表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/109

各エリアを全てクリアするか、あるいはゲームに参加する他のプレイヤーを全て掃討すること


 ただ、すぐにチュートリアルが続けて、「混沌達の通達では」と話を始めようとしたので、俺は慌てて止めた。


「ちょい待って。マイも呼んでやろう。そうすりゃ、二度手間にならなくて済むから」

「あ、それはそうですね」

「えーっ。でも多分マイは、昨日の今日だから、今頃は二日酔いで唸ってるんじゃない?」


 一刻も早く聞きたいのか、エレインが決めつける。

 しかし俺は「その時はすぐ戻ってくるさ! だからちょい待っててくれ」と重ねて頼み、駆け出した。


 どうせ、マイの部屋まですぐだしな。





 しかし……どうやらその必要はなかったらしい。

 いつもの美しい歩き方で、ちょうどマイがこっちに出てきたからだ。


 二日酔いどころか、たったいま、スタジオで撮影でもしていたような、完璧な出で立ちだった。つまり、戦闘用の忍者服ではなく、真っ青なドレス姿であり、それもコルセットまで着用した本格的な格好である。


 それでいて、下のスカートは丈が短めという……今朝は純白のヘアバンドまでしていて、一段と美貌に磨きが掛かっている気がする。

 片手で髪をかき上げた後で俺に気付き、マイはちょっと目を見開いた。


「……おはようございます、ハヤトさん。どうしました?」

「いや、それはこっちの質問のような。どうしてまた、ドレスアップを?」

「え? いえ、これは普段着のつもりです。再開は明日なので、まだ大丈夫かと。もちろん、訓練時にはまた着替えますが」

「そ、そう……」


 それが私服とか、すげーな、おいっ。俺はまた、テレビで歌う時のアイドル衣装かと思ったぞっ。ていうか、股下何センチなんだ、このドレスっ。


 体育座りとかしたら、もう絶対にパンストの奥まで見えるよなっ。


 喉が鳴りそうなのを堪え、「い、いま、ちょうど呼びに行こうと思ってたんだ。混沌から通達だとさ」と教えてあげた。




「まあ、それで……わざわざ迎えに来てくださいましたか」

「そりゃ、仲間だしね」


 さりげなく答えた途端、マイの顔がふいに急接近してきた。

 それこそ、唇が頬に触れる寸前まで。


「な、なんですか」


 思わず敬語になってしまったじゃないか。


「昨晩のこと……覚えていますか?」


 そして、何故に囁き声? いや、これは大声で訊けないか。

 でも、温かい呼気が頬に当たって、気になるんだが。


「死ぬまで忘れられそうにない」

「……よかった」


 膝の力が抜けそうな笑みを広げ、あとは何も言わずに並んで歩き始めた。

 なんだったんだ、今の? あと、関係ないけど、笑顔が眩しすぎるっ。


 最近、世間じゃ「希少」だと言われるアイスドールの笑顔を、割と頻繁に見てる気がするな。

 売店のところまで戻ると、なぜかチュートリアルとエレインが揃って不機嫌そうに迎えてくれた。


「二人とも……喉に魚の骨が刺さったような顔して、どしたん?」


「なんでお洒落してるんですか?」

「なんで、そんなお洒落してんの?」


 おい、揃って俺の質問を無視して、マイに訊くな。


「さっきもハヤトさんにお答えしましたけど、これは私服ですよ。そもそも、チュートリアルさんの店で買ったものですし」

「えっ」


 いま思い出したような声でチュートリアルが目を瞬く。


「あ、そうか……道理で見覚えあるはずです」

「あんな服あるなら、教えてよっ。あたしもお洒落したいわよっ。年頃の女の子ですからね!」


 エレインがぶつぶつボヤいたが、いやそんなめかし込んでも、どうせ明日はまた殺し合いだっつーのに。





「チュートリアル、通達の内容は?」


 妙な空気になりかけていたので、俺はわざとぶっきらぼうに尋ねた。


「そ、そうでした。先に連絡事項ですね」


 態度を改め、チューリアルが説明を始めた。


「まず、明日の九時にあの偽の東京タワーに集合らしいです。時間厳守だとか」

「……今回は、開始時間が決まってるのか」

「第三ステージは、混沌が同時進行でやっていた、各異世界のゲーム勝者達が集まるようです。そのためでしょう。勝利条件は、第三ステージの各エリアを全てクリアするか、あるいはゲームに参加する他のプレイヤーを全て掃討すること。どちらかの条件を満たした時点で、終了とすると」


 さすがに俺達は、互いに不景気な顔を見合わせた。


「総力戦になりそうだけど、他のプレイヤーはガン無視で、ひたすらステージクリアを目指すのもアリか」


 俺が呟くと、マイがほっとしたように頷いた。

 元々この子は、あまり人殺しが好きそうじゃないもんな。俺だって好きじゃないが。


「それで、才能限界のことは、なにか言ってきた!?」


 エレインが勢い込んで尋ねると、チュートリアルは大きく頷いた。


「多分、そのまま通達を読んでも意味がわからないでしょうから、私の口から説明しますね」

「おねがいっ」


 拝むようにエレインが手を合わせる。


「レベルが今以上に上がらなくなった場合……この場合はエレインさんですが。パーティーのエースがエレインさんよりレベルが上で、なおかつまだ才能限界に達していない場合、エースから自分が上昇するはずのレベル分の伸びしろを、割譲してもらうことができるそうです」


 さっと皆が俺を見たが、チュートリアルの説明でも、イマイチわからんぞっ。

 なんで三人とも、そんなささっと理解できるのかっ。


「もっと砕いて説明すると、こうです」


 俺の顔を見て、チュートリアルが言い直した。


「仮にエースであるハヤトの今のレベルが50で、限界が100だとするなら、残った50の伸びしろ分を、エレインのために、自由に提供していいということです。もちろん、彼女がさらなるレベルアップに直面した場合の話ですけど」




「……は?」


 いま俺、なんかすげーエグいこと聞いた気がするぞっ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ