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対策を考える1 もう少し簡単なクリア方法がある(らしい)

「なんだ……これっ」


 俺の様子を見て、マイも早速同じくマップを立ち上げ、同じく固まっていた。


「この赤い光点、全部魔獣でしょうかっ」

「み、みたいだな……大盤振る舞いすぎると思うが」


 目の前の静まり返った街を見ると、一見、特に魔獣の姿も見えず、平和な世界に見える。

 しかし、それは本当に見た目だけだ。


 マップを見れば丸わかりなんだが、道路や歩道をうろついてなくても、各ビルや建物内の、ほとんど全てに赤い光点がびっしり見えるのだ。

 つまり、多少の広さがある建物内には、その全てに魔獣が詰まっていると見ていい。


 眼前の平和な光景は、まやかしということだ!




「こんなの、二人でどうにもなるかーーっ」


 思わず俺が地団駄踏むと、チュートリアルの声がした。


『待ってください。今、ゲームのグランドマスターでもある混沌側から、ステージの説明が届きました』


「なんて言ってる!?」

「どのような内容ですかっ」


 俺達は同時に声を出した。


『ええと……テキストメッセージのみですが、そのまま転送します』


 すぐに、俺達の前にテキストが出た。



【ブルーフィールドの内側に至れば、そこは第二ステージとなり、難易度が高くなる。ちなみに、そのステージは本来の東京都内ではない。我ら混沌が別次元に構築した、疑似都市である。道や建物の配置は似ているが、中には本来の都内現地にはない建物も含まれる。注意深く周囲を見て進むがよかろう。なお……すぐにわかること故、先に教えるが、そのステージ内の魔獣は、とんでもない数が存在する。それらを全部相手にしていくのも間違ってはいないが、もう少し簡単なクリア方法がある。少しだけヒントをやると、眼前に見えるものを、そのまま信じてはいけないということだ(ここ、大事ぞ?)。美味しいクリア条件があったとしても、それは自分達で探すべきであろうな。――以上、勇者達の健闘を祈るぞ……うふふっ】



「だから、なにが『うふふ』かっ」


 もう慣れてきたが、それでも俺は愚痴った。

 多分俺同様、この時マイの脳裏にも、「東京タワー」のことがチラついていただろう。簡単なクリア方法ってのは、そのあたりに秘密があるのではないか?


 なんとなく今は混沌が聞き耳立てている気がしてならないので、口にはしないが。

 それにしても、未だこのステージに到達してない黒崎が、なんでそんなの知っていたかは、不思議なんだが。


「しかし、これは難題だな。クリア条件は他にあるとしても、移動すりゃヤバいだろ、これ」


 マップを眺めたまま、俺は頭を抱えた。

 マップが赤い光点で埋まってて、数える気にもならんわ。


「箱入りのチョコボールみたいに、各建物内にぎっしり魔獣が詰まっていますけど、実は普通に移動しても襲ってこないとかでしょうか?」


 これまでで一番自信なさそうに、マイが呟く。


「あー、なるほど。建物にわざわざ入って、自分から餌になるんじゃなけりゃ、普通に外を歩いてる分には問題ないと?」

「……ちょっと甘い考え方かもしれませんね」


 マイはそう言ったが、俺はなんでも試す方である。


「すぐにキャンプにするとしても、戻る前にそれくらいは試そうか? ええと、あのマンションの一階かな?」


 俺はマップの一箇所、ここから見て道路を渡った斜め右のマンションを指差した。


「あそこの102号室が、『様子見て来て嘆願』のうちの一軒なんだけど、そこまで移動してみようか」

「ここは本来の都内ではないはずでは?」


 マイが小首を傾げたので、俺は説明してやった。


「うん、混沌がそう言ったな。それはわかるけど、まあ試しに見に行くだけだから。あそこまで移動してみて、本当に外を歩く分には問題ないか、テストだよ。窓から中を覗くところまで進んで、特に邪魔が入らないようなら、俺達もあえて建物内の魔獣を無視できるだろ?」


「よくわかりました。では、早速行きますか?」

「うんっ」





 俺達はようやく地下鉄出口を離れ、眼前の二車線道路を渡り、向こう側の歩道へ――


「――っ! 出たっ」


 半分も渡らないうちに、思わず声が出たっ。

 というのも、俺達道路に出てちょびっと歩いた途端、待ってましたとばかりに、そこら中の建物から、魔獣が溢れ出してきたのだっ。


 一体これ、何匹いるんだと思うような数で、さっきまで無人だった街の中は、たちまち洪水のごとき魔獣で覆い尽くされた。


 それが一斉に、俺達に殺到してくるっ。



「こりゃ駄目だっ」


 俺は速攻で叫んだ。


「チュートリアル、転送してくれっ! 作戦練り直しだっ」


 叫んだ瞬間、俺はまたしても視界に異常が生じ、「なにか」を見た。地下トンネルでフェンリルと戦った時に、不思議なものを見たように。


 しかし、考える暇もなく、俺達の身体はその場から消えた。


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