新たな力1 時間制限とか、先にメッセージ出せよ!
二人して恐る恐る、その巨大宝箱に近付いたが、別に罠の気配はなかった。
あと、この宝箱はそばで見ると一段とデカく、高さだけでも俺の腰近くまである。確か前の宝箱の時は本当にアイテムが中に入っているわけじゃなくて、あくまでも開けると同時にBOXにアイテムが入る仕組みだったが。
試しに俺が手を触れてみると、いきなりパカッと開いた。
「うわっ、びっくりした! 自動で開くのかっ」
しかもまた、文章がずらずらと眼前に出たぞ。
今回は前と違い、アイテムは固定ではなく、割と自由度が高いらしかった。
●ミッションクリアを祝福して、混沌よりの特別報酬●
パーティーメンバーは、以下の中から、一つを選べる。
(全員で一つではなく、メンバー個人で一つずつ。ただし、死亡したパーティーメンバーがいる場合、他のメンバースキルにより、百万が一にも復活が可能だった時は、復活後に改めて選択可能な措置をとることとする)
読んでいる途中だったが、俺は首を傾げた。
「なんか……意外と親切だな? 百万が一って言い方がアレだが、ちゃんと生き返った後のメンバーも、恩恵を受ける措置があるのか」
「ハヤトさん、少しずつ、混沌の無茶さ加減に慣れていません?」
マイが苦笑して言ってくれた。
「親切そうに見えますけど……今までを考えると」
むむっ! そう言われると確かに。これまでを考えりゃ、そんな親切じゃないな……復活スキル使う気満々とはいえ、既に一人死んだしっ。
俺は肩をすくめ、続きを読んだ。
□提供するアイテムは次の中から、一人につき一つ□
武器・防具・レアアイテム・レアスキル
※ちなみに、選択後にどのようなものが出るかは、選択した後のお楽しみとする……うふふ。
――以上だ。
では、張り切って選択するがよい……くくく。
「なにが『うふふ』で、なにが『くくく』かっ」
俺は思わず脱力した。
やっぱり、あんまり親切じゃないわっ。
「もらえる品の内容がわからないと、種類だけじゃ困りますね……前の時みたいに、忍者の職種で使えるものではあると思いますが」
「使えないアイテムや武器はないとしても、せめて内容知りたかったな。おい、チュートリアル! おまえのお勧めはっ」
おもむろにチビ女神様に振ると、困惑した声が返ってきた。
『種類だけ先に選ばせて中身は不明というのは、初めてのケースの気がしますね。私の世界の他の女神達は、以前にも似たゲームに参加していますが、その時の記録を調べた時も、例がなかったように思います』
「じゃあ、今回が初めてか」
『混沌は、私の世界を制圧する以前にも、無数の異世界で似たゲームをやっていますから、必ずそうとは限りませんけれど』
「ぬう。じゃあ客観的に見て、あんたのお勧めは? 生き残りに比重を置いて!」
俺がしつこく尋ねると、今度は即答してくれた。
『レアスキルでしょう! ハヤトの場合、レベルアップ次第で全てのスキルを取得できますが、こういう場合のレアスキルは、おそらく正規ルートでは取得できないものになりそうです』
「なるほど」
「それは……無視できない情報ですねっ」
『ただし、他の種類を選んでも、先々で入手できないものになる可能性は否定しません。それでも、スキルにはかなり実用性が高いものが多いですから』
俺とマイは顔を見合わせた。
「選択がいよいよ難しいですけど……やっぱり、スキルでしょうか」
マイが珍しく、自信なさそうに言う。
「どれを選んでも、しょうもないモノは入ってない気がするけど――この選択次第で、後の運命が決まったりすることもありそうだしな」
俺はため息をついて頭をかいた。
さて、どの種類を選ぶか。
……なんてじっくり考えようとしたら、また新たなメッセージが出た。
□取得時間制限あり。あと三十秒、二十九秒、二十八秒――□
わっ、時間制限とか、先にメッセージ出せよ!
俺はすっかり慌てて、やむなくえいやっと選んだ。