四人目は誰か?2(終) 混沌をまとめて倒すって選択肢もあるんだろうけど
俺はてきめんに落ち込んだ。沢渡さんを保護すべき後輩だとずっと信じていたのに、そりゃないだろうと。
「でもアレだろっ。そんなこと言い出したら、マイやエレインだって疑えるじゃないか!」
俺が不平を鳴らすと、これまた二人同時にしゃべった。
「あ、あたしはそんな気――」
「わたしはハヤトさんと最後まで一緒ですよ」
泡を食ったエレインの抗弁より、どきっぱり言い切ったマイのインパクトが凄い。
実際俺も、さすがにマイは疑う気にならんしな……それくらいなら、俺自身を疑うだろうよ。
「あたしだって、裏切らないし!」
「わかったわかった」
「マイに比べて、扱いが軽いわよーーーっ」
「いや、そんなこと言われても」
それが、共に過ごした時間の重みだろうに。
まるで関係ないけど、マイが未だに着込んでいる、丈の短い忍者服、ここで落ち着いて眺めるとめっぽう色っぽいな、しかし。
見とれているうちに、チュートリアルがまたふっと出現した。
「ハヤト、朗報ですよ」
「え、俺?」
自分の顔を指差すと、チビ女神様はコクコク頷く。
また俺の正面に座り、ニコニコと教えてくれた。
「自宅の様子を見て欲しいと懇願していた人達が、新たな避難者の榎本さんの話を聞き、軒並み、『先輩のスキルに頼るっ。改めてお願いと、今日の尽力のお礼をしたい』と言ってました。だから、もう見に行く必要はないみたいです」
「スキル? ああ、死者復活の。そうか、榎本さんを復活させたからか」
「その通りです。それに向こうでも、もう死者復活リストを見ていますから、榎本さんの復活も素直に受け入れたみたいで」
「え、わざわざアレを見せたのか?」
俺が微量の非難を込めて眉をひそめると、チュートリアルは慌てて手を振った。
「仕方ないじゃないですか?『あたし達も戦いたい』と願う人が何名かいましたし、先生ですか? あの大人も、『本当にそんなのがあるなら、見せなさい。それから、私も外の催しに参加したいですねっ』ってうるさいですし……戦闘才能値低いのに」
「低いって、どの程度?」
エレインの質問に、チュートリアルはため息をついた。
「クラスE以下です……ハヤトについていったら、すぐ死んじゃう可能性大ですね」
「ああ、それは大人しくしてた方がいいわねー」
「それと、相変わらずハヤトと――それからマイに会わせろと言われました」
「いや、悪いけど俺はいいよ」
こればかりは、俺もきっぱりと言い切った。
「今俺がトップを目指しているのは、きちんとした理由があるからだし、それは自分で考えても正しい行動のような気がする。混沌をまとめて倒すって選択肢もあるんだろうけど、それよりは成功率高いしさ」
俺の言葉に、チュートリアルがぎょっとしたように息を呑んでいた。
大ボスを倒すのは基本だと思うけど、なぜか誰もそんなことは考えないらしい。俺はかなり真剣に検討してるのに。
疑問に思いつつも、あえて視線に気付かぬ振りをした。
「だから今は、先生の説教聞いてる気分じゃないな。そもそも、このゲームについても、全面反対だろうしさ」
言うだけ言って、そのまま席を立った。
もう少し大勢復活させる予定も、一休みしてからだな。
「じゃあ、そういうわけで、風呂入ってくるよー」
「え、それならあたしもっ」
「じゃあ……わたしはエレインさんの後で」
「は?」
スキップするみたいな足取りで湯浴みコーナーに向かいかけたエレインが、マイを振り向いた。
「女風呂あるんでしょ? 一緒でいいじゃない?」
「……でも、女同士でも、裸見られるのって恥ずかしくないですか?」
「女同士なのに、恥ずかしくないわよっ。いいから、一緒にいこ!」
強引なエレインは、ついにマイの腕を引っ張って、引きずるようにして連れて行こうとしている。
俺は最後に立ち上がったチュートリアルに、声をかけた。
「後で、新たな魔法とスキルを選ぶから、また頼むな?」
「わかりました!」
頼もしい返事を聞き、俺はようやく少し気が軽くなって湯浴みコーナーへと向かう。その途中、思い出した……そういや、「拠点作成」ってスキル、全く使用せず仕舞いだったな?
あれと……それから召喚スキルを試すかっ。
あの広い湯殿なら一人きりになれるし、試すのにいいかもしれない……というより、試しておくべきだよな、実戦で使うつもりならさ。