出来ます。
(二酸化炭素排出量に換算すると4.25g)
アルミ缶をボーキサイトから製造した場合と、リサイクル品から製造した場合では、電気量、二酸化炭素排出量についてそれぞれ337.6−9.4=328.2Wh、151.92−4.25=147.6gの差が出ることになります。
また、アルミニウムを精製する際に発生する二酸化炭素まで考慮すれば、リサイクルによって削減出来る二酸化炭素はさらに増えると考えることが出来ます。
ですから、私達は空き缶拾いをすることで、一人で1日1kg以上削減することも出来ます。
2. 鉄
赤鉄鉱(Fe2O3)、磁鉄鉱(Fe3O4)などを溶鉱炉に入れて溶かし、一酸化炭素と反応させて鉄を得る。
3Fe2O3 + CO → 2Fe3O4 + CO2
Fe3O4 + CO → 3FeO + CO2
FeO + CO → Fe + CO2
この鉄には炭素などの不純物が数%含まれているため、これに石灰石などを入れて熱し、炭素を一酸化炭素や二酸化炭素にして除く。
この過程を見れば分かりますが、鉄を精製する際には二酸化炭素が発生しています。
また、アルミニウムほどではありませんが、精製にはかなりのエネルギーが必要です。
当然、このエネルギーを作り出すためにも二酸化炭素が発生します。
ですから、使用済みスチール缶やくず鉄などをリサイクルにまわせば、かなりの量の二酸化炭素を削減出来ると考えられます。
3. 銅
黄銅鉱(CuFeS2)にコークス(石炭から液体成分や気体成分を除いた残りの部分。主成分は炭素)、石灰石などを加えて1300℃くらいに加熱する。
4CuFeS2 +9O2 → 2CuS + 2Fe2O3 + 6SO2
この硫化銅を転炉に入れて空気を吹き込む。
2Cu2S + 3O2 → 2Cu2O + 2SO2
2Cu2O + Cu2S → 6Cu + SO2
この銅には不純物が含まれているため、硫酸銅水溶液に入れて約0.3V程度の電圧をかけ、純銅を精製させる。
この化学反応式では二酸化炭素は出てきませんが、それでも加熱することでかなりのエネルギーを消費しています。
4. チタン(チタニウム)
軽くて硬い金属なので、ジェット機や宇宙船などに利用されています。
また地殻中にたくさん含まれている物質(存在量は第9位)でもあります。
ルチル(二酸化チタン)を塩素、炭素と共に加熱する。
TiO2 + 2Cl2 + C → TiCl4 + CO2
これを不燃性ガス中で800℃に加熱し、液体の金属マグネシウムと反応させる。
TiCl4 + 2Mg → Ti + 2MgCl2
この反応式中でも二酸化炭素が発生しています。
また金属マグネシウムを精製するためにも炭素を使って電気分解をするため、やはり大量のエネルギーが必要になり、二酸化炭素も排出していると考えられます。
5. 鉛
硫化鉛を焼いて酸化鉛にし、炭素を使って精製をする。
2PbS + 3O2 → 2PbO + 2SO2
PbO + C → Pb + CO
6. 亜鉛
亜鉛を含む鉱石を焼いて酸化亜鉛とし、コークスと反応させる。
ZnO + C → Zn + CO
この亜鉛にはカドミウムが含まれるので、蒸留して分離する。
このように金属の精製には加熱したり炭素を使用したりすることが多いです。
(銀など、炭素を使わずに精製する金属もありますが。)
日本は確かにたくさんの原石を輸入し、たくさんの金属を使っている国ですが、製品の中にはたくさんの金属資源が眠っていると考えることも出来ます。
ですから、金属製品を捨てたりせずにリサイクルすることは、エネルギーの節約や二酸化炭素の削減をするうえで大切なことです。
現に、使用済み携帯電話などに含まれる金属は、分離されて再利用されているといったニュースも耳にします。
使用済みの機械は処理するのに有料になる場合もありますが、これからの世の中のためにもぜひリサイクルにまわしていきましょう。