表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/109

暗闇に潜む怪物2(終) あなた、ホントに初心者じゃないのねっ


「ちょっと待ってくれ、どんな魔獣か確認するっ」


 俺は例によって、マップ上の光点を指で触り、表示を見た。


「……また、連中かっ」


 表示を見た俺は、うんざりした。





【感染人間改:レベル18(敏捷性Bプラス)HP2845 MP1204】


 自分でもマップで確認したのか、エレインが眉をひそめる。


「ただの感染人間じゃなくて、さらに上位種みたいよ? まずいわね……あたしがレベル19だから、数を計算に入れたら、向こうの方が上だわ」


 それを聞いて、俺とマイはそっと視線を交わした。

 今、俺がレベル26……いや、さっきまた上がったから、レベル27で、多分マイはまだレベル17のはず。


 俺達まだまだヒヨッコとか思ってたけど、もしかして現状のレベルはそう悪くないのか? そういや大金星だって、ドラゴン倒した時にチュートリアルも言ったしな。





「エースはどっち!」


 ふいにエレインが尋ねかけ、自分でマップを見て頷いた。


「貴方の光点が映ってない……やっぱり、ハヤトがエースだったのね。最初から、妙に強いと思ったわ。じゃあ、作戦はっ?」


 緊迫した声で訊かれ焦ったが、俺は即座に決めた。

 自分が一番上のレベルだというなら、それなりの責任を果たすべきだろう。


「まず俺が試すっ。二人は後から頼む!」

「馬鹿なこと言わないでっ。あの数相手なら、元騎士としては撤退を推奨するわよっ。囲まれたら、終わりじゃない!?」

「いや、逃げない。それだけ時間のロスになるからなっ」


 俺はきっぱりと告げ、魔剣(刀)を抜いた。


「先に行くっ。加速レベル2!」

「嘘よっ。スキルの加速なんて――」


 まだなにかエレインが言ってたし、最後の最後にマイが叫んだ気がしたが、俺は構わずスキルを使い、ぐんっと加速した。

 反動で疲れが出るからあまりやりたくないが、数の優位性を崩せるとしたら、これくらいしかないはずだ。


 しかし、走り出した途端、悟った。


 マップの光点は、結構な速さでこちらへ接近している。発見してから数百メートルの余裕があったはずなのに、今や指呼の距離だっ。

 それでも俺は加速を解除しなかった。


 微かにキィィィンというハウリングのような音が響く中、俺は全力疾走で突っ込んでいく。


 やがて、敵が見えた。

 例によって斑点顔の元人間達だが、こちらはさらに、服から覗いている肌は、すべてブクブクと膨れあがっている。そのせいで、より凶悪に見えた。


 加速状態とはいえ、俺に気付いたらしく、先頭を走る凶悪そうな女がまっすぐこちらを指差し、何か喚いた。


 あいにく、加速状態にある今は、全然まともな言葉として伝わらない。






「聞こえないなぁああああ!」


 俺は全く速度を落とさずに突っ込み、まず先頭の一人、いや一匹の首を刎ねる。そして、返す刀で斜め後ろのもう一匹、これで二匹。

 さらに、飛び上がってトンネルの壁を蹴り、そのままあらぬ方向より、集団のど真ん中に着地した。


 無論、着地する刹那に、もう一匹斬っている。

 これで三匹!


「今こそ、入手したばかりの魔法を使う時だよなあっ――ライトニング、レベル3!」


 魔法レベル3の雷光を周囲に放ち、連中の戦闘力を一旦奪った。

 直撃を受け、ゆっくりとスローモーションのごとく連中が倒れていく中、俺は魔剣を振りかざしてざくざく斬っていく。


 我ながら残酷だと思わないでもないが、有利な状況の時にこそ、数を減らさないと。

 加速はいつまでも保ちはしないのだからっ。

 何匹斬ったか、途中から全然覚えていないが、少なくとも最後の二匹は、マイが倒したらしい。加速が切れて全てが状態復帰した時、後ろにマイがいて、二匹がそばに倒れていたからだ。


 もっとも、例によってすぐに消えたけど。

 さすがに息が切れていて、俺はその場でしゃがみ込んだ。


「はあはあっ……もう、あまり使いたくないな、これ。長時間はヤバい」

「大丈夫ですか」


 どこに持っていたのか、マイが薄青いハンカチを出して、俺の汗をしきりに拭ってくれた。


「汚れるよ、ハンカチが」


 俺が苦笑すると、マイが真顔で言った。


「ハヤトさんのためなら、いいんです」


 う……後輩よ、君が真面目にそんなこと言うと、腰の辺りがずきっと来るから、遠慮してくれ。




「どういうことなの!? あなた、ホントに初心者じゃないのねっ」


 追いついてきたエレインが、なぜか目を細めて俺を見下ろしていた。


「なにがさ?」


 俺は呑気に訊いたが、彼女はそのまま、無言で自分のステータス画面を立ち上げ、なにやら調べていた。なんとなく、俺のステータスを探ってる気がしたが、今はとにかく疲れた。


 マイが横にいるんで見栄を張っていたが、そうでなきゃ、ぶっ倒れてたに違いない。


昨日告知した新作、ジャンルランキングに入っていました。

どれほどの方が本作と平行して読んでくださったのか不明ですが、とにかくありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ