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XIII 特別収録 〜新エネルギーに秘められた可能性〜

 ここまでは二酸化炭素の排出量や、削減方法について書いてきましたが、この項ではそのテーマから少し離れ、現在研究や実用化が進められている新エネルギーについて書いてみることにします。

 今世界中の技術者達は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を抑制し、地球温暖化を食い止めるために奔走しています。

 それらの技術は果たしてどれぐらいの可能性を秘めているのか、どれぐらい地球温暖化防止に貢献してくれそうなのかを、私なりの視点でこれから書いていきます。

 これらが本当に正しいのかどうかは、私にも分かりませんが、せめて読者の方々の参考になればと思います。


1. バイオエタノールの場合

 バイオエタノールとは、人々の手で育て上げられた農作物から、燃料用に製造されたエタノールのことを言います。

 化石燃料を燃料として使った場合、それは地下深くに長年眠っており、近代の世界においては元々大気中に存在しなかった二酸化炭素を放出することになります。

 そのため、使えば使うほど二酸化炭素濃度を高くしてしまい、地球温暖化を進行させてしまうことになります。

 一方で、農作物から燃料を製造させた場合、農作物が成長する時にすでに大気中に存在していた二酸化炭素を吸収しています。

 ですから、その燃料を燃やしても、大気中の二酸化炭素濃度は理論上変化しないという考え方が成立します。

 この考え方に基づいて、今世界中ではバイオエタノールの開発、製造が盛んに行われています。


 アメリカでは1990年には341万キロリットルの年間生産量でしたが、その後増え続け、2003年には1064万キロリットル、2006年には1838万キロリットルにもなりました。

 その原料はほとんどがトウモロコシで占められており、農家にとっては大きな収入源になっています。

 データでは、トウモロコシ1トンから336.9リットル(約270kg)、耕地1haあたりでは2133リットル(1706kg)のバイオエタノールを製造することが出来ると書いてありました。

 しかし、製造には化石燃料が使われており、トウモロコシの価格上昇なども引き起こしてしまっている状況のため、現段階では悲観的な見方をしている人も少なくありません。


 ブラジルでは1990年にはすでに約1200万キロリットルの年間生産量で、2006年には1600万キロリットルを越えました。

 その原料は主にサトウキビで、糖分を絞った後のカスを燃料として使っているため、この点でも環境に優しいと考えることが出来ます。

 データでは、サトウキビ1トンから56.8リットル(約45.4kg)、耕地1haあたり5191リットル(4152kg)のバイオエタノールを製造することが出来ると書いてありました。

 しかし、現地ではサトウキビ畑を作るために森林が伐採されるなどの弊害も生じているため、バイオエタノール製造が二酸化炭素削減に貢献しているとは一概には言い切れないようです。

(以上、参考資料:図解 バイオエタノール最前線)


 また、私自身が「地球温暖化物語」を執筆している時に気がついたことですが、作物に由来するグルコース(ブドウ糖)からバイオエタノールを作る場合、次のような化学反応式が成り立ちます。

 C6H12O6 → 2C2H5OH+2CO2

 そのため、計算上グルコース180gから得られるエタノールは92g、残りの88gは皮肉にも二酸化炭素になってしまいます。

 また、エタノールを製造しても、まだ水分がたくさん含まれているため、そのままでは燃料として使えません。

 燃料として使うためには濃度を95〜99.5%にしなければならないため、加熱して一旦気体にし、冷却して再び液体にするという作業を何回か行う必要があります。

 さらに、グルコースを作る場合においても、サトウキビの場合は絞って水分を飛ばせばそのままグルコースが得られますが、トウモロコシの場合はデンプンを分解してグルコースにしなければなりません。

 そのため、その分余計にエネルギーが必要になります。


 現在、世界では稲わらや、木材などのセルロースからバイオエタノール用のグルコースを作るための研究が盛んに行われています。

 実用化されれば、これまで燃やされる運命だった廃木材や稲わらなどを有効活用出来るようになるので、非常に大きな意味を持ちます。

 しかし、現段階においてはセルロースを分解してグルコースを作るための技術がまだ確立されているとは言い切れません。

 セルロースを硫酸で分解した場合には、その硫酸の処理も課題です。

 本を読んだ限りでは、本格的な実用化にはまだまだ時間がかかりそうです。


 辛口な言い方になりますが、バイオエタノールはまだ成長途上の分野と考えられますし、製造時に多量の二酸化炭素が発生することを考慮した場合、現段階では地球温暖化防止の切り札になるとは少し考えにくいかもしれません。



2. バイオディーゼル燃料の場合

 バイオディーゼル燃料とは、使用済みのてんぷら油などの廃食用油を、メタノールなどと混ぜて加工し、ディーゼル機関用燃料にしたものを言います。

 これまで工場や飲食店から出される廃食用油は、せっけんや飼料の原料として有効に使われてきましたが、家庭から出される廃食用油は再利用されることなく、紙に吸わせたり、固めたりして可燃ごみとして出されているのが現実でした。

 しかし、その油を加工してディーゼル機関用燃料として使えば、軽油の使用量を減らすことが出来、二酸化炭素の排出量を削減することも出来るはずです。


 ヨーロッパでは燃料に軽油を使用するディーゼル車が多いので、それも追い風となって今後ますますバイオディーゼル燃料の生産量が飛躍的に増えていくものと見られています。

 アメリカではガソリンスタンドにバイオディーゼル燃料を取り扱っているところも増えています。(参考資料:図解 バイオディーゼル最前線)

私達が住んでいる日本でも、最近「この車は、使用済みてんぷら油をリサイクルして走っています。」という表示を見かけることが出てきました。


 先ほども書きましたが、バイオディーゼル燃料の原料は食用油とメタノールです。

 食用油は植物由来ですが、一方のメタノールはどこから製造したものなのでしょうか?

 私が調べた限りでは、メタノールは木材の乾留(空気を入れないで加熱すること)、またはメタンの酸化によって製造する方法、さらには一酸化炭素と水素を高温、高圧化で反応させる方法がありました。(参考資料:くわしい化学の新研究)

 この中で、現在最も盛んに行われている方法は天然ガスに由来するメタンの酸化です。

 つまり、バイオディーゼル燃料のうち、メタノールに関しては化石燃料を使用していると考えることが出来ます。

 この部分は現時点では二酸化炭素削減においてはマイナス要素となってしまいます。

 また、家庭から出る廃食用油を使用する場合には、菜種油や大豆油、コーン油など様々な種類の油を混在させることになるため、質が一定しない可能性が高いです。

 このような様々な種類の油から、いかに多くの種類の車に適用出来る燃料を開発するのかが、現時点における課題であると考えられます。



3. 太陽電池の場合

 今、日本では屋根にソーラーパネルを設置する家庭が増えてきました。

 私自身は直接体験したことはありませんが、昼間に自家発電をして、余った電気を電力会社に売っている家庭も少なくないはずです。

 私自身、ここで取り上げた新エネルギーの中で最も大きな期待を寄せているのが、このソーラーエネルギーですし、今後ますます増えていってほしいと考えています。

 しかし、ソーラーパネルの原料となるケイ素を得るためにはたくさんのエネルギーが必要です。

「地球温暖化物語」執筆のための資料集めをした結果、得られた情報は次のようなものでした。


 岩石の主成分である二酸化ケイ素60gからケイ素の単体28gを作るためには、357.4kcalのエネルギーが必要です。

 熱効率を仮に35%とすると、約1000kcal(正確には1021kcal)のエネルギーが必要になります。

 これはエタノールなら0.2リットル、ガソリンなら0.12リットル、重油なら0.11リットルを完全燃焼させた時のエネルギーに相当します。

 エタノール0.2リットル、ガソリン0.12リットル、重油0.11リットルを燃やすと二酸化炭素はそれぞれ304.7g、 277.8g、298.1g排出されます。


 ソーラーパネルは製造時にたくさんのエネルギーを使うため、現段階においてはそこで化石燃料を使用することになります。

 しかし、1度製造してしまえば、その後は長期にわたってエネルギーを生産し続けることになるため、私自身の思惑ではバイオエタノールよりも有用な手段であると考えています。



4. 水素の場合

 自動車業界に詳しければすでに知っている人も多いと思いますが、今自動車業界では水素を燃料として使用することで、二酸化炭素を全く排出しない自動車、燃料電池車の開発にしのぎを削っています。

 私自身も、2005年に愛知県で開催された「愛・地球博」で、実際に燃料電池バスに乗ったことがあります。

 その時に、早くこういった車が世の中に出回ってくれないかなと思いました。

 ですが、現段階においては本格的に実用化されるのは、まだまだ先のようです。

 その要因として次のようなことがあげられます。

・水素は大気中にわずかしか存在しないため、自分達の手で作らなければならない。

・現段階では水素を製造するために最も有力視されているのは、水を電気分解することだが、そのためには多量のエネルギーが必要であり、製造コストがかかりすぎてしまう。

・沸点が−253℃のため、そこまで冷却するために多量のエネルギーが必要になる。

・水素をためておくタンクが大きく、しかも重くなってしまう。

・現段階では水素を補充出来る場所が少なすぎる。

・高温のエンジン内部に水素を送り込んだ場合、水素とエンジンに使われている金属が化学反応を起こし、エンジンが劣化してしまう。

 私が思いつく限りではこれだけでしたが、実際はもっと色々な課題があるかもしれません。

 水素を新エネルギーとして利用していくためにはまだまだいくつもの課題を乗り越えていかなければなりません。

 二酸化炭素削減や、地球温暖化防止の切り札になるにはまだまだ時間がかかりそうです。


 以上、これらの新エネルギーにおける現状について、私なりの視点で書きました。

 辛口なことも書きましたが、私は決してこれらをだめだと言っているわけではありません。

 私自身、研究開発の分野に身をおいて実感したことですが、技術というものは日々進歩しています。

 そのため、今はまだ研究段階のことであっても、3年、5年、10年経てば、状況が大きく変わっているといったことも決して珍しくはありません。

 ですから、これらの分野が今後、より大きな形で環境保護に役立つことを願っています。

 さらには、今は石油や天然ガス、石炭に頼らざるを得ないメタン、エタン、ベンゼンなどが、メタン細菌やバイオエタノールなどのバイオマスによって生産され、二酸化炭素排出の削減に貢献してくれることを、切に願っています。

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