表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/109

くそ、俺まで顔が赤くなってきた気がする


 我に返ったチュートリアルが、せかせかと立ち上がった。


「こうしてはいられません。今は神力もかなり戻りましたし、避難者達を収容できるように、コピー創造で避難所を拡充し、増やしてきますっ」


「この後で、買い物しようと思ってたんだけど?」

「あ、あたしも!」

「わたしも魔法とスキルを」


「それはまとめて朝にしましょうっ」


 チュートリアルはまとめて先送りしてしまった。


「悪いですが、自動販売で食事などを買い求めつつ、待っていてください。朝までには戻りますからっ」


 言うなり、チュートリアルはその場から消えた。

 勤勉なチビ女神様である……まあ、中学生くらいに見える今は、そんなチビでもないが。

 それはいいが、またぽーっとしてきたマイが、チュートリアルが消えた辺りを眺めつつ、全然関係ないことを呟いた。






「チュートリアルさんが中学生くらいで成長を止めているのは、おそらくハヤトさんを意識してるんですねぇ」


 エレインがまた、ぱっとマイを見つめていたが、本人は赤い顔のまま、ウイスキーボンボンを食べまくりである。

 どんだけ買ってたのか、もう三箱目じゃないか。


 すっかり酔っ払ってからに……あと、あんまり食べると贅肉一つないせっかくのスタイルが崩れるぞ!


 なんとなく落ち着かない気分で俺は思った。

 もちろん、本気でスタイルを心配しているんじゃなく、アイスドールがここまで自制心を失うのは始めてなので、心配しているのである。


「なんかマイが言うと、だんだん本当に思えてきたわ」


 エレインが眉根を寄せて俺を見る。


「な、なんだよ」

「いえ、チュートリアルって、本気でハヤトに惚れ始めたのかもって」

「あのなあ、相手は腐っても――」


 あんまりな比喩なんで、俺は慌てて言い直した。


「じゃなくて、相手はああ見えて、女神様だぞっ。人間に惚れるわけないじゃん。しかも、俺みたいな高校生のガキに」

「甘いわね、ハヤト。チュートリアルやあたしが元いた世界じゃ、女神が人間に惚れるなんて例、珍しくもなかったわよ。そもそも女神って基本は信徒とくらいしか交流ないから、うぶな女性が多いし。しかも一度惚れると、もうべったべったに甘えたり依存したりするわよ」

「それでもないない、ないねっ」


 俺はこれには確信持って手を振った。


「俺、チュートリアルに文句言われてばかりだったからな」


 馬鹿らしくなったんで、立ち上がった。


「それより、メシだメシ。景品食料をごっそり蓄えたから、メニューが増えたって聞いてるしなっ」

「あのねえっ」


 エレインが不服そうに立ち上がろうとするのを、マイが手を伸ばして掴んだ。


「追及はやめまひょう」

「……あんた、言葉が変!」


 冷静そうに見えて、すっかり酔ってるマイに、エレインが顔をしかめる。


「あと、なんで追及しちゃ駄目なのよ」

「ハヤトさんがそう思ってるなら、その方が都合がいいれすから」

「うわぁ……酔っ払ってる上に、本音がダダ洩れになってるわようっ」


 エレインの碧眼が妙に輝いた。


「よし、今ならなんでも答えそうっ。試しに、スリーサイズは?」

「80・56・80れす」

「えー、ウエストはぜったい、ぜーったい、嘘でしょっ」


 なぜか悔しそうにエレインが拳を固める。


「なんでれすか? どうせ嘘つくなら、バストサイズを増やすですし」

 

 ぽーっとした声でマイが答える。 

 俺は想像以上のスタイルの良さに衝撃を受けていたが、そんな場合じゃないな。


「ま、まあいいわよ、あー、腹立つっ。ならさ、マイはハヤトが好きなのっ?」

「よさんか、おいっ」


 俺は慌ててエレインを手荒く引っ張って、マイから遠ざけた。


「なにすんのようっ」


 俺と、彼女自身の声が大きかったので、エレインには、おそらく聞こえてなかったはずだ。

 しかしすぐ隣にいた俺は、しっかり聞こえてしまった。

 マイがいつになく微笑して、「もちろん、大好きですよ」と答えるのを。


 ……マジっすか! 俺、本気にしてもいいのか、今の返事っ。


 くそ、俺まで顔が赤くなってきた気がする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ