表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/109

間奏(続かず) 才能限界という壁

「よ、よしっ。そろそろ行くか」


 ようやく呼吸を整え、俺は気合いを入れ直した。

 今のでまたレベルが上がり……というか、数が多かったお陰か、二つレベルが上がり、レベル29となった。


 ライフボールも、前の金星ドラゴンの分も含めて、しこたま集まったぞ!

 これでまた、よさげなスキルを揃えるか。




「マイは上がった?」


 寄り添うように立ってくれていた、マイにも訊いてやる。


「お陰様で」


 マイが申し訳なさそうに頷く。


「最後に辛うじてサポートできただけなのに、二つも上がって、レベル19です」

「おおー、マイも強いよなー」


 お世辞じゃなく褒めてる途中で、エレインが慌てて追ってきた。


「う、さりげなく並ばれてるし!」


 マイの申告を受けて、勝手にショックを受けていたりする。


「あんた達――というより、あなたよ、ハヤトっ」


 なぜか、特に俺を指差す。


「明らかに異常なステータスだわ。同じパーティー内だから、スキル以外の項目はざっと見ることができたけど、才能値が計測不能になってるじゃない! ということは、限界値である【999ーS】を越えているってことよっ。神様にだって、才能値が設定されているのに」

「いや、そんな力説されても、その数値がどういう意味を持つのか、わからんしな」


 とはいえ、女神にも才能値があるのかー。

 などと、俺はあくまでのんびり構えていた。


「わたしの才能値だと、【96ーA】となっていますね。チュートリアルさんが前に教えてくださった通り、クラスAですか?」


 マイが自分のステータスを調べて申告した途端、エレインの驚くこと驚くこと。


「なんてことっ、あたしはクラスBだっていうのにっ」

「どういう計算式だよ、その才能値って?」


「通常、EからSまであって、それぞれ三桁の数字で評価されるのよ。人間の身で、S以上の数値が存在するなんて、あたしも今日初めて知ったけど」


 エレインがなにやら不満そうに言う。

 俺達の不思議そうな顔を見て、詳しく教えてくれた。


「たとえば、最初の才能値がEクラスの【21ーE】だと判定されたとして、Dクラスに上がるには、【999ーE】を越えないと駄目ってこと。でも人間である限り、どれだけ戦闘経験値積もうと、才能限界という壁に当たるの。そうなると、もうそれ以上は上達しないわ。大抵は一生を終える間に、クラスが一つ上がればマシな方だと思う。DからCとか、そのあたりが通常の限界値でしょう。マイはクラスAだっていうけど、その才能値でさえ、うちの元隊長のレベルだもの」


「マイはなんとなく信じられるな、うん。動きを見ていたら、とても素人とは思えんし」


 あと、忍者姿で戦うととてもセクシーだと思ったが、これは言わずにおく。

 俺もそこまで馬鹿じゃない。


「いえ……驚くべきは、ハヤトさん本人だと思いますけど」


 マイがなにやら眩しそうに俺を見た。 


「まあでも、自分の力量についちゃ、あんまり信じてないんで。所詮、数字の上だからな」

「でも、スキルの加速なんか使ったでしょ? そんなスキル、普通は取得できないのよ」


 またまた、不満そうに言われたが。


「え、これってレベル上がったら、自然と取得できるようになると思ったけど?」




『あいにく、それはハヤトの場合のみです。他の人……たとえば才能値クラスAのマイの場合だと、加速スキルを得るためには、今の倍くらいのレベルがいるでしょうね』

 

 久しぶりにチュートリアルが口を挟んだ。


『最初に言ったはずですよ? 貴方の才能値は、他の誰も及ばないほどだと。正直、私は今でも疑問なのです……今だから白状しますが、この私もハヤトに及びません。普通はすぐに取得できないスキルを得ることができるのは、そのとんでもない才能値のお陰ですね』


 マジかよというか、どこか嘘臭いな。

 俺は多分、かなり疑い深い顔をしていたはずだ。有り得ない話だしな。


「才能ってなあ……雲を掴むような話だし」

「才能は馬鹿にできないと思います」


 意外にも、マイがチュートリアルの肩を持った。


「仮に同じ時期に野球を始めたとして、その誰もがプロ入りできるとは思えませんし」

「野球、好きなの?」

「いいえ……わたしが一番苦手なスポーツだったので、つい」

「なるほどー」


 そうか、ここで某アイドルグループなんか例に挙げると、イヤミに聞こえるものな。


「このパーティーに出会ったのは幸運だったかも」


 俺の懐疑的コメントを無視して、エレインがそんなことを言う。


「優勝できる可能性もあるかもっ」


 嬉しそうな声を聞いて、俺は思い出した。


「ちょっと待って。確か混沌が願いを叶えるのは、担当女神を含めて、パーティー内の二人までじゃ?」

「ああっ」


 いきなり態度が豹変して、頭を抱えるエレインである。


「そ、そうだったわ! あたしだけ、のけ者じゃないのおっ」


 きっと涙目で俺を睨む。


「いや……睨まれても困るんだが」


 そこで無情に、マイが告げた。


「またマップに複数の反応ですっ。今度は全員がグレー光点……プレイヤーですね!」


 俺達は馬鹿話を中止し、たちまち緊張した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ