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謎のフィールド1 混沌より特別な祝福が与えられる


 十分に用心して近付いたところ、確かに数百メートル先にプレイヤーの集団がいた。

 さっきの地上には及ばないが、それでも三十名くらいはいるだろう。


 誰がソロで誰がパーティーなのかわからないが、なぜか全員がわいわいがやがや騒いでいる。特に争っている様子はない。




「なんか……想像したのと様子が違うわね?」

「確かに」


 俺も首を傾げた。

 この地下トンネルのある地点を境に、その手前に全員が集まっているのだが、なぜかみんな向こう側を見ているだけで、先へ進もうとしない。


「ハヤトさん!」


 俺の代わりにマップを見ていたマイが、呼んだ。


「どうした!?」

「彼らの最先頭に、エネルギーフィールドみたいなものが、展開しています」

「……エネルギーフィールド?」


 俺も慌ててマップを広げたところ、マイの言うとおりだった。

 集団の先頭をずばっとよぎるように、そこから先が、ごくごく薄青く光っている。謎の光源は多分、二十メートルほどはあるだろう。


 そこから向こうは、特になにもない。


 つまり、謎の光る空間が、ここから二十メートルばかり続く、ということだ。

 最初、目には見えなかったが、近付くとうっすら光っているのがわかった。……不思議なのは、その光の中に、誰も入って行こうとしないことだ。


 そして、俺達がそっと彼らの背後に近付いた途端、いきなりステータス画面が立ち上がり、メッセージが流れた。


【新たな挑戦者を歓迎する! 私もまた、混沌の一人だっ】




「わっ」


 俺は焦って腰の魔剣に手をかけたが、どうもこれは自動メッセージらしい。声は一切聞こえず、そのまま続きが流れた。


【この路線に設置した、特別な宝箱の話をしてやろう。ルールは簡単。トンネル内に満ちたエネルギーフィールドの中を進むと、その途中に大きな宝箱がある。開けるためには、ある条件を満たさないといけないが、その条件は、ここでは告知しない。ただ、見事に箱を開けた者は、ソロであろうとパーティーであろうと、必要な人数に応じて、人数分のレアアイテムが入手できる……それと!】


 思わせぶりにメッセージが一時中断した。


【今回は成績のよい戦士が多い故、我ら混沌は新たな祝福を設けることにした。この宝箱を開けたパーティーには、混沌より特別な祝福が与えられる。つまり、パーティー内の人数が何名であろうと、優勝した暁にはその全員の願いを叶えてやろう。せいぜい励むがよいぞ!】


 メッセージはそこで途切れ、また薄暗い状態に戻った。

 俺とマイは顔を見合わせたが――いきなり、エレインが叫んだ。


「イッェエエエエエエエイ!」


「わあっ」

「――っ!」


 俺はもちろん、マイまで少し肩を動かしたじゃないか。

 エレインの奴、謎の奇声を上げたかと思うと、その場で飛び上がりやがんの。


「なんだよ、急に!?」

「なんだよもなにもっ」


 笑み崩れたエレインが、上機嫌に俺を見る。


「これクリアしたら、レアアイテムが入手できて、しかも最後の望みも人数拡大じゃない! 破格よ、破格っ」

「それは、成功した場合では?」


 マイが慎重論を展開する。

 実際、そうだわな、うん。


「挑戦する前から、そういうネガティブ発言しないのっ」


 エレインが腰に手を当てて文句付けたところで、誰かが声をかけた。


「やめとけって、おめーら。先に挑戦した連中みたいに、悲惨なことになるぞ」





 みんなで一斉にそちらを見ると、レザーアーマーで上半身をガードした男が、眉をひそめて俺達を眺めていた。


「というと、もう誰か失敗したのかい?」


 恐る恐る尋ねる俺に、難しい顔で頷く。


「誰が失敗したとかじゃないね。今のところ、誰も成功してないし」


 うっ……マジか。

 さすがに俺達も少し顔をしかめた。


「でも、挑戦した人がいるなら、開ける条件はわかったんでしょ?」


 エレインが笑顔全開で訊いた。

 あわよくばその条件を教えてもらおうと思っているのが、見え見えである。


「わざとらしく笑顔向けてくれなくても、教えてやるよ」


 陽気そうな戦士は、苦笑していた。


「条件は確かに聞いているはずだがね。問題はだ、戻ってきた連中は誰もその条件を覚えてないってところだ。そこだけ、記憶が奪われるらしい。なにか条件を提示された気がするが、どうしても思い出せないのさ」


 その人はため息と共に両手を広げた。


「その意味じゃ、公平っちゃ公平かもな」


 聞いた瞬間、俺はがっかりしたが、次にマイがそいつに質問した。


「参考までにお尋ねしますけど、提示された条件は不明として、開けられない場合のペナルティーは?」

「お、おぉ……」


 俺のそばに控えていたマイをようやくまじまじと見つめ、相手はたちまちポカンと口を開けた。うんうん、気持ちはよくわかるぞ。


「ええと、俺はジョンって名前なんだ、よろしく」


 ……だからって、名乗るこたぁないと思うが!

 あと、マイの足やら胸やら、じろじろ見るなっ。


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