ハヤトの謎2(終) もう退場してたのかよっ
そんなことはおくびにも出さず、俺は切り出す。
「ところで、第二ステージとかいう場所、かなり無茶な敵配置になってて、あれを突破するのはかなり難しそうに見える……一見しただけだと」
マイもエレインも食べ終わっているので、俺は改めて話した。
特に、現場を見ていないエレインには、かなり詳細に。
「そんなの、打つ手ないじゃない!」
エレインは想像以上のシビアさに、うんざりしたらしい。
まあ、実際のステージを見ると、さらにぞっとするだろうが。
「一応、一つの案として、加速した俺が二人を抱えて東京タワーまで突っ走る……という手もあるんだけど」
「わたしだけならともかく」
マイが困ったように言う。
「エレインさんと二人抱えたら、重くありません?」
「私はそんな重くないわようっ」
「あ、いえ……別にそういうつもりでは」
「じゃあ、どんなつもりなのっ」
「まあまあっ」
慌てて俺が止めた。
この二人は相性良いのか悪いのか、わからんなあ。
仲のよさそうな時もあるのにさ。
「まだ続きがあるんだって」
俺は二人の注意を引いてから、思い切って打ち明けた。
「俺とマイが転送される前に、俺、もう一度だけ迫ってくる魔獣の集団を見たんだ。その時、おかしなことに気付いた」
思わせぶりな断りを入れ、俺は自分の見た物を説明した。
どういうことかというと、魔獣の大軍のうち、一部が透明に見えたのだ。その一部というのが、かなり多数を占め、俺はこのコトの意味をずっと考えていた。
「あれがどういう意味を持つのかわからないけど、巨大宝箱の時も、似たようなことが起きて、その時はフェンリルの先読みみたいな映像が見えたんだ。それとは明らかに違うけど、あの時の幻視も、なにかの意味があるように思う」
二人が熱心に聞いているのを見て、俺は思いきって意見した。
「だから、最初は俺の案でやらせてくれないか。俺が先頭を走って試すから、二人はしばらくついてきてほしい。いいかな?」
「異議なし!」
即座にエレインが賛成してくれた。
「既に、プレイヤー中の最高レベルだろうし、ハヤトに従っていれば、間違いないでしょう」
「いや……そこまで絶対的な自信はないけどな」
俺が肩をすくめると、マイがそっと囁いた。
「なるべく、サポートしますね」
「うん、期待しているよ」
「あ、あたしだってサポートするわよっ」
慌てたようにエレインが申し出て、俺は苦笑した。
「わかってるって」
そこで、大人しく聞いていたチュートリアルが、思い出したように述べた。
「そういえば、東京タワーでしたか? そのヒントは元々、沢渡さんが残した暗号でわかったんですよね」
「そうだな、うん。大元は、あの黒崎だけど」
「その情報が正しいとして――いえ、それだけ状況証拠が揃っているなら正しいのでしょうけれど。しかし、どうしてその黒崎さんは、そんな先のステージのことを知っていたのでしょう? しかも、本人は結局、未だ辿り着いてないようですが」
「そうなんだよ、俺もそこが意外なんだ……あ、それで思い出したけど」
俺はチュートリアルに提案した。
「スキルはだいたいそうだけど、死者復活スキルも、メンタルポイントの消費で行うんだよな? 一眠りしたらMPがかなり回復するだろうから、この際、復活待機リスト(死亡リスト)に出ている生徒は、なるたけ復活させようと思うんだけど。誰か、チュートリアルの信徒になるかもしれないし」
「それは嬉しいですけど……無理しない方がいいですよ」
「しないしない」
心配そうなマイ達のためにも、俺は笑って手を振ってやった。
「せいぜい、身近な何名か程度な」
実際に復活待機リストを精査すると、沢渡さん本人は載ってなかったが――。
その知人らしき女の子達が何名か載ってて、ぎょっとした。校舎の中で、沢渡さんと抱き合っていた、友人らしき子達だ。
心配になったついでにばらばらと見てて、俺はとんでもないことに気付いた。
……なんと、黒崎本人もリストにいたのだ!
「もう退場してたのかよっ。嘘だろ、おい」
あのしぶとそうな、黒崎がっ。