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XV 石油・石炭製品から出来る二酸化炭素削減法2

 以前、私は「VI 石油・石炭製品から出来る二酸化炭素削減法」の中で、ポリエチレンなどのプラスチック類を燃やした時に排出される二酸化炭素排出量について計算しました。

 その時は計算をしやすくするために炭素、水素、酸素の3種類の元素からなるものに絞りました。

 しかし、プラスチック類にはその3種類以外に窒素や塩素などを含むものもたくさんあります。

 「VI 石油・石炭製品から出来る二酸化炭素削減法」ではそれらの中から6,6-ナイロン、6-ナイロン、ポリ塩化ビニルなどを取り上げ、簡単に説明をしましたが、その時は二酸化炭素排出量を計算しませんでしたので、ここで計算してみようと思います。



・6,6-ナイロン

 原料はアジピン酸とヘキサメチレンジアミンで、重合させることで得られます。

 化学式は(-OC-(CH2)4-CO-HN-(CH2)6-NH-)nとなっています。(nは配列が無数に続いていることを示します。)

 アジピン酸(HOOC-(CH2)4-COOH)はベンゼン(石油、石炭に由来)から合成されます。

 ヘキサメチレンジアミン(H2N-(CH2)6-NH2)は1-ブテン(石油、天然ガスに由来)やベンゼンから合成されます。

 6,6-ナイロンの化学式の中には炭素原子が12個、水素原子が22個、酸素原子が2個、窒素原子が2個あります。

 分子量をC=12、H=1、O=16、N=14とした場合、226g中144gが炭素になります。

 つまりナイロン100gあたりには100×144÷226=63.72gの炭素が含まれています。

 炭素63.72gが燃えた場合、排出される二酸化炭素は63.72×44÷12=233.63gになります。

 なお、完全燃焼させたと仮定した場合の反応式は

 2(-OC-(CH2)4-CO-HN-(CH2)6-NH-)+ 37O2 → 24CO2 + 22H2O + 4NO2

 となるため、人体に有害な二酸化窒素が発生します。

(二酸化窒素は大気中で酸化されて酸性雨の原因となる硝酸になります。)

(参考資料:くわしい化学の新研究)



・6-ナイロン

 原料はイプシロン-カプロラクタムで、少量の水を加えて加熱すると得られます。

 化学式は(-HN-(CH2)5-CO-)nとなっています。

 イプシロン-カプロラクタム((CH2)5-CONH)はベンゼンまたはシクロヘキサン(石油、石炭に由来)から合成されます。

 6-ナイロンの化学式の中には炭素原子が6個、水素原子が11個、酸素原子が1個、窒素原子が1個あります。

 分子量をC=12、H=1、O=16、N=14とした場合、113g中72gが炭素になります。

 6-ナイロンに含まれる各原子数は6,6-ナイロンと同じ割合なので、100gあたりには63.72gの炭素が含まれています。

 炭素63.72gが燃えた場合、排出される二酸化炭素は63.72×44÷12=233.63gになります。

 なお、完全燃焼させたと仮定した場合の反応式は

 4(-HN-(CH2)5-CO-)+ 37O2 → 24CO2 + 22H2O + 4NO2

 となるため、やはり人体に有害な二酸化窒素が発生します。

(参考資料:くわしい化学の新研究、ウィキペディア)



・ポリアクリロニトリル

 一般にはアクリル繊維と呼ばれています。

 原料はアクリロニトリルで重合させることで得られます。

 化学式は(-CH2-CH(C≡N)-)nとなっています。

 アクリロニトリル(CH2=CH-C≡N)はプロピレン(石油に由来)にアンモニアと酸素を作用させることで合成させます。

 ポリアクリロニトリルの化学式の中には炭素原子が3個、水素原子が3個、窒素原子が1個あります。

 分子量をC=12、H=1、N=14とした場合、53g中36gが炭素になります。

 つまりポリアクリロニトリル100gあたりには100×36÷53=67.92gの炭素が含まれています。

 炭素67.92gが燃えた場合、排出される二酸化炭素は67.92×44÷12=249.06gになります。

 なお、完全燃焼させたと仮定した場合の反応式は

 4(-CH2-CH(C≡N)-)+ 19O2 → 24CO2 + 6H2O + 4NO2

 となるため、人体に有害な二酸化窒素が発生します。

(参考資料:くわしい化学の新研究、ウィキペディア)


 ※アクリル繊維にはアクリロニトリルに酢酸ビニル(CH2=CH(CH3COO))や塩化ビニル(CH2=CHCl)を混ぜて重合させたものもありますが、化学式が一定でないため、ここでは省略します。



・ポリ塩化ビニル

 原料はアセチレンと塩化水素で、これらを反応させて塩化ビニルを合成し、さらにこれを重合させることで得られます。

 化学式は(-CH2-CHCl-)nとなっています。

 アセチレン(CH≡CH)は天然ガスに含まれるメタンやエタンから合成されます。

 ポリ塩化ビニルの化学式の中には炭素原子が2個、水素原子が3個、塩素原子が1個あります。

 分子量をC=12、H=1、Cl=35.5とした場合、62.5g中24gが炭素になります。

 つまりポリ塩化ビニル100gあたりには100×24÷62.5=38.4gの炭素が含まれています。

 炭素38.4gが燃えた場合、排出される二酸化炭素は38.4×44÷12=140.8gになります。

 なお、完全燃焼させたと仮定した場合の反応式は

 2(-CH2-CHCl-)+ 5O2 → 4CO2 + 2H2O + 2HCl

 となるため、人体に有害な塩化水素が発生します。

(塩化水素は水に溶けると強い酸性を示す塩酸になり、酸性雨の原因となります。)

(参考資料:くわしい化学の新研究)


 ※塩化ビニルは耐熱性があり、難燃性のため燃やしにくいですが、参考までに燃やした時の二酸化炭素排出量を計算してみました。

 また塩化ビニルは不完全燃焼が起きるとダイオキシンが発生するという報告もありますので、あまり燃やすのは好ましくないです。

 さらには紫外線に当たると塩素が少量ずつ放出される可能性もあります。


 ※塩化ビニルと呼ばれている物質には他にもポリ塩化ビニリデンと言われる物質があり、サランラップなどに使われています。

 ポリ塩化ビニリデンの化学式は(-CH2-CCl2-)nとなっています

 この物質は単体で使用されることは少なく、塩化ビニルなどと混ぜて使用されるため、二酸化炭素排出量の計算は割愛します。



 ここに掲載した値は製品を燃やした場合ですが、これ以外にも製造過程で二酸化炭素を排出していることも考えられます。

(以前、レジ袋1枚を作るのに、石油20ml必要と記述したことがあります。)

 そのため、捨てれば私達が考えている以上に多くの二酸化炭素を排出してしまいます。

 それだけでなく、有害な二酸化窒素(窒素酸化物)や塩化水素なども排出してしまい、酸性雨の原因にもなってしまいます。

 しかし、これらはリサイクルをすることも出来ます。

 リサイクルをすれば二酸化炭素の削減に貢献することが出来ます。

 また、塩素を含んでいない製品を使えばさらに酸性雨やダイオキシンを防ぐことも出来ます。

 私はラップを使う場合には、なるべく塩素を含んでいないものを選んで買うことにしています。

 皆様もプラスチックから出来た製品を使う時には、二酸化炭素や酸性雨、ダイオキシンなどを少し頭の片隅に入れてみてはいかがでしょうか。

 その意識が地球環境の保護にもつながっていくと思っています。


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