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さらに後輩の子を復活(続かず) 沢渡さんって、誰ですか?

 黒崎を知らないエレインは、さすがにきょとんとしていたが、俺とマイは驚くどころの騒ぎじゃない。


 しばらく無言のまま、顔を見合わせていたほどだ。

 やがてマイが、「あまりにも意外ですけど、ついていった生徒達から、どのくらいの被害が出たんでしょう。少なくとも、沢渡さんの友人だった二人は、もう亡くなっているようですが」と憂うように指摘した。




「そうだよな……よし、名前はわからないけど、顔を知っている連中だっていた。くまなく見てみよう」


 俺とマイは二人で復活待機リストを調べ、見覚えのある生徒を探した。

 このリストは、見つけた知人がいれば、その人物画をクリックすれば、関連する仲間や家族、それに友人などが亡くなっている場合、即座にピックアップされる。

 しかし、この二人の知人で亡くなっているのは、互いの家族と、それにおそらく同じクラスの生徒達の過半数のようだ。


 いや、それだけで十分悲惨かもしれないが、とにかく二人の共通の友人である沢渡さんは、まだ健在らしい。


「一応、沢渡さんは無事らしいけど」


 俺は調べるのをやめて、宣言した。


「こりゃ黒崎と、あいつについていった生徒達の誰かを復活させて、事情を訊く必要があるな」

「待って待って!」


 今まで黙っていたエレインが、慌てたように口を挟む。


「ここへ呼ぶのは慎重にした方がいいわよっ。相手がチュートリアルに従う人達ならいいけど、下手に他の女神に所属してる人を呼ぶと、その人達のGMを務める女神に、ここの所在が知れるわっ。女神によっては、自分が管理するパーティーを全て投入して、ここへ攻めてくる可能性も出てくるはず。基本的にこのゲームでは、他の女神担当のパーティーは、みんな敵みたいなものだし!」

「その通りです」


 正面に座ったチュートリアル本人が頷いた。


「特に、黒崎さんをここへ呼ぶのは危険すぎます。あの人は間違いなく、他の女神の信徒か、あるいはそれに近い人でしょうから」

「黒崎もこの二人も亡くなってるのに、それでもまずいのか? 死んだ時点で、もう退場扱いだろ?」


 俺が尋ねると、チュートリアルは苦しそうに答えた。


「それはそうですが、蘇った時にまだ担当女神への忠誠心が残っていれば、コンタクトしてまた元のパーティーへ戻るなり、その女神が管理する他のパーティーへ加わるなりと、いろいろとゲームに戻る手段はあるでしょう。死者復活スキルを使えるプレイヤーがこれまで皆無だったから、前例がないだけの話ですね」


「……そうか」


 二人の説明を聞き、俺はしばらく考えた。


「じゃあ、こうしたらどうかな? ひとまず、沢渡さんの友人のうち、一人だけ復活させる。その際に、チュートリアルに従うように頼んでみて、それが駄目だったら、うちの担任と同じく、例の避難場所に入ってもらうと。これなら、問題ないだろ?」


「それなら……まあいいですけど」


 チュートリアルはあまり嬉しくなさそうな顔ながら、一応は了承してくれた。


「ただ、復活させたその子が、避難所にいたくないと、強く主張したらどうします?」

「その時は、俺がなんとか説得するさ」


 自信はなかったものの、俺はわざと強く主張した。


「とにかく、あの後でなにが起こったのか、事情を知りたい。実はこれ、ひどく大切な事柄のような気がするんだ。単なる勘だけど」


 チュートリアル達三名は顔を見合わせ、なぜか揃ってまた俺を見た。


「そういうことなら、ハヤトの好きにしてください。貴方の勘は馬鹿になりませんからね」

「まあ、今はハヤトが最大の戦力だし、尊重しないとね」


 チュートリアルに続き、エレインまでそう述べ、マイもまた「わたしは最初から反対する気なかったですし」なんて優しいことを言ってくれた。


 ……プレッシャーだな、くそっ。

 これで失敗したら、目も当てられん。





「最初にトイレに避難した時のように、冴え渡る勘を見せてください」


 チュートリアルがからかうように言いやがって、俺は赤面した。


「トレイの話はもうよせって」


 慌てて手を振り、早速、死者復活スキルを使うことにした。

 MPの量から見て、まだまだ余裕だしな。




 復活させる子は、沢渡さんの友人らしき一人で、榎本和子という名だった。

 当然ながら、沢渡さんと同じく、中等部一年である。

 セーラー服姿が見えた途端、ショートカットのその子は、いきなりうずくまって叫んだ。


「こ、殺さないでぇええええええっ」


 こっちに背を向けていたので、俺達が見えなかったらしい。


「わ、驚いた!」


 ヤケに真に迫った叫び声で、俺達四人揃って立ち上がったほどだ。


「おーい、俺だよっ。覚えてるだろ、ほら? 校舎で一緒だった、高等部二年のハヤトだっ」


 呼びかけると、涙目の後輩がやっと振り向いてくれた。

 びくびくした目つきで俺とマイを見て、ようやくほっと息をつく。


「あ……先輩と、アイドルの天川さん」

「アイドルっ!? マイってアイドルなのっ」


 エレインが大声を上げたが、俺は「後にして、後にっ」と声をかけた。

 またびくっと震えたからな、後輩が。


「安心してくれ。ここにいるのはみんな、俺達の味方だ」


 まずそう教えて警戒心を解き……ずばっと尋ねた。


「黒崎についていってから、なにがあったんだ? ていうか、黒崎と――あと沢渡さんは?」

「えっ」


 なぜかきょとんとした顔で、榎本という名の後輩は俺を見返した。


「沢渡さんって、誰ですか?」


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