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01.強くなるために向かった先は

「さて、これからどうしたものか」


 強くなると曖昧な理由でエルと別れたレイは何か目的あるわけでもないまま王都に向かっていた。

 このまま一人で冒険者としてやって行くことも考えたが、それではエルとの差は詰まるどころか強い敵と戦えない分さらに差は開く一方だろう。

 レイにはエルと違って魔法を教えてくれような人はいない。

 戦い方を師事した人もいるにはいるのだが、彼女が今どこにいるのかはわからない。


「……そうだ。別に特定の人から学ぶ必要なんてないんだ。よし、魔法大学に行こうーーーーってなわけで入学したいんですわ」

「なるほど。レイ君の言いたいことは大体理解できた」


 レイは王都にある魔法大学の一室で顎に蓄えられた立派な髭を撫でるガイアと対面していた。

 ガイアは見た目こそダンディな初老のおじさんだが、ある時は数々の魔法を生み出し、無詠唱魔法を確立させ『賢者』と呼ばれたり、またある時は先代勇者と共に魔王を打ち破った勇者パーティーの一人だったり、またまたある時はレイの師匠である当代勇者の魔法の師匠だったりもする。

 現在は王都ナンバーワンの魔法大学で校長をしながら余生を過ごしているようだ。


「それにしても若手冒険者のホープ『白と黒』が解散とはねぇ」

「解散って言っても一時的なモンだけどな」

「一時的でも解散というのが意外なんだよ。よくエルちゃんが納得したね」


 確かにエルの気持ちを全く考えていなかったが、それは仕方のないことだった。

 エルは出会ってから一度もレイのすることに反論しなかったのだ。

 気持ちを汲む必要が無いと思うのに十年という年月は十分だった。


「まあ、悪いことしたなとは思うけど俺が強くなるのはエルのためでもあるし、なんだかんだ理解してくれてるんじゃないか?」

「それならいいんだけど。……それで魔法を学ぶためにここに来たんだよね」


 レイが頷くのを確認したガイアが手を挙げて合図をすると、ガチャリと開いたドアの外から現れた女性が持っていた紙袋をレイに手渡した。


「そこにはこの学校の制服が入っている。明日からそれを着て来なさい。レイ君の年齢を考慮して2−Dへの転入とします。何かあればそこのクレハに聞くといい」

「Dクラス担任のクレハだ。これから宜しく頼む」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 制服を持って来たクレハという黒髪の女性は、その切れ長の目でレイを品定めするように一瞥した後、その場を後にした。


「気難しいやつだが余り気にしないでくれ。話せば良いやつだとわかるよ。おっと、忘れてた。最後にこれを」


 そう言ってガイアが差し出したのは長方形の板のようなものだった。


「なんだこれ?」

「生徒手帳兼財布だね。毎月そこにそれぞれに決まった額のお金が支給されるから、それを使って生活してねってこと」


 ガイアが生徒手帳の側面についているボタンを押すと、画面にレイの顔と性別や身長などの簡単なプロフィール、そして顔の下に十万ポイントという文字が浮かび上がった。


「今君が持っているのは十万ポイントだ。一ポイント一銅貨と考えてもらって良い。そのポイントがゼロになった時は悪いが退学ということになっている。気をつけてくれ」

「ということはこの学校で生活するということか?」

「そういうこと。その生徒手帳は部屋の鍵にもなっているから失くさないでね」


 只の薄い板にしか見えないのに随分と高性能なことだとレイは感心する。


「わかった。あと出来ればでいいんだけど、俺が『白と黒』だったことは隠してもらってもいいか?」

「僕もそうした方がいいと思ってたよ。わかった、そう手を回しておくね」

「何から何までありがとな」

「まあ、可愛い孫弟子の頼みだからね。ここで無碍にしたらアリアからお叱りを受けちゃうよ」


 アリアというのは当代勇者アリエールの愛称だ。

 レイがガイアとこんなに気軽に話せているのは他でもないアリアのおかげだったりする。


「それじゃあ良い学校生活を」

「ああ、またな」


 レイが出て行くところを見届けたあとガイアは背もたれに体を預け、何かを考えるように頭に手を当てこめかみを等間隔で叩き始めた。


「レイ君の加入がDクラスにとって吉と出るか凶と出るか。でもあんなに嬉しそうなクレハを見たのは随分と久しぶりだからもう既に良い方に向かっているのかもしれないね。……君もそう思うだろう、アリア」

「レイに何かおかしなことしたら許さないから」


 先程まで誰もいなかった場所に突如現れたアリアはガイアを冷たい瞳で睨みつける。


「君のような過保護な師匠を持ってレイ君も大変だねぇ。可愛い子には旅をさせよと言うでしょうに」

「確かにレイは可愛い子だから旅もさせている。ただ私が途中で道に迷わないように見届けているだけ」

「迷うことこそ旅の醍醐味だと思うんだけどなあ」


 そう呟いた頃にはアリアはもうこの場から姿を消していた。

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